Muv-Luv Alternative Plantinum`s Avenger   作:セントラル14

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episode 03

[1997年8月4日 帝国軍白陵基地 国連軍専有区機密区画 香月博士執務室]

 

 8月に入るまで、夕呼先生は大忙しだった。執務室にいる時は、常に何かしら作業をしていた。出張で帝都や国外を出ることも多かった。そんな中、俺はあまり外に出ることはなかった。何故なら軍事基地に俺のような"少年"がいることがおかしいからだ。一応、夕呼先生の執務室までのセキュリティパスを所持している人には、俺たちの表向きの素性は明かされている。しかし機密区画から一歩出れば、俺や純夏は完全に異質な存在だ。本来ならば外で訓練やなんかもしたかったのだが、夕呼先生の厳命で禁止されていた。そもそも機密区画から出ること自体、なるべく避けて欲しいと言われた。

自他ともに認める天才が拾った子ども、という噂は立っているという。噂を気にするような人間ではない夕呼先生ではあるのだが、別のことを気にしていた。俺たちをダシにした妨害工作だ。何処の人間であったとしても、オルタネイティヴ4や夕呼先生への妨害をするならば、本人へ行使するよりも周囲に行った方が効果的であるのだ。そんな夕呼先生への効果的妨害を行うのならば、俺や純夏の存在は格好の餌なのだ。対して、霞を使った工作は効果がないということは前提条件にあるため、行使することはないという。理由は分からないが、霞が正規計画要員であることが理由の1つであるだろう。

というような理由から、俺は基本的に外に出れない。純夏の誕生日の時に関しては、かなり運が良かったとしか言い様がない。夕呼先生の執務室まで来れるセキュリティパスを持った人と仲良くなり、その人を使って基地から出たのだ。戻る時も同様。忙しい中、時間を作って俺に付き合ってもらってありがたかった。今後も時々世話になろうと思う。

 それはともかくとして、そんな俺や純夏の制限が限定解除されることを夕呼先生から伝えられた。俺と純夏の行動範囲が霞と同レベルまで開放されたのだ。機密区画の移動と利用の自由。といっても、そのほとんどが研究区画だったりするのだが。しかも、純夏は以前から自由にそっちを移動していたという。00ユニットのこともあるだろうし、夕呼先生や霞に付いて回っているというのもある。技術士官としての仕事を熟すのに必要だったんだとか。とは言っても、出入りしていたのは電算室くらいだったみたいだが。

 

「じゃ、セキュリティパスの書き換えは終わっているから」

 

「ありがとうございます!!」

 

「機密区画の概要は知っていると思うから、わざわざ説明するまでもないわね?」

 

「はい」

 

「じゃ、私はやることあるから」

 

 そう言った夕呼先生は執務室から俺を追い出した。廊下に出た俺と純夏、霞はこれからどうするかの相談を始める。と言ってもやることは決まっているので、2人に何するか聞いておこう。

 

「純夏と霞はこれから何をするんだ?」

 

「そういうタケルちゃんはどうするのさー?」

 

「……私は電算室です」

 

「お、霞は勉強か?」

 

「……無視するなーーー!!」

 

 霞は軍事用ソフトウェア開発の勉強を続けている。というか、既に勉強もなにもないらしい。ここ数日は籠もってソフトウェア開発を行っているというのが、夕呼先生の話ではある。純夏はそれの手伝いや、自分の勉強を電算室でしているんだとか。夕呼先生に呼び出されたら、そっちに行って色々しているという。その色々が分からないんだが、純夏は何も教えてくれない。

 

「俺はトレーニングかな。資料室の一角を使っての自主トレにも限界があるからなぁ」

 

「あー、不必要なものの片付けをした代わりに使っていいって言われたところ?」

 

「そう。あそこにマットを敷いて筋力錬成」

 

「それ以外では香月先生に呼び出されて小間使いしてるもんね~~」

 

「資料整理、作成、箱詰め、運搬前の状態にしたり、片付け、掃除、洗濯、マッサージ……あれ? 俺っていつから先生の使用人になったの??」

 

「本当、いいように使われてるよね……。仮眠室は私と分担してるけど、結局私たちの部屋の用意は先延ばしされっぱなしだよね」

 

 そんな話を廊下でする。結局3人とも暇といえば暇であるのだ。霞のプログラミングも急ぎという訳ではないみたいだし、純夏も自分で決めた時間を勉強に充てているみたいだからな。

 

「ま、まぁ、いいぢゃないか!! 俺はトレーニングルームに行ってくる!!」

 

 俺たちのセキュリティパスが限定解除されたからといって、今のままではやることは変わらないのだ。

トレーニングルームで俺は永遠と筋力錬成と有酸素運動をやった。純夏が夕食に呼びに来るまで永遠と。バカだと言われたが、確かにバカかもしれない。否定は出来ないな……。

 

※※※

 

[1997年10月22日 柊町某所]

 

 今日も仲良くなった関係者に頼み、基地から出してもらった。流石に2回目となると、結構簡単に出てこれるものだ。前回から更に下調べをしてくれていたらしく、肝が冷えるようなことは一度もなく出ることが出来たのだ。

 向かっているのは、一度訪れたことのある場所。純夏の誕生日プレゼントを購入した小さな雑貨屋。店に入ってカウンターへ向かう。

 

「あの、白銀ですけど」

 

「お、あの時の。頼まれた通りキープしてるよ」

 

「ありがとうございます!」

 

「なんのなんの。あんまり客が来ない店だからね。せっかく来てくれたお客様の願いは、出来るだけ叶えたいのさ」

 

 店主のおばさんが、奥から包を出してきた。中身は分からないが、俺が頼んでいたもので間違いないとのこと。来る日付は前もって伝えてあったので、準備してくれていたんだろう。

 

「プレゼント、喜んでくれるといいな」

 

「はい」

 

「……誰へのプレゼントなんだい?」

 

「え?」

 

 店主のおばさんがニヤニヤしながら問いかけてくる。代金を支払おうと財布を出したが、動きを止めてしまった。別にやましい心積もりはなかったのだが、すぐに答えれるような関係性はパッと浮かんでこないのだ。

 

「妹のような、友だちのような、先生のような……かけがえのない人です」

 

「そうかいそうかい」

 

「あはは。お、お代はここに」

 

「はいはい、ありがとうね」

 

「こちらこそ。では」

 

 少し恥ずかしいと思ったが、すぐに切り替えて料金を支払う。モノとラッピング代。ラッピングは頼んでいなかったが、してくれたのなら置いていくべきだろうし。お代と一緒に置いて、俺はすぐに店を出た。

 次に向かうのは洋菓子店。予約は電話でしてある。後は店で支払いと受け取りをするだけだ。大きい荷物を持ちながら、洋菓子店を目指して歩いていく。

 

※※※

 

[1997年10月22日 帝国軍白陵基地 国連軍専有区機密区画 仮眠室]

 

 今日のことに関して、純夏には既に話を通してある。純夏も乗り気で色々準備をしてくれているが、俺の分担は買い出しだった。ケーキは注文、お菓子とジュースは帰りに買い出し。純夏は部屋の飾り付けと、勘付かれないように動くこと。後、話を聞き付けた夕呼先生が色々手を回したみたいだ。

後で聞いた話だが、装甲車をプレゼントしたのは夕呼先生だったみたいだ。基本的に徒歩以外の移動手段は、夕呼先生と共に自動車等の乗り物に乗ること。それ以外は出来なかったらしく、常に軍事施設にいる霞のために、置いていても不審に思われない装甲車をチョイスせざるを得なかったという。

 

『私だってこんなのよりも、もっと普通のをあげたかったわよ』

 

と言っていた。確かに、霞は目立つのは得意じゃないので、こう紛らわす必要があるのだ。霞でも運転出来るようにカスタマイズしたのも先生だという。あげた時、喜んでいるのか分からなかったらしいが、今でなら喜んでいたことは分かるみたいだ。

 ともあれ、俺が帰ってきたら始めるという純夏の作戦は上手くいった。足止めに夕呼先生が買って出てくれたからだ。先生には準備完了の知らせが行っているはずなので、直に仮眠室へ霞が来るだろう。

 

「……」

 

「「ハッピーバースデー!!」」

 

「……失礼しました」

 

「おいおい待て待て!!」

 

 霞が出ていってしまったので、呼び止めに行く。外ですぐに捕まえて、再び仮眠室に戻る。

 

「「ハッピーバースデー!! 霞(霞ちゃん)!!」」

 

「……あ、」

 

 やっと気が付いたようだ。

 

「……ありがとう、ございます」

 

「ほらほら、主役なんだからこっち来いよ!!」

 

「そーだよ!! 今日は霞ちゃんの誕生日なんだから!!」

 

 霞の手を引いて誘導する。3人だけしかいないが、これでも立派な誕生日会。霞、10歳の誕生日なのだ。

 仮眠室は彩られていた。純夏が飾り付けをしてくれたのだ。それも、時間がないので1ヶ月前から夜なべして。前日なんて徹夜だ。俺も手伝いをしたが、『タケルちゃん、ぶきっちょだから別のことして!!』と怒られてしまった。流石に俺の出る幕ではないと、別のことをしていたが……。

 お祝いの言葉をそれぞれ言って、次はお菓子やケーキを食べる。本当なら純夏が料理を用意する予定ではあったのだが、食材を手に入れるタイミングが見つからなかったのと、何度も買い出しに出ているとバレてしまうため、止む無しでお菓子とジュースということになってしまったのだ。

霞と純夏とで小さいテーブルを囲み、どうでもいい話をする。純夏が俺との思い出話をして、流石に霞の誕生日会なので叩くことは自重した。しかし、純夏が調子乗って色々話すもんだから、ついつい叩いてしまった。

まぁ、別に霞が笑ってくれたのならいい。

 

「とまぁ、こんなところで霞にこんなものをあげよう」

 

「……なんですか?」

 

「誕生日プレゼントだッ!! ほら!!」

 

 俺が持って帰るのも一苦労した大きな袋を、霞にポンと渡す。座っている霞がプレゼントを膝の上に乗せたが、お蔭で後ろの霞が全く見えなくなってしまった。

 

「……タケルちゃん、どんだけ大きいの買ったのさ」

 

「いやぁ、純夏の誕プレを買いに行った時、同じ店に置いてあったのを見てビビッと来ちまったんだよ」

 

 純夏の呆れ声に答えつつ、霞の方を見た。既に袋を膝から下ろしており、俺に無言で開けていいかと訴えてくる。それに無言で頷いて返すと、霞は袋を開封した。

袋から出てきたのは、大きなうさぎのぬいぐるみ。前の世界で霞が持っていたものよりも、大きくてかわいいうさぎのぬいぐるみだ。色合いも同じで、丁度いい。それに、あの『うささん』は、霞が寝る時に抱いて寝ていたものだ。この大きさになっているのにも、霞が抱いて寝れるようにという意味も込めてある。

 珍しく目を輝かせている霞に、今度は純夏がプレゼントを渡した。というか、いつの間に用意したんだろうか。

受け取ったのは、そこそこ大きな紙袋。これも霞は無言で開けていいかと聞いてきたようで、純夏は笑って頷く。中から出てきたモノは、バンダナとエプロンだった。胸のところにうさぎの刺繍がされている黒いエプロン。バンダナはエプロンに合わせたのか黒色だ。

 

「……純夏さん」

 

「うん!! 今は忙しいけどさ、霞ちゃん、前に言ってたよね?? 料理をしてみたいって。だから、今はこれくらいしか出来ないけど、いつか一緒に料理しようね!!」

 

「……はいっ、ありがとうございます、純夏さん、白銀さんっ」

 

「うわわっ、泣かないでよっ!! 嬉しくなかったの?! ご、ごめんね!!」

 

「あわあわ、ゴメンな霞!!」

 

 突然泣き出してしまった霞に、俺と純夏は激しく取り乱す。しかし、霞は首を横に振って否定した。

 

「……ぐす、ちがい、ます。うれしくて、あたたかくて……お2人が、とてもあたたかいいろで……」

 

「そっか……」

 

 純夏が霞を抱き寄せて、静かに霞の話を聞く。

 

「……わたしは、こんななのに……ぐすっ、いつもまわりからはさけられて……ぐすっ……でも、お2人はいつも……あたたかいいろで、ぐす……わたしをむかえてくれて……」

 

「うん」

 

「……それなのに、こんな、ぐす……たんじょうびかいまで……」

 

「当たり前だよ。霞ちゃんは私の友だちだから……」

 

「……ありがとう、ございますっ。すみかさん」

 

 おいおい。俺を置いてきぼりにしている2人に、少しいたずらをすることにした。

 

「なんだよ、霞。俺だって友だちだって思ってるぞ」

 

「……はい、白銀さんっ」

 

 そんな少ししみったれた空気になっていると、仮眠室の扉が開く。そこには夕呼先生が、なにかを片手に立っていた。

 

「……あら?」

 

 と呟いたのに、ニンマリと口元を歪める。

 

「なに、アンタたち2人して社のことイジメてたの?」

 

「「どーしてそうなるんですか!!」」

 

「はいはい。私も2人に便乗して用意したわよ、社」

 

 怒る俺と純夏を無視して、夕呼先生は霞のところに歩く。そして、紙袋を手渡した。

 

「はい、渡したから私は戻るわ。3人とも、あんまり騒がないように。じゃ、オヤスミ」

 

 と素っ気なく仮眠室を出て行った夕呼先生を見送り、俺たちは誕生会を再開した。しかし、俺も純夏も気になることがあった。

 

「ねぇねぇ霞ちゃん!! 香月先生から何もらったの?」

 

「……香月博士からも、誕生日プレゼントを貰いました」

 

「開けてみてよ!!」

 

「……はい」

 

 霞は紙袋を開けて、中の物を取り出した。

 

「……本です」

 

「「本って……」」

 

「……戦術機開発に関する専門書です」

 

「「よりにもよって専門書?!」」

 

「……うれしいです」

 

「「嬉しいんだ……」」

 

 うさぎのぬいぐるみ、バンダナとエプロン、戦術機開発に関する専門書。プレゼントを贈られ、霞は表情を変えないが笑っていると嬉しい。

この後も3人での誕生日会は夜が耽るまで続いた。

 

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