午前九時三十分。 人工物が道路しかないような山道の途中にある、一面緑色の景色を見渡せる見晴らしのいい高台の上へ大型バスが向かっている。
一台だけ駐車している乗用車の隣にバスが停まると、自動ドアが開くや否やブドウのような髪型の少年、峰田実が股間を抑えながら飛び出し、続いて雄英一年A組の生徒達が続々と降りてくる。
「トイレ、トイレ……トイレ何処?」
生徒達は思い思いに体をほぐしたり景色を眺めている中、公衆トイレを探していた峰田の言葉を聞いて、切島鋭児郎と芦戸三奈も辺りを見渡す。
「つか、ここパーキングじゃなくね?」
「B組もいないね」
クラスメイトがざわついている中、最後に降りた担任の相澤がバスの入り口を塞ぐように立ち止まって生徒達に言った。
「さて諸君、合宿の開始を宣言する」
宿泊施設にすらついていない状態で林間合宿の開始を言い渡した教員に、その場にいた全員が顔を向ける。
誰もが疑問の表情を浮かべ、その中で嫌な予感に顔をひくつかせた上鳴電気が声を上げた。
「ちょ、先生!? ここからっスか!?」
彼の叫び声に相澤は返答せず、バスの隣に停車している乗用車へ視線を向けると、そこから二つの人影が飛び出した。 猫のようなヘッドパーツを身に着けた女性が二人、生徒達と相澤の間に飛び込んでポーズを決めながら名乗りを上げる。
「煌めく眼でロックオン!」
「キュートにキャットにスティンガー!」
「ワイルド!」
「ワイルド!」
「プッシーキャッツ!」
大半の生徒がぽかんとしている中、飛び出してきた人物達を知っている緑谷出久が興奮気味に語りだした。
「プロヒーロー・プッシーキャッツ! 連盟事務所を構える四名一チームのヒーロー集団で、山岳救助等を得意とするベテランチームだよ! 結成した十二年前からヒーロービルボードチャートの上位を維持「心は十八歳ぃ!」
ワンレンズのサングラスを身に着けた女性が緑谷の顔へ猫の手を模したグローブを押し付ける。 色違いで同じ衣装に身を包んだもう一人のヒーローはチームメンバーの行動に、ポーズを解いて頬を掻きつつ相澤へ声をかけた。
「久しぶりね、イレイザー」
「ご無沙汰しています、マンダレイ、ピクシーボブ。 一週間、よろしくお願いします」
相澤が頭を下げると、マンダレイと呼ばれた女性も会釈をして、改めて生徒達の方を向いて見晴らしのいい方角を指さした。
「皆、ここら一帯は私らの所有地なんだけど、君たちが泊まる場所……マタタビ荘はあの山の麓ね」
生徒達が指し示した場所を見れば、山の麓の樹海と表現できる場所に立ち上がる煙を見つける。 合宿場所の前どころか、徒歩で数時間はかかるであろう距離を確認した誰かの口が動いた。
「遠っ!」
A組生徒は誰もが嫌な予感を感じてバスに戻ろうとするが、乗車口の前で立ち塞がっている担任を見て動きを止める。
相澤は戸惑っている生徒たちの様子を見ながら、口角を上げて言った。
「初日にも言っただろ。 雄英は全力で君たちに苦難を与え続ける。 タダの合宿な訳が無い、そろそろ気持ちを切り替えろ」
相澤が言っている間に、緑谷に拳を押し付けていた女性……ピクシーボブと呼ばれていたヒーローは生徒達から距離をとると、地面に両手をつけてニヤリと笑う。
すると突然、緑谷達の足元が盛り上がってほとんどの生徒達はバランスを崩した。 波打つように動き出した土流に対処する間もなく、高台から崖下へ流されていく生徒達へ、マンダレイが声をかけて見送る。
「十二時半までに到着できなかったらお昼抜き! 私有地につき個性の使用は自由だよ! 自分の足で施設までおいでませ!」
轟音と共に崖下へ流れる土滝の中で、はっきりと聞こえる彼女の言葉に疑問を持てたのはごく少数。 大多数は訳も分からず流れに身を任せながらヒーローの言葉を聞いている事しかできなかった。
「今から三時間、頑張って"魔獣の森"を突破してね!」
流れ落ちていく土流の速度が弱まり、最後は包み込むように優しく生徒達を崖下へ送り届けた。
ほとんどの生徒が口や服の隙間に入った土を取り除いている中、緑谷が地面に山盛りとなっている土を見つめて興奮している。
「これはピクシーボブの個性、土流だ。 これで何人も土砂崩れの中に閉じ込められた人を救ってきた個性だよ!」
目を輝かせている彼とは違って、ほとんどの生徒は周囲を見渡しているか動かぬ土に目を向けている。 何の対処もできずに流され、現役ヒーローとの力量の差を見せつけられた瀬呂範太と青山優雅はげんなりと呟いた。
「何もできなかったなぁ。 ヴィランの気持ちになれたよ」
「これがプロの実力……とっても高い壁だね☆」
彼らの言葉が言い終わると同時に、爆発音と共に誰かが上から落ちてきた。
土流から逃れ、自力で降りてきた爆豪勝己は制服についた土ぼこりを叩きながら独り呟く。
「道理で土の流れにしちゃ絡みつくと思った」
「かっちゃん!」
「黙れデク」
幼馴染の呼びかけを一蹴すると、爆豪は誰にも目を向けることなく森の奥へ歩き出す。
「さっさと行くぞ」
「ちょ、待てって爆豪!」
切島が慌てて後を追おうと駆け出した近くで、目蔵障子は土の中から頭だけ出して動かない峰田をのぞき込んでいる。
「峰田、動けるか?」
「……無理」
「そうか。 ちょっと待ってくれ」
おもむろに目蔵がノースリーブのワイシャツを脱ぐと峰田を引き抜き、他から見えないように小柄なクラスメイトへワイシャツを素早く巻きつけた。
目蔵の唐突な行動に、峰田は目を白黒させている。
「障子!?」
「それで身を包め、汚れたままは気分が悪いだろう」
「障子ぃ……」
峰田は涙を浮かべながらシャツの中で汚れたズボンを脱いでいると、爆豪を追って歩き出していた瀬呂と上鳴が叫び声をあげた。
「魔獣だぁー!?」
落ちてきた生徒達を囲むように三体。 四足歩行でも二メートルの高さを持つ体躯に上向きの牙を生やした化け物が木々の隙間から現れた。 出てきた存在が動物という事もあって、生徒の中でいち早く動いた口田甲司が前に出て個性を使い、無力化しようと試みる。
「荒ぶる獣よ、その心を鎮め給え……」
しかし、化け物は止まる気配が無い。 その様子を見て口田が拳を構えると、目の前で爆発が起こり、バラバラになった化け物の体が地面に落ちる。
彼の上空を通って戻ってきた爆豪がつまらなさそうに肩を回している間に、他の二体は緑谷と飯田が一体を粉々に砕き、もう一体は轟焦凍が氷漬けにして動きを止めた。
ボロボロに崩れて動かなくなった魔獣を見て、緑谷は魔獣に甲司の個性が効かなかった理由に気づいた。
「動物っぽいけど、土くれだ。 これ、多分だけどピクシーボブの個性で作られた奴だよ」
「やはりプロは多彩だな!」
飯田がプロの技術に感動している姿を見た耳郎響香は静かにため息を吐き、イヤホンプラグを地面に刺して周囲を索敵しながら、誰にも聞こえない音量で呟く。
「プロっつーより個性の扱いだと思うけど。 でも羨ましいな、個性の応用幅が広いのって」
響香の視線はクラスメイトの中でも抜きん出た技量を持つ三人、現れた障害物への対処法を模索している百と轟、そして余裕綽々の爆豪へと向けられていた。
「この大きさのヴィランを捕縛するとなると……」
「地面に繋がっている部分を凍らせれば無力化できそうだな」
「ッハ! 土くれ操って怪獣ごっこか! 軽く捻れるわ!」
意気揚々としている爆豪を見て、響香は周囲の索敵を終えてプラグを地面から引き抜くと、上鳴へ小声で話しかける。
「とりあえず、他はいないみたい。 ってか、また何か変わったよね、爆豪」
「お、耳郎もそう思う?」
「怖いって所はブレてないけどね。 こう、自信に溢れているっていうか」
「そうそう、そんな感じ。 追い込んでいるとか追い詰められているとか、今はそういう雰囲気が欠片もねーもんな、今のアイツ」
何かある度に変わっていく爆豪の姿を見ていると、今度は襲われたにも拘わらず芦戸三奈が呑気な声を上げているのが聞こえてきた。
「皆~、ゆっくりしようよ~」
おおよそ活発的な芦戸とは思えない発言に誰もが振り向くと、彼女はリラックスした表情で地面に座っている。 そしてその周りには尾白猿夫、常闇踏影と黒影、蛙水梅雨がリラックスした顔で寛いでいた。
「だな。 焦って体力を消費しすぎても、辿り着くかわからないしな」
「同意。 万全を期すべきだ」
「ヌヘ~」
「ゆっくりしましょう」
その一団の近くにいた半裸の目蔵もまた、シャツに身を包んだ峰田を抱えながら胡坐をかいている。
「移動する前に一息つくか」
「おおい、急にどうした障子ー!?」
轟は急にリラックスし始めた面々を見渡すと、クラスメイトの中で唯一、この結果を出せる可能性がある甲司へと声をかけた。
「これも口田の個性か?」
「ご、ごめんなさい! 皆にも影響が出ちゃった。 体の内に輝きを宿した者達よ、その力を発揮し給え!」
轟の予想通り、先ほど魔獣へ語りかけた甲司の個性の影響を受けているクラスメイトは、彼の言葉によって目を見開くと力強く立ち上がり、迸る活力を全身から放ち始めた。
「おー、みなぎってきたぁ!」
「皆、早く行こう! 体を思いっきり動かしたいんだ!」
「魔獣彷徨うこの地に身を投じよう!」
「ヤッテヤルゼー!」
「行きましょう、皆!」
「行くぞ峰田ぁ!」
「ぎゃぁぁぁぁ!? 何かテンションの上下、激しくないかぁぁぁぁぁ!?」
急に活発になった目蔵に振り回されている峰田。 緑谷は彼らを指さしながら、何度も目を瞬かせて甲司へ視線を向ける。
「口田君……?」
「……個性が強化された、らしくて。 動くならこっちの方がいいかなって」
申し訳なさそうに口ごもる甲司に、切島がクラスメイトの背を笑いながら叩いた。
「職業体験でヴィランに襲われた時に個性が成長したんだよな。 襲われたのは不運だったけど、パワーアップイベントは羨ましいぜ!」
「すごい! 見た感じだと、一部の人にしか効かないみたいだけどどういう個性になったの!?」
食いついてくる緑谷にたじたじになっている甲司。 そこに爆豪が詰め寄っている緑谷を強引に甲司から引きはがす。 突然目の前に現れた彼に甲司が戦々恐々としていると、爆豪は甲司を見上げて睨みつけながら言った。
「俺にはかけらんねーのか」
「その……ごめん。 常時発動型の個性にしか使えないみたい」
「そーかよ」
興味をなくした爆豪はぶっきらぼうに言うと、何かに気づいたように甲司の頭上へ視線を移す。 釣られて緑谷達も見上げると人影が二つ、ゆっくりと空から降りてくるのが見えた。
それがクラスメイトの姿であると分かった緑谷が二人の名前を呼んだ。
「八百万さん、麗日さん!」
ふわりと二人が地面に降りると、葉隠透と響香が駆け寄って声をかける。
「ヤオモモちゃん、麗日ちゃん、見当たらなかったから心配したよー!」
「二人とも、お帰り! どうやって土から逃れたの?」
「麗日さんに協力してもらいまして。 皆さん、お待たせしました」
「私は浮いていただけなんだけどね」
一息つく麗日に、明らかに自身へ個性を使っていたのを見た緑谷が慌てて駆け寄り肩を掴んだ。
「大丈夫!? 確か、麗日さんは自分に個性を使うと酔っちゃうんじゃ……」
「へ、平気なんよ。 何か最近調子いいし、いろいろできるようになって……あの、デク君。 大丈夫だから、肩から手を放してくれないかな」
「……あ。 ご、ごめん!」
緑谷と麗日の間に流れる甘酸っぱい雰囲気に、周囲から生暖かい視線を向けられた二人は頬を赤くしながら顔を伏せる。
空気を変えるように百が咳払いをして、クラスメイト全員を視界に入れて聞こえるように声を張り上げた。
「皆さん、森はとても迷いやすい場所です。 目印もなく進むのは大変危険ですので……」
百が腕から四角い物体を作って見せるように掲げた。 薄いデジタル時計の様な物品の液晶には十字の線に方角、そして何かを示す点のみが映されている。
「急造ですが、目的地の大まかな方角を表示する簡易携帯端末を造りました。 お持ちになってください」
次々に作り上げて生徒達に渡して歩く彼女に、上鳴が端末と空を交互に見上げてから百の方を向いて言った。
「データって木を登っただけでわかるのか!?」
「麗日さんに協力してもらいました。 上空から見えた建物へ位置データを送る発信機を発射しましたの。 発信機とカラースモークをボールに入れて無重力で打ち出しましたので、おおよその方角は合っていると思います。 いざという時は麗日さんの個性で上空に上がって方向を修正すれば、麗日さんの負担も最小限にできるかと」
「すごいわ、ヤオモモちゃん!」
「やったねヤオモモ! これで迷わなくなったよ!」
いつの間にか空に浮かんで流れている赤色の筋を見て、テンションの上がっている蛙吹と芦戸に抱き着かれて目を白黒させている百は、静かに拳を握ってある人物へ感謝をささげた。
「エッジショットさん……職業体験で学んだ事を実践できましたわ!」
彼女の職業体験先であるエッジショットの事務所。 現代の忍者とも呼ばれる彼と
『地の利を得る事はどの場所においても重要。 見知った地は元より、未知の場所であろうとも何処に何があるかを知れば、自ずと進むべき道は見える。 まずは己の能力でできる限り、歩く道を見定めよ』
電子上のシミュレーションではあったものの、日本の大小ある市街地から様々な建物の内部、果ては森や水平線しか見えない海原の上まで。 付け焼刃ながら、あらゆる場面の仮想訓練に身を費やした彼女の努力によって今、自分達の進む道が示された。
全員に端末が行き渡ったのを確認すると、誰からともなく頷いて端末の指し示す方向へ歩き出す。
いくらヒーローが所有する土地であろうとも、彼らにとっては未知の土地。 切島は目の前に広がる魔獣の森を前に、震える体を抑えるように手の平へ拳を打ち付け、言い聞かせるように一喝した。
「よし、行くぞ!」
「おおー!」
上鳴と甲司の個性によってやる気が漲っている一同が呼応して、雄英一年A組は魔獣の森へと入っていった。
A組が崖下に移動してから約一時間。 高台ではピクシーボブが地面へ手をついて眉間にシワを寄せながら、ワンレンズサングラス―――高機能サイバーグラスに映っている情報と映像を見て唸り声を上げていた。
「んー……んんー?」
思いのほか静かな彼女を見て、チームメイトのマンダレイは不思議そうに首を傾げる。
「随分と集中しているね」
「ええ。 ……ピクシーボブ、生徒達はどうですか」
相澤に声を掛けられたピクシーボブは地面から手を離すと、腕を組んで彼の質問に答えた。
「対ヴィランだけなら、もうプロで通じる子がちらほら。 ポニテ女子は的確にこっちを拘束してくる道具を出してくるし、ゴツイ男の子は一声で味方を強化しちゃって、力を抜きすぎると普通に押し負けちゃう。 体育祭一位の子も十分動けるし、不良っぽい子は口調を何とか出来れば、ヴィランっぽいヒーローで十分イケる。 というか、正面から戦えば絶対に苦戦するなぁ……今年、豊作過ぎない?」
「逆に言えば、それ以外の生徒はまだまだという事ですね」
「雄英ってそこまで厳しかったっけ!?」
彼女が挙げた生徒は後一歩でヒーローとして最低限動ける、現時点では破格の実力者であるはずだが、それを足りないと言い切った担任に目を見開いた。 相澤はその視線を受け流しながら、生徒達が落ちた森に目を向けて言った。
「ヴィランが活性化し始めた今、彼らにも自衛の術が必要です。 特に敵連合と"頭文字V"。 この二つは雄英をターゲットにしている節があります。 警察や通り道のヒーローにも秘密裏に護衛してもらっていますが、ヴィランへ即応することは絶対にできるとは言い切れません。 故に、彼ら自身が対応できるようにスケジュールを前倒しにして、ヒーロー許可証の仮免を取らせなければなりません」
目に見える脅威が二つ現れた事に相澤は顔をしかめる。 どちらも社会の悪ではあるが、先の緊急会議でオールマイトの宿敵であるAFOが背後にいるかもしれないという、とんでもない可能性を聞かされてしまっては、最悪は自分も大捕物に参加せざるを得ない。
自身が生徒を護る位置に居続けられない以上、少しでも生徒達が自分達の力で脅威から遠くへ逃れられるようにしなければならない。 それが相澤の急務となっていた。
(根津校長から聞いた話では、砂藤と口田の職業体験は明らかに雄英生徒を狙っていたと現場のヒーローが言っていた。 敵連合はオールマイトの殺害が目的だったが、"頭文字V"は明らかに生徒狙い。 全く、AFOという奴も大人しくしてくれればいいが)
やらなければならない事の多さに相澤が小さくため息を吐いている隣で、彼の心労を知らないマンダレイは例年では考えられない生徒と世間の状況に苦笑した。
「生徒は豊作だけれど、ヴィランも活発になったと……難儀な年ね。 貴方も体には気をつけなさいよ、イレイザー。 そういえば、護衛として三人ほど人が来ると聞いてるけど。 何時来るのかしら」
「明朝には到着する予定です。 今の生徒たちの様子を見るに当初の予定通り、生徒の強化合宿に協力してもらう事になりそうですね」
相澤の言葉に、ピクシーボブは笑顔で親指を立てた。
「了解、準備は万端だから……って、一直線にマタタビ荘へ向かっているし! もっと妨害しないとお昼過ぎには着いちゃうんじゃないの、この子達!?」
サイバーグラスに映された情報を見て、彼女は個性を使うために地面へ手を付けようとして、そこへ相澤が待ったをかける。
「……ピクシーボブ。 手加減は無しでお願いします」
「え、いいの?」
「彼らが予想以上に奮戦していますが、それは一部の生徒が活躍しているからです。 全員の状態を確認するためにもギリギリまで押し込んでください」
彼の提案に、ピクシーボブは唇を舐めて目を細めた。
彼女の役割は生徒達の実力を測ると同時に、森で迷子にならないようにするための監視も兼任している。
しかし、予想外に強い生徒達を見て彼女もまた、ヒーローを目指す生徒達の先輩としてやられっぱなしなのは黙っていられなかった。
「へぇ。 そこまでやっちゃっていいんだ?」
「はい。 明日の為にも、今日はぐっすりと寝てもらえる方が都合がいいので」
「相変わらずだね、イレイザー。 プロの実力を見せてあげようじゃないの! そいじゃ、私も森に入って来る! くぅー、逆立ってきたー!」
相澤の了解を得たピクシーボブは言うが早いか個性で崖下へ下る道を作り出すと、あっという間に駆け下りて森の中へ消えていった。 マンダレイが同僚の張り切りように頬を掻き、この場所ではもうやる事が無くなったので、彼女達が乗ってきた乗用車に向かいながら相澤へ声をかける。
「それじゃ、マタタビ荘に行きましょう。 乗って、イレイザー」
「よろしくお願いします」
相澤が車に乗り込むと乗用車が舗装された道を進み出す。 ほとんど利用者がいない道を車が飛ばせば一時間もかからない道のりを経て、彼らが目的地へ到着するまでの間も、森から土煙と氷柱が生まれ、そして爆発音が鳴り響いていた。
感想、指摘、誤字報告有難うございます
豪雨を許すな
なんやかんやありまして遅くなりました
文章やら展開やら動かしていたらもうてんやわんや
変なところはご指摘くださると幸いです