直死よりも透視の魔眼が欲しいです。ええ、使い道はもちろん女の子のパンツを見るためです   作:白黒パーカー

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2話:正義はない。けれど、そこにはおっぱいがある

「シッ!」

『ブッコロォ……⁉︎』

 

 コンクリートの上を滑るように駆け抜けた先。

 目の前にいるロボットヴィランに絡む線を定規(じょうぎ)でなぞり、機体は真っ二つに裂かれていく。

 

『目標確認ッ!』

 

 顔を上げれば建物の影からまた新たに一体、ロボットヴィランが自分に向かって突撃してくる。さっきのより大きくて線をなぞるだけではすぐに止められない。

 

 なら、点で殺す!

 

 ロボットヴィランの突撃を躱(かわ)してすぐに、機体に張り付いている脈々しい点に向けて、レイピアのように定規を放った。その攻撃に対しロボットヴィランは声を上げることもなくボロボロと体を崩れ落ちていった。後に残るのは使い物にならない装甲とパーツの残骸(ざんがい)。どれもボロボロと塵(ちり)のようになった。

 

 あー、何もかも逝ってしまった。

 そりゃあ、死そのものである点を突いたんだから、当たり前といえば当たり前だけど。

 

 何はともあれ、今のロボットヴィランで60P。雄英高校ヒーロー科に合格するには十分な点数を確保できたんじゃないか?

 爆豪ほどの凄い個性ではないが、鍛え上げた体と技術で後半も体を動かし続けることができているなら、十分だろう。

 

 それでも倒す速度が速い理由はこの眼のおかげかもしれない。

 瞼(まぶた)にそっと手を触れる。今は虹色に輝いているはずのその瞳を。

 

 ——直死の魔眼。

 

 それは死を視覚情報として捉えることができる魔眼の名だ。

 

 死は線と点で視覚化し、この世界で俺だけが見て触れることができる。

 

 死の線は存在の死にやすいラインを示すもの。その線をなぞり断てば、どんなに硬かろうと切断する。

 死の点は死の線の源、これを突けば存在の意味を殺すことができる。

 本来なら、こことは違う世界にあるはずの力ではあるけれど、これがこの世界で言うところの個性なのかどうかは分からない。

 今世の両親が持つ個性とは全く能力が違うものだし。

 特に問題はないから俺は気にしてない。

 

 まあ、それはそれとしてあんまり使い道がないんだよね。これ。

 お料理で使いたくても食材どころかまな板まで切断してしまうし、人に直接使えば殺人鬼として即逮捕される。いや、この世界ではヴィランかな。

 逆に良いところをあげようと思ったら透明人間の裸がほんのり見れることと、眼がカラコンを入れたみたいで、綺麗でカッコイイ、モテそう! ってことぐらいだ。

 

 うん、やっぱり透視の魔眼が1番だな。誰にもバレないし迷惑もかけない。端っこの方でおっぱいとかパンツとかを静かに見れるだけで幸せになるよね。きっと。老後までのんびり生活を送りたいぐらい。

 

「どう考えても、直死の魔眼より透視の魔眼のほうが欲しいわ。色さん脳内満場一致で透視決定なんですけど」

 

 欲望に忠実に生きる。女の子のパンツを覗く。そ(・)れ(・)が(・)色(・)さ(・)ん(・)の(・)生(・)き(・)方(・)だ(・)か(・)ら(・)。

 やっぱり願いを叶えたいなら何事も貫くことが大切だよね、色々と。

 それに一佳とも約束をしたんだから。それを守るためにも雄英高校に入学しなくてはいけない。

 

「他のみんなも大丈夫かな?」

 

 直死の魔眼を起動したままに、周りを見渡せばそこには個性を使ってロボットヴィランを倒そうとする受験生たちが目に入る。

 スタートでは大きく差をつけたつもりだが、今では周りが人とロボットでいっぱいだ。

 

 その中にはスタート前に見つけた原作勢も揃っていた。この会場にいる原作キャラは瀬呂(せろ)、角取(つのとり)、葉隠(はがくれ)の3人だ。

 瀬呂は個性のテープでロボットヴィランをぐるんぐるんに巻いてた。とても使い勝手のいい個性というか。なんというかロボットヴィランが女の子だったら束縛されてて、えっちーのに。

 いや、でもロボットが女の子だったらそれはそれでアリな気もする。

 

 角取に関しては頭に生えてる2本の角を飛ばして、ロボットヴィランを突き刺したり、持ち上げて落としたりと、結構、エキサイティングしていた。確か角砲(ホーンホウ)とかいう個性だっけか。ロボットヴィランとはいえ、角で押し込めるだけのパワーがあると思うと恐ろしい。あんな純粋無垢そうな顔して、割とえげつないことをしていたとか。

 

 葉隠はまあ、うん。ぶるんぶるんしていた。透明人間で見えないはずの葉隠だが、魔眼を起動した俺の視界では、死の線と点が絡むことで、人の体を作り上げていた。お陰で俺には葉隠のスタイルの良さから髪型、おっぱいの形などがよく分かる。今の俺には、彼女が体を動かす度に、おっぱいが自由にぶるんぶるんと揺れるのが見れる。もうそれが自然体というか当たり前すぎて、貞操観とか大丈夫かと言いたくなるぐらいには激しく揺れていた。

はい、目の保養ですね。ありがとうございます。

 

「よし、いいもの見たし。残り時間もロボットヴィランを斬って突いて、殺りまくるぞーおぉおッ⁉︎」

 

 突然の揺れに足元が掬われる。

 この揺れが来たということはアレがもう登場するってことか。

 そして、近くの建物から破壊音が響き渡った。

 

 

 

 

 

     ◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 震源先であろう方向を見れば、そこには予想通りビルを崩壊させながらゆっくりと移動する0Pロボットヴィランの姿が確認できた。

 突然に、近くから現れたところを見るに、出現場所がここだったということか。

 

 鋼鉄(こうてつ)で巨大な機体。周りのビルを粉砕しながらゆっくりと移動している。

 

「いや、さすがにこれはデカすぎでしょ」

 

 思わず1人で突っ込んでしまう。

 確かに原作通りなんだけど、思ってたよりもデカすぎじゃない? なに作ってるの雄英。

 周りの生徒たちもあの巨体さにビビってしまい、軽いパニック状態になって我先にと逃げだしていた。

 

 一応、直死の魔眼であの巨体を観察してみたが……どうしようか。

 俺自身、合格するだけのポイントは稼いだわけだし、戦う必要もない。

 そもそも、俺(・)だ(・)け(・)じ(・)ゃ(・)ア(・)レ(・)は(・)止(・)め(・)ら(・)れ(・)な(・)い(・)。

 死の線をなぞろうとしても足元だけしか殺せないんじゃバランスを崩して倒れてくる。死の点を突こうにも機体の上半身に死の点があって俺だけでは届かない。

 

「逃げの一択かなぁ。でもなあ、うん……殺ろうと思えばできるけど。危ないし。そもそも必要なモノを今すぐ探さないといけない上に時間が足りない。……逃げるか」

 

 あっさりと結論を出す。

 まあ、仕方ないよね、届かないんだし。ヒーロー目指してるけど、別に正義感とか自己犠牲精神とかそういった類のは持ち合わせてないし。今は倒す必要性もない。

 

「ちょっとちょっと! 君も早く逃げないと危ないよっ!」

 

 慌てたような声と共に葉隠がこちらにやって来た。

 本来なら透明人間で誰にも姿が見られることのない彼女は腕をぶんぶんと振りながら声を掛けてきた。それに同調して、ブラもなにもしていないおっぱいが上下に揺れる。

 

「おっぱいさ、凄い揺れてるけど大丈夫なの? 痛くない、それ?」

「も、もう! さっきも言ったけどさ! そういうのはセクハラって言うんだよ⁉︎ って、今はそれどころじゃないから!」

 

 あまりの揺れ方に思わず質問してしまった。いや、悪くはない。彼女のことを気遣った質問だから悪くない。

 

 透明な体なのに片腕で自分の胸を隠す葉隠は、もう片方の手で俺を掴み、「早く逃げるよっ!」と焦って引っ張ってくる。

 女の子の手ってぷにぷにしてて柔らかい。一佳(いつか)の手とはまた何か違った感触に俺の脳は刺激されまくり。

 さすがヒーロー志望。どんな時でも市民をリラックスさせる行動を選ぶとは意識が高い。

 

「た、助けて! う、動けない、の……ッ」

「え、今の声⁉︎」

 

 2人で逃げようとした瞬間、後ろから震えてか細くなった声が聞こえる。

 ロボットヴィランに気を取られて気付かなかったが、どうやら自分たち以外にも逃げ遅れた受験生がいたらしい。そこには腰を抜かした女の子がいて涙を流していた。その後ろから0Pロボットヴィランが落石を生み出しながらこちらに向かって歩いてくる。

 

 それを見た葉隠は何の迷いもなく女の子のほうへと走り出した。

 

「まだ逃げ遅れた人がいたんだ。助けないと! 私行ってくるから君は先に逃げてね!」

「あ、ちょ、待てよ! お前1人じゃ助けられないって! もう、聞いてないんですけど!」

 

 もう! 一佳とか原作の緑谷もそうだけど、ヒーローを本気で目指してるってやつは必ず自己犠牲的な行動をするものなの! そこが彼らの魅力でもあるから色さん的には大好きだけどさ。

 

 先に飛び出した葉隠を追いかけ、動けない少女の元までたどり着く。

 葉隠はその少女に言葉を掛けながら肩を貸していて、俺もそれを手伝おうとする。——が直前でその動作をやめて定規を握りしめる。

 

「おい、はが……おっぱいちゃんと、そこの女の子頭下げてろッ!」

「え、あっ! うん!」

 

 0Pロボットヴィランが意外にも速かったのか割とすぐ近くにまで移動していて、その機体の腕が掴んでいたビルが一部崩壊した。

 そのうちの大きな落石が丁度、俺たちの真上に落ちてきた。

 

「シッ!」

 

 俺は動く落石に狙いを定め定規を勢いよく上に突き出す。その定規は正確に巨大な落石に張り付く死の点を刺すことに成功した。

 ポロポロと塵のように崩れ落ちた石粉が俺たちの上から舞い下りる。

 

「あ、ありがとう……。助かったー!」

「いいから、早くその子連れて行くよ。はが……おっぱいちゃんの反対側からその子支えるから」

「さっきも思ったけど。お、おっぱいちゃんって何! もしかして私のこと言ってるの⁉︎ やだよ、そんな呼ばれ方―!」

「じゃあ、痴女(ちじょ)で」

「痴女でもないよ! 私には葉隠透(はがくれとおる)っていう素敵な名前があるんだもん!」

 

 緊迫する中、しょうもないやり取りをしながらも俺たちは腰を抜かした女の子に肩を貸して急いでその場から動き出す。

 取り敢えず、ロボットヴィランから離れればこの子は大丈夫だろう。

 

 後はこのまま逃げればいいだけなんだけど。なんかあのままやられっぱなしってのはムカつくよね。ヒーローにはそこまで興味無いけども、色さん的には倒しておきたいと思い始めた。もしかしてこれが意味のある願いの始まり。なわけないですよね。ただの欲求です。

 というか勝負にすらならいとか嫌なんですけど!

 

「おい、お前ら大丈夫かよ」

「オゥ、大丈夫デスカ?」

 

 脳内1人芝居をし始めた俺たちの元に見覚えのある2人がやってきた。

 逃げていったはずなのに、俺たちを見て助けに戻って来たのか。

 もー、ホント君たちヒーローしすぎなんですけど。

 

 でもちょうど良いよね。わざわざ、探す必要もなくなったんだから。あのロボットヴィランを倒すピースがここに揃った。

 これであのデカブツロボットヴィランをボコボコにできる。

 口の端が少しだけ上がる。

 

「ねえねえ、2人とも。あのデカブツ倒すための秘策があるんだけど、……協力してもらってもいいかな?」

 

「なんだか悪い顔シテマスよ。この人」

「魔王みたいな顔してんな、というか本当にあんなデカいやつ倒せるのかよ」

 

 おいコラ、2人とも聞こえてるんだからな。もう少しコソコソ言いなさいよ。俺の顔をいつも見ている一佳だって、一度もそんなこと言ったことないんだぞ!

 あと、そこで笑ってる葉隠さん。はっきり見えなくても笑ってることぐらい分かるんだからね。おっぱい見せろや。ああ、もう素っ裸でしたね!

 

 

 

 

 

     ◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「グルグルに巻いたから、上に行っても外れないと思うけどさ。……ホントにやるのか、コレ」

「もちろんやるさ、瀬呂っち。それにこんだけ巻いとけば、空から落下しても、スポン! って抜けることはないでしょ。……大丈夫だよね?」

「いや、俺が聞いてるんだけど」

 

 俺は腕と一緒に巻かれている角を見ながら、改めて名前を教えてもらった瀬呂と話す。まあ、大丈夫だ。自分を信じろ。

 それから横を見て、角取に指示を出す。頭には2本の角がなくなり新しいものが生えようとしていた。

 

「よーし、角取。もうそこまで時間が残ってないから、アイツの頭の上まで一気に飛ばしてくれ」

「ハーイ、私の『角砲(ホーンホウ)』は2本マデしかコントロールできナイですけど、人をあそこまで運ぶことぐらいはできマース」

 

 近くには葉隠と腰を抜かした女の子がいて、俺のことを見ていた。

 

「無茶とかしちゃだめだよ、気をつけてね! ……えっと名前なんだっけ?」

「それ、葉隠には言われたくないんですけど。まあ、終わったら、また教えるよ」

「行きマース!」

 

 角取の合図と共に巻きついた角に体が引っ張られ浮かび上がる。そして、0Pロボットヴィランの頭目掛けて一気に飛び上がった。風がすごくて下手なジェットコースターよりもスリルがある。

 今からやる作戦は至ってシンプル。瀬呂の個性で角取の2本の角を俺の両腕に巻き付けて、角取の個性で俺自身を敵の急所まで飛ばすことだ。とっても簡単。でも効果的。

 俺は爆豪みたいに飛べないし、緑谷みたいに鋼鉄をぶっ飛ばすパワーもないけど。

 

「だけど、2人の力を貸してもらえば、今ここで、この眼でお前を終わらせることぐらいはできる」

 

 ————直(・)死(・)。

 

 すでに直死の魔眼は起動しているが心の中でそっと呟く。

 現実と認識がズレた視界で赤黒い線と点が絡み合う機体を見下ろす。既に俺は彼女の個性で持ち運べる限界なのかそれ以上は上がらなかった。

 でも、それでいい。俺が飛び乗るのには十分な距離まで近づけられていた。

 

「角取ー! 個性を一旦解除してくれー!」

「ハーイ、わかりまシタ」

 

 遠くから聞こえる声とともに腕を引っ張っていた角から力が抜ける。

 体に来る浮遊感。しかし、それも数秒のこと。0Pロボットヴィランの頭部に落ちて、鋼鉄の足場に着地する。

 

 アナウンスからカウントダウンが始まっている。

 さっさと殺さないと。

 

「俺が死として理解できるものならどんなものでも殺せる。それが直死の魔眼。たとえそれが人であろうと物であろうと、やろうと思えば神様だって……。どんな色(イロ)であろうと、数多の色はどれも平等で、等しく殺せるんだぜ」

 

 死の線が絡んだ足場を踏みしめながらながら、目的の死の点にたどり着く。

 俺は定規を逆手に持ち直し、静かに、でも確かに振りかぶった。

 そして機体は——停(・)止(・)し(・)た(・)。

 

『終了ー‼︎』

 

 監督官の終了合図と同時に、巨大な機体は急速に崩壊を始めた。

 0Pロボットヴィランは塵を散らすように身体がボロボロと崩れていく。

 

 取り敢えず、試験はこれで終わり。

 色さん的にはロボットヴィランを倒して、欲求も満たせてやり切った気分だ。

 足場がなくなり落下していく自分。それもしばらくすれば腕に巻き付けた角に力が戻り体が引っ張りあげられる。そのまま角取によって俺は丁寧に下へと降ろされていく。

 

「わー、戻ってきた! なにあれ、なんだったの!」

「なんだよアレ! どうやってあの巨体を粉みたいに消したんだよ!」

「お疲れ様です。色サンはすごかったです」

 

 地面に着くと葉隠と瀬呂は俺がしたことに対して子どものように質問を投げかけてきた。

 もっとこう、なんか労りの言葉とかないのかよ。

 そして角取さんはマジ天使。この子には一佳とか葉隠にするような普段の対応ができないです。

 

 まあ、取り敢えず。

 

「お疲れ様。どうやったって言っても、個性というか魔眼というか……。まあ、そんなとこだよ」

「えー、もっと教えてくれてもいいじゃん! ねえ、瀬呂君とポニーちゃんもそう思うよね?」

「ホントホント、あんだけ凄いことやったのになんで秘密にするんだよ。俺たちも手伝ったんだから教えてくれよ!」

「確かに私も気ニなります。チリチリになりましたね、あのロボット」

 

 しばらくの間に随分と仲良くなった3人は、俺のことをじっと見て答えてくれ言わんばかりに待っていた。ううん、これは仲良くて素敵ですね。葉隠はいまだにおっぱいが見えてるけど。

 

「また後で教えるから。今は少しだけ疲れちゃった。……というかおっぱいちゃん、そんなことよりも俺に聞きたいこととかないのかな?」

「だからー! 私はおっぱいちゃんじゃなくて葉隠透っていう素敵な名前が……」

 

 俺の言葉にプンスカと腕とついでに胸を振って、抗議してきた葉隠だったが、唐突に言葉を止めて、「あ!」と声を上げた。

 ようやく気付いたのか、このおバカさんめ。

 

「そうだ、名前ー! 試験終わったら教えてもらうんだった! 大変過ぎて忘れてた。私たちの名前はもう教えたんだから、君の名前も教えてよー!」

 

 葉隠以外の2人は特に何も言わないが同じ気持ちなのか、俺のほうをじっと待ってくれている。

 ふふん、色さん。こう見えて根が深いタイプなんですよ。約束とか絶対に果たすまでやる人だ。

 だから、俺は笑いながら彼女たちに自分の名前を告げた。

 

 

「俺の名前はね、極彩色(ごくさいしき)って言うんだよ。苗字は長いし呼びにくいから色(しき)って気軽に呼んでよ。そしたら色さん的にすごく嬉しいから」

 

 

 

 

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