生きてます(笑)
久しぶりの更新です。
キーンコーンカーンコーン……
授業の終わりを告げる鐘がスピーカーから流れる。
「起立。礼……」
先生への挨拶が終わると同時に俺はスタートダッシュを決めて教室を飛び出した。
「逃げたぞ!追え!」
「今日こそ捕まえろ!」
「海ちゃん!なんで!いつもいつも逃げるの!」
「いっつもいっつもみんなで追いかけてくるからだろぉ!?」
高校生活が始まって数日。休み時間になると何故か俺と仲良くなりたいという人が絶えず俺の周りに集まり、人だかりができるようになってしまった。
いやさ、そりゃあ高校生にもなれば友達を増やしたいっていう思いもあるし、クラスメートと仲良くなれるんならそれに越したこともないんだけどさ。何事にも加減ってものがあると思うんだよ。
さすがに大人数の陽キャの美男美女で囲うのはどうかと思うんだよなぁ!
で、ここからコミュニケーションを図るとか陰キャコミュ障の俺には難易度が高いよ!
スーパーマ○オブラザーズ2や魔界村2週目くらい難易度が高い。
え?例えが古い?分かり辛い?ほっとけ。
ともかく、コミュニケーションを苦手にしてる陰キャとの距離の詰め方を間違えまくってる陽キャの群れに言いたい。
頼むから少人数で、ちゃんと段階踏んでゆっくりと距離を詰めてください!
そんなわけでこの状況に耐えられなくなった俺は最近はこうやって休み時間になると速攻逃げだし、それをクラスメートが追いかけてくるぢごくの「追跡中」が始まるのだ。もちろん捕まったら陽キャの群れという監獄へ無理やりご招待、コミュ力53万超えの陽キャの群れ*1から再び質問のA・RA・SHIという名の尋問タイムが始まるわけだ。
うん、ぜってー捕まる訳にはいかない。
とりあえずそれはそれとして。
「ね?一度でいいから私たちとガールズトークしよっ♪絶対に楽しいから!」
「だから俺は男だっつってんだろ!ガールズトークなら女子だけでやってくれ!」
「「「嘘つけ!!!」」」
「ちくしょー!やっぱ信じてもらえねぇ!」
俺は未だに男の制服が届かずに女子の制服で女の子扱いである。くそ、制服さえ、制服さえ男物ならこんなことにはならなかったのに!*2
「なんでそうやって頑なに男だって言ってるかも教えてもらわないと分からないよ!」
「だから私達と」
「俺達と」
「「「友達を前提に対話をしよう」」」
「だが断る!」
「「「なんで!?」」」
「言わなきゃ分からねぇ!?」
こうやって集団で一人を追いかけ回してる時点でもう色々駄目なんだよ。頼むから察してほしい。
まあそれを別にしても、正体がバレたくないのでドキッ!ヒーローだらけのクラスメートとはなるべく接点は避けたいのだ。
正直、何人か混じってる推しのヒーローと仲良くなるチャンスどころか向こうから「友達になろう」とか言われるなんてそんな機会もう二度とこないかもしれない。それを思えばちょっと後ろ髪を引かれる思いだけど、自分のコミュ力と相手のコミュ力を考えて導き出される答えはどう考えても自分がやらかす絶望の未来しか予測できない。
俺は俺を信用しない。*3
というわけでともて、ものすごく残念だけど、俺は全力で逃げる!
「うーみちゃぁぁぁん、私たちとももっとおしゃべりしようよー!」
「げっ!?」
ピンクちゃんこと桃園さんもいる!?まずい、あの子はまずい。変な話、俺はあの子に妙に捕まるのだ。それも変身してようがしていまいがお構いなし。幸い他のメンバーはいないみたいだけど、特大の不安要素追加で焦る。かなり焦る。
「天地海!今日こそ俺の告白を受け入れ、俺だけのヒロインげぶばっ!?」
あ、バカが*4一人転んだ。これで少し時間が稼げ
「ちょ、この俺様を踏んでくとはなにごとムギュ」
全っ然気にしてない!?数人はしっかり避けたけど、ほとんどがないものと扱って踏み越えてきてやがる。なんなら数人女子も混じってお構いなし。
うーん、ちょっとかわいそう。
いやまぁ踏まれたアレも妄想垂れ流しで周り見えてないから自業自得なところもあるけどさぁ。あ、でももしかしたらワンチャンご褒美の可能性が微レ存?
「え?何?あの子捕まえたら自分だけのヒロインになってくれるって?」
はい?
なんか走りながら辺りから不穏な台詞が聞こえてくるんですが?
「それってつまり……あの子がカノジョになってくれる!?」
「マジ!?」
え?ちょ、待てよ。
「あんなにかわいい子が!?」
「なん……だと……」
「いやならねぇよ!?」
いやならねぇよ!?なるわけねぇよ!?!?
「ぜってー捕まえる!」
「ヒャッハー!これで灰色の高校生活からおさらばだぁ!」
「乗るしかねぇこのビッグウェーブに!」
だぁぁぁぁ!?別のクラスの男が参戦したぁ!?なんでそうなるんだよぉ!?
「おいお前らおかしいだろ!?ならねぇからな!絶対にならないからな!?」
俺は参戦した野郎どもの誤解を解くべく振り返りながら大声で叫ぶ。
「それは伝統のフリってやつですね?」
「いやフリじゃねえよ!?どこの倶楽部に所属してんだお前!?*5」
「好きだぁぁぁぁ!」
「是非俺とお付き合いください!絶対に幸せにするから!」
「俺が必ずお前を守ってみせる!」
「いや聞けよお前らぁ!」
アカン、目がマジだ。これはもう何を言ってもあいつらの耳には届かない気がする。ええい!男子高校生の欲望はバケモノか!?
「絶対捕まえて毎日毎日イチャイチャするんだよぉぉぉぉぉ!」
「ふふ、躾のし甲斐がありますねぇ」
「俺の女にしてメスの歓びを叩き込んでやんよぉ!」
「ひぃぃぃいっぃぃっぃぃぃぃぃ!?!?!?」
ムリムリムリ本気で無理!キモイキモイキモイぃぃぃぃぃぃぃ!!!
何あれ!やだ!アレに捕まるのだけは絶対に嫌だ!死ぬほど嫌!下手すれば悪の組織に捕まるよりも嫌すぎる。うわ、鳥肌すっご!
もう本気で逃げる。全力で逃げる。逃げるんだよぉぉぉぉ!
最悪バレる覚悟でアプリ使ってでも逃げなきゃ待ってるのは、誰とも知らない、下手をすれば
「うぁあああああああ!!!アクセル全開!フルドライブ!」
冗談ではない!*6
一瞬最悪のシナリオを辿った嫌な想像が頭に浮かんだ。あまりにショッキングで恐怖した俺はさらに加速。
自慢じゃねーが逃げるのは得意だ。なんせ今までもこういうことは何回もあったからなぁ!*7
などと考えたのが悪かったのか。*8十字路を曲がったその先。
「へ?」
「うわっ!?」
死角に人!?しかも女の子。まっず!この速度じゃ急には止まれない、ならば!
「曲がれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
女の子にぶつからないルートへ強制変更!
ツルッ
「うっそ!?」
と思ったら足が滑った。そして感覚的にスローモーションで見えたのはバナナの皮。
そんなバナナ!?
いやなんでこんなところにバナナの皮!?ギャグ漫画か!?と心のなかで毒づきつつも俺は身体を丸めて目を瞑る。
フワッ
「……あれ?」
が、いつまで待ってもくるべきはずの衝撃が来ない。
とにかく恐る恐る目を開けると。
「大丈夫か?」
そこには凛とした美少女が優しい笑顔で俺を迎えてくれた。
「あ、はぃ……」
危険度マックスからの突然の美少女の微笑みに頭がついていかず、言われるままに生返事する俺。
ナニガオコッテルンダ?
って近い近い!顔めっちゃ近い!!しかもこんな至近距離でイケメンスマイルやめて!惚れちゃう!絶対勘違いしちゃうから!*9あっ、甘酸っぱい、いい匂いがしゅるぅ*10
「良かった。怪我はなさそうだな」
そんな俺の心の叫びなどどこ吹く風で、彼女は俺にさらなる追撃笑顔という微笑みの爆弾を全力で投げつけると、俺をゆっくりと降ろし、立たせてくれる。
「あ、ありがとうございましゅ」
あ、台詞噛んだ、とか俺、今さりげなくお姫様抱っこされてたなぁとかどこか他人事のような、浮ついた頭でそんなことを考える。
「痛ってて……って天地さん大丈夫か!?」
「良かった、怪我がなくて」
「あの、すみません、助けていただいて……」
なんとなく耳に入ってくる声はクラスメートだろう。てかあっち多重事故で大惨事になってんじゃん!俺の心配してる場合か!
「ちょ、大丈夫かみんな!?」
俺は慌てて助けに入る。
「ああ、大丈夫大丈夫」
「俺達は身体だけは丈夫だしな」
「ちょっと、どこ触ってんのよ変態!」
「……重い」
「お願いだから早くどいてー!」
……うん、大丈夫そうだな。見た感じ大けがしてる人はいなさそうだし、確かに丈夫そうなのが揃ってるしなーうちのクラス……なんなら追加された男子とか女子の下敷きになってんのにクッソ幸せそうな顔で伸びてるしな……同じ男として気持ちは分からんでもないけどさ。
「まってろー今助けるからー」
そういって無事な奴らと合流して事故現場から人を救出する手伝いに入る。
「手伝おう」
そして違和感なんて微塵もかんじさせずにに手を貸してくれるクール美少女。こういうことを自然にできるとか性格もイケメン。男女関係なく絶対モテるよこの人。しかもさりげなく近づくもんだから心臓が跳ねる跳ねる。
「なんじゃこりゃあ!?」
「うわぁ、盛大に事故ってる」
「言ってる場合!?早く助けないと」
「とりあえず重傷者がいなさそうなのが幸いね」
と、俺たちが救助を始めるとすぐに、追いかけて来なかった残りのクラスメートたちが合流してきた。どうも様子をみにきてくれたらしい。
「うわっ、何これ!?」
「人が山積みになってる!?」
「大丈夫ですか!?」
「俺、他の人や先生呼んでくる」
なんてやってたら、どんどん人が集まってきて騒ぎが大きくなってきた。まあ事情はともかく、普通に見れば結構な事故だもんな。
「ああ、大丈夫だ。見た目が派手なだけで大した事故ではないよ。これ以上人を呼ぶ必要はないが、悪いが君たちは手を貸してもらえないか?」
「え?あ、そうなんですか?」
「まあ、副会長が言うんなら間違いないか」
「お手伝いします」
ん?
「副会長?」
なんだか聞き捨てならないキーワードが聞こえたんだけど?
思わずそっちに視線が向けば、視線に気づいた副会長(仮)が笑顔で手を振ってくれる。
くっ、なんてナチュラルにイケメンムーヴしてきやがる。笑顔が眩しい。浄化されてしまう。こういう人を「人たらし」って言うに違いない。
その後、副会長の主導で救助はサクサク進み、事態はあっという間に収束。捕まえたら彼女にされるなんて誤解も解かれ、クラスメートたちにも反省文の提出というお灸が据えられることとなった。
これがこのリアルヒーローアカ◯ミアもかくやと言うような学校で生徒会の副会長なんてやれる人の器か。文字通り一般人に比べて人の出来が違うわ。
「おや?」
そんな感じで事件も無事解決、人が解散して、俺もクラスメートたちの後ろをついていきながら教室に戻ってるタイミングで、上着のポケットに何か入ってることに気づいた。
当然それが気になった俺はそれを取り出す。出てきたのは可愛い封筒。
なんだこれ?
こんなのポケットに入れた覚えないんだけど……
とにかく中を見てみようと思った瞬間、俺に電撃*11が走った。
これ、ラヴレターじゃね?しかも男子じゃなくて女子のやつ。*12よく俺がもらってた男がくれるような封筒じゃなくて、りゅーじがもらってた女の子が渡すタイプの封筒だ。もちろんこれが男がくれたやつって可能性もある。が、俺のサイドエ◯ェクトが言っている。これは女の子からのラヴレターだと。
居ても立っても居られない俺はこっそりクラスメートの列から離れて、人影のない階段の下に潜り込み、ドキドキしながら封を開ける。そして出てきたこれまたかわいい便箋。さらにドキドキしながらその文字を読む。
お前の正体を知っている。放課後、部室棟、演劇部の隣にある空き教室で待つ。来なければお前の正体をこの学校中にバラす。
アイエエエ!?バレテル!?バレテルナンデ!?
ラヴレターなんて甘いものじゃなくて脅迫状?呼び出し状だった手紙に俺のテンションは急転直下、心なしか手は震え、焦燥感が全身を支配する。
やばいやばいやばいやばい。ただでさえよく怪人や悪の組織に追いかけ回されてるのに、正体バラされたら絶対今の比じゃなくなる。自惚れじゃなければ、そこにヒーローやヒロイン、ファンや俺を利用したい人間も追加。それは俺が望む平穏な生活が光の速さで一足お先してしまう。
そんなの絶対嫌だ!!!てか想像だけで無理。
誰かは知らないが、とにかくまずはこの正体不明の人に会ってアイサツとハナシアイをせめば。ハナシアイで解決しなかった場合、最悪ハイクを読んでもらうことも視野に入れている。慈悲はない。
まあ実際そこまでやる気はないけど、それくらい過激なことは辞さないつもりではいる。俺は別にヒーローやりたいわけじゃないし、なったつもりもないからな。とにかく口止めは絶対だ。
俺は決意を覚悟を決めて、手紙を握りつぶした。
恒例のヒロインテンプレカウンター
・たくさんのヒーローヒロインに追いかけられる
・彼女にしたい男たちにも追いかけられる
・怪我しかけたところをお姫様抱っこで助けられる
・かんだ台詞も萌え要素