みたらし♀「可能性を信じて、握り締めて」




 事の発端はデンドロOPと立花響の声帯繋がり。

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 これはひどい悪ふざけだ。


ヒビキ・スターリング

「はっ、はっ、はっ」

 

 

 走る。走る。走る。

 心臓が破けそうなくらい拍動している。息をするのが苦しくって、今にでも足を止めてしまいたい。

 だけど。この背には幼気な女の子の命が背負われている。

 私が走らなければ、彼女はすぐにでも死んでしまうだろう。無論、そうなれば私も一緒に死ぬ。

 だけど、神様は私達に厳しかった。

 

 

「うぁっ⋯⋯!?」

 

 

 精一杯に前へ前へと動かしていた足が、私の意思に反して縺れ転んでしまう。

 放り出されそうになった女の子を、両の腕で何とか抱き締めることで阻止する。

 が、そうしたところでソレ()はすぐ側まで迫ってきているのだから、意味は無かったのかもしれない。

 地面に摺れて皮が剥けた膝の痛みを堪えて何とか立ち上がると、私は目の前の光景に軽く絶望した。

 

 

「うそっ⋯⋯!?」

 

 

 奇声を発しながら迫り来る二足歩行や、玉のような見た目の様々な異形。パッと見ただけでも数えられない程のそれらが私たちを殺そうとしている。

 認定特異災害『ノイズ』。

 何もかも分からない事だらけで、分かることと言えば現行兵器じゃ傷付けられなくって、しかも人に触れると諸共炭化してしまうということだけ。

 なんの力も持たない私じゃ、なおのことどうすることも出来ない理不尽。

 ああ、このまま終わっちゃうんだ。

 私は、この子を守ることも出来ないまま、ここでこの子と一緒に死ぬんだ。

 

 ───そんなの、認められるわけない。

 

 私が諦めたらどうなる?私は死ぬ。未来や学校の皆、お母さん、おばあちゃんは悲しんでくれるかな?お父さんは⋯⋯娘の葬式くらいなら来てくれるかもしれない。

 私は、ならそれでも構わない。もう、既に一回死んだようなものなんだ。

 私はあの日(・・・)死んで、今はあの人から託された分の二回目の生を生きているだけに過ぎない。申し訳なくは思うけど、これは、無理だよ。

 ⋯⋯でも、私が死んだとしてこの子はどうなる?

 きっと、すぐさまノイズに炭にされてしまうだろう。私がたかだか一体を道連れにしたところで、代わりに彼女を殺せる存在は今ここに腐る程居る。

 この子の命は、瞬く間に消えてしまうだろう。

 それは、後味が悪い(・・・・・)

 

 

「まだ、だ⋯⋯!」

 

 

 急いで女の子を背負い直すと、震える身体を叱責してもう一度走り出す。我武者羅に。何処へ向かっているかも分からず、ただひたすらに。

 私に出来ることなんて、この子を連れて逃げ続けるだけ。あの人の代わりに生きてる私だけど、そんな不相応な私にだって出来ることくらいはあるはずだ。

 

 

「動け、動け!」

 

 

 とにかく逃げるしかない。シェルターから遠く離れて工業団地の方まで来てしまったが、ノイズはもう追ってきていないように見える。

 

 

「はぁっ、はぁっ! なんとか、なった⋯⋯?」

 

 

 はしごを登りきると女の子を降ろして、その場にドカりと倒れ込んだ。

 もう動ける気がしない。身体は鍛えている方だけれども、こんなに死ぬ気で走ったのは初めてだ。

 だが、ここまで走ってきたんだ。ノイズも見当たらない。

 私はなんとか彼女を守れた。後味の悪い結末を回避してみせた。

 

 

「きゃぁあ!?」

「⋯⋯っ!?」

 

 

 寝転がって、宵空を見ていると突如隣の女の子が悲鳴をあげる。

 まさか。そう思って起き上がり女の子と同じ方を見れば、そこにはノイズの大群がいた。

 抱き着いてきた女の子を抱き留める。後ずさりしようとして、ここは建物の屋上であったことを思い出した。

 もう、逃げ場が無い。どこにも逃げる場所が無いのなら、どうしようも無い。打つ手無し。

 私とこの女の子が生存する可能性はもはや、0だ。

 

 

「⋯⋯」

 

 

 ちらりと、私の腕に掴まって震えている少女を見る。

 もう諦めてしまった私と違って、彼女はまだ生きたいのだと、死にたくないのだとその全てで表していた。

 あまりにも、可哀想で、あまりにも不憫。そして、腹が立つ。

 この状況にでは無い。

 何も出来ない自分自身に、だ。

 

 

「私たち、死んじゃうの⋯⋯!?」

「⋯⋯ううん、死なないよ」

 

 

 大嘘だ。このまま生き残れるはずもない。

 どうにも出来ない。だから、せめて最後の時までこの子の不安を取り除く為に在らねばならない。

 私は、無力だから。

 あの人の分の命を無駄にしない為にいくら努力したって、私にはどうにも出来なかった。

 私の力だけでは、不条理の前では潰えていくしかないのだ。可能性なんて、欠片も無かったんだ。

 悔しさに拳を握り締める。

 私の不甲斐なさと、この世界の理不尽に何も出来ない無力感。全てが全て、私が悪いんだ。

 だけど、

 

 

「考えろ⋯⋯考えろ、私っ!」

 

 

 諦めきれない。可能性を探し続けてしまう。無いって分かっているのに、魂が納得出来ない。

 空いている手を胸に当てれば、思い出されるのは、あの日の言葉。

 

 ───生きるのを諦めるな!

 

 生きるのを、諦めない⋯⋯!

 

 

「ねえ……」

 

 

 私は、

 

 

「こんな私に、あの人の分の人生を生きている理由があるのなら」

 

 

 願う。

 

 

「可能性を、下さい」

 

 

 私達を殺そうと一歩ずつ近付いてくる死を前にして願う。

 

 

「私にハッピーエンドの可能性を、この子を救える可能性を、下さい……!」

 

 

 自分の胸に、あの日、確かに繋がれた私の中の何かへと心から願った。

 

 

「後は私が掴んでみせる(・・・・・・)からッ!! 私に1%でも可能性を寄越せぇぇぇぇえ!!!」

 

 

 私達の命が今まさに尽きようとしたその時、

 

 

 

「────────♪」

 

 

 

 ───胸の中に、歌が浮かんできた。

 

 

 

『これが、やつらと戦える力⋯…。わたしのシンフォギアだ!』

 

 

 

 流れ込んできた、誰かの言葉を正しく認識する暇もなかった。

 瞬間、私の身体は未知の感覚に包まれたのだから。

 

 

「……へ?」

 

 

 私は目の前のことを理解できていなかった。

 私達に降りかかるはずだった悲劇はなく、こんな理不尽な世界では起こりえぬはずの望んだ奇跡が、今ここにあるのだと理解できなかった。

 体の痛みや疲れは消え去っていて、それどころか体が軽い。

 私達を殺すはずだった周囲のノイズ達は、いつの間にかその数を減らしていた。

 

 そして、私はあの日のあの人と同じ格好をしていた。

 

 

「これは⋯⋯?」

 

 

 訳も分からず、ただ呆然と変わった自らの姿を見る。正確には、両の手の平を包む装甲を見つめていた。

 だが、困惑していてもノイズ達は待っていてはくれない。

 だけど。だけども、

 

 

「⋯⋯これなら⋯⋯!」

 

 

『可能性はくれてやった。あとはお前次第だ』……あの人に、そう言われた気がしたんだ。

 

 だからというわけじゃないけど、私は拳を握り締めて立ち上がった。戦い方なんてわからないけど、可能性だけは、私の拳の中にある。

 

 ならばまずは、目の前のコイツらだ。

 

 

「来い! ノイズ共! お前達が殺して良い命なんて、ひとつもないんだ!」

 

 

 そう宣言して、私は導かれるかのように飛び出したのであった。ハッピーエンドをめざして。

 

 結末は、言わなくても分かるだろう。

 

 

 ───私、立花響の目の前に可能性は在ったのだから。




 好評だったら続きます。
 後、感想とかアドバイスとか、なんかそういうの下さい(卑しい物乞い)

続く?

  • 続く。
  • 続かない。

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