二人の男が廃墟となった街で向かい合っている。
一人は鋭い目つきと金色の長髪を持つ軍服を着た身長3メートルの大男。その雰囲気はあまりにも凶暴で、威圧的であった。
もう一人は顔に大きな十文字の傷を持ち、膝まで垂れる黒く長い髭をたくわえ、肉体は鍛え抜かれている和装の男だ。
その男は身長は163センチと小さいものの、堂々とした立ち振る舞いと身に纏う圧倒的な雰囲気により、その迫力は軍服の大男に勝るとも劣らない程だ。
「小童ァ……そろそろ年貢の納め時じゃの。ロジャーのクルーとしても捨ておけん上に最近暴れすぎだわい」
軍服の男──かつて伝説の"海賊王"ゴール・D・ロジャーの船のクルーの一人であった"鬼の跡目"ダグラス・バレットに対し和装の男、海軍本部中将山本元柳斎重國は告げる。
最近のダグラス・バレットの暴れっぷりは目に余るものがあった。ただでさえ海賊王のクルーで、一国を一人で滅亡させた「ガルツバーグの惨劇」を引き起こした危険人物。その人物がロジャーの処刑後、激しく暴れ回るようになった。
このような事態に海軍も動き始めた。最終手段としてのバスターコールの行使すら視野に入れて。しかし、あくまでバスターコールは最終手段。
バスターコールは「何をもってもまず殲滅」というスタンスで海軍本部の元帥と大将が持つ発令権限により海軍本部中将5人と軍艦10隻という国家戦争クラスの大戦力で無差別攻撃を行う。
例え発令者が攻撃目標にまだ残存していようが、無関係の市民が紛れていようが、お構いなしに攻撃は発動されるという非情なものである。
たった一人に対してそのバスターコールを行うというのは戦力的にも予算的にもまず有り得ない事態であり、まだそこまでの札を切る段階ではない。
そのため、海軍の重層部の会議により、海軍の中でも"黒腕のゼファー"、"海軍の英雄"ガープ、"仏のセンゴク"と並んで最強と名高い重國がバレットに対し派遣されることになったのだ。
バレットは重國の発言に対して無言を貫く。彼の心は重國という強敵と戦えるということに歓喜できるほどの余裕がなかった。
バレットが暴れ回っていた理由はロジャーの処刑によりロジャーを越えるという自身の目標を果たせなかった苦悩と失意。
普段のバレットは好戦的でただひたすら自らのためだけに「強さ」を求めるストイックな男である。
ガープとセンゴクに捕らえられた"金獅子のシキ"のように支配を目的とすることはなく、ゴッドバレー事件でガープとロジャーに討たれたロックス・D・ジーベックのように世界の王になるため世界政府の転覆を目論むこともない。
そのような支配、権力、財宝などというものには目もくれず、大局的な思想も持たない男なのだ。
本来のバレットなら重國という海軍トップクラスの実力者と相見えることに喜びの笑みを浮かべただろう。
重國もそのことを知っているため何の反応も返さないバレットに対し疑問を覚えるが、相手は討伐命令が出ている敵である。
そのため疑問を思考の隅に追いやり、自らの獲物である燃え盛る刀、「
その構えた刀が自然な動作で振るわれた。バレットが悪寒を感じて飛び退くと、先ほどまでバレットがいた場所が激しく炎上していたのだ。
「カハハハハ……!おれでもギリギリ見えない速さかァ……強いな。おれも本気を出さなきゃ負けるな、こりゃあ」
思わず笑ってしまうほどの速さにバレットもこの街全てを己の能力で己に合体、吸収させていく。かつて大きな国の都であったこの廃墟には王宮などを筆頭に多数の建物がある。ガシャガシャの実の能力でそれらをどんどんと吸収しバレットは巨大化し、鉄を見に纏う大きな怪物──「
敵は大将を差し置いて最強の一角とまでと呼ばれる海軍中将。バレットには慢心も油断もなく、一撃で仕留めんと、「
重國はその山がそのまま降ってくるような攻撃にも一切動じず、燃え盛る刀を構える。刀の炎はその山を砕かんと勢いを増していく。
山の如き拳が重國を潰そうと目の前に迫った瞬間、業火は消え去り刀身が焼け焦げた状態になった。重國はその刀を静かに振るう。
そして、ついに山のような拳と焼け焦げた刀身が衝突する。
「ウルティメイト・ファウストォ!」
「残火の太刀"北"──天地灰尽」
注:この世界には斬魄刀は存在しないし、鬼道もないです
山じいモドキは超人系のハカハカの実を食べた全身発火人間という設定。覚醒済みであり、周囲の物も発火、延焼させることができるため、炎熱系斬魄刀最強ムーブができている。なお、体から発火できるので一刀火葬もできる。
ちなみにこの山じいモドキの十字傷は白ひげと戦闘した際にできたという設定がある。