緑谷出久の法則   作:神G

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 読者の皆様、大変長らくお待たせいたしました。
 2025年、年末ギリギリでの本編最新話(26話)の投稿です。

 まずは前回の投稿から約2年という長い期間、更新できずに申し訳ありませんでした。
 更に本編の更新に至っては3年半と言う間隔を開けてしまいました…重ねて申し訳ございません。
 久しぶりの投稿なので、誤字がないよう何度も確認はしたつもりですが、もし誤字があった場合は遠慮なく指摘してください。

 ヒロアカの原作もアニメも終わってしまいましたが、私も自作の小説を始めた以上は何年かかってでも完結まで書いていく覚悟ですので、今後とも【緑谷出久の法則】を何卒よろしくお願いいたします!

 今後の活動についてなのですが、まず投稿が何年も遅れた原因につきましては私個人の私情もあるのですが、1番の原因は私の《横着さ》が原因です。
 具体的には【緑谷出久の法則(本編26話〜)】と【番外編・スローライフの法則(10話〜)】と【30万UA記念小説の番外編】と【40万UA記念小説の番外編】と【新作の小説2つ】と、いくつもバラバラに制作していたこともあって時間だけがかかってしまいました…

 今回の【緑谷出久の法則(本編)の26話】では、長らく正体不明だった本編の出久君のヒロインが登場します………ですが…恥ずかしながら私は《皮肉めいたストーリー》はスムーズに思いつくのですが、情けないことに恋愛小説については全くと言っていいほど才能がありません…
 なので学園青春ラブコメアニメ(【からかい上手の高木さん】、【僕の心のヤバいやつ】、【好きな子がめがねを忘れた】、【その着せ替え人形は恋をする】、【久保さんは僕を許さない】、【宇崎ちゃんは遊びたい!】、【古見さんは、コミュ症です】、【道産子ギャルはなまらめんこい】、【君のことが大大大大大好きな100人の彼女】など)を参考として、本編の出久君とヒロインの恋愛シーンを書き進めていく所存です。

 今作の本編の出久君のヒロインは、正直かなり悩んで選びました。
 当初は《うえきの法則の女性キャラクター》も含めていましたが、色々考えた末に《ヒロアカの女性キャラクター》の中から3人にまで絞り込み、その中から最終的に1人を選びました。
 私が選んだヒロインと緑谷出久のカップリングが苦手な方はブラウザバックをお願いします。
 後書きにて、本編で選ばれたヒロイン以外の他2人を公開します。
 とは言っても、これまでの本編ストーリーの中に伏線を張っていたので、既に気づいている人は驚かないと思いますが。

 【番外編・スローライフの法則】、【30万UA記念小説の番外編】、【40万UA記念小説の番外編】、【新作の小説2つ】と、次の話でアンケートを取る件について、後書きに詳細を書きました。

 久しぶりの本編の投稿のため、内容を把握するのが大変だと思いますが、楽しんでいただければ幸いです。


出会いの法則(前編)

●7月1日の夜…(多古場海浜公園の駐車場付近)

 

 

None side

 

 静岡県にある多古場海浜公園…

 

 この海岸は何年もの間、大量のゴミによって埋め尽くされており、地元人間ですら寄りつかない《ゴミ山の海岸》で有名な場所でもある。

 

 元々は海からの漂着物が海流に乗ってこの海岸に流れ着いたことが発端となり、それに付け込んで冷蔵庫やタイヤなどの粗大ゴミを不法投棄する心無い者達が次々と現れ、それが年々増えていき気づけば《ゴミの山》となっていた。

 

 本来ならば、今のご時世こういった不法投棄のゴミは、ヒーロー達が奉仕活動として片付けてくれるものなのだが、近年の若いヒーロー達は《地味な奉仕活動》よりも《派手なヒーロー活動》を優先する者が多いのが現実。

 

 ゴミの不法投棄問題についてはこの多古場海浜公園だけでなく、全国の至るところに問題になっている。

 

 しかし実は、多古場海浜公園がゴミで埋め尽くされていたのは《昨日》までの話である。

 

 

 

 なぜって?

 

 

 

 今はまだ一部の人間にしか知られていないが、多古場海浜公園に不法投棄されていた大量のゴミは僅か《3日》でその姿を消し、そして《今日》をもって海岸のゴミはチリ1つ無くなった!

 

 

 

 プロヒーロー達が総動員で多古場海浜公園にやって来て、大量のゴミを全て片付けたのかって?

 

 

 

 違う……この海岸に美しい水平線を甦らせたのは《ヒーロー》ではなく…

 

 なんと!

 

 たった1人の《男子中学生》なのだ!

 

 

 

 信じられないだろうが、それは紛れもない事実であり、その男子中学生は《とあるプロヒーロー》の監視と指導の元、世間的には10年以上の時を経て発現した《突然変異種の個性》を特訓という名目で大いに有効活用し、ゴミ山で埋もれていた多古場海浜公園をたった4日で綺麗にして見せた!

 

 更に《今後の不法投棄を防ぐため》と《その男子中学生の功績の記念》として、海岸沿いの駐車場付近に《巨木》を植樹されることとなった…

 

 

 

 

 

 のだが…

 

 

 

 

 

「緑谷…さっき俺はああ言ったが…ここまで《馬鹿デカイ木》を創れるとは想定してなかったぞ…?」

 

「はい…僕自身も…正直驚いてます…」

 

 今年の5月に個性《循環》もとい精神世界で【ゴミを木に変える能力】を授かった少年《緑谷 出久》は、プロヒーロー《イレイザーヘッド》の指導を受け、多古場海浜公園でのクリーン活動の集大成として巨木を創りだした…

 

 しかし…その集大成の木は2人が想定していた大きさを遥かに上回っていた…

 

 見る人によっては《世界樹》と勘違いしてしまう程の《天にも届く高さの巨木》を前に2人は頭を悩ませた…

 

 《根津校長》や《多古場海浜公園の管理者》が許可したとはいえ、こんな巨大な木がある日突然海岸に出現したなら誰でも驚くに決まってる。

 

 幸いなのは、既に夕日が沈んだことで辺りが暗くなり、海岸付近に住んでる人々は朝になるまで《この巨木》の存在に気づかないことである。

 

「ど…どうしましょうか?相澤先生?」

 

「どうするもこうするも…創っちまったもんはもうしょうがねぇだろ…」

 

「ですよねぇ…」

 

 

 

 今現在、多古場海浜公園に《巨大な記念樹》が創られたことを知っているのは《緑谷 出久》と《相澤 消太》…

 

 

 

 そして…

 

 

 

「あ…あの!!!」

 

「え?」

 

 巨木の前で呆然と立ち尽くしていた2人に話しかけてきた《少女》の3人だけだった…

 

 後ろから唐突に聞こえてきた女性の声に出久と相澤が振り替えると、そこには《制服を着た黒髪ロングの女子生徒》がいた。

 

「突然すみません!この巨大な木を創り出したのは貴方ですか!?」

 

「えっ?えええっ!?///」

 

 少女は出久へと距離を詰めると《好奇心旺盛な子供》のように質問を投げ掛けた。

 

「こちらの海浜公園には大量のゴミが不法投棄されていると聞いていたのですが!?それは何処に!!?遠目でしたのでちゃんと見えませんでしたが、貴方がペットボトルを両手で潰してすぐに個性を発動させているように見えました!!!もしや貴方の個性は《ゴミを植物に変換できる個性》なのですか!!!??」

 

「えっ!?…あぁ…え…えっとおぉ…ええっとぉ!!?/////

(かっ!?顔!!!顔が近いーーー!!!??///)」アワアワ

 

 顔を赤く染めて動揺する出久の心情などお構い無しに、少女は純粋無垢な子供のように目を光らせて出久に質問を続けた。

 

 出久が女子(特に同年代)に対しての免疫の無さを見かねた相澤は、出久の代わりに少女へ語りかけた。

 

「ハァ…ったく……おいお前、初対面の人間にものを尋ねる時は、まず自分から名乗るのが礼儀じゃないのか?あと…ソイツは女子に免疫がないんだ…。だから一旦手を離してやってくれ…」

 

「ハッ!これは失礼いたしました!私としたことがはしたない!初対面の方にとんだ御無礼を!コホンッ改めまして、私(わたくし)は《掘須磨大付属中学校》に通う3年生の《八百万 百》と申します!」ペコリ

 

 少女こと《八百万 百》は、典型的なお嬢様口調で出久と相澤にお辞儀をしながら自己紹介をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●7月1日の夕方…(多古場海岸公園付近のバス停)

 

 

八百万 百 side

 

 私(わたくし)の名前は《八百万 百》。

 

 世界的な大財閥である《八百万グループ》の一人娘としてこの世に生を受けました。

 

 自分で言うのは烏滸がましいのですが、私は自分が《優等生》だと自覚していますわ。

 

 私を愛してくれる両親の期待に応えるため、学校での成績は常にトップを維持し、スポーツや習い事でも常に良い成果を残しております。

 

 

 

 そんな自称優等生である私は今…

 

 《寄り道》をしております…

 

 後先考えず、私は隣の県の《とある海岸》へとやって来てましたわ…

 

 

 

 いつもの私ならば、学校を終えた後は迎えの執事の運転するリムジンに乗って自宅へと帰宅しているのですが、今日は両親や執事達には一切内緒で学校から出た私は《とある海岸》を訪れるため、静岡県の行きのバス乗り、つい先程目的地付近のバス停で降りましたわ。

 

 

 

 

 

 どうして自宅に帰らず、いきなり隣の県の海岸に来たのかですって?

 

 

 

 

 

 その理由を説明するととても長くなってしまいますが…

 

 強いて言うならば、ただの《気分転換》というのが大きな理由になりますわ…

 

 

 

 

 

 私は幼い頃から《プロヒーロー》に憧れてきました。

 

 個性社会と呼ばれる現代、個性を悪事に使う《ヴィラン》を鎮圧させるため《ヒーロー》という職業が存在します。

 

 悪行を働く者達を倒し、罪無き人々の平和を守る…

 

 そんな眩しく輝かしい職業に就きたいと、私はいつしか考えるようになっておりました。

 

 

 

 ですが…いつの頃からだったでしょうか…?

 

 

 

 私が自分の産まれ持った《個性》に対して不安や疑念を抱くようになったのは…

 

 幼少の頃より目指してきた《プロヒーロー》になる夢に対して自信を持てなくなったのは……

 

 私がこれまで培ってきた努力が本当に正しかったのか?……と悩むようになったのは………

 

 

 

 私の個性は《創造》、体内の脂質を使って肌から《生物以外のあらゆる物質》を創り出す事ができる個性ですわ。

 

 創り出す対象物は、個性発動前に詳しい情報や材質などを知っていれば、限りなく《本物と同様の創造物》を造り出すことができます。

 

 ただし代償として、創り出す対象物の大きさと分子構造の詳細に比例し、消耗する脂質の量は多くなり、個性を使いすぎると最終的に身動きがとれなくなってしまいます。

 

 簡潔に言うと、個性の使いすぎによるデメリットは《空腹状態となって動けなること》ですわ。

 

 そんなデメリットがあっても尚、周囲の人々は私の個性を『羨ましい』と答える人が多く、私自身も両親より授けてもらえたこの命と同じく、《創造》という個性を発現できたことを誇らしく思っています。

 

 私も《ヒーローを目指す1人の学生》として、この個性と共にプロヒーローになりたいという夢を持っていました。

 

 

 

 

 

 ですが、とある出来事をキッカケに…

 

『私は自分の個性がこの世の中の役に立てるのか?』

 

 …と疑問を持つようになりました…

 

 

 

 

 

 そのキッカケは本当に《些細なこと》でした…

 

 あれは、私が姉同然にお慕いしていた1つ年上の先輩が家の都合で海外の学校へと転校してから暫く経った頃の出来事ですわ…

 

 私はいつものように執事が運転するリムジンに乗って学校から自宅へ帰宅していた際に《ある光景》を目撃しました……

 

 大きな十字路の交差点にて信号待ちをしていた時、ふと窓の外を眺めていると《フードを被った水色髪の殿方が飲み終わった缶を道端に投げ捨てる光景を見たこと》が始まりでしたわ…

 

 私はその光景を見た時『なんと礼儀のなってない殿方なのでしょう』と不快に思いつつ、そのまま自宅へと帰りましたわ…

 

 ですがそれから数日、その道を通る度に《捨てられた空き缶》はずっと道路の同じ場所にあり、私は段々疑問を持つようになってしまいました…

 

 

 

『なぜ誰も片付けないのか?』

 

『なぜ誰も拾ってゴミ箱に捨てようもしないのか?』

 

『なぜ誰もその空き缶の存在に気づこうとしないのか?』

 

 

 

 そんな疑問に頭を悩ませた1週間後、《とある事故》が起きてしまいましたわ…

 

 いつも通り、学校帰りにその交差点で信号待ちしながら窓の外を眺め、1週間ずっと同じ場所に放置されていた《空き缶》に視線を向けると…

 

 強い風が吹いたのか、その空き缶はコロコロと転がって横断歩道へと向かっていきました…

 

 

 

 そしてこの後…

 

 

 

 私の心に《消えないシミ》が出来てしまう事故が起きてしまいましたわ…

 

 

 

 その空き缶が転がる先には、横断歩道を渡っている《お婆さん》が歩いていました!

 

 私が『危ない!』と思った時には…もう遅かったですわ…

 

 

 

 風によって転がってきた空き缶を誤って踏んでしまったそのお婆さんは、横断歩道の真ん中で転んでしまったのですわ!

 

 

 

 転んだ拍子に足を痛めてしまったのか、お婆さんはずっと足を押さえて踞(うずくま)ってしまい、とても痛がっていました!

 

 私は直ぐ様リムジンを降りてお婆さんに駆け寄ろうとしましたが、もうすぐ信号が変わるため危ないと執事に止められました…

 

 私は再び転んだお婆さんへ視線を向けると、そのお婆さんは同じく横断歩道を渡っていた親切な人達によって歩道へと運ばれていましたわ…

 

 その後すぐに信号が青へと変わり、私を乗せたリムジンは走り出しました…

 

 横断歩道を通り過ぎる最中、歩道で《足を押さえて踞っているお婆さん》と《そのお婆さんの介抱をしている人達》へ視線を向けつつ、例の空き缶をリムジンのタイヤが潰したと思われる音が聞いて、その交差点を離れましたわ…

 

 

 

 私は自宅へ帰ってからずっと先程交差点で見た光景が頭から離れませんでしたわ…

 

 

 

『どうして誰もあの空き缶を片付けようとしなかったのか?』

 

『どうして誰もあの空き缶の存在に気づかなかったのか?』

 

『どうして1週間も前からその空き缶の存在に気づいていた私が…あの空き缶を片付けなかったのか?』

 

『私があの空き缶を片付けていれば…あのお婆さんは転んで怪我をすることもなかったんじゃないか?』

 

 

 

 元を探れば、原因は《あの空き缶をゴミ箱へ捨てずに道端へ投げ捨てた礼儀知らずの殿方》なのですが…

 

 果たして本当にそうと言えるのでしょうか?

 

 その殿方は確かな悪い存在に当て嵌まるのでしょうが…《そのゴミ(空き缶)の存在に気づいておきながら1週間も見て見ぬふりをしていた私自身はもっと悪い存在》ではないか?…と……

 

 

 

 その日の出来事をキッカケに…

 

 私の心には《黒いシミ》が出来てしまい…

 

 私は悩み…考えるようになってしまいましたわ…

 

 

 

 《私が個性によって創り出した物》は…最後にはゴミとなり…私の知らないところで誰かを傷つけているのではないか?…と……

 

 

 

 今まで自分の個性に対して感じたことのないその不安と疑念は…

 

 私の心にできた《黒いシミ》を……《心の闇》を日に日に大きくさせていきましたわ…

 

 

 

 あの事故(お婆さんが空き缶で転んでしまった事故)以来、私はこれまで深刻には捉えていなかった《地球の環境問題》…TVなどで放送される《地球温暖化》《海外の海に浮かんでいる大量のゴミ》《環境汚染によって苦しんでいる動物達》などを見る度、私の中の不安が日に日に増していくのを実感させられましたわ…

 

 そんな不安に押し潰されそうになった時、私は尊敬する先輩であり一番の親友から別れ際に貰った《メガネ》を持つことで、その不安を抑えようとしました…

 

 

 

 しかし…私が尊敬するその先輩が…今も別れ際に私が個性で創造した《マトリョーシカ》を大切に持ってくれているのか?

 

 もしかしたら…私の創ったマトリョーシカが邪魔になって処分してしまったのではないか?

 

 

 

 そんなことをする先輩でないことは、私は誰よりも知っている筈なのに…

 

 中学3年生になって尚…未だに私はその不安を取り除くことが出来ずにいますわ…

 

 その先輩に電話をして確認すれば済むのですが…《もしも》を考えてしまうと…どうしても怖くなってしまい…いつの間にか先輩へ電話することが出来なくなっていましたわ…

 

 

 

 そして、私の《心の闇(黒いシミ)》は自分でも気づかない内に大きくなり過ぎてしまったらしく、最近になってその影響が出てきてしまいました…

 

 優等生であった私は…学校での成績を著しく堕としてしまい、それに連動してスポーツや習い事の全てが上手くいかなくなってしまったのですわ…

 

 私の変化は、お父様とお母様へ要らぬ心配をかけてしまいました…

 

 お父様とお母様は《私が幼い頃からヒーローを目指すこと》も《雄英高校を受験すること》も賛成し応援してくれていますわ。

 

 

 

 ですが…ここ最近の私の成績は目に見えて下がってしまい、中学2年生の秋頃までは雄英高校の推薦は余裕の成績だった私でしたが、現状の悪い成績が続けば…雄英の推薦はおろか…入試でヒーロー科の合格ラインに入れることすら怪しくなってきましたわ…

 

 私の急激な変化に疑問をもったのか、両親から話し合いを持ち掛けられました…

 

 お父様とお母様は、私の成績が下がった原因は《私が姉のように慕っていた先輩が海外の学校へ転校してしまった精神的ショック》だと思っていたようでしたわ…

 

 それも無いと言ったら嘘になりますが…

 

 私の本当の悩み……自分の心に出来た《黒いシミ》……それを私は両親に相談することは出来ませんでしたわ…

 

 

 

 キッカケは《些細な出来事》が原因にしろ…

 

 そんなことで挫けるような心では、ヒーローの世界は勤まりません!

 

 これは私自身が自分で解決しなければならない問題なのだと考えつきました!

 

 

 

 

 

 ですが…そんな私の決意を嘲笑うかのように…私の《心の闇》に追い討ちをかける騒動の連続が…中学3年生となってすぐに起きたのですわ…

 

 

 

 

 

 私は3年生となって間も無くの4月中旬…

 

 ヴィラン発生率3%という平和な日本にて、隣の県(静岡県)の《折寺町》という町で発生した事件を皮切りに、ヒーロー飽和社会を揺るがす事件が連続して発生いたしました!

 

 始まりは《オールマイトが解決したヘドロヴィラン事件》と《無個性の男子中学生が無人ビルからの飛び降り自殺を図った事件》の2つをTVで知ったことですわ…

 

 前者のヴィラン事件はオールマイトがいつも通り解決してくれた一件であると軽く受け流しましたが、後者の《無個性の飛び降り自殺》の一件は心底驚かされました!

 

 個性を持たずにこの超人社会に生を受けた人達が、どれだけ肩身の狭い思いと辛い境遇に置かれているのか…それは個性を持った私でも知っているつもりです…

 

 私は赤の他人ですが…同い年の殿方が自殺を図るにまで追い詰められていた心境を考えると胸が苦しくなりましたわ…

 

 

 

 ですが…この2つの事件は始まりに過ぎませんでした… 

 

 

 

 その次の日からも立て続けに起きるヒーローの不祥事が明らかとなっていく悲報の連続に…私は心だけでなく頭もおかしくなっていきましたわ…

 

 《ヘドロヴィラン事件の真相(オールマイトの不注意)と、事件に関与したオールマイトを筆頭とした5人のヒーローによる謝罪会見》…

 

 《折寺中学校の校長と教師達の生徒のイジメ問題の黙認と、無個性差別の発覚による謝罪会見》…

 

 《無個性の同級生を10年以上虐めて自殺に追いやった主犯格の生徒(爆豪 勝己)の暴行事件》…

 

 《No.2ヒーローエンデヴァーの家庭の闇》…

 

 《家庭を持つヒーロー宅へ押しかけるマスコミやメディアによる風評被害》…

 

 《日本のNo.1とNo.2ヒーローの問題が同時に発覚したことを皮切りに、世間からの冷遇に耐えきれなくなった若手及び新人ヒーロー達の引退続出》…

 

 《折寺中生徒の組織的集団暴行事件》…

 

 《ヒーロー狩り・ステインによる引退したヒーロー達の襲撃事件》…

 

 これだけの嫌なニュースが立て続けに起きておきながら、私にとっての最大な不幸は別にありますわ。

 

 それは《飛び降り自殺を図った無個性の中学生が自殺に図った原因に、とあるヒーローの不適切な発言(『無個性はヒーローになれない』)が発覚したこと》と《無個性の同級生を集団で虐めていた折寺中学校の3年生の個人情報がネットに拡散されていたこと》です。

 

 前者はヒーローを目指す学生達からすれば、何処の誰かは存じ上げませんが『プロヒーローが夢見る無個性の子供の夢を真っ向から否定した』というヒーローの無個性差別を意味しており、この超人社会で生きる全ての無個性の人々を敵に回す発言と捉えられ、それは結果的に他の同じプロヒーローだけでなく、ヒーローを目指している学生全体までにも影響を及ぼしかねません。

 無個性でも権力を持った方々は世界に大勢います。《その名前が伏せられたヒーロー》は結果として、ヒーローという存在を無個性の方々から目の敵とする不祥事の引き金となったのですわ。

 

 前者の事態も勿論重大なのですが、私にとっては後者の事態の方が重大です!

 ネットに公開された《折寺中学3年生の個人情報》には名前や住所だけでなく、彼らが生まれ持った個性も掲載されました。

 不謹慎ですが《集団で1人の無個性の同級生に個性を使って危害を加えるという悪行を働いた愚か者達》にヒーローの資格などある訳がなく、彼らは正当な裁きを受けるべきだと私は判断いたしておりますわ!

 特にイジメ主犯格であり《騒乱の象徴》という2つ名をつけられた《爆豪 勝己》………私は彼を絶対に許すことは出来ません!

 何故なら…私にとって姉同然の先輩である親友の個性が、何の因果か爆豪 勝己の個性《爆破》と酷似した個性の《ビーズ爆弾》なのですから!

 折寺中学3年生の個性の詳細がネットに晒されてから間もなく、日本各地で彼らに類似する個性持ちの人々が不当な差別を世間から受けるという事態が発生して混乱が起き、それは今も続いています。

 私の学校も例外ではなく、折寺中学3年生の個性に類似する生徒達は謂われない差別を受けてしまい、物理的な危害は受けていないものの、明らかに他の生徒から距離を置かれ孤立してしまう生徒がいますわ…

 中でも特に《炎系や爆発系の個性持ちの生徒》は腫れ物のように扱われ、昨日まで仲が良かった友人すら離れていってしまい、その急激な環境の変化に精神が耐えきれず学校へ来なくなってしまった生徒が何人もおります…

 つまり、爆発系の個性を持つ私の先輩も、海外の学校でこのような酷い境遇となっているのではないかと思うと私は気が気ではありません!

 先輩は強い人です!……しかし…彼女はそれ以上にとても繊細な女性なのですわ!

 そんな私にとっては家族同然な大切な人の尊厳を踏み躙るキッカケとなった爆豪 勝己を、私は決して許しません!

 しかも当人はこれだけ世間を騒がせ、大勢の人々に多大な迷惑をかけたにも関わらず!今も尚、雄英高校への入学を望んでいるのですから正気じゃありませんわ!

 そんな彼が雄英高校に入学するなど夢物語!ヒーローになるなんてもっての他!

 残りの生涯をもって《自分が犯した過ち》を反省し償ってほしいですわ!

 

 

 

 そうした嫌な出来事ばかり続いたのが拍車をかけたためか、私は捨て鉢状態となってしまい、《プロヒーローを目指す者がこんなことで躓いてはいけない》…《私1人でこの悩みを解決できなければヒーローになる資格すらない》と…いつの間にか自分に言い聞かせ、誰にも相談せずに私1人で自分の《心の闇》に打ち勝ってみせようと決めましたわ!

 

 ですがその選択は…私自身が気づかぬ内に自分で自分を追い詰めていただけでした…

 

 実際いくら考えても決定打となる解決法は見つけられず、時間だけがむなしく過ぎていき、あっという間に数ヵ月の時間が経って気がつけば6月の末を迎えていました…

 3年生の1学期最後のテストで良い成績を取らなければ《雄英高校の推薦入学試験》は難しいと教師から宣告されています…

 

 6月を終えようとしていた頃にはもう…

 

 私は精神的に限界寸前となっていました…

 

 去年までは考えられないような《予期せぬ事態(ニュース)》の連続…

 

 それは私の《心の闇》を……私の心に巣くった《黒いシミ(不安)》を拡大させていき…私の心を真っ黒に染めようとしていましたわ…

 

 まだ14歳という身でありながら…私は生きることに疲れ始めていました…

 

 押し寄せる見えない《恐怖》に私は追い込まれていき…

 

 それを自覚してからというもの…私はとても怖くなりました…

 

 夜な夜なベッドで毎晩泣いてしまう程に…怖くて怖くて堪りませんでした…

 

 

 

 私自身が自分で解決しなければいけない問題だというのに…

 

 

 

 いったいどうすれば、私の中の《心の闇》を消し去ることができるのか?

 

 

 

 そんな万策がつきていた時…

 

 私はTVで《とある情報》を目にしました。

 

 それは《多古場海浜公園という海岸で火災が発生した》というニュースでしたわ。

 その火災が自然発火なのか人為的なのかはニュースでも不明とのことですが、そこは海から流れ着いたゴミだけでなく、常識のない人達が無責任に捨てていくゴミの不法投棄によって、今では誰も近づかないゴミ山となっている場所の存在を私は知りました。

 

 ニュースで多古場海浜公園という海岸は隣の県の静岡県にあることも知った私は、何故かその海岸に足を運んでそのゴミ山を自分の目で見てみたいという好奇心にかられていましたわ。

 

 

 

 

 

 そして今日、私はバスを乗り継いで目的地である多古場海浜公園付近のバス停で降りました。

 

 事前にここまでの交通機関は調べていたので最短ルートで来たつもりでしたが、目的地近くに着いた時には既に日が沈みかけていましたわ。

 

 考え事をしながら歩を進めいると、私はふと大変な事実に気づいてしまいました!

 

「ッ!?そういえば!帰りの交通機関を調べていませんでしたわ!?」

 

 私は足を止めてハッと気がつきました!

 

 多古場海浜公園に行くことだけを考えて、その後のことを全く考えていませんでしたわ!

 

「ど、どうしましょう!?お父様とお母様に寄り道をしたお叱りを受けることは覚悟の上ですが、それ以前に帰る手段がありませんわ!」

 

 私が無断で寄り道をしたことで、迎えに来た執事は今も困惑しているのは違いありません。

 

 今更ながら執事に連絡しようと私は鞄からスマホを取り出して電源をいれました!

 

「兎に角、執事に連絡を!」

 

 しかし…

 

 スマホ画面を点けて《3桁の数字が表示された不在着信》を見て驚いたのも束の間、すぐにスマホ画面に《電池切れのマーク》が表示されて画面が真っ黒になってしまいました!

 

「バ、バッテリー切れ!?よりにもよってこんな時に!」

 

 らしくもなく慌てた私は、個性で《スマホ用の充電バッテリー》と《充電コード》を創造しようとしましたが、残念ながら今の私の知識では本などで詳細な情報を見ずに《精密な機械の構造》は創ることが出来ません…

 そして、私の鞄の中にはその類いの本や図鑑などは1冊もありませんわ…

 

「…これが…《打つ手なし》という状況ですか…」

 

 帰る手段は愚か連絡手段をも絶たれてしまった私は、一周回って己の無鉄砲さと計画性の無さが嫌気が差して虚しくなりましたわ…

 

「後先考えずに行動した報いですわね…」

 

 呆然と立ち尽くす私を余所に、夕日が沈んでいき、辺りはどんどん暗くなってきました…

 

 とにもかくにもここまで来た以上は、目的地である多古場海浜公園をこの目で見てからその後のことを考えましょう!

 

 私は現実逃避をして再び歩き始めました。

 

「そろそろですわね」

 

 目前に迫った《ゴミに埋もれた海岸》がもうすぐそこに見えてきますわ。

 

 ここにくるまでのバスの中で、私はどうして《ゴミ山の海岸》を見に行きたいと思ってしまったのか……その答えを導きだしました。

 

 私が多古場海浜公園へ足を運びたいと思い至った動機…

 

 

 

 それは…現実を直視したかったからですわ…

 

 

 

 私が個性で創り出した物が、最後にはゴミとなり捨てられて地球を汚しているのではないか?

 

 人間は不要となった物を処分するのは当たり前の行動…

 

 そう…当たり前のことなのですが、私はいつしか《私自身が個性で創り出した物が捨てられる》という現実を深く考えるようになってしまい、それが最悪な形(不法投棄)で捨てられた場合にどんな惨状をもたらすのか?

 

 あのお婆さんが転んで怪我をしたように、私が創造した物が回り回って誰かを傷つけているのではないか?

 

 私は自分が創り出した物がいずれ辿る最終地点(ゴミ)をこの目で見たくて、もうすぐ到着する《ゴミに埋もれた海岸》に向かっているのです…

 

 つまり…ただの《自己満足》ですわ…

 

 そんな考え事をしている間に、私はやっと目的地である多古場海浜公園に到着しました。

 

 

 

 

 

 ですが…到着した私を待っていたのは《ニュースで見たゴミ山の海岸》などではなく…

 

 

 

 

 

 《ゴミ山どころか塵1つ落ちていない綺麗な砂浜》でしたわ!!!??

 

 

 

 

 

「こっ!これはいったい!?ひょっとして目的地を間違えてしまったのでしょうか?」

 

 テレビで見た光景とはまるで違う光景に驚愕した私は、咄嗟に入り口に置かれた石銘板に掘られた名前を確認しました!

 ですが、その石銘板には《市営多古場海浜公園》という名称が掘られていましたわ!

 

「やっぱりここですわ!でもどういうことですの!?誰かが片付けたにしても、短期間であれだけのゴミを全て片付けるなんて1人や2人では不可能です!もしプロヒーローが大人数で海岸清掃のボランティアをしたとなれば何らかの情報やニュースがある筈……ですがそんなものはありません……だとしたらいったい………ん?」

 

 私が目の前の状況を理解できずに模索していると、砂浜の2つの人影に目が留まりましたわ。

 

 その2人とは目測でもかなり距離があり、後ろ姿でハッキリとは見えませんが《ジャージを着た緑髪の殿方》と《包帯のようなマフラーを巻いて黒い服を着た黒髪の殿方》ですわね。

 

 もしかしたら、この海岸が綺麗になった経緯を知っているのではと思い、私は声をかけようと砂浜に足をつけましたが、その瞬間《緑髪の殿方》が立ち上がり、《黒髪の殿方》と共に私がいる反対側の方へと歩を進め始めました。

 

 大声で話しをかけようとしましたが、かなり離れているため、ある程度近づいてから話しかけようとするも、靴に砂が入らないように慎重に歩いていることもあり、距離が離されてしまいましたわ。

 ただ幸いにも遮蔽物がないお陰で視界からは外れず、私はその2人を追いかけました。

 

 辺りが段々暗くなってきた頃、その2人は海岸沿いにある駐車場の付近で足を止めてくれましたわ。

 私の歩く速度と距離から計算して、あと5分程度でその2人の傍に到着できそうです。

 

 当の2人は私の存在に気づいていないのか、会話を終えると《緑髪の殿方》はペットボトルの飲み物を全て飲み干してからその場にしゃがみ込み、《黒髪の殿方》は後ろ歩きで少し距離をとっていましたわ。

 

 私は歩きながら2人の不振な行動を疑念を抱いていると………

 

 

 

 

 

 次の瞬間!

 

 

 

 

 

「【ゴミを木に変える能力】!!!!!」

 

 

 

 

 

 緑髪の殿方が大声で発し、彼が地面につけた両手から緑色の眩い光が放たれましたわ!

 

 まだ距離があったので、なんと発言したかまでは聞き取れませんでしたが、私は突然の放たれた閃光に驚き、足を止めて咄嗟に両腕で視界を覆いました!

 

 数分後、光がおさまり私は目をゆっくり開けて、目の前の光景に驚愕させられましたわ!

 

 何もなかった緑髪の殿方の前方に…

 

 

 

 

 

 《天を衝くような巨大な木》が雄々しく出現していたのですわ!!!!!

 

 

 

 

 

 夕日が沈み海岸は闇に覆われましたが、その《世界樹》と言っていい巨木は確実に存在していました!!!

 

 気づけば私は靴に砂が入ることなどお構いなしに、巨木の前で再び会話を始めた2人の元へ向けて走り出していましたわ!

 

 私は今!とても興奮していました!!!

 

 私の見間違いでなければ、あの巨木を出現させたのは《緑髪の殿方》の個性で、先程まで手に持っていたペットボトルが消えています!

 

 つまり、私の憶測が正しければ《緑髪の殿方》の個性は《不要物を……いえ、《ゴミを植物に変換する個性》の類いですわ!

 

 もしそうだとするのならば!なんと地球に優しい個性なのでしょう!そんな素晴らしい個性がこの世に存在していたなんて!?

 

 知りたい!今すぐに知りたい!《緑髪の殿方の個性》を!!!

 

 私は沸き上がってくる探求心を押さえ込むことができず、胸の鼓動を昂らせながら走る速度をあげましたわ!

 

 距離が近づくにつれて、後ろ姿と横顔で《緑髪の殿方》と《黒髪の殿方》の容姿が大方ハッキリと分かって来ました!

 《黒髪の殿方》は30代前後の大人で、《緑髪の殿方》は私と同い年くらいですわね!

 

 そして遂に、2人の殿方の背を目前にして私は足を止めました!

 

 お2人は巨木に意識を集中しているようで、まだ私の存在に気づいてない様子でしたが、私は高鳴る感情を抑えきれずに2人へ声をかけました!

 

「あ…あの!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●7月1日の夕方…(多古場海浜公園)

 

 

相澤消太 side

 

 4日前、俺の《軽~いトレーニングメニュー》をギリギリでクリアした緑谷へ、今度は何万トンのゴミで埋め尽くされた海岸での《個性特訓》もとい《海岸のクリーン活動》を実行させた。

 

 そして今日、僅か4日で塵1つなくなった多古場海浜公園でのクリーン活動の〆(しめ)として、根津校長提案の元《海岸沿いの駐車場付近に巨木の植樹》を仰せつかった。

 

 日がほぼ沈みかけて周囲が暗くなってきた頃、緑谷の両手から放たれる緑色の光が海岸を照らし…

 

「【ゴミを木に変える能力】!!!!!」

 

 緑谷は現時点での自分の限界を解き放った…

 

 んで能力の発動が終わって緑色の光が消えたタイミングで目を開けると…

 

 さっきまで何もなかった場所に、超高層ビルかと言わんばかりの《天にまで伸びる巨大な木》がそびえ立っていた…

 

 今の緑谷がまさかこんな馬鹿デカイ木を創り出せるなんざ俺にも全くの想定外だった…

 

 精々《UA高校の校舎くらいの高さ》が限界だろうと俺は甘い考えをしていた…

 

「緑谷…さっき俺はああ言ったが…ここまで《馬鹿デカイ木》を創れるとは想定してなかったぞ…?」

 

「はい…僕自身も…正直驚いてます…」

 

 巨木を創り出した当の緑谷は俺以上に動揺している…

 

 緑谷も自分がこんな馬鹿デカイ木を創れるとは思ってなかったんだろうよ…

 

 

 

 元から緑谷にはそれだけの潜在能力があったのか?

 

 それとも、ここ3週間ちょいの軽いトレーニングと数日に渡るクリーン活動で、身体だけでなく能力も飛躍的に強化されたってことなのか?

 

 

 

 まぁ俺からすれば…どっちにしろ《嬉しい誤算》だ。

 

 7月の中旬、正確には7月21日から8月の末までプッシーキャッツの元でコイツの特訓が開始される予定となっている。

 

 それまであと約20日、高校入試までの教育と指導の方針を決めつつ、そして個性特訓においては日本全国を周りながら、今回の海岸のようにゴミが不法投棄された場所での《クリーン活動》及び《6つの神器》を使った特訓を、現状での俺は考えていた。

 

「ど…どうしましょうか?相澤先生?」

 

 俺が内心でほくそ笑んでいると、当の緑谷は自分の能力で創り出した巨木の対処に焦り悩んでいやがった。

 

 日は落ちて辺りは完全に暗くなり、この海岸から少し離れた場所に住んでる住民達は巨木の存在には現状は気づいてないだろう……だが明日の朝に太陽が昇れば騒ぎになるのは避けられない。

 

「どうするもこうするも…創っちまったもんはもうしょうがねぇだろ…」

 

「ですよねぇ…」

 

 根津高校が海浜公園の管理者から海岸のシンボルとして植樹する許可は得てはいる…

 

 だが緑谷が創り出した木は…真下にいる俺から見ても余裕で600m……いや…下手すりゃ1000m以上の高さはある…

 

 どう考えてもデカ過ぎる…

 

 ここの管理者がこんな物見たら絶対に腰を抜かすだろうよ…

 

 

 

 なんて考え事をしていると…

 

 

 

「あ…あの!!!」

 

 

 

「え?」

 

「?」

 

 目の前の巨木に意識を集中させていた俺と緑谷は、突然後ろから声をかけられた。

 

 振り向くとそこにいたのは《学生時代の香山先輩》を連想させる黒髪の女子生徒が立っていた。

 

「突然すみません!この巨大な木を創り出したのは貴方ですか!!?こちらの海浜公園には大量のゴミが不法投棄されていると聞いていたのですが!?それは何処に!!?遠目だったのでちゃんと見えませんでしたが、貴方がペットボトルを両手で潰してすぐに個性を発動させているように見えました!!!もしや貴方の個性は《ゴミを植物に変換できる個性》なのですか!!!??」

 

 見知らぬ興奮気味な女子生徒が緑谷に距離を詰め、緑谷の両手を無理矢理掴んで顔を近づけながら質問の嵐をぶつけた。

 

「えっ!?…あぁ…え…えっとおぉ…ええっとぉ!!?/////」

 

 女子生徒に質問されている緑谷は突然の出来事に対処が出来ず、辺りが暗くなっても分かるくらいに顔を赤くさせて情緒不安定になっていた。

 

 緑谷…いくらなんでも《女子に手を握られた》だけそんなに慌てるなんざぁ…純粋にも程があるだろう……

 

 

 

 あぁ…そういえば…根津校長が前に言ってたな…

 

『記憶を失う前の緑谷君に対してイジメや嫌がらせをしていた個性持ちの中には《女子生徒》もいたのさ!』

 

 …ってな…

 

 

 

 一般の幼稚園から中学校なんだから《共学》なのは当たり前のことだが、言い方を変えれば『緑谷は幼稚園から今年の4月の中3まで女子からもイジメや嫌がらせを受けていた』って訳だ…

 

 その女子生徒達も爆豪 勝己に脅されてイジメをしていたのかは知らねぇが…そんなもの言い訳にならねぇ…

 

 女子生徒達の緑谷に対するイジメの内容がなんであれ、爆豪が怖くて結局イジメに荷担していた…

 そんな根性無し共にヒーローなんて仕事が勤まる訳がない…

 個性を持たぬ者(無個性)を個性で無闇矢鱈に傷つけるクソガキにヒーローになる資格なんざ無い…

 

 いくら表面を取り繕ったところで…人間いざという時は本性が出るもんだ…

 

 況してやヴィランと戦う覚悟なんて…ソイツらには皆無だろうからな…

 

 その元凶である《爆豪 勝己》…またの名を《騒乱の象徴》は現在、監視と教育と更正を兼ねて《平和の象徴》こと《No.1ヒーロー オールマイト》さんの指導を受けている。

 

 当のオールマイトさんは《緑谷へ謝罪》と《償い》として、緑谷の教高校入試までの教育を担当したいと懇願していた…

 

 だが全ての真実を知ってる根津校長がそれを許す筈がなく、オールマイトさんには自分の不手際を心の底から反省させるため、敢えて《緑谷 出久を自殺に追い込んだ張本人である爆豪 勝己》の教育と更生を命じた。

 

 オールマイトさんは土下座までして『爆豪少年ではなく緑谷少年の教育をさせてほしい』と懇願していたそうだが、結局は根津校長に論破されて今も爆豪の教育に携わってる…

 

 しかし、どうやらオールマイトさんに爆豪の面倒を見るのは荷が重いようだ…

 

 俺個人が思うに爆豪 勝己という人間は典型的な《ドラ息子》だ…

 

 俺は直接会っちゃいないが、ニュースなどで知った《俺の中の爆豪 勝己という人物像》は、ハッキリ言って《成績と個性が優秀であること以外は何の取り柄のない悪童》だ…

 

 そいつの両親は至極真っ当な人間であり、生活は裕福だったと聞く……なのにどうしてそんな両親が育てた息子があんなどうしようもないクソガキに育つのか?

 

 オールマイトさんは、本当に爆豪 勝己を更正させることができるのか?

 

 1週間程前に、オールマイトさんはこの海岸で爆豪に慈善活動をさせようとしたが、見事に失敗して逆上した爆豪は小火騒ぎを起こし、結果2人はこの海岸への立ち入りを禁止された。

 

 万が一、爆豪が来年の雄英高校入試でヒーロー科に合格したとしても俺は絶対に面倒を見る気はない!

 

 もしも、そんなことになろうものならその時は是が非でも俺はブラドに押し付けるつもりだ!

 

 仮に爆豪が俺のクラスの生徒になったとしても、何か問題を起こした時点で見込み無しと判断し、即刻《復学のチャンス無しの除籍処分》を下すことだろう…

 

 っと…話がかなり脱線しちまったが、要するに何が言いたいかというと、緑谷は無個性の頃は爆豪のせいで余計に《女子との良好的な関わり》が一切ないってことだ…

 

 まぁ…今の緑谷は《女子達からイジメられていた記憶》も忘れているようだがな…

 

 

 

 俺がそんな考え事をしている間も黒髪の女子生徒は緑谷の手を握り続けており、緑谷はロクに返答できないとごろか顔全体だけじゃなく首まで赤くなり頭から湯気を出していた。

 

 こういうのを《青春》って言うのか?

 

 香山先輩が見たら絶対騒ぎそうだな…

 

 つか、俺はいったい何を見せられてんだ?

 

「ハァ…ったく……おいお前、初対面の人間にものを尋ねる時は、まず自分から名乗るのが礼儀じゃないのか?あと…ソイツは女子に免疫がないんだ…。だから一旦手を離してやってくれ…」

 

「ハッ!これは失礼いたしました!私としたことがはしたない!初対面の方にとんだ御無礼を!」

 

 緑谷の手を離した女子生徒は俺の方を向いて自己紹介した。

 

 口調からして、どっかの金持ちなお嬢様か?

 

 それにこの女子生徒の制服…この辺りの学校じゃ見ない制服だ…

 

 いったい何処の学校の生徒なんだ?

 

「コホンッ改めまして、私(わたくし)は《掘須磨大付属中学校》に通う3年生の《八百万 百》と申します!」ペコリ

 

 女子生徒は《八百万 百》と名乗った。

 

 話を聞いてみると、掘須磨大付属中学校は静岡県ではなく隣の愛知県にある学校らしい…

 

 俺は教師をやっているが、流石に日本全国の中学校全てを把握できてはいない…

 

 どうして他県のお嬢様学校の生徒が、こんな時間にここ(多古場海浜公園)にいるのか?

 

 その点を詳しく聞き出そうと思ったが、八百万は《先程の一部始終(緑谷が能力で巨木を創り出したこと)》が相当気になっているらしく、俺にその疑問を聞いてきた。

 

「教えてくださいまし!こちらの緑髪の殿方がこのような大きな木を創り出したのですわよね!?いったい彼はどのような個性をお持ちなのですか!?」

 

 まだ俺も緑谷も自己紹介もしてないっつうのに、八百万は好奇心旺盛かつ純粋な子供のようなキラキラした目で質問を投げ掛けてくる。

 

「……分かった、教えてやるからとりあえず落ち着け…順を追って説明してやる。コイツの名前は《緑谷 出久》で、俺は《イレイザーヘッド》だ…よろしくね…」

 

「緑谷 出久さんとイレイザーヘッドさんですね!………ッ!?も、もしかして!あなたは雄英高校の教員でもある抹消ヒーローのイレイザーヘッドですか!!?」

 

「雄英高校?抹消?」

 

 俺達の会話が聞こえたのか、緑谷は八百万が発言した『雄英高校』と『抹消』の単語に赤面しながらも疑問符を浮かべていた。

 

「(そういや、緑谷には俺と根津校長が何処のヒーロー育成高校に勤めているのかは教えてなかったな。まぁ別に隠してる訳でもねぇから構わないか。つうか緑谷、お前まさか雄英高校っつうヒーロー育成高校の存在すら記憶にねぇのか?)」

 

 八百万からの質問に答える前に、緑谷に視線を向けた俺は、日本人なら知らぬ者無しの筈の《雄英高校》を知らない反応を見せた緑谷に複雑な心境になった。

 

「八百万…お前の言う通り、俺は雄英の教員でプロヒーローのイレイザーヘッドだ…」

 

「やはり、そうでしたか!お見逸れしました!それで緑谷さんとイレイザーヘッドはここで何をなさっていたのですか?私は諸事情でこの海岸にあるゴミ山を拝見するために足を運びました!1週間程前のニュースでこの海岸で発生した火災の件で、不法投棄のゴミで溢れた多古場海浜公園の存在を知ったのですが、実際に本日訪れて驚愕させられました!1週間程前までゴミに埋もれていた海岸が、今では《塵1つない美しい景色》となっているのですから!その訳をどうか教えてくださいまし!」

 

 八百万は自分が抱く疑問の答えをどうしても知りたいのか、俺に向けてきた質問には相当な必死さを感じた。

 俺は一瞬、八百万に2年の波動を彷彿とされられたが、八百万の質問の返答に俺は頭を悩ませた…

 

 八百万が求めている答え(緑谷の能力特訓の過程によるクリーン活動)を俺は知っている…

 

 だが緑谷の個性《循環》もとい、異世界の能力である【ゴミを木に変える能力】は現状一部の限られた人間にしか知られておらず、根津校長いわく緑谷の個性を正式に世間に公表するのは、緑谷がヒーロー高校に入学した後の算段となっている…

 

 この海岸での特訓においても、ゴミ山の影響で近隣の住民は近づきすらしないため、俺や根津校長以外で、緑谷が能力で変換した木を運搬する運転手達にしか緑谷の個性は知られていない。

 その運転手の方々についても、根津校長が事前に《緑谷の個性の件》は時が来るまで内密にするよう伝えてある。

 

 そして何より、1週間前に爆豪が火災を発生させて騒ぎを起こした際は、ニュースを見てか興味本意で足を運んだ物好きがいたそうだがそれも僅か10人程度、次の日には興味をなくしたのか誰も来なくなったらしい…

 

 だからこそ、人目につかないこの場所で緑谷の個性特訓(クリーン活動)を実行していた…

 …のだが…まさかその最終日に思わぬ来訪者(八百万)がやってきた上に、緑谷の個性発動の瞬間を見られてしまうとは…

 

 さて…どうしたものか…

 

 この八百万という女子生徒、俺が見るに2年の波動と1年の不和を足して2で割った感じの人間だ…

 他人(無個性、弱個性)を差別するような人間じゃないのは初対面で判断できる…

 

 となれば…

 

「わかった八百万…そんなに知りたいなら教えてやる…」

 

「ほ、本当ですか!」

 

「ああ…ただし《この海岸のゴミが消えた件》然別、これから話す《緑谷の個性》については時が来るまで口外しないこと。それが約束できるなら教える…」

 

「私、口は固いですわ!決して口外しません!お約束します!」

 

「良し…じゃあ教えてやる。まず俺はある人に頼まれて、現在緑谷の家庭教師及び個性の指導をしている。そんで緑谷の個性なんだが……」

 

 

 

 俺は八百万に、いずれ世間に公表する緑谷の個性《循環》と、この海岸での《クリーン活動》について説明した。

 

 緑谷には《複雑な事情》が多いため、緑谷の個人情報においては説明できる範囲はかなり限られており、緑谷の個性を見られたからには八百万にも知っておいてもらわなければならない…

 

 根津校長が思案した個性《循環》を一通りの説明をし終えると、八百万はまるで憑き物が取れたのような晴れ晴れとした表情となっており、いつの間にか彼女は冷静さを取り戻していた。

 

 

 

 八百万の質問に答えられなかった当の緑谷はその間どうしていたかというと…

 

 未だに心臓の辺りを両手で押さえながらまだ赤面していやがった…

 

 第三者から見れば今の緑谷は《心臓病》か何かと勘違いするだろうが、実際は女子生徒の八百万に手を握られ、顔を至近距離に近づけられ話しかけられたせいで緊張していまい動悸が激しくなっただけ……という思春期の男子によくあるアレだ…

 

 俺は緑谷に初めて会った時、その顔から1年のアイツと兄弟かと思ったが調べてみるとそんなことはなく、指導を初めてからは2年の通形に匹敵する努力家の印象を思っていた。

 しかし…その反面で精神面は同じく2年の天喰と同等に内気であると再認識させられた…

 

 緑谷を《通形》と《天喰》を足して2で割った感じだと例えたら何故か納得している自分がいた。

 

 俺がまた考え事をしていると、八百万は再び緑谷の両手を強引に掴み、半ば無理矢理にまた顔を至近距離で合わせた。

 

「緑谷さん!!!」

 

「はっ!はいいいっ!!!??」

 

 八百万は『逃がさない』と言わんばかりに緑谷の両手をガッチリと掴んで目を合わせると…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の……私の婚約者になってください!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………ふぇ?」

 

 

 

 ……………何がどうしてこうなった?

 

 

 

 出会って間もない初対面の異性(緑谷)に対して八百万が何を言うのかと思えば…

 

 それはまさかの《告白》だった!?

 

 しかも《彼氏彼女の付き合い》をすっ飛ばして《婚約者》ときた…

 

 教師の立場として、この状況を《不純異性行為》と見なし注意するべきか?

 

 いや…他人の恋愛に部外者が口を挟むのは無粋か?

 

 

 

 てか…その一部始終を見せられている俺はどうすりゃいいんだ?

 

 『こういうのは香山先輩の担当だろう…』と頭を悩ませる俺と、顔を赤くして告白の返事を待つ八百万に対して、緑谷はさっきから微動だにせず何故か無言だった…

 

 また緊張して情緒不安定になっているのかと思い、俺は2人に近づいて緑谷の様子を確認すると…

 

 

 

 

 

「あのぅ…緑谷さん?」

 

「………」

 

「おいおい…マジか緑谷…」

 

 

 

 

 

 緑谷は……立ったまま気絶してやがった!!

 

 

 

 

 

 動かねぇと思ったら、顔どころか指先まで赤くなり頭から湯気を出して白目を向きながら失神してやがったんだ!?

 

 八百万は教師の俺が言うのも何だが《美少女》と言っても過言じゃない《才色兼備》という言葉が合う容姿をしている…

 

 緑谷がこれまで過ごしてきた学校環境を考えればイジメ以外で女子とはまともに会話をしたことすらない筈、そこんところの記憶も大部分に失ってるらしいが、そんな境遇で過ごしてきた緑谷からすれば《初めての女子と良好な会話》ができた矢先に、八百万という美少女から《人生初の告白》をされ、感極まって気絶したってところか?

 

「緑谷さん!大丈夫ですか!?緑谷さん!?」

 

 緑谷の異変にようやく気づいたのか、八百万は手を離すと緑谷の両肩に手をおいて少し揺らしながら心配していた。

 

「………はぁ……八百万…さっきも言ったが…緑谷は女子に対して免疫が乏しい…。だからお前の告白に驚いて気絶したんだ。念のため言っておくが、それは嫌悪じゃなくて好意だろうから心配するな。あと…他人の恋愛についてとやかく言いたかないんだが…学生の間は《学生らしい健全なお付き合い》をしろ…」

 

「は、はい…」

 

 余計なお世話なのは百も承知だが、緑谷の個性《循環》の利便性を世間が知れば、ヴィランに限らず良からぬ企みをする連中(守銭奴)が必ず現れる…

 

 疑いたくはないが、八百万は緑谷の個性の詳細を知った…

 

 それにより八百万は、緑谷の個性《循環》の利便性を即座に把握し、根津校長が以前言っていた《政略結婚》……いや…この場合は八百万本人が申し込んだから《求婚》か?

 

 まぁどっちしても、八百万が緑谷の個性目当てで逆プロポーズ(?)をしたのかを俺なりに確認をしないとな…

 

 こういう時、ラグドールさんがいてくれれば一々疑いの目を向けずに済むんだが…

 

「そういえば、何故イレイザーヘッドは緑谷さんの指導なさっていらっしゃるのですか?」

 

「ああ…それはな…」

 

 気絶した緑谷に代わり、俺は八百万にさっきの話の続きとして《緑谷出久が何者なのか》をこの際説明した。

 

 《精神世界の件》《植木 耕助の件》《別世界の超能力(【ゴミを木に変える能力】や【神器】)の件》などの、俺とリカバリーガール、根津校長とラグドールさん、そして当人の緑谷の5人だけしか知らない秘密は勿論伏せてだ。

 

 いつの日か特田さん経由で世間に公表してもらう予定だと根津校長は言ってたが、今はまだその時じゃあない…

 だから俺は、八百万に《緑谷の秘密》はこちらが公表するまで黙ってておくよう再度釘を刺した。

 

 八百万はニュースなどで公表されている《今年の4月中旬から6月末かけて発生した一連の事件(ヘドロヴィラン事件~折寺中3年生28人とその家族の行方不明事件)》については全て把握していた…

 

 だが…自殺未遂を図り…一命を取り止めるも昏睡状態となり…それから1か月後に奇跡的に意識を取り戻すも…後遺症で記憶喪失を発症…しかし、目を覚ました途端に10年以上遅れての突然変異種の個性を発現させ…退院と同時に折寺町から引っ越して行方を眩ませた《名前の伏せられている元無個性の青年》…

 

 その正体が…つい先程自分が逆プロポーズをした《緑谷 出久》であるという真実を、俺は八百万に明かした。

 

 まぁ《緑谷を無責任な発言で自殺に追いやった被疑者である名前が伏せられたプロヒーロー(オールマイト)》は教えなかったがな。

 公安が事実を隠蔽する考えは分からなくはねぇが、俺としてはそういう秘密は先送りにすると後々絶対に録な事態にならねぇぞ…

 

 

 

 世間にはまだ公表されていない情報を一早く知った八百万は、その真実が相当なショックだったらしく感情のコントロールが出来ずに明らかに動揺していた…

 

 

 

「…っと言う訳だ…八百万。つまりコイツは…あの事件の被害者であり、前代未聞の《10年以上という異例の遅開きに加えて突然変異種の個性の発現した最初の人間》…そして事故のショックによる後遺症で自分だけでなく両親やこれまでの関わってきた他人との記憶を全て失った《元無個性の緑谷 出久》だ…」

 

「そ……そんな……」

 

 俺が語った真実を受け止めきれなかったのか…八百万は口を両手で押さえながら涙を流していた…

 

 その涙は色々な感情が含まれてんだろうが…その中には《緑谷への同情》もあるのだろう…

 

 緑谷の夢を否定したヒーローが《オールマイト》であるという真実は言えないが、それを差し引いても不幸に見舞われた当人を目の前に、ニュースでの緑谷の過去の境遇を今一度再認識したならば、誰でも緑谷へ同情することだろう…

 

 

 

 …っとまぁ…かなり話し込んじまった俺はふとスマホを取り出して時刻を確認すると、既に《20時》を過ぎていた!

 

 当然ながら辺りは勿論真っ暗闇、海岸周辺の街灯がポツポツと光っている…

 

 緑谷はまだしも、中学生の我が子がこんな時間まで自宅に帰っていないとなれば親は心配するのが定石…

 

 どうして八百万が《家に帰らず今日この海岸へ来た理由》についてはまだ聞いてないが、とにもかくにもまずは自宅に連絡を取るよう八百万に俺は言ったのだが、彼女のスマホはバッテリーが切れていた…

 

 こうなっては仕方がないと俺は八百万に自宅を電話番号を聞き、プロヒーローの立場として俺が八百万の家に連絡することにした。

 

「…あぁもしもし、私はプロヒーローの《イレイザーヘッド》という者なのですが………はい………実はそちらの娘さんの《八百万 百》さんを静岡県の多古場海浜公園という海岸で保護しまして………はい、大丈夫です、怪我などはしておりません………迎えについてなのですが多古場海浜公園ではなく、コチラが指定した場所でもよろしいでしょうか?………はい、場所は静岡県と愛知県の県境にある◯◯マンションで………はい……はい……では宜しくお願いします…」

 

 俺の電話に出たのは八百万の両親ではなく彼女の家のメイドだった…

 

 通話を終えた俺は、こういう時に《プロヒーロー》の立場であることは本当に助かると思った…

 

 普通、見ず知らずの男から急に電話がかかってきて、行方知れずの娘さんを保護したと正直に言ったところで変な疑いをかけられてしまう…

 

 だが、今の時代《プロヒーロー》は《警察》と似たような存在…、俺はマスコミやメディアが嫌いなので一般の人間からすれば《イレイザーヘッド》というヒーローの存在を知る一般人は少ないが、ネットなどで検索すれば一応は名前が出てくるプロヒーローだ。

 

 現に通話をしたメイドも俺が《プロヒーロー》だと名乗ってからは多少安心しているように思えた。

 

 あっちもお嬢様である八百万が、学校終わりに迎え来た執事のリムジンにいつまで経っても来ず、何度連絡しても一切繋がらないことで相当慌てていたらしく、これからすぐに《緑谷一家が住むマンション》へ来てくれるとのことだ。

 

 あと、八百万の両親はまだ帰宅していないようで、代わりに偶然来訪していた《八百万の友人》が執事と共に迎えに行くと言っていた。

 

「さて…八百万、取り敢えずお前んところの執事がこれから迎えに来てくれる訳なんだが…迎えを待つにしてもこの場所(多古場海浜公園)で待っているのは合理的じゃない。悪いが俺の独断でこの海岸よりも愛知県に近い《緑谷の自宅があるマンション》で迎えの車を待つようにしたんだが…問題ないな?」

 

「は、はい!問題ありません!お手数をお掛けして申し訳ありませんですわ!イレイザーヘッド!」

 

「あぁ…それとさっきは聞きそびれちまったが、どうしてお前が今日この海岸に来たのか?その理由については車で移動しながら聞かせてもらうぞ」

 

「分かりましたわ」

 

「車は向こうに停めてあるから先に行ってろ…」

 

「はい!」

 

 八百万は俺が指差した方へと先に歩を進めて行った。

 

「おい緑谷、いつまでも失神してんだ!さっさと起きろ!」

 

 俺は八百万が少し離れたところで、未だに立ったまま器用に気を失っている緑谷の額にデコピンを喰らわせた。

 

パシッ!

 

「アイテッ!?ハッ!相澤先生!僕、凄い綺麗な女の子から告白される夢を見ていました!この海岸を綺麗にした御褒美に神様が僕に最高の夢を見せてくれたんだと思いま…フゴッ!!?」

 

 意識を取り戻して早々に緑谷は、八百万と出会ってから逆プロポーズされるまでの一連の出来事が全部《夢》だと思ってるらしい…

 

 緑谷の言っている《神様》というのが《架空》の方なのか《実在》する方なのかはさておき、五月蝿かったので俺は捕縛布で緑谷の口から腹まで巻き付けて黙らせた…

 

「落ち着け緑谷、取り敢えず今日は帰るぞ、さっさと歩け。あと、お前が言っているのは《夢》じゃなくて《現実》だ…」

 

「へっ?」

 

 俺の言葉の意味が理解できていない緑谷に、俺は《離れた場所から俺達に手を振っている笑顔の八百万》を指差して教えてやった。

 

「………」

 

「おい緑谷!また気絶すんな!初(うぶ)にも程があるだろ!?」

 

 その矢先、緑谷はまた立ったまま気絶しやがった!?

 

 こりゃ…香山先輩からマジでアドバイスをもらわねぇと駄目だな………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

None side

 

 

 緑谷が多古場海浜公園の駐車場付近に植樹したあの巨木は、次の日以降のニュースの見出しを飾り、後に多古場海浜公園は静岡県の観光名所の1つとなった。

 6月の末までゴミに埋もれて地元の人間すら誰も近づかなかった多古場海浜公園は、7月の中旬には観光客と海水浴客で超満員になっていた。

 

 海水浴に来る客も多いが、それ以上に観光客の目当ては、突如出現した《天に伸びる巨木》を直接見るために訪れる観光客が多い。

 

 しかも緑谷が創り出したあの巨木は、いつしか観光客から《伝説の樹》と名付けられ『その木の下で女性が男性に告白するとその2人は結ばれる』という噂が広まった。

 

 その噂に影響されたのか、巨木の元へ訪れる男女が多いらしい。

 

 いったい何処の誰がそんな出鱈目な噂を広めたのかは不明だが、実際《その木の下で八百万が緑谷に告白し、その後2人は付き合いを始めた一連の流れ》を知っている相澤は、その噂は強ち嘘っぱちじゃないと1人納得していた。

 

 

 

 因みに、多古場海浜公園の《伝説の樹》の噂を知った傑物学園高校で教師を勤める《スマイルヒーロー Ms.ジョーク》から相澤に…

 

『なあなあイレイザー!静岡県の海岸に出現した《伝説の樹》の噂を知ってるか!?私達も一緒に見に行こうぜ!私からお前に告白してやるよ!『私と結婚して笑いの絶えない幸せな家庭が築こうぜ!』っな!』

 

 という連絡がきた…

 

 相澤いわく、彼女は毎回会う度に笑いながら絡んでくるのが当たり前となっており、電話越しでも彼女が本心で何を考えているかはある程度分かるようになっていた。

 

 相澤が事務所に勤めていた頃にも似たような質問を彼女からされたことがあり、その時のジョークはいつものテンションでこう言っていた…

 

『イレイザー……お前は朝食はパン派か!?それともご飯派か!?因みに私の朝食は………秘密だ!!!結婚してくれたら教えてやるよ!』

 

 …っていう何とも下らなく…どうでもいい告白だった…

 

 因みにその質問に対して相澤は『俺は《ゼリー派》だ…』と答え、その返答を聞いたジョークは爆笑したらしい…

 

 

 

 そんな一種の怪奇現象(巨木の出現)で世間が騒いでから2週間後…

 

 緑谷は《相棒》となる生物と出会った…

 

 その生物との出会いは、緑谷 出久の中に眠っていた本来の力を引き出す大きな助けとなっていった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●とある山…(7月15日)

 

 

 出久と相澤が八百万と出会って2週間後、今日も今日とて相澤は出久の個性特訓の指導として、とある山に不法投棄された大量のゴミのクリーン活動にやって来ていた。

 

 ただし本日は出久の15歳の誕生日であり、出久の母親の引子だけでなく、八百万も出久の誕生日を祝う為に緑谷宅で誕生日パーティーの準備をしている。

 

 相澤は厳格な教師だが、普段から文句1つ言わずに絶え間無い努力をする出久を気遣い、今日だけは早朝から昼過ぎまでのクリーン活動の特訓とし、早めに切り上げる予定としていた。

 

 その特訓中、山の中の河川付近で出久は《その生物》と出会った!

 

 

 

「え?…に…鶏?」

 

 

 

「鶏じゃねぇ!!!」

 

 




 【緑谷出久の法則】の本編のヒロインは《八百万 百》です。

 私が選んだ本編の出久君のヒロインについては《家の事情》や《個性の相性》などの要素を含めて《麗日 お茶子》、《八百万 百》、《小大 唯》の3人にまで絞り、最終的に《八百万 百》としました。

 今回の話で《八百万 百が抱えていた心の闇》は私のオリジナル展開ですが、【うえきの法則】の原作にてお金持ちのお嬢様という立ち位置が同じ《鈴子・ジェラート》が抱えていた悩みを参考として書き上げました。

 本編25話【クリーン活動の法則】の後書きで、本編の記憶喪失の出久君はハーレム路線を考えていたのですが、ヒロインを1人とする正統派ルートを現状としています。
 しかし、【100カノ】を見てからヒロインを2人〜5人までのハーレムルートも良いかなぁ…と絶賛悩み中です。

 前書きで書いた【番外編・スローライフの法則】、【30万UA記念小説の番外編】、【40万UA記念小説の番外編】、【新作の小説2つ】についてですが、まず【スローライフの法則】は現状ヒロアカ映画2作目で言うところの《ナイン一派との離島での決戦前》までの内容は大方書きました。本格的なバトルシーンはまだ書いていませんが、【スローライフの法則】も2026年に投稿していきます。

 【30万UA記念小説の番外編】については、【スローライフの法則】で《一般人として生きていく道を選んだ緑谷 出久》と同じく、プロヒーローとは違う道を進んだ別世界の出久君のストーリーであり、現在《3パターンの世界線》で書いています。
 【本編】と【スローライフの法則】の制作に行き詰まった際に少しずつ書いていた番外編なのですが、いずれの世界を【30万UA記念小説の番外編】とするかでアンケートをとらせていただきます。
 その際は是非投票の程を何卒よろしくお願いいたします。
 因みに、その3パターンの世界線と言うのは《公安委員会所属の緑谷出久》、《極道の緑谷出久》、《タルタロス職員の緑谷出久》です。
 ネタバレになりますが、いずれの3パターンの出久君は【スローライフの法則】と同じく、《ゴミを木に変える能力》の他に《クロスオーバーするジャンプ作品の特別な力(例:スローライフの法則→鬼滅の刃の呼吸法)》を宿しており、更に各世界ごとにワン・フォー・オールの継承者が違います。
 あと、【30万UA記念小説の番外編】のアンケートで選ばれなかった残りの2つの世界線につきましては、いつになるかは分かりませんが【50万UA記念小説の番外編】と【60万UA記念小説の番外編】として投稿する予定です。

 【40万UA記念小説の番外編】については、以前読者からいただいた感想を参考として、本編の出久君が夢の中(精神世界)で植木君から《ゴミを木に変える能力》を与えられ精神世界で特訓している間に、現実世界の出久の身体が死亡してしまい、蘇ることが出来なかった【緑谷出久が死亡した本編の世界線】となります。
 原作のヒロアカを見て知っての通り、緑谷出久(無個性の人間)以外でオールマイトからワン・フォー・オールを譲渡されて使いこなせる者は、私の知るヒロアカキャラでは他にいないので、【40万UA記念小説のヒロアカ世界】はほぼバッドエンド確定の世界線です。
 何故、40万UA記念小説のヒロアカ世界をバッドエンドまっしぐらの世界線にするのかと言うと、ジョジョ5部の登場人物である《グイード・ミスタ》いわく『4』は不吉な数字であるというジンクスに従いました。

 そして【新作の小説2つ】についてですが、1つは私が2024年に一足遅れてハマった《鬼滅の刃》を主軸に、【40万UA記念小説のヒロアカ世界】で生き返れなかった出久君の魂が、大正時代にまで遡って転生(転移)し、《ゴミを木に変える能力》を《呼吸法》として使い、炭治郎達と共に鬼舞辻無惨と戦っていくストーリーとなります。
 完全に私の趣味で作る別作品となりますが、そこは私なりのオリジナルを加え、特に《緑谷出久が鬼殺隊に入隊する経緯》はかなり難儀しました。
 ネタバレになりますが、どの道すぐには投稿できないので先にお伝えしますと、出久君の介入によって鬼滅の刃の原作で死亡しているキャラクター達の生存ルートとする小説の予定です。

 そしてもう1つの【新作の小説】は、《僕のヒーローアカデミア》や《うえきの法則》や、番外編でクロスオーバーするアニメ(《鬼滅の刃》など)とは違う別のアニメを2つクロスオーバーさせた作品です。
 ネタバレをすると、クロスオーバーする作品の1つは《遊戯王》であり、《もう1つのアニメのキャラクター達がデュエルモンスターズのカードを使ってデュエルをするストーリーの小説》です。

 次の話(27話)では、《多古場海浜公園で出会った3人(緑谷 出久、相澤 消太、八百万 百)のその後》と、今回の話の終盤で登場した《謎の生物》との出会いのストーリーがメインであり、出久君の雄英入学までの特訓パートについては省略して今後のストーリーでの回想シーンとし、28話又は29話で一気に雄英入試まで内容を飛ばす予定でいます。

 読者の皆様から頂いてまだ返答していない感想及び今後の感想については、投稿予定の小説を上げながら定期的に返答していきますので、ご了承の程よろしくお願いいたします。
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