悪堕ちなえちゃんは諸悪の根源の補佐をするようです   作:日差丸

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 続いてイフエンドです。


イフエンド:てっぺん目指そう!

 雲が泳いで日が動き、暖かな日差しがレースのカーテンから差し込む。それがまぶたを優しく撫で、私の意識はふんわりと浮き上がった。

 時刻は昼。どうやら昼食のあとに寝てしまったようだ。

 いけないいけない。今日は大事な日だっていうのに。

 寝転がっていたソファーから降りて、背を伸ばしながら立ち上がる。

 腰まで伸ばしたピンク色の自慢の髪が小刻みにゆれた。

 さて、準備しなければ。そう思ったところで、後ろから声をかけられる。

 

「やあ、おはようナエ。こんな日でもいつも通りなんて、さすがは君だ」

「ふぁ〜、おはよ〜——フィディオ」

 

 

 

 ♦︎

 

 

 フィディオが運転する車に乗り込んでから数十分。

 車はアウトストラーダ(いわゆる高速道路)に乗った。

 

 

 FFIが終わってから数年が経った。

 私たちは去年学校を卒業し、同棲をしている。

 

 あの日、私はガルシルドと刺し違えるように銃弾で心臓を撃ち抜かれ、倒れた。……はずなんだけど、まあ奇跡的に私は助かった。

 服の襟にかけてあるひび割れたサングラスに触れる。

 どうやら当時胸ポケットに入っていたこれが偶然私を守ってくれたらしく、銃弾は深くまで突き刺さらなかったのだ。

 いやどんだけ頑丈なんだよって突っ込みたくなる気持ちもわかるけど、あの人のサングラスだよ? 目を撃たれてもいいように防弾しようにしてたに決まってる。

 ものすごい確率の偶然。つまり奇跡。医者はそう言ってた。

 でも私は思うんだ。

 もしかしたら総帥が私を助けてくれたんじゃないかって。

 オカルトチックで笑われちゃうかもだけどさ。

 

 車に取り付けられたテレビはサッカー番組を映していた。

 どうやら今年のFFItでの感想と注目プレイヤーについて話し合っているようだ。

 ちなみにFFItとはフットボールフロンティア・イタリアの略である。FFIとかぶるので小文字でtをつけたみたい。どうでもいいけど。

 あとFFItは学校ではなく、クラブチーム同士が戦う大会となっている。むしろ部活なんてあるのは日本だけだし、海外じゃこれが普通なんだけどさ。

 そしてここで番組が次の話題に映った。

 

『——では、次に参りましょう! 今年も熱中したFFIt! そのMVPを受賞した少女を当スタジオに招きました! では登場していただきましょう! ——ルシェ選手です!』

『ど、どーもです!』

 

 あらら。

 テレビの中に現れたのは、金色の髪を私と同じように伸ばした緑色の目を持つ少女だった。その姿はFFIで見た時よりもずっと成長していて、しかしまだまだ少女らしきあどけなさを感じる。

 ほおは若干赤くなっている。メディア慣れしてないから恥ずかしいのだろう。でもそこがいい。スタジオの人たちもルシェがあたふたしてるところを見てほんわかしているようだった。

 うむ、まあ端的に言うと、可愛すぎる。

 

「うーん、背ずいぶん伸びたよな。もう君より上なんだっけ?」

「……まことに不服ながら」

 

 なえちゃんショック!

 今の何気ない一言で私の心は酷く傷ついた。

 そう、そうなのである! あのFFIから何年も経ってるのに、私の外見は一向に変化してないのだ! おかげで最近じゃルシェと並んでるだけで姉妹に見られることがある。彼女の友達に「妹ちゃんですか?」なんて言われた時はさすがにフィディオの胸の中で泣いた。

 そして私の境遇に追い討ちをかけるのがこのイケメンである。

 現在の身長は180超え。顔も成長してよりイケメン度が増したせいで、街を歩くだけでキャーキャー言われる始末である。だらしない顔してるのでそのたびに足を踏んづけている。ちなみに私はそのキャーキャー女子に頭を撫でられながら話のだしに使われちゃったりしている。非常に腹ただしいことだ。

 

「俺は気にしてないんだけど、みんなが最近ロリコンロリコンってうるさいんだよ。特にブラージなんか『小さい女は可愛いたって、150も超えてないのは無理があるだろギャハハ!』とか笑ってくるし」

「……あいつ絶対絞め殺す」

 

 今日の晩飯はブラージのコロッセオガード焼きに決まった。

 許さんわあいつ。ラファエレもろとも滅してくれる。どうせそんなこと言うやつなんてあいつらぐらいしかいないし。

 

「というか私は成長期なんだよ! これから蛹から妖艶な蝶になるの!」

「それ毎年言ってるよ?」

「ぐぬぬ……!」

 

 やっぱり最終手段のシークレットシューズを使うしかないのか……!? あれなら5センチぐらい盛ればギリギリ150に届くし……!

 ちなみにこれをブラージの前で漏らしたら、焼石に水って笑われた。その後は焼石に縛り付けてホースで水をかけてあげたけど。これで学習しないとかやっぱあいつ脳みそミジンコサイズしかないでしょ。たぶん図体に栄養が全部吸われてるんだ。

 

 ルシェは言葉をどもらせながらも、真剣にインタビューに答えていった。

 ちなみにFFなのにルシェが出れているのは、あのあと男子と女子のサッカー界が統合されたからだ。

 FFIのあとに適当に世界中を巻き込んでサッカー協会に抗議したらすんなりと通った。理由のとしては私の活躍があるのと、あまりの抗議の数に押されたかららしい。

 というわけで、今は昔のように性別を偽らなくてもフィディオとかとプレイできるってわけだ。まさか総帥から習った世論の操り方がこんなところで役に立つとはね……。

 

 でもMVPを取れたのはルシェの実力だ。

 私とフィディオの指導があったとはいえ、彼女には私たちにも持っていない才能があった。

 なんと彼女、空間把握能力があのフィディオよりも高いのだ。

 どうやらこれは昔目が見えなかったころの副産物らしいけど、これには本当に驚いた。だって彼女、音だけで敵味方全員の位置を把握できるんだよ? これにはフィディオも涙目だった。いや、彼はこれでも世界レベルですごいんだけどさ。

 そしてスパルタ訓練を加えたらこの通り。現在は有名サッカークラブのキャプテンを務めるほどになってしまった。

 

『——では、最後に一言よろしくお願いします!』

『はい。お兄ちゃん、お姉ちゃん、今日の試合頑張ってください!』

 

「ははは、こんなに応援されてるんだ。いっそう負けられなくなったな」

「初めから負ける気なんてないくせに」

「それは君もだろ?」

 

 そう言い終えると、フィディオが車を止めた。

 気づいたらもう着いたようだ。

 私は顔を持ち上げる。

 目の前には巨大なスタジアムが映っていた。

 空は真っ赤に染まっており、燃えているかのよう。それでもスタジアムが発する機械の光のほうがさらにまぶしく、キラキラと輝いている。

 周囲には蟻の大群のように数えきれないほどの人々が地面を埋め尽くしており、そんな彼らを狙ってこれまた数えきれないほどの露店が開かれている。

 売っているものは様々だ。

 フランクフルトやフライドポテトなどのジャンクフード、さらにはよくわからない絵画やパチモンユニフォームを売っているちゃんとした屋根付きの店。

 さらには地べたに絨毯を敷いただけで、地面に叩きつけてもすぐ元通りになるスライムの玩具やピサの斜塔などのイタリアの名産物を模した安物のキーホルダーなどを売ってる店。

 挙句の果てには露店ですらなく、徒歩で近づいていって道ゆく人に直接売りつけている商人なんかもいる。

 あ、おそらく日本人の観光客が現地の商人らしき人物に無理やりミサンガをつけられた。そして商人に代金を要求されている。こういう押し売りの上位互換みたいなものも海外では日常茶飯事だ。特に日本人は気が弱くてカモられやすく、よく狙われる。ほら、あの人凄まれてしぶしぶお金払っちゃってるし。

 助ける義理もないし、フィディオも気づいていないから無視することにした。

 

 蛇みたいにくねくねと曲がってなお、最後尾が見えないほどの長蛇の列を、私たちは顔パスだけで素通りした。

 そしてスタジアムに関係者以外立ち入り禁止の入り口を使って入り、警備員の誘導に従って控え室にたどり着く。

 

「お、来た来た! キャプテンとチビ兎のお出ましだな!」

「チビって言うな! レディと呼べ!」

 

 中に入って早々、私たちに話しかけてきたのはブラージだった。

 こちらもフィディオと同じように成長して、今では立派な大人になってる。身長二メートルの巨体はアメフトに行っても通じることだろう。

 まさに巨人。

 それゆえに私と並ぶと絵面が酷くなる。

 マスコミめ、誰がお父さんの応援に来た子どもみたいだ! 私は副キャプテンだぞ!? この図体だけのやつより偉いんだぞ!? 敬え!

 私がサッと足を振り上げると、顔を青ざめて彼は逃げてった。

 さすがにローキックで骨折させられた時のことはトラウマになってるらしい。まあ超能力ですぐに治したから後遺症はないけど。

 

「まあまあ落ち着けって。あとちょっとで試合なんだ。君たちももう少し大人になれ」

「な、ナカタさん……すまねえ」

「ふんだ! 試合後に覚悟しときなよ!」

「なんだとこのやろう!」

「……ダメだこりゃ」

 

 とまあ、こんな感じで控え室にはヒデナカタもいた。

 彼らだけじゃない。ラファエレ、アンジェロちゃんなどなど。今控え室にいる23人の中の多くがFFIでともに戦った仲間たちだ。さすがに全員は揃っていないけど、それでも懐かしい顔ぶれである。

 

 そうやってひたすら騒がしくしていると、ドアがノックされ、係員に入場を促された。

 いよいよだ。私たちは互いに顔を見合わせ、口を固く結んで行進した。

 

 

 グラウンドに入ると、拍手とスポットライトのシャワーが私たちを出迎えた。

 何万もの人々を収容する観客席は無数のシャッターフラッシュが消えては現れを絶え間なく繰り返し続けている。まるで夜空に輝く星のようだ。

 私たちはセンターラインに沿うように一列に並んだ。

 そしてもう一つの列が一つ遅れて行進してくる。するとスタジアムの一方から私たちを出迎えたような熱い声援が弾けた。

 

「久しぶり——円堂君」

「よぉっ! ようやくここで会えたな!」

 

 その先頭に立っているのは円堂君だ。

 そのさらに後ろには副キャプテンの鬼道君。見渡せば豪炎寺君やシロウ、壁山なんかのこちらも見知ったメンバーが多くいる。

 あとなぜか不動もいた。……髪が生えてて気づかなかったけど。カツラでも買ったのかな?

 

 ワクワクしてたまらないとでもいうように満面の笑顔で手を振る彼に、こっちも不敵な笑みを返す。

 

「とーぜんでしょ。私たちが最強なんだから」

「そういうわけだ。再会のところ悪いんだが、優勝トロフィーは俺たちがもらうよ」

「へへっ、させるかよ! お前たちにはFFIでの借りがいっぱいあるんだ! 今日は俺たちが勝つ!」

 

 やがて両国の国歌を歌い終わり、円堂君たちと握手を交わして、両チームがポジションにつく。

 高鳴る鼓動。

 私は今最高に幸せだ。

 夢の舞台に、私は今立ったんだ——!

 

 

『——ここでホイッスルが鳴ったぁーー! 『フットボールフロンティア・ワールドカップ』、略してFFWC! その決勝戦の、開幕ですっ!!』




 どーも、こちらは幸せな感じで終わらせてみました。
 なえちゃん死亡ルートがトゥルーな理由は、GOでなえちゃんを出さないようにするためです。簡単に言うと続編はありません。トゥルーの方で天馬出しといて悪いんですがw

 さて、ここでは作者の今後について少し話そうと思います。
 執筆を始めて六年。ハーメルンで二次創作を書き続けましたが、作者もいい加減オリジナルものが書きたいと思ったので、次はオリジナル悪い書こうと思います。ジャンルはハイファンタジーです。『このラノ』を見る限り、今はラブコメ系ラノベが旬らしいですけど、人生の大半をドラクエに捧げた作者には関係がない話です。作者は現実的なものが大っ嫌いなのでファンタジーしか書けませんし。
 新人賞とかにも出すつもりです。ですがまあ、趣味の延長戦でゆるりとやっていこうと思います。大志を抱いて燃え上がっても、夢破れてすぐ灰になる可能性の方が高いですからね。それならばマイペースでも書き続けて、何十年もずっと継続的に応募する方が楽で近道だと思いますし。ありがたいことに、小説は年齢を重ねたほうが上達していきますからね。
 というわけで、いつになるかはわかりませんが次回作をお待ちください。
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