【外伝開始】メソポタミアの冥界でエレちゃんに仕えたいだけの人生だった…。 作:土ノ子
ミクトランの宙に黄金、翡翠、白と黒の軌跡が奔る。いずれも惑星級の霊基を持つ
オルト・シバルバー、ククルカン、U-オルガマリー。全員が音速超過の空中戦闘を標準装備でこなしてのける規格外だ。カルデアも動静を注視し、援護の目がないか備えているが戦闘が高次元過ぎて今のところ手を出す隙が無い。
「下手に動かないで! アイツに狙われれば今度こそボーダーは墜ちる!」
「私達のフォローにも限界はあります。目を付けられれば終わりと思ってください」
幸いオルト・シバルバーの注意は完全にボーダーから逸れた。
その分U-オルガマリーも防御から攻勢へシフト。ククルカンとU-オルガマリーの即席タッグはオルト・シバルバーへ着実にダメージを与えていく。
「――今!」
更に一手、畳みかける。
太陽が地平線に沈みかけたミクトランがより深い闇に沈む。
太陽が墜ち切ったのではない。光すら飲み込む暗黒星が宙に現れたからだ。黒き星はあらゆるものを吸い込み、飲み込み、押し潰す。それはオルト・シバルバーも例外ではない。
『超高重力場を観測――ちょっと? ギリシャ異聞帯の時に見たブラックホール以上の出力だよコレ!?』
『おぉぉ――い!? 覚えているぞあのヤバい奴だな!? もうちょっと手加減――できるような相手ではないか! ボーダー、最大出力で現空域を離脱するぞ! 最早援護も危うい!』
『了解。旋回する、取り舵一杯!!』
『ラジャー!』
異聞帯すら飲み込み粉砕しかねない、
だがそれだけのリスクを負わねばオルト・シバルバーを倒せないとの判断だった。
「――U!」
「オルガマリー所長!」
旋回するボーダーの甲板から藤丸とマシュが呼びかける。
人の聴覚では届かない肉声もU-オルガマリーの超感覚ならばはっきりと聞き取れる。
彼女はただ黙って腕を組み、胸を張って
それを示すように操作を一つ誤ればミクトランを破壊しかねない重力嵐は強烈な引力でオルト・シバルバーを飲み込み、押し潰さんとする。流石は『異星の神』と称えるべき御業。
『 ―― ―― ―― ―― 』
が、潰し切れない。
傲岸不遜に取り繕った顔を崩し、U-オルガマリーが屈辱に顔を歪めた。
「クソ硬いわね!? 流石は
「ならば私が決着を!」
絶好の好機にはやる二人。
『 ―― ―― ―― ―― 』
オルト・シバルバーが再び人類可聴音域外の高周波を撒き散らす。
拘束し、トドメと思ったのも束の間。オルト・シバルバーがミクトラン崩壊級の超高重力場にすら適応した。
重力場を自身に纏うように発生させ、相殺。さらに
「ちぃっ! 今のはこちらもとっておきだぞ。この私に怪物と言わせるか、ORT!」
太陽のエネルギーは無尽蔵に近くともそこからエネルギーを引き出すパイプラインはそうではない。二等恒星級の出力を容赦なく絞り上げ続けたことでオルガマリーの胸に収まる心臓に大きな負荷がかかっていた。今のと同じ出力の重力場はそう何度も展開できない。
「いいえ、十分なアシストです――捉えたっ!!」
今も展開される重力場から逃れる速度を出すためにオルト・シバルバーの軌道は直線的で単調なものにならざるを得ない。
そこに狙いを定め――ククルカンが全霊を込めて打ち砕く。
「疑似太陽、極小再現――干上がらせます」
生み出すは小さな疑似太陽。核融合による1500万度の熱量をオルト・シバルバーへ容赦なく叩き込む。
オルト・シバルバー、そして疑似太陽のどちらも未だ超重力場の影響下にある。さらにククルカンによる誘導があれば着弾は容易い。
瞬間、ミクトラン全域を純白に塗り潰す程の光が弾けた。
「念には念を――などとは言わん! 星の終わりと始まり、超新星爆発の果てを見るがいい!」
さらにU-オルガマリーが追撃。オルト・シバルバーの頭上に小さな純黒の球体が生まれ……急速に成長。今まで見たことのない極大の暗黒星が生み出された。
老いた星の最期を
是即ち星の終わりと始まり、天地開闢を極小再現したU-オルガマリーが誇る必殺である。
『 ―― ―― ―― ―― 』
二種の宇宙的脅威を前にしてオルト・シバルバーに動揺は見られない。元よりこの存在にそんな生易しい機能はない。
だが抵抗する術はなくオルト・シバルバーは太陽によって溶解し、暗黒星によって飲み込まれた。
『……………………』
宇宙規模の破壊の嵐が収まり、残るのはボロボロになったミクトランの大地のみ。少なくともオルト・シバルバーの残滓すら感じられない。
遂に、オルト・シバルバーは討伐された……はずだ。
もちろん油断することなく警戒態勢を維持しながらミクトラン全域を広域探査。
一秒、二秒と時が過ぎていき。
『報告、仮想英霊体の霊基崩壊を観測』
ボーダーから送られた信号をキャッチ。
トリスメギストスⅡもまたオルト・シバルバーの消滅を告げたことを知る。
「流石にこれで終わり――」
霊基の一欠けらも残さず消滅したのを自らも確認し、U-オルガマリーが安堵のため息を吐き――そして当たり前のようにその安堵は覆された。
絶望に絶望が連なっていく。
オルト・シバルバーがまさかの再召喚を遂げた。
しかもこれまで戦っていたフォルムからさらに鋭利に、メタリックな茶色と緑の輝きという毒々しい色彩へ変化して。
加えてORT異聞の観測記録を3億から146億年に延長。比例するかのように霊気出力も大幅に増大している。
「
最早生物とすら呼び難い、ORTの存続機構と化した怪物に驚愕を叫ぶ。
ORTの性質、あらゆるパーツの一欠けらでも遺っていればそこから再生する不死性。故に
「マズイ。こっちの
「ご安心を。
対消滅。不吉な響きにU-オルガマリーが顔をしかめる。
それに頓着せずククルカンは言った。
「
「……ええ。任せなさい」
言いたいことはたくさんある。だがその全てを飲み込み、U-オルガマリーは請け負った。
「ORT。あなたと私達は共存関係にあった。あなたは空想樹を食らうことで活動時間を延長し、私達はあなたの心臓を使うことで世界を存続させた。ここであなたを消滅させることは即ちこの異聞帯の消滅を意味する」
それでもと押して、ククルカンはここに立っている。
「マィヤの総意を言葉にしましょう。ミクトランは、ここで終わる。
6600万年育まれた命、6600万年の時間、6600万年の解答――”善いものではあった。だが、他に道はあった”」
マィヤはそう結論した。
「それを、私達は認めました。この惑星に住まう種の発展を止めていたと」
己そのものを太陽の弾丸と化したククルカン。
そして弾丸を込める
「絶滅は等しく訪れるもの。
どのような環境、どのような生態であろうとあなたが生命であるのなら例外はありません。
そして知るがいい。この太陽はオマエの心臓であり、私を創り、生み出した胚である!
我が名はククルカン、太陽から生まれたもの! 即ち、
ククルカンの黄金の翼が真紅の炎に包まれる。真紅にやがて蒼が混じる。際限なく上昇していく炎熱によるフレア――彼女こそ太陽の具現!
「今こそ、我が身を太陽に
それは宝具、それは彼女そのもの。
マィヤとORTの間に生まれた落とし子。
「風は天より降り来たり、星は宙より落ち来たる――
瞑目するククルカンが内に秘める熱量が際限なく上昇していく。まさに太陽の如く、ククルカン自身が極光へ変化していく。
そして太陽と化した己を目の前に置かれた重力砲身へ投げ出し、駆け抜け、加速した。
「消滅の時だ、究極の一! この惑星に我らが喰らうものはない!」
召喚直後のオルト・シバルバーへ太陽そのものと化したククルカンが直撃。輝きが爆裂し、炎の波が奔る。
ミクトランを走り抜けた炎、ククルカンそのものである光はミクトランを塗り潰した空想樹を仮説の存在へと還し、世界をあるべき姿へ戻していく。
地上に緑が戻り、2%以下にまで減少し、それでも生き残った生命が歓喜を叫んだ。
『 ―― ―― ―― ―― 』
ORTが消えていく。可聴音域外の悲鳴とともに、怪物は最後まで意思疎通のできない怪物として果てた。
「フフッ、作戦通り。ですね……」
地上に残されたORTの最後の残滓である自身を滅ぼすことで、オルト・シバルバーが拠って立つ基盤を崩す。ククルカンの思惑は当たり、百ではきかない死線を潜り抜けた末に、彼らはようやくORTに勝利した。
「ククルカン。あなた、
「最後にとっておきの無茶をしてしまいましたからね。当然です」
――代償は、ククルカンの消滅。彼女もまたORTだった以上その理からは逃れられない。
「あなたの心臓も
「十分よ。
「……そうですね。ちょっと、羨ましいかも。ちょっとだけ、ですけど」
そっと胸に手を当てて心音を感じるU-オルガマリーに羨ましいと笑うククルカン。大切な人との絆がそこにあった。
そう思えるようになったことがちょっとおかしくて、嬉しい。自分もまた彼女達やカルデアと関わりあう内に変わっていたのだと。
「最後に、みんなもう途絶えてしまったけれどマィヤからの総意を伝えます。
――私達は、あなた達を応援する。
それはあなた達がミクトランを看取ったからではありません。今走っているランナーを応援するのは生命として当たり前のことだからです。人だろうと、そうでなかろうと関係なく」
そう元気づける自称妹分にU-オルガマリーも泣きそうな顔で笑った。
「ねえ、お義姉さま。たとえ何時か別れてしまうとしても。たとえ何時か傷つけてしまうとしても――醒めれば消える夢幻だったとしても。
黄金の
「……美しかったわ。今もきっと、
小さくとも尊い輝きがあった。
誰にも譲れない思いがあった。
トモダチと交わした約束があった。
その全てがたとえ失われてしまうのだとしても――今、この時に見た
「そうですか……フフッ、良かった」
消えていく。
指先から光へと還っていく。
最後まで誰かを思う微笑みとともに、誰よりも優しい異聞帯の王は消えていった。
「あなたのこと、忘れないわ。ククルカン」
損傷範囲の最大巡航速度で接近するストーム・ボーダーを検知。彼らと合流すべく自らもその方向へ進路を取った。
彼女は行く。カルデアとともに、世界を救うために。
それがありえざる未来、破綻した結末を呼ぶとしても――トモダチとともに歩んでいく。誤った選択を、せめてもの次善にするためその力を尽くしていく。
目指すべきは異星――カルデアス。進路、南極。目標、カルデア。
彼女自身ですら知らない全ての真相を光で照らし、明らかにするために。たとえその先に言語に絶する悍ましい現実が待ち受けていようとも。
U-オルガマリーが見た黄金の
黄金空想紀行 U-オルガマリー。
――終幕。
■あとがき
これにて二部七章のif、黄金空想紀行 U-オルガマリーは完結となります。
原作にありえざるキガル・メスラムタエアだからこそ繋げることができた”もしも”、皆さんは楽しんで頂けたでしょうか。
この更新をもって本作は一旦更新をストップとさせていただきます。
もし続きを書くとしたら原作でUピース関連の進展があったらでしょうか。U-オルガマリー地球大統領は原作でまだ弾が残ってるのでそれ次第ですねー。
私自身原作がどうなるのか楽しみに(ちょっとハラハラしつつ)待とうと思います。
本作を通じてまた再会できることを祈っております。
■新作紹介
最後となりますが、もう一度カクヨムにて連載中の新作をご案内させて頂きます。
既に見慣れている方も少し違った観点から紹介するのでどうぞこのままお読みください。
まず新作『文明崩壊ダンジョンライバーズ』は下記にリストアップしたように幾つか地雷を踏んだ挙句敢えてハンデを背負っているかなり癖が強い作品です。
告白します、”癖”が抑えられませんでした。
・ヒロインが覆面カオナシ状態
・登場人物が多数
・メタフィクションを利用したギミック
・一番盛り上がるのが終盤
が、その上でバチクソ盛り上がるように構成を組みました。
対象外は一切刺さらず、しかし刺さる人には心臓にゲイボルグをぶち込む勢いで刺さる作品だと自負しております。
そして名誉ガルラ霊としてネルガル神討伐戦に参加した皆さんは本作のターゲットど真ん中です。バチクソ楽しんで頂けると思います。
この一文の意味は第一章の終わりを読んでお確かめください。
文明崩壊ダンジョンライバーズ!
※タイトルをクリックすれば直接作品ページへ飛べます。
迷宮災害で滅びゆく現代ダンジョン世界に生まれた最強な”だけ”の主人公がヒロインの厄ネタを暴力とダンジョン配信で殴り倒してハッピーエンドを掴む人間讃歌の物語。
カクヨムの新作でもお会いできるのを楽しみにしております。
是非是非、ご一読・ご評価の方よろしくお願いします。