【外伝開始】メソポタミアの冥界でエレちゃんに仕えたいだけの人生だった…。   作:土ノ子

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「解せんな」

 

 ギルガメッシュ王は唐突にそう呟いた。

 

『……は』

「ここまで一から十まであの根暗な女神らしからぬやり口、貴様の仕込みであろう。雑種』

『その問いに私からは何も申し上げることはございません。王よ』

 

 YesともNoとも言えない問いかけをぶん投げてくるのほんと止めて?

 Yesと言ったらエレちゃん様の権威を傷つけるし、Noと言ったら虚偽になるんですよ。

 

「やかましく、強欲な姉妹(イシュタル)と違い、エレシュキガルは宝石の輝きに目を眩ませる愚物ではない。地上の事物に手出しをするなぞ、あの実直で義理堅い女神からは逆さに振っても出てこない発想よ。それだけで奴の背後にいる者の存在は明白」

『……』

 

 違うか、と詰まらなさそうに重ねて問いかけられ、あくまで沈黙を守る。

 勘弁してほしい、あくまでこちらはエレシュキガル様の名代であり、その問いに答えられることは何もない。

 

『恐れ多くも、我が女神の意を代弁するならば』

 

 一拍の間を置き。

 

『冥界の、発展と安寧を我が女神は心から希求しておられます』

「だがその方策はエレシュキガルから出たものではない。貴様の心胆の在処を示せ、でなければその言葉を受け容れることは到底叶わんな」

 

 これが本題か、と直感する。

 ここまでのやり取りを見るに、ギルガメッシュ王は俺がウルクに辿り着く前からこちらの企みをおおよそ看破していたのだろう。

 その上でわざわざ時間と言葉を使ってまで、話をまとめたのはこの一手のため。

 エレちゃん様は(あれで)メソポタミアの大地を支配する神格の中でも有数の大神だ。

 その動向はギルガメッシュ王ですら無視が出来ないのだろう。尤もこれまでのエレちゃん様はその動向自体殆ど示さない、寡黙で勤労意欲に満ちた女神であったわけだが。そういう意味でも、このエレちゃん様らしからぬアクティブな行動はギルガメッシュをして手間暇をかけて実情を探る程度には興味を引く珍事だったのではないだろうか。

 そしてそんな大神の傍に突然素性も分からず、行動基準が不明かつ無暗に行動的なガルラ霊がポップした…。となればまあ、冥界と敵対するリスクを込みで処断するかはたまた放置しても無害な類の有象無象か見極めようとした、と思われる。

 ならばここで返すべき言葉は、ただ自らの心情をそのまま込めるだけでいい。

 

『我が心は常にエレシュキガル様とともに』

 

 出来るだけ素直な思いを言葉に込める。

 だがどうやら王様にはあまりお気に召さなかったようだ。

 

「それはエレシュキガルへ向ける忠義とやらか、雑種」

『さて…』

 

 言葉を濁したのは韜晦しているわけではない。単にエレちゃん様へ向けるこの思いをなんと名付ければいいのか分からなかったからだが…それでも。

 

『敢えて言葉にするのならば、()()が近いのかもしれません』

 

 ……………………ああ、やっぱり死ぬ。改めて言葉にすると恥ずかしさが途端に湧いてきた。ヤバイ、羞恥(はずか)死ぬ。なにこの高度な羞恥プレイ(達観)。たぶん今の俺の目はレイプ目じみてハイライト消失してるな間違いない。玉座の間にいるのがギルガメッシュ王とそのお付きである案内役の美人のお姉さんだけであることがせめてもの救いだ。

 でもなあ、ギルガメッシュ王が適当に飾った言葉で騙されてくれるはずがないんだよ。短い付き合いでもそれくらいは分かる。

 良いだろう、この高度な羞恥プレイが交渉に必要だというならばまずはその現実を受け入れる(錯乱)。

 

「祈り、と申したか。フハハハハハハッ! 見よ、シドゥリ。ここに大戯けがいるぞ。この数千年、ついぞ現れなんだ大戯けよ! 雑種と思っていたがとんだ珍獣の類であったわ!」

「王よ、ガルラ霊殿の赤心を笑うのは感心致しません」

「シドゥリ、貴様も分からん奴よ。これが笑わずにいられるか!? なんという身の丈を弁えぬド阿呆(アホウ)か! 人と神の違いを理解していないとしか思えぬわ!」

 

 大爆笑。

 美人のおねーさんことシドゥリさんの困り顔もどこ吹く風と景気よく哄笑している。

 いっそ痛快なほどに腹を抱えて笑うギルガメッシュ王の姿にもやっとしたモノを抱えつつ、大人しく続きの言葉を待つ。

 ひとしきり笑い声を吐き出したギルガメッシュ王は機嫌良く頷き、言った。

 

「良かろう。我を興じさせた褒美だ。貴様の申し出、受け容れてやろう。ありがたく思え、珍獣」

『ははっ! お言葉、ありがたく頂戴致します!』

 

 言質を貰えるならこの際散々笑いものにされた心情は無視して深々と頭を下げる。だって(なんちゃって)外交官だもの。

 

「その祈りが途切れた時は我が手を下すまでもなく、貴様の最期は地に墜ちたものとなろう。努々忘れぬことだ」

『ご安心を。決して途切れませぬ』

「大戯けが。誰も心配などしておらぬわ!」

 

 せやろか(真顔)。

 わざわざする必要のない忠告じみた言葉をかけてくる時点で実は面倒見が良い人なのでは? ただ相当に性格が捻くれている上に、人の好みというか人物眼が特殊な感はあるが。

 

「戯言を吐くのもここまでだ。貴様の申し出、取り敢えず受け入れてやる。だが互いに差し出す物を大枠でも決めておかねばならん。当然エレシュキガルとそのあたりの条件も用意してきておろうな?」

『滞りなく。エレシュキガル様からしかとご要望を承っております』

 

 正直な話、そもそも一回の訪問でトップとの直接会談から契約成立まで辿り着くとは夢にも思っていなかったのだが、備えあれば憂いなしとはこのことだ。

 俺以上に交渉事に不慣れなエレちゃん様と首を捻りながら何とか冥界側の要求について最大限の要項と譲歩可能な項目、最低限譲れないラインを定めてきて良かった。

 

「夜は長い。我のウルクのため、その智慧搾り尽くすが良い」

『夜は冥界に属する時間なれば幾らでもお付き合い致しましょう、王よ』

 

 さて、此処から先は取引内容の大枠を詰める条件闘争のお時間だ。

 




 もっとだ、もっと…もっと輝けえええええぇっ!(意訳:たくさんの感想・評価ありがとうございます!!! でもまだまだもっともっと感想を! 評価を! ので! 夜勤明けの時間使って特急でこの話を書き上げました! まだまだ感想・評価待ってます!!)


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