【外伝開始】メソポタミアの冥界でエレちゃんに仕えたいだけの人生だった…。   作:土ノ子

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 はい、条件闘争の件はカットです。

 

 何でかって聞かれたら特に報告することもないからですね。エレちゃん様へはこういう風に纏まりましたの一言で済むくらいスムーズに進みました。

 その要因はもちろん俺の秘められた交渉技能が炸裂したわけではなく、ひとえにギルガメッシュ王が実務面でも死ぬほど有能な面を見せてくれたから。

 最悪冥界側の最低ラインだけ示してここから先は破談になっても譲歩できない旨を伝えるチキンレースを挑むつもりだけだったのだが、思った以上に冥界側にも利益を示した条件を示してくれたおかげですんなりと決まった。

 冥界側に譲歩しつつもこちらの想定外のところでウルク側の損失を補填する辺り、間違っても交渉事ではかなわないというあの時の直感は正しかったと思う次第である。

 

 という訳で以下リザルト。

 

・ウルクは坑道採掘で採れる宝玉・金属について採掘量の1割(暫定)を冥界に納める。なお貢納量については半年後に再度両者にて協議するものとする。

・宝玉・金属の貢納は年4度に分けて実施され、都度採掘職人たちの手によりエレシュキガル様を祀る祭祀を行うこと。

・エレシュキガル様を祀る小神殿の建設及び管理。

・偉大なる冥府の女神エレシュキガル様を崇める会(仮)の布教許可。なお会長は俺。何故なら総員俺1名だから。悲しい。

 

 まとめて言えば冥界とウルクで貢物や信仰に絡めて交流しようという話だ。

 逆に冥界側の負担としては、大まかに言えば坑道における危険予知及び人間が活動できない領域での労働力の提供と言ったところ。ギルガメッシュ王の要望で未知の鉱脈について限定的な情報提供も追加された。

 遠い将来インサイダー取引と言われる気がするけど、遡及法的に考えて現状その概念は無いのでセーフです。

 あとは細かいところで貢納する宝玉の割合を屑石でも良いので透明度高めの水晶を多く設定したり。狙いについてはまた後程。

 なお一番無視できないウルクの都市神にしてエレシュキガル様と犬猿の仲であるイシュタル様の扱いは、突撃を食らった方が各々で適当に対処することという極めてふわっとした対応になった。

 いや、冥界側は良いんですけどね。突撃してきたら即座にエレちゃん様にぷちっとされるだけだし。

 

『……よろしいので?』

「何故(オレ)が彼奴の機嫌を取らねばならん?」

 

 このとんでもなく雑な扱いにそれでいいのかと思わず聞いてみたら鼻で笑われた。この王様強すぎない?

 まあギルガメッシュ王にとっては、イシュタル様の機嫌 < ウルク民の生命だからね。一度思い切りとんでもない大喧嘩までしている両者なので、遠慮も何もないのかもしれない。

 

「こんなところか。後は必要な時に都度シドゥリへ話を持ち込むが良い。シドゥリよ、細かいところはお前に任せる。良いな?」

「はい、お任せください」

 

 恭しく頭を下げ、了承の意を告げるシドゥリさん。

 いいなぁ…。冥界(うち)にも一人くらいああいう出来る人が欲しい。

 エレちゃん様はポンコツ尊いという無二の属性の持ち主で敬愛すべき主人なのだが、実務面においては辣腕という言葉からは程遠いんですよね。

 だからこそ俺みたいな木っ端が仕え、役立つ余地があるとも言えるのだが。

 

「そういうことだ。貴様も以後はそう心得よ」

『はっ。心得ましてございます、王よ』

「良し! ならば貴様との謁見はここで終わりだ、下がるがよい……と言いたいところだが」

 

 含みのある言葉を残し。

 

「貴様にはまだ言っておくべきことがある。王ではない、我の言葉でな。心して聞くが良い」

 

 と、そう気になる前振りとともに玉座から立ち上がるギルガメッシュ王。

 そしてスウ、と思い切り言葉を吐き出す前準備のために胸いっぱい息を吸い込み。

 

 

 

「まず交渉中にピカピカと光るのは止めよこのド阿呆(アホウ)! お陰で貴様の腹の内は丸分かりであったわ大戯け! 貴様それでも冥府の女神(エレシュキガル)の名代を預かる直臣か死に損ない!」

 

 

 

 鬱憤を晴らすように大音声で俺を罵倒した。

 

『……………………えっ?』

「えっ? ではないわ! この我の前で場を弁えぬ醜態、お陰で吹き出すのを堪えるのに向こう一年分の忍耐力を使い果たしたぞ! 我、腹筋大激痛で思わず昇天するところであった! それともこれは我を冥府まで呼び寄せる貴様の策略か、ん? ならば一周回って大した策士と褒めてやろう! あと一歩でその策成就するところであった、惜しい出来だったとな!」

 

 なんという難癖…ではない。重要なのはそこじゃない。

 え、まさか、あの感情が高ぶるたびに魂が光る癖、エレちゃん様から指摘されて突貫で矯正したつもりだったんですが…?

 

「見る者が見れば一目瞭然! エレシュキガルめが絡めば特にな!! 貴様、交渉にはほとほと向かぬわ。我が保証してやろう!」

 

 うっそだろおい。自分自身で知らないうちにセルフ羞恥プレイかましてたとか、尊厳がボトボト零れ落ちる音が聞こえる気がするぅ…。

 挙句の果てにギルガメッシュ王のお墨付きで交渉人失格宣言とか、どう考えても評価を覆せる気がしないんだが?

 

「自身の愚昧を悟ったか! 珍獣の類にしては上出来よ!」

 

 玉座から立ち上がり、腕を組んでそっくり返った姿勢でフハハハハッ! と高らかに王様笑いを上げるギルガメッシュ王。

 ちょっとそのハイテンションを分けてほしいくらいにはこちらの気分はどん底だった。

 

「なればこそ使()()には向いていることも保証してやろう! 腹芸の出来ぬ使者とて使いようよ! 嘘を吐けぬ貴様の言葉は、使い方と使いどころを誤らねば、信を為すに足る重さを得よう。これが吉となるか凶となるかは貴様自身の行いが決める。努々忘れぬことだ」

『……はっ! 金言ありがたく頂戴(ちょうだい)致します!』

 

 やっぱりこの王様、面倒見が良いのでは(真顔)。

 捻じれ曲がった性格が色々と台無しにしているだけで。

 

「ならばよし! では行け、《名も亡きガルラ霊》よ。貴様の主のため、尽くすが良い。貴様の()()の行く末、(オレ)がいずれ直々に然るべき裁定を下してやろう! 光栄に思え!」

 

 何を言われているのかイマイチ分からないけど、ここはテンション高めでレスポンスを入れるところだと俺の生存本能(死んでるけど)と浪漫魂がそう言っている!

 

『ははーっ! ありがたきお言葉! エレシュキガル様のため、粉骨砕身尽くしまするーっ!!』

 

 もう砕く身体も骨も無いけど!

 まあいいのだ、こういうのは気合が重要なのだ。

 

「威勢だけは及第点をくれてやろう、珍獣! では今度こそ下がれ。我はこれからシドゥリを供に始末せねばならん仕事があるのでな!!」

 

 なおそろそろ夜も更けきり、朝が近い時間帯である。

 ちょっと? エレちゃん様といい古代メソポタミアの偉い人って社畜しかいないんですかね? 幾ら文明発祥の地とはいえ文明の闇が深すぎません?

 




 まだだ!(意訳:皆さんからのリアクションを燃料に突貫で頑張りました! 引き続き感想・評価お待ちしてます! ここすき機能とかもどんどん欲しぃ!)

追記
投稿予約時間間違えました。申し訳ありません!

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