【外伝開始】メソポタミアの冥界でエレちゃんに仕えたいだけの人生だった…。   作:土ノ子

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 ところ変わって冥府。

 

『―――斯様(かよう)に、ウルクにて行われたギルガメッシュ王との会談は途中波乱もございましたが、(つつが)なく契約がまとまったこと、ここに報告いたします』

 

 夜が明ける前にウルクを退去、冥界へ戻るとエレちゃん様へ事の次第を報告していた。

 ギルガメッシュ王とシドゥリさんは別れ際の言葉通り多忙のようで、玉座の間でお別れとなったが、その代わりにウルクの門を守る衛兵の皆から敬意を以て見送られたのが記憶に新しい。

 どう見てもまともな人間ではないガルラ霊にもギルガメッシュ王からの言葉に従い、規律正しく、不満や不信を見せることなく職務に励む姿はプロフェッショナルの呼び名がふさわしい。

 やっぱりウルクやべーわ。民度は必ずしも時代や文明の発展に比例するわけではないが、それでも古代都市とかいうレベルじゃない。

 

「…………」

 

 と、一晩過ごしただけだが随分と印象に残った都市国家を思い起こす。

 

『……エレちゃん様?』

 

 長く続いた沈黙に不審を感じ、問いかけると。

 

「凄いわ」

 

 と、それだけを呟く。

 

『は。まことギルガメッシュ王は偉大という言葉が不足と思えるほどに偉大な王でした』

 

 凄すぎて比較するのもおこがましいと感じるくらいに凄い。同時に間違ってもああいう風にはなりたくないとも思えるのが、また別の意味で凄い。

 

「違う、そっちじゃないわ! あの金ピカがいけ好かないくらいに出来る男なんて腹が立つくらいに知っているし」

 

 金ぴかて。

 確かに随所に金の装飾品を身に着け、本人の髪も鮮やかな黄金色だったし、その絶大な王気(オーラ)が鬱陶しいくらいに存在感を主張していたが…うーん、言いえて妙かも。

 少なくともギルガメッシュ王ほど黄金の呼び名が相応しい王は二人といまい。The・金ぴかだ。

 

「私が言いたいのはね、()()よ。あの金ぴか相手にまともに話が出来るなんてよほどの勇者かよほどアレなのかのどっちかね」

 

 間違っても勇者ではないので後者の方だろうが、一つ言わせてください。まともに話せるだけで勇者かアレ判定されるギルガメッシュ王が一番のキワモノでは?

 

「正直に言うけれど、貴方からウルクに行くと聞いた時には無傷で帰ってくるのは難しいかもって思っていたの。考えたくもないけれど、万が一の可能性もあるかもしれないって」

 

 もし()()なったら何万年かかっても必ずあの金ぴかをウルクごと冥府に引きずり込んでやるけど、と呟く。

 ちょっとエレちゃん様? ハイライトの消えた瞳でボソリと恐ろしいこと呟くの止めませんか? 貴女ヤンデレ属性の持ち合わせは無かったはずでは?

 おかしいな、敬愛する主が従者の身を案じてくれる感動的なシーンのはずなのに無い筈の心臓がキリキリと痛むぞ?

 

「とはいえ()()貴方を害するにはあの金ぴかでもよっぽど力を振り絞らなきゃ難しいだろうから、消滅だけは避けられる計算はあったけど。それにこのメソポタミアの大地で何かしらコトを動かすにはあの金ぴかを通すのが一番手っ取り早いし…」

 

 と、思慮深げに呟く。 

 

「でもあの金ぴかは難物なんて言葉じゃ表現できないくらい面倒くさい王様だから。門前払いを食らうならまだいい方で、下手に怒らせて怪我をするんじゃないかと不安で」

 

 そう言葉通りに心配していたのだと分かる憂い顔を見せるエレちゃん様。

 

「だからね。こんなに上手くいくなんて、本当に考えていなかったの。その、ごめんなさい」

 

 自身何に謝っているのかも分かっていなさそうなエレちゃん様は酷く不安げな、迷い子のような顔をしていた。

 その顔を見て思わず自身に何か手落ちがあったのかと、記憶を探りながら無意識につい問いかけてしまう。

 

『……何か、私が不手際を?』

「不手際?」

 

 と、一転不意を突かれたようなきょとんとした顔に。

 あ、可愛い…。

 

「誰が、不手際だなんて言ったの? 私の、大事な、たった一人の眷属に、不手際? これだけの大功を挙げた私の眷属を愚弄するものがいると?」

 

 あ、怖い…。

 エレちゃん様お願いだからちょくちょくハイライトを消すのはやめて頂けませんか? 無い筈の膀胱から最上級の不敬をかましてしまいそうになるので。

 何とか不敬を働きそうになるのをこらえながら、頭を下げて問いかける。

 

『では、私の働きはエレちゃん様の希望に沿うものであったでしょうか?』

「もちろんよ! 貴方の働きで不足と言う輩には私が直々に地の底へ沈めてあげるわ!」

 

 今度は太陽のようなニッコニコの笑顔に。

 可愛い。

 でも言っている内容が地味におっかないんですが…。

 

『であれば』

「?」

『我が敬愛すべき女神にまこと不敬ながら一つ、願いを申し上げてもよろしいでしょうか』

「願い?」

 

 何かしら、私に出来ることかしらとあたふたする女神(尊い)に向けて深々と頭を下げ。

 

『どうか我が働きに、お言葉を賜りたく』

 

 その()()を聞いたエレちゃん様は再びきょとんとした顔を浮かべると。

 

「ええ、ええ。それは容易いこと、そして望ましきこと。実は私も貴方を(ねぎら)いたくて堪らないの」

 

 とても嬉しそうに、楽しそうに。

 

「此度の働き、冥府を動かす大きな第一歩となる素晴らしい功績です。貴方という眷属を得られた幸運に感謝を。そして貴方と共に向かう道先に祝福を」

 

 最初の言葉は女神らしく。

 次の言葉は茶目っ気にあふれた少女のように。

 

「本当によくやってくれたわ。流石は()()眷属ね!」

 

 冥界に咲く一輪の花のように、その日一番の笑顔を彼女は浮かべた。

 




 チキンレースだオラッ!(意訳:あとがき記載時点で日刊ランキング1位! 評価投票者数200人突破! 感想49件! 評価8.70! もりもりの誤字報告! その他諸々、まことにありがとうございます! ひとえに読者の皆様の応援のおかげです! なんかここで完結しても問題なさそうな綺麗な流れですが、とりあえずこの作品で突っ走れるだけ突っ走ってみようと思います! そのためにもジャンジャン作者の燃料になる感想・評価頂けますと幸いです!!! 以上、夜勤中にこっそり小説書きあげながら投稿中の土ノ子でした!)
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