冒険心と探求心を忘れずに大人な熱血イケメンが清楚な美少女と結婚する前の話

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俺ガイルの正統派純愛について考えてみた。


引き立に八マンは報われた胃

 雪ノ下雪乃は比企谷八幡の上司である。

 二人は嘗ては同級生であったが、社会に出て上司と部下の関係になった。

 

 とはいえ、雪ノ下雪乃が幹部候補生として就職するレベルの会社に、ソルジャー枠とはいえ、比企谷八幡が就職する事が出来ただけでも凄い事である。

 

 雪乃からすれば、最初は比企谷君にしては奇跡的な程頑張った成果だと言っていたが、彼女の周囲には同じく新進気鋭の幹部候補生達が多くおり、それらを指導するスーパーエリートの管理者達に囲まれて生活していると、八幡(低い次元の人)がしょうもない様に見えてくる。

 

 勿論、八幡は性格も見た目も世間一般的にはしょうもない男なのだが、それでも以前までは雪乃から一目置かれていたのだ。

 

 しかしそれは過去の話。

 清楚な美人である雪乃を、周囲の男達は放っておくことはない。

 

 

 そんな状況にある雪乃を見て、八幡は不安になった。

 どこかの誰かに持っていかれてしまうと感じた。

 だからつい、雪乃に言ってしまったのだ。

 

「雪乃。下心ある奴らにチヤホヤされて勘違いするなよ」

 

「余計なお世話」

 

 

 この時、雪乃は八幡を見る事すらせずにそう言った。

 

 八幡は不安になったが、雪乃がしょうもない男達に引っ掛かるはずが無いと、彼はわかっていた。

 

 

 

 ある日、八幡がブラック経営で有名な安居酒屋に行こうとしていると、お洒落な寿司バーに男と共に食事をする雪乃の姿を見付けた。

 

 八幡は後ろめたさがあったが、二人の後をつけた。

 後ろめたさを感じただけで、それが行動に反映されたりはしないあたりが、自分を良い子ちゃんだと思いこむ為の、自分の為の後ろめたさである。

 

 八幡は、その日の夜に工学を専攻している材木座に、盗撮機能をスマホに仕込む機械を徹夜で作ってくれと泣き付いた。

 

 材木座は使われる側の人間――――というか、人が良い(自称)ので、それを達成した。

 

 雪乃のバッグにそれを仕込んでいると、その3日後に雪乃の家に例の男がやってきた。

 

 …というかヤって来てた。

 いちゃいちゃしてた前半と、乱暴な後半のギャップが雪乃には堪らなかったようだ。

 凄く喜んでた。

 というか悦んでた。

 

 かん高い、いわゆるそーゆー声を上げる雪乃に、八幡は怒りのあまり雪乃に電話をかけて、その行為を咎めた。

 

 それにより、盗撮もバレてしまった。

 

 

「比企谷君さようなら」

 

 雪乃からはそれ以外は何も言われなかった。

 暫くして八幡は仕事も辞めた。

 足手まといの分際で、一端の社員のつもりでいた八幡が去っても、周囲の仕事量は増えたりしなかった。

 八幡の仕事ぶりと言えば、言われたことを忘れてスマホを弄って暇を潰すのが1/3、物を失くして探すのが1/3、周りに怒られるのが1/3みたいなものだったから。

 誰もが八幡の事を嗤い話にしかしないようになった。

 唯一、心配してくれたかも知れない雪乃には、八幡は徹底的に無視された。

 

 八幡が信じたように、雪乃はしょうもない男達にに引っ掛かったりしていない。

 雪乃が引っ掛けたのはしょうもない男ではない。

 しょうもない男は八幡の様な男であり、雪乃が選んだのは社会人として、人間として、雄として立派な男性だった。

 

 雪乃はその男と結婚したし、退職していちゃいちゃラブラブと過ごして子供は沢山作って幸せなセレブやってる。

 一方、八幡は雪乃への未練から、雪乃と付き合う自分を主役にした小説を書いて出版社に応募した。

 

 八幡はそういう人生を送った。




男の名前を葉山にしても良かったのかもしれないし、どうでもいいのかも知れない。


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