しばらく書くつもりはなかったのですが、感想が来ていることに驚き、読んでみたらあら不思議。こんなにモチベーションが上がるんですね。
材木座の気持ちがよく分かります。
作家病は楽しいですね。
今、俺の前には高橋鉄男という生物学の授業で教鞭をとる男がいる。ぬぼーっとでも表現すればよいのだろうか、とにかく何とも言えない顔ではあるのだが、今現在は普段の数倍ぬぼー感増し増しな表情で俺を見ている。つまるところすごくむかつく。大方この男が発する言葉は予想できる。予想通りであれば帰ろう、そうしよう。
「まさか本当に来るとはな・・・」
「すいません間違えました」
ガラガラと音を立てて閉まるドア。すかさず挟み込まれる手と足。ちょ、なんでこんなん力強いんだよ!ドア閉まらねぇ!むしろどんどんこじ開けられていく!
「おい比企谷悪かったって。ほら中に入れよ。」
あれよあれよという間に理科準備室へ押し込められてしまう。流されやすい日本人はこれだから。やだ、俺今すごい流されている?
逆説的に自分は模範的な日本人なのではないかと思考しながら昨日も座ったパイプ椅子へ腰かける。
「それで、いったいどういう心境の変化なんだ?」
「本当に帰っていいですか・・・」
「悪かったって。ただ昨日の比企谷の目を見たら絶対に来ないものと思ってたからな」
少しばつの悪そうな顔を見ると先程のはこの人なりの冗談だったのかもしれない。だとしたら場を和ますためにだろうか。どこまでだ。どこまで見抜いているんだこの人は。どこか見透かされているかのようなこの感覚は決して気持ちのいいものではない。
「悪いな比企谷。まだ会わせたい奴は来ていないんだ。大方道にでも迷っているんだろう」
「道に迷うって、てっきりここの生徒かと思ってました」
「生徒だぞ?」
「いやなんで迷うんですか・・・」
「まぁ新入生だから・・・多少はな?」
「迷うほど広くないでしょうに・・・」
「俺に言うな」
なんでこの人はすぐに頭ガシガシするんですか。俺のアホ毛悲鳴上げてるから。勘弁してあげて欲しい。勘弁してほしいんだけどこの人の腕、全然引きはがせない・・・!ちょっ、マジ何なんだよこの力!なんで人が嫌がってるの見て楽しそうなんだよこのオッサン!
ガシガシきゃっきゃっと戯れているとドアが勢いよく開け放たれる。
「先生ごめん迷った!・・・お取込み中?」
「よう、呼び出して悪いなひかり」
「いいよいいよ。どうせここに来るつもりだったし!」
このあまり仲良くない奴とたまたま話していた時にそいつの友達が来て俺一人が気まずくなるやつ。友達の友達は友達ではありません。
「それでこいつが比企谷八幡」
「あー!この人知ってる!ゾンビのデミで噂の人だ!・・・ひきがやはちまん?」
「ちょっと待て。ゾンビのデミってなんだ?」
ナニ、デミ?デミグラスソース?ゾンビのデミグラスソース掛けということだろうか。なるほどわからん。
「ゾンビのデミヒューマンなんでしょ?1年でも超有名だよ!ゾンビのデミは超レアなんだってみんな言ってるよ!」
目を見ただけでわかっちゃったよー!などと盛り上がるひかりとやら。
あぶねー。デミヒューマンね、はいはい。危うくデミグラスソースの話するところだったわ。
「あーそのひかり?さん。大変盛り上がってるところ恐縮なんですけどね。俺亜人じゃないです」
「「えっ・・・?」」
「えっ・・・?」
昼時の爽やかな風が窓から吹き込む。春の風は心地いい。このまま昼寝でもすれば気分が良いのだろう。いや、ちょっと待て。
「なんで高橋先生も驚いてるんですかねぇ・・・」
「あーいや、すまん!そんな目をしてるからてっきり・・・なっ?」
なっ?じゃねぇーよこいつ。学校には亜人の届出も出てないし、入学の時説明したし、診断書も持ってこさせられたんだぞ!
「ヒッキー先輩、えっとその・・・ごめんなさい!」
いざ高橋先生に文句の1つでも言ってやろうかと思った矢先に謝罪。完全な不意打ちで言葉につまる。
「なに、が?」
何に対する謝罪なのかは分かりきっている。人間同士のコミュニケーションにおいて至極当然な流れだった。頭ではわかっている。だけど生まれて初めてだった。心の籠った謝罪というものを受けたのは。呼び方に異議を唱えたい所だ。そんなしょうもないことを気にするなと言ってやりたい所だ。だけどそんな言葉が出てこない。簡単な社交辞令ですら出てこない。それ程までに衝撃だった。
「勝手にデミって、亜人って決めつけてごめんなさい」
そうだ。これは普段俺が人とのコミュニケーションを怠ってきたがばかりに起きた事故だ。俺が怠慢だっただけなんだ。俺の過失だ。あんたが謝ることじゃない。だからそんな真っ直ぐな目で見ないでくれ。真っ直ぐな気持ちをぶつけないでくれ。
「きっと嫌な思いさせちゃったと思う、ます。だからごめんなさい」
作文では偉そうなことを書くくせに、自分はこれだ。俺はこの人も他の人と同じだと、自分のことを嘲笑うんだと決めつけた。実際はそうじゃなかった。決めつけるの良くない。わかっている。それでも尚、俺は他人に期待したくないと自らを欺く。勝手に期待されて、勝手に失望して、勝手に嫌われていく。他人にその定義を当て込んで、決めつけているのは誰だ。あぁそうだよ俺だ。だから俺は俺が、そのことを突きつけられるから、だから俺は、誰よりも真っ直ぐな彼女が———嫌いだ。
「すいません。今日は体調が優れないので早退します」
「そうか、わかった。気をつけて帰れよ」
あぁ、なんでこの人はこんなに優しいんだ。
「あれ、私またなにか・・・?」
あぁ、なんでこの人はこんなに真っ直ぐなんだ。
「あんたのせいじゃない。俺が自分で気分を悪くしただけだから、気にすんな」
泣きそうな顔を見ると、妹を思い出す。だから泣いて欲しくはない。いつもの妹にやっている様に強がって頭を軽く撫でる。そうこれはお兄ちゃんスキルだ。いつもの癖だ。変に意識することは無い。意識することはないんだから、これだけは言わないといけない。絶対に言わないといけない。
「・・・悪かったな」
目線を向けることすらなく立ち去る。当たり前だ。この状況で目を見て言えるなら、ぼっちなんてやっていない。さっさと教室へ戻ろう。カバンを取って帰ろう。俺が居なくたって誰も気づきやしない。そうだ、早く帰ろう。そうしないと帰る気力すらなくしてしまいそうだ・・・。
昼休みの喧騒もどこか遠くへ感じる。音は多すぎるくらいなのに何故か世界に1人しか居ないような、そんな風に錯覚する。先程まで吹いていた春風はどこへやら。開け放たれた窓を春風が吹き抜けてはくれないかと考える。そうしてこの気持ちを吹き飛ばしてくれればいいのに。
丁度時間があるので次の話は早めに投稿できるように頑張ります。
えぇ、頑張ります。
大事なのは頑張った過程であって、結果ではありません。
そうです。
結果は二の次です。
頑張ったことが大事なのです。
それではまた近日中にお会いしましょう。