前回の話ですね。
実は描き始めて2ヶ月くらいかかってるんですよ。
仕事してるってのはもちろんですけど、あーでもないこーでもない。あーしたらこーなる。あーしないとこうならない。あーしたいならこうしなきゃ。等々津々浦々。津々浦々のやり方正しくないよ。やってみせろよ俺ティ。
そんなことはどうでもよく。
話数が2桁の俺ガイルSSとか感想2桁後半とか3桁とか、本当にすごいんだなと。
自分の凡庸さをゴリゴリ見せ付けられて、才能もなければ努力もできない私にはこの世界は厳しすぎる。
助けて担当編集。
ひたすら横で私のことを肯定し続けて。
おっすみんな!1文字でもいいから感想待ってっぞ!ログインしなくてもかけるからな!おっすおっす!
はい、皆さんありがとうございます。見てくださるだけで、お気に入りボタンの数だけで、頑張れます。感謝してます。心の底から。
運動部の掛け声やら怒鳴り声やらの喧騒と、文化部の楽器や合唱の煌びやかな演奏。ちょうどその間を、俺は一色いろはを従え歩いていた。目指す場所は奉仕部。仕方の無い事とはいえ、嫌な緊張感を覚える。
昨日の今日だ。半ば追い出される形であの教室を後にした。俺の事を擁護してくれた高橋先生の期待。俺の事を評価してくれた平塚先生の信頼。そして俺の事を一瞬でも受け入れてくれた雪ノ下の想い。その3人を裏切ったのがつい昨日のことだ。
足が重いに決まっている。逃げ出したくもなる。だけど、勇気を出して手を伸ばし、裾に縋る手を俺は振り解けないし、振り解かない。
あの日摘まれた裾から、頼ることの出来る人間の手まで、一色いろはの手を俺は引くだけだ。
「特別棟なんて私初めてなんですよ。エスコートよろしくお願いしますね」
「俺も2回目だから大差ないし、そんな前提関係なくエスコートなんてできねぇよ」
それができたら、ぼっちなんてやってない。そう告げると、なんですかそれ、との返事。お互いロクに考えずに会話をしているからこそ成立する、感情の無い言葉の応酬。
そんな気まずさから逃げるような会話を続けようやく辿り着く。
「ここって空き教室ですよね?っ!まさか人気のないところで私のことを無理矢理手篭めにするつもりですね!乙女的には少し強引なのも惹かれますけど、そう言うのは順を追ってからにして欲しいです!それとやっぱり顔がタイプじゃないんでごめんなさい」
「あの、それあまりシャレにならないから。というか多分おそらくこの教室の中で今まさに通報されそうになってるからそれを止めるぞ!」
ノックもなく急いでドアを開けると、案の定雪ノ下雪乃がスマホを操作している所だった。
「ちなみに雪ノ下さん、今何をしようとしているんですかね?」
「あら、人がスマートフォンで何をしているかを聞き出すなんて、少しデリカシーにかけるんじゃないかしら。ちなみに通報よ変質者さん」
「ちょっと待て、俺は何もしていないしする気もない!」
「安心しなさい。未遂なら最大で懲役20年で済むわ」
「いい笑顔で怖いこと言うなよ・・・」
「それはさておき。この件には関わらないで、と言ったのを忘れてたの?」
雪ノ下は一色を一瞥した後、昨日と同じく鋭い眼差しを向ける。声は明らかに怒気を孕んでおり、だけども一色を怖がらせまいと柔らかさを残している。器用なやつだ
そしてその一連の動作が疑惑を確信に変えた。やはり彼女が件のドッペルゲンガー疑惑がある人物なのだ。
だが一色はまだ俺が、その事を知っていることを知らない。
「なんの事だよ。俺はそもそもこの件とやらの依頼主の名前すら聞いていないんだが」
かぶりを振りながらもしっかりと目を見て伝える。なにも知らない体なのだと、そう伝わるように。
「ごめんなさい。少し勘違いをしていたわ。それで、相談者は後ろの方かしら?」
「あ、はい。1年の一色いろはです」
「よろしく、私は2年の雪ノ下雪乃よ」
「えっと、相談者?」
「俺に聞くな。雪ノ下に聞け」
一色の反応を見るに、ここが奉仕部であることは知らないようだ。そうなると例の目安箱に関しても、一色自身認知していない可能性が濃くなる。となると俺は下手に口を出さない方が良さそうだ。
「そうね、それは私から説明をしましょう。ここは奉仕部。飢えた人に魚を与えるのではなく、魚の取り方を教える。そういう部活よ。あなたも相談したいことがあるのでしょう?」
雪ノ下もその認識のようで、チラリと目が合う。ここまでの情報があればあとは雪ノ下が何とかしてくれるはずだ。ならば俺が取るべき選択は1つ。
「それじゃ俺はこれで」
踵を返すと、クイと袖をひかれる。
「なに?」
「なに帰ろうとしてるんですか?」
わぁお。すげぇいい笑顔。ついさっきも見たなこれ。
「女子の相談事とか俺聞かない方がいいだろ。普通」
「いや普通とかわからないって言ったの先輩じゃないですか。なんでこんな時だけ空気読もうとするんですか」
「気まずいからだよ・・・。あと俺は空気が読めないんじゃなくて読む必要が無いんだよ」
「あーはいはい先輩のぼっち自慢は1回で聞き飽きました。おかげで緊張も気まずさもどっか行っちゃいましたよ」
それでは改めて、と一色は1つ咳払いを挟む。
「仲良くしたい先輩がいるんですけどぉ、なにかおすすめの方法ってありますか?」
虚をつかれたような雪ノ下は、1度息を吐くとこめかみに手を当てて、半ばボヤキ混じりに言葉を吐き出す。
「一色さん、と言ったわね。自慢じゃないけれどそういった話にはあまり聡くないの。それとこれはお節介でしょうけど、そこの男は客観的に見てもあまりオススメはできないわよ」
「いえ、この人ではなく、もっと爽やかでかっこよくてみんなから慕われているような人です」
ごめんね、足りないところだらけで。
「そう、それとこれはお節介のついでなのだけれど・・・それでは何も解決しないわ」
何も解決しない。それは話出しの砕けた雰囲気ではなく、あの日向けられた、それに似ていたた。
なぜ戦わないのか。なぜ立ち向かわないのか。そう問うような声音。人に仲良くなる術を問うても、それでできる関係は上辺だけ。いつか綻び、破綻する。だから何も解決しない。
この流れならそう受け取るのが普通だろう。だけど事情を知ってる雪ノ下ならば、あるいは上辺だけの関係を求める、その理由まで察しているのかもしれない。
面倒な人間関係を解消するのにうってつけだと一色は言った。なるほど、それはきっと効果的な手なのだろう。だがそれも葉山隼人が卒業するまでだ。更には葉山に好意を寄せる女子から反感を買うことになりかねない。それ故、何も解決しない。どちらとも取れるその言葉を一色はどう捉えるのだろうか。
「それでも・・・」
隣から聞こえるその声に驚かされた。雪ノ下の声は決して友好的なものではなかった。それでもなお、彼女は萎縮などせず、凛とした態度で向き合う。
「何もしないでいるよりかはいいじゃないですか」
「それはただ逃げているだけでしょう。他人の力で得たものは、いずれ破綻するわ。根本を解決する以外方法なんてないの」
「それが分からないから、私なりに必死に考えたんじゃないですか!ずっと悩んで迷って!それでようやく先輩みたいな人に出会えて!これから変わるかもって!変えられるかもって思ったんですよ!」
初めて聴く叫びは、一色がどれほど追い詰められていたか、というのを物語っているようだった。
この必死な声を聞けば多くの人は同情的になるだろう。よく頑張ったと声をかけるのだろう。だが雪ノ下雪乃は違った。どこまでも毅然に、どこまでも冷酷に現実を叩きつける。
「そうだとしても、何も変わらないし悪化するかもしれない。貴方のそれはただ逃げているだけよ」
「そんな!だったら私は・・・!」
「だから根本を解決しましょう。その為なら私は協力を惜しまないわ。貴方にその勇気はある?周囲の人間と完全に敵対して、1人でも戦い抜く覚悟はあるのかしら?」
昨日のあれは覚悟があるのかと直接問われた訳では無い。だが似たようなものを感じた。そしてそれはやはり俺にも、もう一度問うているようであった。その先へ関わる覚悟があるのかと。
「そんなのわかりません・・・。わかりませんよ!」
一色は扉を開け放ち走り去って行った。
「いいの?追わなくて」
「もう片足突っ込んでるんだ。抜けるなら抜けるなりに方をつける」
そう、と雪ノ下は静かに返すと、膝の上に置いた文庫本へ目を落とした。バタバタして気づかなかったが、俺たちが来るまで読んでいたのだろう。きっとこれが彼女なりの正しい過ごし方なんだ。きっとこれが彼女なりの正しさなんだ。だが。
「誰も彼もお前みたいに強くはない。逃げ方を考えているだけでも立派なもんだろ」
俺の言葉に雪ノ下は顔も上げずに返す。まるで台本でも読んでいるかのように、過去に行われた問答を繰り返すかのように。
「結果としてさらに辛い思いをするかもしれないのは一色さんなのよ。貴方はもう勘づいているようだったけれども、この間の投函は彼女の名前でされていたわ。一色さんの様子からすると認知していなかったようだけれど」
どうやら雪ノ下も同じ結論に至ったようだ。一色がドッペルゲンガーかどうかなんてどうでもいいが、恐らくこれは始まりに過ぎない。イジメは小さな嫌がらせから派生するが、最初は決まって周りからの隔離だ。イジメても問題ない環境を作り上げる。例えば比企谷菌などと言い、奴はイジメても良い奴だと、庇えば巻き添えになると、周りから切り離す。そうすればあとは加害者のやったもん勝ちだ。
一色の様に立ち上がる勇気が無ければ、それはしばらくなくなることは無い。立ち上がっても中途半端なやり方だと、より強く叩き伏せられる。雪ノ下が懸念しているのはそこなのだろう。
一色もそれを理解しているからこそ、葉山隼人というカリスマに守りを求めたのだろう。やり方としては間違っていない。だが解決には程遠い。
もちろんそれも解っているからこそ、一色は声を荒らげたのだろう。そうして追い詰められたからこそ、俺なんかとの出会いで変革を期待してしまったのだろう。
ならば俺は俺なりにケリをつけなければならない。1度掴まれたこの袖を振り払わなかった時点で、俺にも責任がない訳では無い。現に本人から責任を取れと言われたのだ。ならば果たさねばなるまい。
「なぁ雪ノ下、お前の強さや理想を押し付けるのは、間違っているんじゃないのか?」
雪ノ下の肩が震えた気がした。だがそれは気のせいだと言わんばかりに平然とした動作で文庫本のページをめくり、告げた。
「そうかもしれないわね」
その投げやりな言葉とは裏腹に、もう話は終わりだと、触れるなと言わんばかりに冷たく響いた。
一色の後を追おうと踵を返すと、いつの間にか拳を握りしめていたことに気づいた。きっとあの剣幕で詰められなくてよかったと、心底安心しているのだろう。俺にはあれに立ち向かう勇気は無い。
一色が勢いよく空けたからか半分締まりかけたドアを開けると、目の前に女生徒が立っていた。
「うわっビックリした・・・」
「悪い。・・・あと何か聞いてたんだとしたら忘れてくれ」
「えーっと、なんの事かなぁー?」
「下手くそ過ぎるだろ・・・」
由比ヶ浜のあまりにもお粗末な演技にうっかり本音が出た。
「あははぁ、でもちょっと忘れるのは難しい、かも」
「後生だから忘れてくれ・・・」
そう一言告げて由比ヶ浜の脇を抜け、掛け出すと。
「ヒッキー!さっきの女の子なら上に行ったよー!」
あぁそう言えばこいつ俺の事そう呼んでたな。と言うか出てくとこ見てたって、確実に聞かれたよな。なんかめちゃくちゃ恥ずかしいことを言っていた気がするが、気のせいだ忘れよう。
走りながら右手を上げ謝意を伝え、階段をかけ上る。恐らく連絡通路へ向かったのだろう。わざわざ同じ階ではなく、1度屋外に出る上の階に行ったのなら、まだ連絡通路にいる可能性がある。
連絡通路に繋がる扉を開けると、やはり一色はそこにいた。
「遅いですよ先輩」
春の終わりの空気をめいいっぱい吸い込み、吐き出す。そう長い距離を走った訳でもないのですぐに息は整った。
「俺にしちゃ上出来だよ。お前こそ、夕日見て黄昏れる様なキャラだったか?」
「先輩、私の事何も知らないじゃないですか」
「この学校の中じゃ結構知ってるほうだろ」
「そうでした。失言です」
「それは昼間うっかり俺に本音言っちゃった事ですかね」
「それ、後悔してると思いますか?」
一色はイタズラっぽく微笑む。空元気を出すならもっとちゃんとして欲しい。そんな顔で言われても俺はどうすればいいんだ。
「知らねぇよ。お前のことほとんど知らんし」
「なんですかそれ。やっぱり知らないんじゃないですか」
「俺がお前から聞いた話以上のこと知ってたら怖いだろ」
「言われてみれば、そうですね」
話はそこで途切れる。気の利いた事を言ってやれれば良かったんだろうが、生憎そのスキルはぼっちになった時に消された。いや、最初からなかったような気もする。だけど、伝えたいことはある。
俺は一色のようには出来なかった。うずくまって嵐が過ぎるのをずっと待っていた。過ぎ去る日なんて来なかった訳だが。結局俺は中学を卒業するまで何も出来なかった。だから、俺は今の環境から抜け出そうとする一色を素直にすごいと思う。
これ以上関わる覚悟がどうかなんて、そんな大層なことは考えちゃいない。そもそも関わるかどうかも決めちゃいない。それでもこれだけは伝えねばならない。俺には責任があるらしいのだから。
「これは友達の友達の話なんだが」
「友達、作らないんじゃないんでしたっけ?」
「うるさいよ・・・」
妹の友達とでも言えばよかったか?いや、小町の友達にそんな陰険な奴はいらん。
「ともかく、人から聞いた話だ」
「わかりました。そういうことにしておいてあげます」
「お前・・・いや、いい。とにかく、俺が言えることは一つだけだ」
遠く沈もうとする夕日が世界をオレンジに染めあげる。ここから見る景色はこんなにも綺麗だったんだな、などと場違いな感想を抱きつつ瞑目する。
「お前は、間違っていない」
一色は少し驚いたようで、こちらを向いて固まっていた。
「だから、あれだ。そんなに気にすんな」
「ありがとうございます。でも雪ノ下先輩にはボロクソに言われましたよ」
「あれは戦う力を持ってるやつの言い分だ。普通の人間は雪ノ下が言うようにはできん」
「それはそうですけど、でも悔しいじゃないですか。自分が必死になってやってたことを全否定されて。しかもそれじゃダメだって自分でもわかってたことまで見透かされて・・・」
「お前何か勘違いしてないか?間違ってなきゃなんでも上手くいく訳じゃないだろ。間違ってなくたって理不尽に振り落とすのが社会なんだよ。人間関係の集合体が社会なんだから、個人間の関係性だって間違わなくても拗れるに決まってる」
そう、何も間違えなくたって人は人を蹴落とす。閉じられた世界で過ごしてればなおのこと。自分より上の人間がいる中で、自分の優位性を示すには自分を磨き続ける努力よりも他人を蹴落とす方がよっぽど楽だ。
一色はクスリと笑うと視線を赤く照らす夕日へと向ける。
「あーもう本当になんなんですか。拗れてるのは先輩の方じゃないですか。なんだか悩んでいたのがバカみたいです」
その横顔を見た時、ふっとある思考が脳裏をよぎる。こいつってこんなに・・・。そこで一度かぶりを振り思考を止める。あまりにも場違いな感情。
一色の目が確かに輝いていたから。一色の声が確かに決意を帯びていたから。だから間違いだ。そうに決まっている。
前へ目を向けるとあんなに輝いていた夕日が海の向こう、ビルの影に沈む。赤の世界は暗みを帯び、見上げる空は、暗く深い青が空を埋め始める。
「私、もう一度雪ノ下先輩に話をしに行きます」
あぁ、さっきの眩しさはかっこいい、だ。憧れや羨望の現れなんだ。だから一色いろはが可愛く見えたのは間違っている。
@
なんて晴れやかなんだろう。なんて暖かなんだろう。あんな不器用な言葉が、捻くれて拗れた言い方が、こんなに心に染みるのはなんでだろう。きっとまたあの時みたいに可愛い笑顔になっている。
この笑顔を見ているのが先輩だけというがなんとも言えないが、いや違う。この暗がりで先輩にすらちゃんと見えていないであろうことが少しもったいないのだ。
いつかきっと、好きな人が出来た時。その時にその人へ見せることが出来ればそれでいい。
それよりも先ずは目の前のことだ。逃げるように飛び出した教室に戻るためには、まだ勇気が足りない。そうだ明日にしてしまおう。何も世界が今日で終わる訳じゃないんだ。3年間の高校生活も、まだたったの2ヶ月しか経っていない。1日くらい現実から目を背けるのも悪くは無い。
それに勇気が足りないなら、他の何かで補えばいいのだ。例えば拗らせた捻くれ感、なんてどうだろうか。丁度最近仲良くなった先輩がそこを補えるはずだ。友人と呼ぶにはいささか時間が足りないが、他人と呼ぶにはぶっちゃけすぎた話をしている。
きっと嫌そうな顔をするんだろうな。それでも最終的には一緒に来てくれるんだろう。想像するだけでまた笑顔になる。
「ねぇ先輩。明日の放課後って暇ですよね?」
責任、取ってもらっちゃおう。
+@
ーーーそれはちょっとした思いつきだった。
サブレの散歩をしていた時、新しい首輪が目に付いた。それは数週間前に東京わんにゃんショーで壊れて、丁度会場で買ったものだ。前回は赤い首輪で、今回はピンク色の可愛いやつ。
そう、首輪が壊れた時、たまたま近くにいたクラスメイトがサブレを捕まえてくれた、と言うよりか飛びつかれたおかげで、サブレの脱走を防げたのだ。脱走と言ってもサブレは逃げ出したかったのではなく、いつも散歩帰りに首輪を外すと走り出し家の中を駆け回っている。それが癖になっていて、あの時もその癖が出てしまったのだと思う。クラスメイトのヒッキーに飛びついたことは謎だ。
ちなみにヒッキーという呼び方だけど、1年の頃クラスの友達?にそう呼ばれていて何故かしっくり来たから私もそう呼ばせてもらっている。本名は確か・・・ヒキ、ヒキタニ?だったはず。ヒッキーの方が可愛げがあるしいいと思う。
少し話が逸れたけれど、要はあの時のお礼をしていなかったことを思い出したのだ。ママにそれとなく相談したところ、
「男の子は手作りクッキーでイチコロよ!」
と性別すら明かしていないのにアドバイスをされ、作るのも手伝うと言われた。ママが手伝うと、ほとんどママが作っちゃうから断ると、
「それはイチコロだからやめなさい」
と真顔で止められた。イチコロだからやれとか、イチコロだからやめろとか、ママも少し抜けているところがある。
1度断った手前、ママに作り方を聞くのも癪だから家庭科の先生に相談したところ、生徒同士で協力し合うことも大切だからと、奉仕部なる部活を紹介された。顔が少し引きつっていた気もするけどきっと気のせい。
そして訪れた奉仕部が活動しているという特別棟の空き教室。ノックをしようとすると、扉の内側から声が聞こえた。曰く仲良くしたい先輩がいると。
恋バナかと思い、つい聞き耳を立ててしまった。すぐに険悪なムードになり完璧に出るタイミングを失ってしまったけれど。
もっと言えば聞き入ってしまって、立ち去ることも出来なかった。
「ただ逃げているだけ」
その言葉はまるで扉の向こうから、自分に対して言われているようだった。
「そんなのわかりません」
その言葉はまるで扉の向こうへ、自分の口から出てきたようだった。
その後すぐに女の子が飛び出してきて避けようとしたけど少し肩がぶつかる。それを気にする余裕が無かったらしく女の子は階段を駆け上って行った。
「強さや理想を押し付けるのは、間違っている」
その言葉は聞き覚えのある声で、自分に突き付けられているようだった。
どうしてここまで心に響くのかな。自分の他人に合わせてばかりなところとか、なかなか意見を言えないところとか、そういう部分をさっきの女の子に重ねていたのかもしれない。でもきっとそれだけじゃないと思う。
きっとあの子にかけられた声も、その声の主に投げかけた言葉も、全部あの子のことを真剣に考えているから。だからこんなにも痛くて、こんなにも暖かいんだ。
空き教室から出てきたヒッキーに女の子の行き先を伝えた後、私は1人廊下に残されていた。あんな空気だったんだからここは帰るべきなんだろう。だけど周りや空気に流されていた、そんな私を変えたくなってしまった。そのはじめの一歩として、ワガママなこの気持ちに従ってみよう。
開け放たれたドアの中、外側からの干渉を拒むような空気感のそこへ。私は1歩踏み出した。
「失礼します」
「あなた、廊下で何となく話は聞こえていたのでしょう?普通入ってこないと思うのだけれど」
その冷たい言葉が、何故か懐かしくて。
「雪ノ下さん、だよね。知らないの?普通って結構大変なんだよ?」
「さっきまでの話を聞いて、日を改めるという選択のどこが大変になるのかわからないのだけれど・・・」
近い未来。かけがえのない絆が結ばれる気がして。
「まぁ正直自分でもどうかと思うけど・・・。あ、もちろん雪ノ下さんが改めろって言うなら明日にするけど」
「別に、構わないわ」
これから過ごす日々への期待に胸を膨らませて。
「ありがとう雪ノ下さん」
「構わないと言ったでしょう。それでどんな相談なのかしら」
本当はもっと前にこうするべきだったと言う確信を抱いて。
「私ね、クッキーを作りたいんだ」
ーーー私の青春が始まる。
描き始めてからどれくらいの月日がたったのだろうか。
もはやまえがきになんて書いたかも覚えていない始末。
今まで書いた内容と整合性をとりながら、となると余計速度が落ちてゆき…。
結果整合性が取れているのか、誤字や脱字があるのか、そんな最終チェックすらできていませんが、とりあえずのupでした。
整合性が合わずとも、ノリと勢いで楽しんでくだせぇ。
そして時間があるならぜひ感想を…。
感想が私のモチベとなり文字になるはずなのです。
明日海辺で酒を飲みながらたくさんの感想を読んでいる未来がみえます。
おっすって感想が来たらうっすって返そうかな、どうしようかななんて考えてたりなかったり。
最後ですが、こんな所まで読んでいただきありがとうございます。
ガガガ文庫の編集さん、素人の二次創作ですが、担当編集付けるって声がけまだ待ってますからね。
僕を肯定し続けてくれるだけでいいから、頼むぜぇ…!
それでは皆さんごきげんよう。