魔獣母胎で病んでる彼女の強くてニューゲーム   作:鏡狼 嵐星

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最初に。遅れて非常に申し訳ありませんでした。

もはや8ヶ月ですね。大学三年生ということもあって、忙しかったんですよ!(言い訳)

ゆっくり投稿していきます。ゆっくりすぎんだよボケェ!って方は本当にごめんなさい。近々、新しいやつ投稿する予定だから! 予定だから!


転生者一人目

深夜。暗い空を街の明かりが照らし、月の明かりを霞ませる。本社の明かりがついていないくらい部屋で、私はコピー機から出てくる資料を見つめていました。

 

この会社のデータ、ヒーロー関連から得た情報、私の個性で集めた手がかりでわかった、この世界と向こうの世界の違い。

さらに、この世界の歴史自体は向こうの歴史と何ら変わりはありません。歴史に名を残すような人物、国、文明が変わっている部分はない上に、経済、世間のニュースも前回から大きく変わったものはありませんでした。

 

だが、この世界で確実に違うことをいくつか発見して、少々驚いています。ティアさんと柊さんに関連性のあったある人物の性別が変わっていました。

一人目は爆豪勝己。この世界では勝紀と名が変わっていて、女となっていました。性格や個性自体には変化なし。

二人目は轟焦凍。名前こそ変わっていないものの、こちらも女。先程と同じく性格及び個性に変化なし。

 

次に存在しなかったはずの人物。向こうの世界では確実にいなかったはずの存在。

一人目に轟歌努駆(かどく)。轟家次男。向こうの世界では次男は轟夏雄という人物であるはずでしたし。母親似の真っ白な髪を持つ、卑屈気味な青年。個性は『冷気生成』。自分を中心に冷気を生成して操作しますが、冷気しか操れないため、気温に弱いそうです。

二人目に緑谷入常(いりつね)。緑谷家長男。緑谷出久の双子の兄であり、誰からも好かれるような性格であり、個性も強力。まさに生まれついたヒーローのようだと周りから評価される男。個性の詳細は『再生』。名の通りですが、四肢欠損レベルだと、再生に相当時間がかかるらしいです。

 

その他ものものを含めた個人情報がコピーされた用紙を眺める。前者二人は転生者と断ずるには早いでしょうね。なにより調べている間にわかったことが子供さながらであるし、知性の突出や特異的な行動などは見られません。

だが、後者二人は少し違う。まず前回の世界にいなかった時点で怪しいですね。それに歌努駆という男の方は突出した能力こそありませんが、緑谷入常は違う。幼い頃から好成績を叩き出し、運動能力も突出。天才ともてはやされているそうです。

 

私の考えでは、緑谷入常はほぼほぼ黒でしょう。轟歌努駆のほうはまだ断定はできませんが、黒に近い。まずは轟歌努駆に対して接触を図るとしましょうか。毛の中から携帯を取り出し、スルトに向けて電話をかける。

 

「こんな時間になんのようだ?」

 

「エンデヴァーから娘の指導をしてくれないかと散々言われているそうですね」

 

「ああ。だが、メリットがないと断っているが」

 

「受けてください。柊さんに対して、最大級のメリットができました」

 

「ほう。そこが気になるところだが、お前が言うならそれは間違いないのだろう。ククク、了解した」

 

「ついでに轟焦凍という人物を見極めてください。指導方法は指定しません。なんなら『ノウム・カルデア』の施設を使っても結構です」

 

「そこまで許可するのか。いいだろう、我が母や我が父を守る尖兵程度には最低限、鍛えてやる」

 

「お願いします」

 

電話が切れ、もう1度資料に目を向ける。前の世界での過去、いやこの世界での未来において、柊さんとティアさんと関わりの深かった事件に関わる者たちにも接触しておきますか。一応味方として(・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

決して僕は手を抜いたわけじゃなかった。ロシア異聞帯のときも、キリシュタリアの元にいたときも、カルデアと戦うときも。だが、僕は最終的に誰にも勝てなかった。

 

ギリシャ異聞帯でリンボに殺されかけ、ラスプーチンと会話したのを最後に意識が途絶え、気づいたらこの世界に生まれ変わっていた。

 

「おーい、歌努駆ー。ゲーセンでも行こうぜー」

 

魔術の代わりに個性なんてものが存在するが、この世界は平和でしかない。自分の体に魔術回路がないことに気づいたときは、夢であることを願った。

 

「……俺はいい」

 

「またかよ。最近、付き合い悪いぜ? なんかあったのか?」

 

「なんでもない」

 

「まぁ、いいけどよ。じゃあまたな」

 

高校なんてものに通っているが、魔術協会で生きてきたときとは緩すぎてあくびが出る。全てが緩い。逆に藤丸があそこまで甘かった理由がわかった気もする。

 

「ロックだけは向こうとさほど変わらないな……」

 

唯一良かったと感じたのは、携帯につなげたイヤフォンから流れてくるロックのリズムは聞き親しんだものだったことだ。荷物をまとめ、別に帰りたくない自分の家へと変える準備をする。

 

家へと帰る途中のリサイクルショップで、少し古めのロックCDを探すのが、最近の日課になっている。そのリサイクルショップの店番をしている初老の男性に挨拶を済ませて、CDを物色する。

 

「目新しいのはないか……」

 

ふと目にした一枚のCDのデザインに、白い長い髪の女性が雪の下で立ち尽くすデザインが合った。僕は思わず、彼女のことを思い出してしまった。

 

「アナスタシア……」

 

ジャンルはラブソングと好みではないが、それを持ってレジに向かおうとしたときだった。

 

「ほう、そういったジャンルも好みなんですか? 意外と純粋なんですね」

 

真後ろからいきなり聞こえた声に思わず、腕をふるってしまったが、そこには誰もいなかった。どうなってる?

 

「下ですよ」

 

視線を下にずらすと、そこにいたのは一匹の羊だった。しゃべる羊なんてものが、魔術無しでありえるなんて、今まで想像しなかった。だが、目の前にいる以上信じるしかない。

 

「いきなり話しかけてくるんじゃない。というか、一体何なんだ、お前」

 

「それはすいません。私は『ノウム・カルデア』に所属しているドゥムジと申します」

 

ノウム・カルデア。この世界に唯一、向こうの世界の名を持つ会社であり、そしてあのイヴァン雷帝が所属する会社。最初見たときは驚愕という言葉では表せないほど腰を抜かした。なぜあの男がヒーローなぞに、と考えざるを得なかった。僕の異聞帯では、起きること自体が天災でしかなかった男が。

 

「はじめましてですが、あなたに用があってきたんですよ。轟 歌努駆さん」

 

名前が知られている? 父親となっている男はエンデヴァーとして有名だが、その家族は有名なわけではない。こいつ、明らかに僕を狙っている? 何が目的だ?

 

「あいにく、父親のことは何も知らない。妹の方にご執心だからな」

 

「えぇ、知ってます。何度も言いますが、私はあなたに会いに来たんですよ」

 

言っている意味がわからない。僕に一体何のようだ?

 

「まぁ、なんです。これからお暇でしょう? 付き合っていただけませんか?」

 

「何が目的だ。それを話そうともしないやつとなんかと付き合えるか」

 

羊は片足を使って悩むような動きをしたあと、自分の毛の中に手を入れた。

 

「言ったとおりです。あなたに会いに来た、いえ正確には情報交換をしに来たんです。あなたはこの世界のことで知りたいことはありませんか? 私はあなたの世界を語ってほしいところですが」

 

こいつ、知っている!?

 

「どうやらあなたは疑り深いご様子。ならば、取引をしましょう」

 

取引、か。僕は今、情報面で圧倒的に不利だ。別に漏れたって困らない情報だが……。いや、待て。丁度いい機会だろ。この世界について、イヴァン雷帝について、そして彼女について、詳しく聞くには今しかない。

 

「……取引の内容は僕が決めていいんだろうな。ドゥムジ」

 

「おや、乗り気ですね。いいでしょう、こちらの要求だけ叶えてもらえばければ、私に叶えられるのならば、どんな要求でも結構。大概は叶えてあげられますよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようこそおいでくださいました、ドゥムジ様。お二人ですね、こちらです」

 

東京、銀座。その中でも特に高いビルの最上階にあるフレンチレストラン。その中で、小さなテーブルとそれに合わないほど大きな個室に、雰囲気に似つかわしくない羊と少年が食事のために席についた。ドゥムジが一通りの注文を済ませた後、歌努駆は口を開いた。

 

「その見た目で、肉を食うんだな」

 

「こんな見た目ですが、人間の戸籍ありますよ?」

 

「ああ、そうだったな。そんな外見でも、お前は一応人間だな。まったく個性っていうものは意味不明だ」

 

「それ、差別発言ですから、私の前以外で言わないでくださいね?」

 

歌努駆が大きな肉のステーキを切り、口にした。歌努駆自身はあまり上等なものを食べることを好んでしなかったため、美味しいと感じる反面、むず痒かった。

 

「取引の内容を確認したいのですがいいでしょうか? まぁ、私が要求するのは『あなたの過去』をすべて話してもらうことだけですが」

 

「……僕が要求することは山ほどある。僕の過去を聞く理由、僕の過去に関連してお前に聞きたいこともあるし、僕のやりたいことを手伝ってもらう。取引の内容は僕が決める、それでいいんだよな?」

 

「できることにも限りがありますよ? まぁ、私が語れることは語りましょう。やれることはやりましょう。ここまで譲歩しているんですから、嘘は付きませんよね?」

 

「これは取引だ。その上、内容はこっちが決めていい、と来た。こんなに有利な状況はそうないんだぞ、そんな馬鹿なマネはしない」

 

両者ともに持っていたナイフとフォークを置く。

 

「まずは僕の方から語ろう。そのほうがお前も都合がいいだろうからな」

 

僕は異聞帯のことを中心にドゥムジに語った。魔術が使われていた世界、カルデアという組織、クリプターの存在、サーヴァントという影の英雄、異聞帯とその王であるイヴァン雷帝のこと、その世界の結末までそのすべてを語った。

 

「ふむ、なるほど。あなたが『ノウム・カルデア』という単語に対して、過剰に反応したように見えたのは見間違いではありませんでしたか」

 

「僕が今喋ったことが僕の体験した全てだ。まぁ、僕はキリシュタリアの異聞帯で、リンボにとどめを刺されてからの記憶はない。気づいたら赤子になっていただけだぞ」

 

「いえ、私が欲しい情報は得られました。ご協力ありがとうございます」

 

本当にそうか? 表情が単純すぎて、その真意までは読み取れない。だが、満足していない、納得していないことはわかる。

 

「お前がそれでいいなら、僕の話は終わりだ。僕がさっき質問したことを説明してもらおうか」

 

「貴方の過去が知りたいのは、あなたが転生者であるから。これだけでは説明したことにならないので、どうしてあなたが転生者だとわかったかどうかについてご説明します」

 

それを話してくれるのか。多少ごまかされるだろうと思っていたけど。

 

「簡単に言えば、私はこの世界とほとんど同じ世界からタイムスリップしてきたんです」

 

「……違う時間軸からのタイムリープか」

 

「理解がお早い。故に将来何が起こるのかはある程度知ってます。私は前世の知識を利用し、前の世界にはないものを洗い出しました。そのうちの一つがあなたです。転生者である確信は最後までありませんでしたが」

 

「つまり、僕が転生者であることを知ってたわけではなく、カマをかけられて、僕がそれを漏らしただけか。何か論理があるのかと思えば、ただのバクチじゃないか」

 

「そう言いますけど、転生なんてものに論理なんて作れませんよ。現実にあることを怪しむレベルです」

 

ドゥムジの言葉は正論だ。僕のした話も妄想だと言われれば、それで終わり名上、変人扱いは避けられないだろう。

 

「僕の過去について聞いてきた理由はわかった。次だ」

 

「おや、タイムスリップしてきたことに関しての質問はよろしいので?」

 

「僕と同じ世界から来たならまだしも、この世界のことに関しては興味ない。一応聞くが、僕のいた世界に心当たりは?」

 

「ないですね」

 

ならイヴァン雷帝も全くの別人である可能性のほうが高い。いや、そうとしか考えられない。

 

「ならいい。最後だ。僕は探したい人がいる。手伝ってくれ」

 

「前世のアナスタシアと呼ばれているお方ですか?」

 

「ああ」

 

「この世界からいるかもわからない一人の人間を探すと?」

 

「少なくとも僕の前世にはイヴァン雷帝がいた。ノウム・カルデアという組織の名前が存在することを含めれば、まだ希望があるはずだ」

 

言い分としては苦しいか。だが、こいつの協力を得られなければ、世界中を回って彼女を探すなんて事はできない。事前に提示した条件には含めた。ここで断るはずは、ない、はずだ……。

 

「…………条件がいくつかあります」

 

「飲む」

 

「即答ですか。臆病なようで、肝が座っていますね。高評価です。それだけ、あなたの思いが強いことも理解しました」

 

表情はあまり動いていないが、明らかに声音が上がった。どうやら成功したらしい。

 

「まず、今通っている高校をやめてもらって、ノウム・カルデアの組織の一つに所属していただきましょう」

 

「いいのか? 高校を卒業するぐらい待っても構わないが」

 

「なに、そこらへんはどうにかします。あなたの探したい人が見つかるまで、別の仕事を並行して行ってもらえばいいですし、そのあたりは私が斡旋します。今、世界に支部を伸ばしているので、そこを回ってもらうのでもいいでしょう」

 

「……条件と言えるのか、それは?」

 

「これからです。第一に、あなたの今後の人生で、我々の組織以外のあらゆる組織に所属することを禁止します。この国にいる上で必要最低限の関わり以外は絶ってもらいます。まぁ、身内以外はほぼ全てですね」

 

組織の内情を知られたくないのは当たり前か。

 

「わかった」

 

「躊躇しないですね。友達います?」

 

「ほっとけ。次は?」

 

「もしあなたが目的の人を見つけたとして、その人に関しての全てはあなたがどうにかしてくださいね。生活とか色々あるじゃないですか?」

 

「もとからそのつもりだ」

 

「おや、かっこいいお言葉ですね。最後ですが、我々の主人に忠誠を誓っていただきましょう。シンプルですね」

 

…………。

 

「最後の最後に爆弾を持ってきたな? 単刀直入に聞くが、お前の主人は信頼できるのか?」

 

「ええ、少なくとも自分の為に死ねとは言わない方ですよ。あなたが従順であるならば」

 

「……もとから飲むと言った。構わない」

 

「では、契約完了ですね」

 

「ああ、契約完了だ」

 

ドゥムジが指もない足で、器用にグラスを上げてみせる。僕もそれに合わせて、水の入ったグラスを上げる。

 

この一日で、今まで色あせたように見えていた世界に初めて色がついたように感じた。

 

アナスタシア。この世界にいる確証があるわけじゃない。でも、必ず見つけてみせる。そのためになら、僕はすべてを掛けてみせる。

 

「さて、歌努駆さん。さっそくご自宅にお伺いしても?」

 

「カドックと読んでくれ。そのほうが僕も都合がいい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうも、ドゥムジです。カドックさんを見事に取り込みました。これで転生者は二人目ですね、いい調子です。

 

蛇足ですが、カドックさんが話していたアナスタシアという方は、すでにノウム・カルデアにいました。名前が違っていたので、全然気が付きませんでした。見つけた瞬間に立ち会ったのですが、流石の私でも、カドックさんが可愛そうになりました。




ネタは上がるけど、まじで書く時間が無いです。
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