IFもしも鬼化したのが炭治郎だったら   作:カボチャ自動販売機

8 / 8
気がつけば久しぶりに……。
やっぱり戦闘描写が苦手過ぎる。

感想・評価ありがとうございます。
原作は無事完結しましたが、また違う結末を目指して頑張ります。




8話 冨岡義勇

零余子の血鬼術の原型となるのは植物。植物とは人間が到底知り得ない程の種類が存在し、その性質は様々。

強度は大したことはなくとも、多様性と汎用性、近距離から遠距離までこなすその攻撃手段の多さこそが、零余子の血鬼術の厄介さであった。

しかし、しのぶは既にこれを攻略する戦法を発見していた。それは善逸の奮闘によって判明した事実であり、考えてみれば当然のこと。

 

結局のところ、操っているのは零余子である、ということだ。

 

――【雷の呼吸・壱ノ型 霹靂一閃 六連】

 

――【蟲の呼吸・蜈蚣の舞 百足蛇腹】

 

落雷の如き音と共に姿を消した善逸が残像すら残さずに一瞬の内に移動しては、植物による攻撃を砕き、しのぶは、地を割るほどの踏み込みで、四方八方にうねるように飛び回り攻撃をする隙すら与えずに接近する。

 

操る零余子に捉えられない以上、攻撃が定まらない。善逸やしのぶが避けるまでもなく、植物による攻撃は空を切っていく。零余子はそれでも攻撃を繰り返しながら後退し、二人との距離を一定に保つことは徹底していた。順応によって力を手に入れ、万能感から攻撃的な性格になって尚、零余子の攻撃は自身の安全の確保を確実にした上での選択であることは変わりなかった。

 

 

しかし、だからこそしのぶにとっては読みやすい。誘導しやすい。

 

 

「いい加減死ねよぉおおお」

 

 

――【血鬼術・斬葉雨(ざんはう)

 

捉えられない敵に対して、零余子が放ったのは葉の雨。血鬼術により硬度を増した葉が刃となって降り注いだ。一つ一つの威力は小さくとも、善逸としのぶの機動力を削ぐには十分な役割だろう。

 

「想定通りです」

 

葉の雨が降り注げば、無作為に高速移動することが出来なくなるため、確かに二人の機動力を削ぐには十分な働きではあるが、それがしのぶの狙いでもあった。

 

「善逸君、敵の鬼を指定の位置に誘導してください」

 

善逸の聴力は人の心音を聞き取れる程の精度を誇る。しのぶがすぐ隣にいても聞こえないほどの小声で指示をしてもそれを聞き取ることができる。これによって敵を気にすることなく、指示が出来るため、即席であっても抜群のコンビネーションを可能にしていた。

 

しのぶは頑なに認めることはないだろうが、しのぶと善逸の戦闘スタイルは似ている。

 

それはつまり、速攻。速さで敵を翻弄し、必殺の一撃を放つ。

 

零余子は状況に応じて術を使い分ける程に頭が良くその多彩な攻撃は厄介だ。しかし、今の状況はその利点を削いでいる。多彩であるはずの選択肢をしのぶによってコントロールされているのだ。

 

【血鬼術・斬葉雨(ざんはう)】は確かに機動力を削ぐことが出来る。しかし、だからこそ、零余子は無意識に安全だと思い込んでしまった。

 

安全は、慢心と油断を生み出す、甘い蜜()となる。

 

「そろそろ、ですね」

 

僅かな安心による毒。

零余子が徹底して保っていたはずの互いの距離は、いつの間にか僅かに縮んでいた。その僅かに縮んだ距離こそが、致命的。この距離はしのぶにとって一足一刀の間合いなのだから。

 

――【雷の呼吸・壱ノ型 霹靂一閃 六連】

 

零余子の血鬼術を稲妻の如く走る善逸が砕き、裂き、蹴散らす。空中に散布されていた【血鬼術・斬葉雨(ざんはう)】によって切り傷を受けながら、善逸は最高の役割を果たした。

 

「上出来です、善逸君」

 

善逸の奮闘により、零余子としのぶを遮るものはもう何もない。雷の如き閃光の横を、蜂のように鋭く横切る。

 

 

――【蟲の呼吸・蜂牙ノ舞 真靡き】

 

神速。

鬼の頸を斬れない胡蝶しのぶの特化した必殺の突きが、認識する間もなく零余子の目前にまで迫り――――

 

「しのぶさんっ!」

 

――閃光と轟音。

それがしのぶに直撃する寸前、動いたのは善逸だった。

誰よりも早く、彼の耳はそれが飛来する音を捉えていたのだ。

 

善逸は臆病だ。情けなく、卑しく、女々しい。ただそれは彼という人間性の上澄み、にがりのようなもの。

 

彼の本質は、優しさと一途さ。

気絶しながら戦う善逸が、刹那の時の中で考えていたのは、しのぶが傷付けば禰豆子が悲しむという、ただその一心。

 

飛び出した善逸は、その察知能力の高さで、音速すら越える光速の一撃を――ほんの指先一つ分、超越した。

 

「なっ!?」

 

僅かにしのぶに触れる指先。

その指先でしのぶの羽織を摘まみ、回転。宙で足場もなく、体重も軽いしのぶは、善逸と入れ替わるように、弾き飛ばされた。

 

しのぶの視界に写るのは、閃光に呑まれる善逸。

 

「愉快、愉快!楽しいのぅ、虫のように這っておる」

 

突然の状況に、混乱しながらも、自分が善逸に庇われたのだ、と瞬時に理解したしのぶが、地に伏した善逸を庇うように移動すると、目の前には二匹の鬼。

 

 

「腹立たしい。下弦の弱さも、蝿共の煩わしさも」

 

 

黒い長髪、額には二本の太い角、左手には錫杖――瞳には、上弦と肆の文字。

 

 

「積怒よ、久方振りに離れたのだ。楽しもうではないか」

 

「可楽、お前と混ざっていたことも腹立たしい」

 

もう一匹、全く同じ容姿をした、右手にヤツデの葉の様な団扇を持った鬼。こちらも瞳には上弦と肆の文字が刻まれている。

 

 

「ならば、この娘は儂がもらうぞ。柱を殺すのは格別だ」

 

「さっさとしろ、儂はさらにイライラしてきた」

 

詳細は分からないが、上弦が二匹。まだ息はあるものの、ダメージの大きい善逸を背に、しのぶは自らの不利に冷や汗を流す。

 

しのぶは柱とはいえ、複数対一を得意とする剣士ではない。

しのぶの剣術は『刺す』ことに特化しており、刺す、とはつまり刀が一本である以上、その対象を一つに絞る必要があるからだ。

 

そして、鬼狩りのセオリーとして、同形の鬼が複数体同時に出現した場合、それは同時に殺すか、全て殺さなくては滅することができない。

 

しのぶの剣術とも、毒という唯一無二の武器とも、極端に相性が悪い。

 

状況は最悪だった。

 

「は、半天狗様ぁ!?何故、ここに!?」

 

零余子の素っ頓狂な叫びは、この鬼の参戦を零余子もまた知らなかったことを意味する。

 

「無惨様はお前達下弦に何の期待もしていない。虫一匹殺せぬ下等なお前達には」

 

「カカカッ、積怒は厳しいの。弱いのが面白いのではないか」

 

しのぶ一人であれば、僅かな勝機であっても、鬼を、況してや上弦を前にして、逃げるなどありえなかったが、背後には善逸が、そして、この山のどこかでは、まだ戦っているかもしれない弟子達がいる。

ここに上弦が現れた以上、そちらにもまた、相応の鬼が加勢している可能性は否めない。

 

善逸や弟子達のことを考えればここは逃走しかない。

しのぶは、自らの復讐心を必死に抑え、善逸の襟を掴む――が、すぐにそれを離した。

 

自らの体重よりも重い善逸を持ったままでは、いかにしのぶが神速の持ち主であっても逃走は難しい。況して、敵には植物を操ることができる零余子がいるのだ。逃走経路は(ことごと)く潰され、邪魔をしてくることは間違いない。

 

しのぶの導き出した結論――逃走は不可能。

 

 

「し、のぶ、さん?」

 

善逸が目を覚ましたのは、その、あまりに穏やかな心音のせいか。

不穏な気配を感じ取ってのことか。

 

「善逸君、足は折れてませんね。直ぐに立ち上がって出来る限り遠くに逃げてください。既に私の鎹鴉が増援を呼んでいますので、そこまで全力で駆けなさい」

 

痛む体を無理矢理起こし、立ち上がった善逸にしのぶが微笑む。あまりに美しく――朽ちるように儚げな顔で。

 

「私がなんとしてでも食い止めますので」

 

「そ、そんなぁ!逃げましょうよ!勝てっこない!」

 

善逸とて分かる、対峙している鬼の強さ。

何百、何千という人を喰ってきた、死の気配。かつてない圧倒的、悪。

しのぶが柱であり、自分よりもずっと強い剣士だと分かっていても、上弦二匹と零余子が相手では、勝てるとは到底思えない。

 

「カナヲには、復讐は考えないように、と。禰豆子さんには、カナヲを頼みます、とお伝えください」

 

「嫌だよぉ!一緒に逃げようよ!」

 

しのぶの言葉はつまり、この場で自身が死ぬことを確定した未来とした上でのものであり、遺言だ。それを聞いて、やはり勝てぬ戦いなのだと理解して、しのぶが死んでしまうと確信して、それでも逃げるという選択肢を善逸はその性格上、取れずにいた。

 

「カカカッ、話は終わったか?小僧は逃がしても構わぬぞ?――いや、こういうのはどうじゃ、小娘が生きてる間は儂らは小僧を追わん。積怒、良いだろ?」

 

「好きにしろ。儂は知らん」

 

 

鬼は遊び感覚。しのぶにとっては都合が良い話だった。自分が耐えれば耐えるだけ、善逸が生き延びる確率は上がり、ここで敵を釘付けにすればするほど、カナヲや禰豆子へ向く戦力を減らすことができる。

 

しのぶは覚悟を決めて刀を鞘から抜いた。

 

しのぶの刀は鞘に収めることで仕込む毒の変更、調節をすることが出来る仕組み。鞘から抜けば、もうこの毒での一発勝負だ。場合によっては、しのぶの稼げる時間は一瞬。

 

「――善逸君、行きなさい!!」

 

命を賭けたしのぶの戦い。

ここで自分が逃げなければ、それが無駄になってしまう。なのに、足は動かない。逃げることも、加勢をすることも、出来ぬまま石のように固まっている。

そんな善逸を待つことなく戦局は動く。

 

動き出した可楽に、しのぶはいよいよ特攻を仕掛けようと構えた――その刹那。

 

 

――地を踏み締める爆撃のような音と同時に、木々を粉砕し、暗闇から飛び出す、紅蓮の影。

 

 

「カカカッ、これは、これは。お前を殺せば無惨様が大層お喜びになられるぞ――」

 

 

唖然とするしのぶを守るように現れたのは、赤銅色の長髪を揺らし、狐の面を着けた男。緑と黒の市松模様が鮮やかな着物を羽織り、右手には長い刀。

 

「――竈門炭治郎」

 

その男、竈門炭治郎は静かに面を外し、燃えるような瞳で半天狗を睨みつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻。

 

 

「カカカッ、金剛石をも砕く俺の爪を防ぐとは!お前、柱か!」

 

「……俺は柱じゃない」

 

 

二匹の鬼を前にして、傷付いた禰豆子と、カナヲを庇うように立ち、冨岡義勇は至って冷静に、冷たく、その刃先を向けた。

 

 

「――だが、お前は殺す。俺は頭にきている」

 

 

役者は揃い、戦いは新たな局面へと移行しようとしていた。

 




シリアス過ぎておまけが思い付かなかった……。おまけスランプです。そんなわけでアンケートをさせてください。

今後の大正コソコソおまけ話の方針について

  • もっと百合
  • もっとギャグ
  • ドSな禰豆子さんシリーズ
  • 柱を膝枕していくシリーズ
  • しのぶ膝枕謹慎生活シリーズ
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