宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


白色彗星帝国の逆襲10 歓迎会

 宇宙基地ギャラクシーには、所謂商店街に相当する店舗が存在する。先に基地を使用していたデスラーらガミラス人たちが運営する店舗に倣って、地球側でも同様の店舗を運営することになっていた。

 ギャラクシーに配属された平田は、ヤマトの任務を離れて、専任でレストランの運営をしていた。その日、その平田が腕をふるうレストランでは、到着した移民船団の代表者たちを招いて、歓迎会が執り行われていた。

 

 テーブルの配置が変えられ、立食のパーティ形式となっていた。それぞれに、デスラーたちガミラス人たち、そして古代たち地球人、スターシャらイスカンダル人、移民船団のガミラス人たち、といった参加者の代表者がテーブルの前に立っている。

 デスラーやスターシャが列席する宴に、移民船団から参加した民間人は、緊張の面持ちだった。中には、デスラー総統の姿を見て、恐れおののいて震えている者もいる。

 移民船団の代表者から、一人のガミラス人の女性が、壇上に上がって挨拶をしていた。

「ガミラス移民団代表のテリシアです。この様な場を設けて頂き、皆さんに感謝致します。私たちガミラスやマゼラン銀河の人々と、地球人との友好関係は始まったばかりです。私たちは、先陣として、その礎を築こうとしています。どうか、今後とも、よろしくお願い致します。また、デスラー総統、そしてスターシャ女王にあらせられましては、お元気そうで何よりです。皆さんとも、今後の交流が深まることを願っています」

 参加者から大きな拍手が起こった。続いて、古代が壇上に上がった。

「えー、本日はお日柄も良く……」

「おい、古代。結婚式じゃないんだぞ」

 古代のすぐ目の前にいた島が、にやにやとしながら野次っている。会場からは、わずかに笑い声が起こっていた。

「こ、こほん。えー。地球連邦防衛軍の古代です。私には、一つの信念のようなものがあります。ガミラスと私たちの地球の間には、過去に不幸な関係だった時期がありました。そんな最中、ガミラス人との交流を深めた私は、生まれた星が違っても、いつか分かり合うことが出来る、ということを知りました。これは今、信念から確信へと変わりました。これからは、ガミラスの人たちだけでなく、マゼラン銀河の方々とも、仲良くなれる日が来るのを望んでいます」

 再び、参加者から大きな拍手が起こっていた。島の隣にいた雪も、微笑んで手を叩いている。

「もちろん、イスカンダルの方々とも。続いて、ご挨拶をお願いします」

 古代に促されて次に壇上に上がったのは、スターシャたちだった。

「私は、イスカンダルのスターシャ……。と言っても、イスカンダルを出た私には、もう相応しくありませんね。これからは、妹たちが、皆さんに寄り添って行くでしょう。サーシャ、皆さんに、あなたの元気な姿を見せてあげて」

 サーシャは、長い髪を片手で弄りながら前に進み出た。そして、人々の注目が集まっていることを、ゆっくりと見回して確認していた。

「私は、イスカンダルのサーシャ。皆さん、お久しぶりですね」

 ガミラス人や、マゼラン銀河の人々は、どよめきをもって、彼女の姿を確認していた。彼女は、地球への救済に旅立ち、亡くなったとされていたからだ。

「私は、地球人が行ったとある実験のお陰で、この世界に戻ってくることが出来ました。私がいない間に、ガミラス人や、マゼラン銀河の方々と、地球人との友好な関係が築かれていたことに驚いています。そして、イスカンダルの救済の終わりを宣言したお姉様にも」

 サーシャは、スターシャの方を向いて、表情を窺っている。スターシャは、微笑を絶やさなかったが、僅かに表情が引きつっていた。そして、ユリーシャは、二番目の姉が何を話し出すか、不安げな様子で彼女の横顔を眺めた。

「今回、私とユリーシャも、移民団の方々とご一緒して、地球の方々にお祝い申し上げようと同行させて頂きました。末永く、この友好関係と、宇宙の平和が続くことを願っています」

 サーシャが軽く会釈すると、会場から大きな拍手が起こった。そんな中、一人ユリーシャはほっと胸を撫で下ろしていた。出発前に、スターシャへの悪口を口にしていた姉が、挨拶を無難にまとめたことに、ひと安心していた。

 そして、スターシャは、最後にデスラーを呼び寄せた。

「アベルト。乾杯の挨拶は、あなたにお願いするわ」

 デスラーは、目を閉じて頷くと、ゆっくりと壇上へと上がった。彼は、グラスを掲げて会場を見回した。

「諸君、旧知の者も、初めて会う者もいるが、今宵は無礼講としよう。ガミラス、並びにマゼラン銀河の移民団と地球に、栄光と祝福あれ!」

 デスラーがグラスを口にすると、会場にいた全員が同じ様にグラスを口にした。そして、大きな拍手が起きていた。

 

 宴が始まり、各々が旧知の人々との歓談をしていた。古代と島、そして雪もイスカンダルからの来訪客へと挨拶をしていた。

「サーシャさん。こうして再び会えるとは思いもしませんでした。元気な姿になって、本当によかった」

 古代は、感動した面持ちで、彼女に話しかけていた。島も、古代と共に彼女を埋葬したことから、感慨深げだった。

「初めて会った時、古代と二人で、何て綺麗な人なんだろうって話してたんです」

 当のサーシャは、二人を交互に見て不思議そうな表情をして首を傾げている。

「わたくしって……綺麗、なんでしょうか?」

 古代と島は、当惑した面持ちで、互いの顔を見た。

「そ、それは……」

 古代は、目の前で雪が目を細めているので、答えに困っていた。すると、島は、にこやかに、はっきりと言った。

「それはもう、大変お綺麗だと思いますよ!」

 サーシャは、島に顔を近付けると、更に質問した。

「じゃぁ、わたくしのこと、好きなの? 嫌いなの? どっちなのかしら?」

 その質問には、調子にのっていた島も、暫しあ然としていた。

 雪は、サーシャの様子を見て、そう言えば、ユリーシャも、出会った頃は、こんな風に不思議ちゃんみたいな話し方だったな、と思い出していた。

 そんなサーシャを止めに来たのは、そのユリーシャだった。

「サーシャ姉様、そういうことは、いきなり聞くものじゃないんだよ」

「あら。何がいけなかったのかしら? 教えてくださる? ユリーシャ」

「う? う、うーんと」

 ユリーシャが答えに窮しているところに、スターシャもやって来た。

「はしたないからですよ、サーシャ。そういうことは、互いに良く知り合ってから聞けばいいのです」

 サーシャは、不満そうに、スターシャの表情を窺った。

「スターシャお姉様。今回このような旅に来た目的の一つは、わたくし自身の結婚相手を探す為でもあるんです」

「は、はい?」

「ええっ?」

 スターシャと、ユリーシャは、心の底から驚いているようだった。二人とも、目を丸くしている。

 それを聞いた古代と雪、そして島も、イスカンダル人らしからぬ発言に、驚きのあまり、言葉が出なかった。

「わたくし、救済で死ぬような目にあったんですよ? それなのに、わたくしが死んでいる間に、お姉様ったら、いつの間にか、子づくりされて、果ては救済は終わりだと宣言してイスカンダルを、アベルト兄様と一緒に出て行かれていた。わたくし、怒っている訳じゃありませんことよ? ただ、少し不公平じゃないかと思っているんです。ね、あなたも、そう思うでしょう?」

 急に振られたユリーシャは、しどろもどろになっている。

「ん? んん〜? い、いや、その……」

「はっきり言っておやりなさい、ユリーシャ。ずるいって」

 スターシャは、目をそらして、小さな声で言った。

「やっぱり、怒ってるじゃない……」

 サーシャは、古代と島の間に無理矢理割って入ると、二人と腕を組んだ。

「わたくし、知ってるんですよ。古代さんって、素敵な殿方ですわね。さぞ、お兄様も素敵な方だったんでしょうね」

 サーシャは、古代に顔を近づけて、その顔をまじまじと見つめた。古代は、目をそらして腕を振りほどこうとしたが、サーシャは、力強くがっちりと掴んで離さなかった。

「古代くん……」

 雪は、青ざめた表情で怒りを溜めていた。

「ぼっ、僕は、何もしてないじゃないか……」

 サーシャは、続いて島にも顔を近づけた。島は、見つめられて赤くなっていた。

「島さんも。とっても素敵な殿方ですわね。古代さんとは違って、独身でいらっしゃるのでしょう?」

「は、はいっ?」

 古代と島を十分に翻弄したと思ったサーシャは、やっと腕を離して、澄ました顔でスターシャとユリーシャのそばに戻った。

「救済が終わりになったのなら、わたくしだって、お姉様のように、自由に生きる権利がありますでしょう? 今回の旅で、もし、素敵な殿方と出会って、わたくしと結婚してもいい、という方がいらしたら、そうしてもいいかな、と思っています。ユリーシャだって、今のまま、マゼラン銀河の平和の為に活動を続けていたら、婚期を逃してしまいます。そんなの、あなただって嫌でしょう?」

 ユリーシャは、そう言われてどきっとしていた。彼女も、最近それはすごく気にしていたことだった。

 スターシャは、わなわなと震えていたかと思うと、急に冷静な顔になって言った。

「……分かりました。勝手になさい」

 そう言い残して、スターシャは、別の場所へとすたすたと歩いて行ってしまった。

 ユリーシャは、サーシャの腕を掴んで言った。

「スターシャお姉様を怒らせちゃったじゃない」

「大丈夫よ。だって、何も言い返せなかったでしょう? だって、わたくし、間違ったことは言ってませんもの」

 サーシャも、澄まし顔で、別の所へと移動していった。残された四人は、呆気にとられていた。

 島は、ユリーシャに向かって真顔で言った。

「も、もし、そうなったら、お兄ちゃんと呼んでいいんだからね?」

 古代は、呆れ顔で島に言った。

「何を馬鹿なこと言ってるんだ」

 

「お野菜を持って来ました」

「おっ、来たか。ありがとう、食材が足りなくなって、困ってたんだ」

 厨房では、平田が頼んだ野菜が届けられていた。

「どういたしまして」

 にっこりと笑ったミルは、食材の入った箱を平田に渡した。そして、早々に、厨房を出ていった。

「ん? 何か、今のガトランティス人みたいだったな?」

 首をひねった平田だったが、すぐに料理に没頭し始めた。

 厨房から出たミルは、監視役のガミラス兵と共に、農園へと戻ろうとしていた。すると、移民船団の歓迎の為に飾られた商店街の様子が目についた。

 そこは、ガミラスなどからやって来たと思われる大勢の民間人が訪れて、賑わいを見せていた。地球側の商店街には、軒並み日本のお祭りのテキ屋のような屋台が建ち並んでいる。

「何だか、随分楽しそうですね」

 同行しているガミラス兵たちも、それに興味を示していた。

「ちょっと、俺たちも寄って行くか」

「ほ、本当ですか?」

 ミルは、嬉しそうに満面の笑顔を向けた。

「今日ぐらいいいだろう。なぁ、皆んな」

 ガミラス兵たちは、すっかりミルのことを信用していた。そのミル自身も、微塵も何か悪さをしようなどとは、思っていなかった。

「ありがとうございます!」

 そうして、ミルは、屋台を眺めて回っていた。初めて見る物ばかりで、彼は心の底から楽しんでいた。

「ん?」

 射的屋を見たミルは、興味を示して立ち寄った。銃のような形をしたもので、台に並んだおもちゃなどの的を撃つもののようだ。

 他の人がやっているのを眺めていたミルに、店主が話しかけた。

「お兄さんもやってみるかい!?」

 桐生美影は、何故か射的屋をやっていた。

「い、いや。私は、ここの通貨を持っていないから」

 桐生は、にかっと笑うと、彼に銃を渡した。

「ついてるね、お兄さん。今日は、ただで出来るのさ。これが、弾だよ。これを撃って、景品を倒すか、台から落としたら、あんたのものさ」

 そうして、コルク栓の弾を数発渡された。

 桐生は、手を広げて台に並んだ景品を紹介した。

「こいつはね。うちの雑貨屋の商品さ。この小さな車のおもちゃから……」

 桐生は、台の上の方にあった景品を指し示した。

「この大きなプラモデルまで! このプラモデルが、一番高い景品だよ! でもね、こいつは重いから、まず無理だからね。下の方の小さいのが狙い目だよ!」

 ミルは、木製の簡素な銃と渡された弾を眺めた。これは空気圧で軽いコルク栓を発射する為の道具なのだと、見てすぐにわかった。確かに、こんな軽い弾で、一番いいと言われた景品は重そうだったので、倒れそうもない。しかし、彼は、銃には多少自信があった。

 ミルは、弾を見よう見まねで銃の先端に装填すると、狙いをつけた。

「おおっ。お兄さん、まさか、プラモデルを狙う気かい!? まず無理だから、止めた方がいいと思うよ!」

 ミルは、この店主の女が、あれを渡したくないことに気がついた。ますます、あれを倒したくなってくる。

 ミルは、照準をプラモデルに合わせると息を飲んで、引き金を引いた。すると、斜め上に弾が命中し、プラモデルが少し後ろに下がった。

 ミルは、次の弾を装填した。そして、狙いをつけて、再び引き金を引いた。今度は、左斜め上に命中した。プラモデルは、また少し後ろに下がった。

 残りの弾、二発を続け様にミルは放った。すると、何と、プラモデルは台から転げ落ちてしまった。

「ああっ、大和が……!」

 ミルは、青ざめている店主を不思議そうに眺めた。

 明らかに、渋々と桐生はプラモデルを、ミルに渡した。

「持ってけ、泥棒!」

 

 ミルは、プラモデルを抱えて、更に屋台を回っていた。すると、突然背後からぶつかってきた民間人の男がいた。プラモデルを取り落したミルは、尻もちをついていた。その民間人は、ミルが落としたプラモデルを拾うと、一目散に逃げ出した。

「ま、待て!」

 ミルは、咄嗟にその民間人の後を追った。しばらく追っていくと、いつの間にか屋台の裏の、人気のない場所にたどり着いていた。

 そこで民間人の男は立ち止まっていた。

「私の景品を返してくれないか?」

 民間人の男は、あっさりと景品を床に置いて返してきた。

 ミルは、景品のプラモデルを拾おうとしゃがんだ。

 民間人の男は、そこで初めて口を開いた。

「そのまま聞いて下さい」

 ミルは、不思議そうな表情で、男を眺めていた。

「あなたの行方は、ずっと探していました。申し遅れましたが、私は、ガトランティス帝国の軍人です。少々、変装していますが」

 ミルは、驚いて、再び景品を取り落していた。

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。

参照1)サーシャについて
妄執の亡霊11 旅の終わり
https://syosetu.org/novel/213029/11.html

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