宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


白色彗星帝国の逆襲13 女王の出撃

 数時間後――。

 

「どうしても、私は残らなければいけませんか?」

 ゲールは、作戦会議の席でタランに食い下がっていた。

 タランは頷いた。

「基地防衛を行う経験を積んだ指揮官が必要だ。この基地には、我が軍の兵士たちの家族も居住しているじゃないか。誰かが残って防衛にあたらなければ。ただでさえ、あんな事件のあった後だからね。なおさらだ」

 ゲールは、デスラーとの別れ際に言われた言葉が、どうしても忘れられなかった。

 

 君を、信じているよ。必ず助けてくれるとね……

 

 それを思い出すと、ゲールは冷静ではいられなかった。

「一生のお願いです。今回ばかりは、どうか、私も同行させて頂きたい」

 ゲールは、席を立ってタランの近くに行くと、膝をついて頭を垂れた。

「よしたまえ、ゲール少将」

 タランは、困惑した表情で、同じように膝をついて、彼の肩を掴んだ。

 結局、ミルは脱走に成功し、デスラーも突然現れたガトランティス艦隊に連れ去られてしまっていた。その為、ガミラスと、地球人の関係者が急遽集まり、緊急会議が開かれていた。

 会議に参加していた古代は、デスラーを思うゲールの姿を、興味深く見守っていた。

 同じく会議に参加していた真田は、タランに話かけた。

「空間航跡と、ワープした際の方角から分析した結果、ガトランティス艦隊は、ボラー連邦領内へと向かった可能性が高い。急げばまだ追いつける可能性もあるが、ボラー連邦領内に侵入するのは、極めて危険だと言わざるを得ない。本気で、追うつもりですか? タラン閣下」

 タランは、決意も固く言った。

「もちろんです、真田さん。我々は、デスラー総統に付き従って国を捨てました。彼がいなければ、我々がここにいる理由そのものが失われるというものです。絶対にそんなことは出来ません。こうしている間にも、追跡が難しくなるでしょう。すぐにでも、出発します」

 タランもまた、ゲールと同じように、デスラーに対する気持ちは固い。

 古代は、真剣な表情でタランに尋ねた。

「真田さんが仰ったとおり、大変危険です。何か策はあるんでしょうか?」

 タランは、いつものように、あまり感情を顕にせず、極めて冷静だった。

「勿論だ。先程も話したとおり、この基地には、兵の家族もいる。防衛艦隊を残す必要があるので、ボラー連邦へは少数の艦で密かに潜入するつもりだ。次元潜航艦隊を使う。新たに完成した新造艦四隻と、デウスーラⅢ世で出撃する。こうしている間にも、出航準備が進められている」

 古代は、デウスーラ、と聞いて、不思議に思っていた。それには、真田が答えた。

「古代。新造艦のデウスーラⅢ世は、次元潜航艦と同じ、ゲシュバール機関と、通常のゲシュタム機関の両方を搭載している。次元潜航が可能だ」

 古代は、それにはかなり驚いていた。波動砲を搭載した次元潜航可能な艦は、地球連邦にとっても脅威の存在だったからだ。

 これは、防衛軍本部に報告しなければならないな、と古代は考えていた。

「タラン司令、私もその一隻に乗せて欲しい」

 ゲールは、まだタランに食い下がっていた。タランは、困ったような表情をしている。

 そこに、一人のガミラス人の士官が会議場へ入ってきた。

「失礼します」

 タランとゲールは、彼の姿に少し驚いていた。

「カーゼットくんか。君は呼んでいないのだが」

 タランは、訝しげな顔で彼を見ていた。

 元親衛隊のルッツ・カーゼット大佐は、ゲールの方を向いて微笑んだ。

「タラン司令、そして、ゲール少将。基地防衛は、私にお任せを。お二人で、デスラー総統を救出して下さい。僭越ながら、その任務には、経験を積んだ将校が行くべきだと思います。任務の成功率にも大きく影響するとは思いませんか?」

 タランは、カーゼットと、嬉しそうにしているゲールの顔を交互に眺めた。そして、ため息をついたタランは、諦めたような表情になった。

「まったく……。君たちは、まるで私の言うことを聞く気が無いようだね」

 カーゼットは、微笑して言った。

「お願いします。必ずや、総統を連れ戻して下さい」

「すまんな、カーゼット。このゲール、必ずや、総統を助けてくるからな!」

 そこに、カーゼットの背後から、凛とした女性の声がした。

「私も行きます」

 その女性は、決意も固く、見るものに畏怖を感じさせる表情だった。

 会議場の参加者は、彼女の姿に皆驚いていた。

 古代は、思わず彼女に声をかけた。

「スターシャさん! いけない。この任務は危険過ぎる!」 

 スターシャは、古代に冷酷とも思える目線を向けた。

「いいえ。アベルトの救出には、私が役立つことがあるはずです」

 古代は、スターシャが、自身がマザ・シャルバートの再来として崇拝の対象になっていることを利用するつもりだと分かった。ガルマン帝国だけでなく、ボラー連邦でも、マザー・シャルバートは信仰の対象となっているのだ。

「しかし……!」

「こんな言い方で申し訳無いとは思いますが……あなた方、地球人には関係の無いことです」

 古代は、スターシャが、冷静さを失っていることに気づいた。

 古代は、何か言おうと考えていると、タランが口を開いた。

「まったくもって、言うことを聞かない人ばかりだ。スターシャ女王。恐らく命の保証をすることは出来ないでしょう。それでも行かれますか?」

 スターシャは、タランのその様子に、ふっと笑みを浮かべた。

「あなたと同じく、私も彼を失えば、ここに留まる理由がありません。参りましょう、皆さん」

 タランは、彼女の瞳をじっと見つめた。

 スターシャのこの決意は、総統を愛すればこそなのだろう……。

 タランは、やむを得ず、その思いを汲み取ることにした。

「承知しました。もうあまりのんびりはしていられません。女王、ゲール少将、出発しましょう」

 古代と真田は、呆気にとられたまま、会議場を出ていく、彼らを見送った。

 

 ギャラクシーから少し離れた宙域で、新造艦デウスーラⅢ世を中心に、次元潜航艦四隻が集結していた。

 次元潜航艦の先頭の一隻に乗り込んだゲールは、通信で艦隊に呼びかけた。

「全艦発進準備完了。タラン司令、発進命令を」

 デウスーラに座乗するタランは、艦橋中央で、スターシャと共に立っていた。

 艦隊通信用のマイクを掴んでいたタランから、スターシャは、そっとそれを奪い取った。

「全艦に発令します。これより、デスラー総統救出作戦を開始します。両舷半速、前進して下さい! 一分後に全速航行、空間航跡を追ってジャンプを実行します」

 タランは、スターシャの横顔をじっと見つめていた。

 彼女は艦橋に上がって来た時、中央に備え付けられたデスラー砲の発射装置を、しげしげと眺めていた。文句を言われると、覚悟を決めたタランだったが、スターシャは、なぜか何も言わなかった。そして、今も、厳しい表情で勝手に指示を出す姿を見て不安に駆られていた。

 このまま、艦隊の指揮を執る気だろうか……?

 スターシャは、無言のまま前方の星の海をじっと見つめていた。

 

 ギャラクシーの基地司令部にいた市川純は、司令部に戻って来た古代に報告した。

「ガミラス艦隊五隻、ワープして消えました」 

 古代は、周辺の様子をレーダーで捉えた司令部の大スクリーンに映る光点を立ち止まって見つめた。

 市川は、古代に尋ねた。

「結局、タラン副司令は行ってしまったんですね?」

 古代は、奥の司令官の椅子に腰掛けると、軍帽を取ってデスクに置いた。

「スターシャさんもだ」

「ええっ!?」

 古代は、心の中で、スターシャやタランの無事を祈っていたが、そればかりを考えている訳にもいかなかった。タランも不在になった今、彼の肩に基地の運営がかかっていた。

「同じ様なことが起こらない様に、警備を強化する。保安部をここへ呼んで欲しい」

「分かりました」

 カーゼット大佐とも、基地防衛の件を話し合う必要があるな、と古代は考えていた。

「市川くん、すまないが、それとは別に、ガミラス軍のカーゼット大佐と、島と北野も呼んで欲しい……。それから、移民船団の代表者とも今回の件の話しておかなければな……」

 市川は、心配そうに古代の方を見ていた。

「……古代さん、大丈夫ですか?」

 古代は、わざと笑顔を浮かべて言った。

「大丈夫さ。悪いけど、スケジュール組んでもらえるかい?」

「お任せ下さい。差し出がましいようですが……。司令官専任の秘書をおいてもいいと思いますよ?」

 古代は、そう言われて確かに、と思っていた。

「ありがとう。考えておくよ」

 

 サーシャは、ひとり窓の外の宇宙空間を見つめていた。ついさっき、スターシャを乗せた船が旅立って行ったが、今はそこには何も無い。彼女は、デスラーが拉致された、と伝わった時の鬼気迫る姉の顔が忘れられなかった。

 あんなに、アベルト兄さんのことを思っていたんですね……。

 おかげで、サーシャは、姉と仲違いしたまま、別れることになってしまっていた。もしかしたら、これが永遠の別れになるやも知れず、サーシャは少し後悔もしていた。

「サーシャ姉様」

 背後に、静かにユリーシャがやって来ていた。サーシャは、振り返ると、妹の目を見つめた。

「古代司令から、二時間後に集まって欲しいって連絡が来たよ。今回の件で、移民団に動揺が広がらない様に話をしておきたいみたい」

「分かったわ。ありがとう、ユリーシャ」

 ユリーシャは、気丈にも、笑顔になった。

「とても心配だけど……、心配ばかりしてても仕方ないよね。何か気分転換できることをしようよ」

 サーシャは、一番年下だと思っていたユリーシャが、自分を慰めようとしているのに気がついた。いつの間にか、彼女は成長していたのだ。ずっと子供だと思っていたのに。

「そうね。でも、どうしましょうか?」

 ユリーシャは、うーんと、少し考えていたが、何か思いついたようだ。

「そうだ、お姉様。ここには、美味しいスイーツを出しているお店があるの」

「スイーツ?」

「甘ーい食べ物のことだよ!」

 ユリーシャは、姉の手を引いて、楽しそうに歩き出した。

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。

参照1 デスラーとスターシャについて
白色彗星帝国編24 旅立ち
https://syosetu.org/novel/210483/24.html
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