宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


白色彗星帝国の逆襲16 歓迎式典

 火星月軌道上――。

 

「リッケ大佐、地上から合図です」

 移民船団をここまで率いてきたネレディアは、空母ミランガルの艦橋で、艦長クロッツェから報告を受けた。

 ネレディアが無言で頷いたので、クロッツェは指示を発した。

「輸送船団に通達しろ。全艦発進、火星に着陸開始!」

 その号令と共に、一斉に移民団を乗せたガミラス政府の輸送船五隻は、エンジンを始動して、ゆっくりと火星の月軌道を離れ、大気圏に突入していった。

「続いて、浮遊大陸を月軌道に乗せる。牽引する駆逐艦全艦に連絡!」

 ミランガルの窓の外で、浮遊大陸が静かに位置を変え始めた。

「この惑星には、フォボスとダイモスという岩石型の月が二つありますが、こいつを軌道に乗せると、月が三つになりますね」

 ネレディアは、口もとを緩めた。

「ならば、出来るだけ、地上のマゼラン市からよく見える位置に、上手く乗せてくれ。歓迎式典のいい記念になるだろう」

「承知しました」

 ネレディアは、クロッツェが指示の伝達を終えるのを待っていた。

「艦長、これで任務完了だな」

「はい。我々も、いつかテロンに観光で訪れたいものですな」

「この移民団が成功すれば、いつかそんな時代が来るだろう。だが、それも退役してからだな。今の我々には、そんな余裕はない」

「ごもっとも」

「浮遊大陸の配置が終わったら、帰還の準備を進めてくれ」

「分かりました」

 ネレディアは、ふとレーダースクリーンを見た。

 火星の大気圏のすぐ上の低空で、ランハルトの護衛艦隊の光点が確認出来た。ランハルト退任の話題は、ネレディアも知っていた。

 ガゼル提督率いる大使の護衛艦隊も、遅れて本星に帰還することになるだろう。今度は、誰が大使になり、誰があの長期の護衛任務を命令されるのか。

 案外、自分たちかも知れないとネレディアは思った。そうなれば、テロン観光は、すぐに叶うことになる。

 この平和が、続けばいい――。

 ネレディアは、微笑したまま、虚空を見つめた。

 

 マゼラン市の宇宙港の滑走路では、地球の各地でマゼラン市への居住を希望した一般の市民と、防衛軍の楽団や、ライアン外務長官を始めとした政府関係者たち、そして、式典の様子を撮影するマスコミが集まっていた。

 楽団が奏でる地球連邦国家の演奏が続く中、空の点として現れたガミラスの輸送船団は、地上からも徐々にその姿がはっきりと見えてきた。

 集まった市民の歓声が響く中、輸送艦隊は、静かに宇宙港に着地した。空間騎兵隊が建設した着陸支持台の、鋼鉄で造られたアームが、輸送艦を受け止めると、がっちりとその巨大な艦体をロックした。

 そこで、防衛軍の楽団は、新たな曲を演奏し始めた。それは、ガミラス国歌「永遠に讃えよ我が光」だった。

 輸送艦の舷側が開き、移民団の代表のテリシアを先頭に、十名程の人々が下船してきた。その最後に、イスカンダルの姉妹、サーシャとユリーシャが手を振りながら降りてきた。

 その様子を目撃した人々は、大きな拍手で彼らを迎えた。

 後からアンドロメダから火星に降り立った情報部の護衛部隊二十名は、会場を取り囲むように、周囲に配置されていた。星名は、通信機で部下の配置状況を確認すると、数名の部下と共にライアンとランハルト、そして桂木の周りに立ち、油断なく辺りを見回した。

 滑走路に設けられた壇上に、彼らが進んだので、少し後ろに下がって壇上の横に並んで立った。

 その壇上の中央に、輸送船から降りてきたテリシアたちが近づいて来て、そこで待っていたライアンと固く地球式の握手をした。

 マスコミのカメラのフラッシュが眩しく焚かれ、ライアンとテリシアは、にこやかにカメラの方を向いた。

 星名は、警護が要人の周りを囲めない、最も危険な瞬間だったので、緊張が最高潮に達していた。

 続いて、ランハルトやイスカンダル姉妹がライアンと握手をし、一通りの挨拶が終わった。拍手が響き渡る中、ライアンは中央に設けられた演台に立ち、会場が静かになるのを待った。

 星名は、ちらと中央に立つユリーシャの姿を確認した。彼女は、まっすぐに前を見据えて、ライアンが話し出すのを待っていた。

 そのライアンは、静かになった会場を見回して、満足げに口を開いた。

「遂にこの時が来ました! 地球人と、ガミラス人、それだけでなく、マゼラン銀河の様々な星系の方々。ここには、あの戦争を乗り越えた先に手にすることが出来た未来があります。今こそ、宇宙の平和の為、皆さんで手を取り合いましょう。今ここに、新たな時代が始まったことを宣言致します!」

 会場から、非常に大きな拍手が巻き起こった。ライアンは、自身でも拍手をし、移民団の代表たちの方を向いた。ライアンは、テリシアを手招きし彼女に挨拶を促した。

 テリシアの挨拶が行われる中、星名は通信機のランプが点灯しているのに気がついた。彼は、目立たぬようにそっと後方へ下がると後ろを向いて通信機の受信ボタンを押した。

「こちら、星名。どうした?」

 一瞬だけ、通信機は雑音を響かせてから、先方の声が聞こえた。

「隊長。奥に着地した輸送船から、人が降りて来ました。二名を確認しています。何れもガミラス人のようです」

 星名は、少し思案した。代表の挨拶が一通り終わってから、その他の人々は下船することになっていた。ただのフライングなのか、それとも悪意を持った何者かなのか。どちらとも判断は出来なかった。ならば、安全を見たほうがいいだろう。

「監視を続けてくれ。二、三人、警備をそちらの方へ向かわせる」

「了解」

 会場で他の人々と一緒に壇上の様子を見ていた山本と斉藤と永倉は、警備が数名目立たぬように移動するのを見て、何か起こったのに気づいた。

「斉藤隊長」

「ああ。ここじゃとっさに動けねぇ。端の方へ行こう」

 彼らは、何かあれば対応出来るようにと、人垣から抜け出し、壇上と移動した警備員が両方見える端の方の位置に移った。ちょうど、警備の一人の立ち位置だったので、彼らは軽く会釈だけした。

 壇上では、市長の透子が話し始めた所だった。

 その頭上には、小さく点のような浮遊大陸が浮かんでいた。

 

 大気圏の近くで待機していたランハルトの護衛艦隊では、地上のマスコミの中継映像を、スクリーンに映して眺めていた。

「つつがなく終わりそうだな」

 艦隊司令のガゼル提督は、戦闘空母ダレイラの艦橋で、腕組みしつつその様子を見ていた。

「はい。これで国に帰れますね」

 艦長のバルデス大佐は、少し嬉しそうにしているのが見てとれた。

「あの坊やとも上手くやれるようになったところなんだがな。まぁ、仕方がない」

 坊やというのが、ランハルトのことを言っていることに気づき、バルデスは苦笑した。

「大使は、気が進まないようですよ。まだここでやり残したことがあるとか」

「まだまだだな。やつは、いつか総統になる器だ。こんな辺境の星で、いつまでもくすぶっている場合ではない」

 ここへ来た頃は、ガゼルはランハルトを試すようなことばかりして、険悪なムードだった時もあった。いつの間に、そんなことを思っていたのか、とバルデスは感慨深く思っていた。

「司令。今は総統ではなく、大統領、ですよ」

 ガゼルは眉をひそめた。

「その呼び方は好かん」

 その時、艦の科学士官が報告してきた。

「艦長。浮遊大陸に、おかしな反応があります。既に、エンジンを停止しているはずですが、高エネルギー反応を検知しました」

 艦長のバルデスは、科学士官の席に近寄って確認した。確かにエンジンが始動しているような反応を示している。

「空母ミランガルのリッケ大佐に通信回線を開け!」

 少し間があって、スクリーンにネレディアの姿が浮かび上がった。

「こちら、移民船団司令のリッケである」

「こちらは、空母ダレイラ艦長のバルデスだ。火星月軌道に乗せた浮遊大陸について確認したい」

 ネレディアは、頷くとすぐに説明をおこなった。

「浮遊大陸から発せられた高エネルギー反応は、我々も検知している。先程まで牽引させていた駆逐艦に、調査に向かよう指示したところだ」

「了解した。事実関係が判明したら、こちらにも連絡してくれ」

「承知した」

 二人のやり取りを見守っていたガゼルは、艦橋の窓に近寄り、肉眼で浮遊大陸の方を眺めた。見たところ、特に変わった様子はない。

 その時、ガゼルは浮遊大陸の中央で、何かが煌めくのを目撃した。ガゼルは、観測員から双眼鏡を受け取ると、直にその光が発せられた場所を確認した。そこには、複数の光源があり、次第にその数は増えていった。

 ガゼルは振り返った。しかし、科学士官やレーダー手には特に動きがなく、気がついていないようだった。

「バルデス! リッケ! 浮遊大陸の中央を調べろ!」

 通信回線を切ろうとしていたネレディアは、ガゼル提督のただならぬ様子に、科学士官に急ぎ調査するように指示した。

 それぞれの科学士官は、浮遊大陸中央を光学センサーで調査し、確かに何か不思議な光源があることを確認した。浮遊大陸の内部には、そのような人工物はないはずであった。

 ネレディアは、クロッツェ艦長に指示し、駆逐艦に接近して撮影させるよう命じた。

 駆逐艦が接近して撮影をし始めると、浮遊大陸の中央に、いつの間にか亀裂が広がっていた。その光源を中心として、徐々に亀裂は広がっていき、内部に隠された人工物が顕になり始めていた。

 そこに最も接近していた駆逐艦から、報告が上がった。

「リッケ司令! 何かが、中から出てこようとしています!」

 空母ミランガルで、その報告を聞いたネレディアは、咄嗟に大きな声で叫んだ。

「駆逐艦に伝達! 退避!」

 その命令を受け取る前に、浮遊大陸の亀裂の内部から、光の線が一瞬宇宙に走った。

 最も近くにいた駆逐艦は、艦底部にその光の線が走ったかと思うと、真っ二つに分かれて分解した。そして、大爆発を起こしてその場から消滅した。

 青くなったネレディアは、全艦に指示した。

「全艦に告ぐ! 戦闘配置! 今すぐ近くに行った駆逐艦を全て呼び戻せ!」

 ネレディアの艦隊は、慌しく艦隊の配置を変更し始めた。

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。

参照1 ガゼル提督について
大使の憂鬱1 着任の夜
https://syosetu.org/novel/212007/1.html
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