宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲 作:とも2199
更に数時間後――。
地球で補給を済ませたアンドロメダは、急ぎ火星宙域へと戻り、極東管区第二艦隊と合流した。そこには、既に到着していた北米管区第七艦隊が待ち受けており、合わせて総数百二十隻余りの艦船が集結していた。
アンドロメダには、ランハルトや、地球からライアン外務長官と、外務省事務次官のキャッスルも乗艦していた。
山南は、通信長の佐藤に命じて、北米第七艦隊の司令官、スコーク宙将に繋いだ。
「こちら、極東管区第二艦隊司令の山南です」
アンドロメダの艦橋のスクリーンには、既に、特務艦フィラデルフィアに座乗するスコークの姿が映っていた。
「北米第七艦隊のスコークだ。大変なことになったな、ヤマナミ」
「まったくです。早速ですが、スコーク宙将、既に聞いていると思いますが、大統領から、私が全艦隊の指揮をとるように命じられています」
スコークは、頷いた。
「ヤマナミ准将、聞いているぞ。私は問題ない。よろしくな」
山南は、真面目な表情をして、敬礼で答えた。それには、スコークも同じ様に敬礼で返した。
「早速、プランを確認しよう」
山南は、頷いて上げた手をおろすと、航海長の仲村に命じて、スクリーンに航路図を表示させた。
「先行したガミラス軍のリッケ大佐からの報告では、現在、太陽系を脱出したガトランティス艦隊は、銀河系の中央部へとまっしぐらに移動しています。しかし、ワープを繰り返され、彼らの移動した痕跡を追跡するのは困難です。リッケ大佐は、見失ってしまう可能性がある、と言っています。そこで、我々は、連続ワープを敢行して、まずはリッケ大佐のガミラス艦隊に追いつくように移動し、合流します。ガトランティス艦隊が、銀河系中央部に移動しているということは、これまでの情報から推測すると、ボラー連邦領内を目指している可能性が高いでしょう。そこで、銀河系中央部のギャラクシー基地に要請して、向こうから艦隊を出して、待ち伏せさせ、我々の艦隊と挟み撃ちにする作戦を立案しました」
「了解した。しかし、向こうには、ヤマトとイセのたった二隻しかいないはずだ。この広い宇宙だ。見逃す可能性もある」
そこで、ランハルトが口を開いた。
「ガミラス本星に確認したところ、我軍のガトランティス残党狩りをすすめる艦隊の一部の百隻余りが、既にギャラクシー基地に到着しているそうだ。ガトランティスの残党が、この銀河系に向かった可能性に気づいて、調査に来ているらしい。彼らにガトランティス艦隊の捜索と待ち伏せに協力させようと思っている。また、本星のバレル大統領にこの事態を相談したところ、ガトランティスの残党狩り部隊の残りすべてを、こちらへ呼び寄せることを承認してもらった。少し時間はかかるが、最終的に、総数千隻程の艦隊を割いてもらうことが出来るだろう」
スコークは大きく頷いた。
「オーケー。それは本当にありがたい。しかし、こちらは人質が取られている。数で押したところで、救出が簡単にいくとは思えない」
そこで、ライアンが話に割り込んだ。
「そこで、私の出番と言う訳だ。ガトランティス艦隊に、ボラー連邦領内に逃げ込まれるようなことになれば、もはや手出しは不可能になる。その為、我軍とガミラス軍の共同作戦でガトランティスを足止めしている間に、私は、中立地帯へ向かう。今回の事件は、ボラー連邦とガトランティスが手を組んでいる疑いがある。これを中立地帯のガルマン帝国大使館に話して、彼らの支援を受ける交渉をしてみたいと考えている。彼らの協力を取り付けて、ボラー連邦大使館とも話し合い、ガトランティスから穏便に人質を解放させる」
スコークは、半信半疑で頷いた。
「なるほど。しかし、そんなに上手くいくでしょうか?」
ライアンは、ため息をついた。
「君の言うように、これは簡単な事では無いだろう。だが、やらねばならん。地球連邦の人間と、イスカンダル人の救出は、我々政府が果たさねばならん義務だ。なんとしても成功させる。私も、どのような交渉でこれを成功させるか、この移動中に検討することになるがね」
スコークは、にやりと笑って言った。
「では、それはお任せします。艦隊の発進準備も、既に完了しています。ライアン外務長官、発進命令を」
ライアンは、山南のほうをちらと見た。山南が頷くのを見た彼は、少し声を大きくして言った。
「これより、イスカンダル人、及び地球人の人質救出作戦を展開する。全艦発進せよ!」
この号令により、地球艦隊百二十隻余りの艦隊は、波動エンジンを始動し、ゆっくりと火星軌道を離れて行った。
その頃、艦隊に帯同する北米第七艦隊の新造空母エンタープライズの艦載機格納庫では、傷ついた機体の修理に励むガミラス人たちがいた。空母ダレイラから発艦して、母艦を失ったガミラス航空隊の隊員たちだった。彼らは、数時間前に、駆け付けた第七艦隊に救助されていた。
空間騎兵隊と、山本らの航空隊も、そのままエンタープライズへと乗艦して、彼らの機体の修理を手伝っていた。
山本は、膝を抱えて自分の機体のそばでうずくまっているルカのもとにやって来た。ルカの機体は、片翼がもぎ取られていて、修理するのは不可能だった。
「ねえ。地球の戦闘機でもよければ、予備機を貸してもらえるように、話してあげようか?」
ルカは、顔も上げずに言った。
「……いい。ほっといて」
山本は、まだ若い彼女が、酷く落ち込んでいる様子を心配して話しかけた。
「どうしたの?」
「……」
どうやら、話したくないようだ。
山本は、後ろ頭をかいた。
「私は、あっちであなたのお仲間の機体の整備を手伝ってくるよ。その気になったら、話ぐらいは聞けるから、遠慮なく声をかけて」
立ち去ろうとする山本に、ルカは声をかけた。
「待って!」
山本は、振り向いて彼女の方を見た。
「戦闘機を借りる話……。やっぱりお願いしてもいい?」
顔を上げた彼女の表情は、悲壮感に満ちていた。
「もちろん。借りられたら、後で、操縦方法も教えてあげる」
山本は、彼女にウインクして、アメリカ人の乗員を探して足早に歩いて行った。
山本の後ろ姿を見送ったルカは、再びうずくまった。
自分の隊の隊長機が撃墜されるのをはっきりと見た。彼は、生存者の救助でも発見されなかった。
また、空母ダレイラが撃沈された時の、大きな爆発の光だけは目撃していた。長い間一緒に過ごした空母ダレイラの仲間たちや、司令のガゼルやバルデス艦長らも、捜索で見つかることはなかった。恐らく、痛みを感じる間もなく蒸発してしまったのだろう。
何名か航空隊の仲間が救助されていたが、もう、あの日常は永遠に戻らない。恐怖感、怨念、絶望感と、様々な、感情に苛まれた彼女は、何もしたくないという思いと、彼らの無念をはらさなければ、という思いの間で揺れ動いていた。
続く…
注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
参照1 スコーク宙将
連邦の危機11 北米第七艦隊の死闘
https://syosetu.org/novel/213828/11.html