宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


白色彗星帝国の逆襲3 新時代の夜明け

 ガミラス――。

 

 定例会見を終えたローレン・バレル大統領は、執務室でお茶を飲んで一息ついていた。

 彼は、現体制に反発する勢力の扱いに疲れていた。民衆に受けの良い、軍備の縮小と、平和条約を締結した星間国家への公共事業や、開発援助の費用の捻出を訴えられていた。大マゼラン銀河のあちこちでガミラスに反旗を翻す星間国家への対応で、軍備は縮小どころか、拡大する法案を通過させなければならない。今は、自国民だけで無く、同盟国の反応と、政権の支持率を睨みつつ、上手く立ち回らなければならない。

 これは恐らく、デスラー総統も陥ったジレンマに違いない。多くの問題を抱えている状況で、反抗する勢力を簡単に抑えるには、親衛隊や秘密警察に頼るのが手っ取り早かったのだろう。

 自身が初代大統領に就任してからもうすぐ五年。次期大統領を決める選挙戦が間もなく始まろうとしている。ガミラスの民主化による改革は道半ばで、まだ大統領の座から降りる訳にはいかない。今度の選挙では、ガミラス連邦構想を訴え、更なる大マゼラン銀河の星間国家の自治権を認めつつ、巨大な一つの国家を成立させたいと考えている。今こそ、自分を助けてくれる、優秀な右腕が必要だ。

 バレルは、お茶を入れたカップをデスクの端末の脇に置くと、その端末を操作した。予定していた会議の時間だ。

 端末の小さなスクリーンに、ガミラス新政府の紋章が映り、接続中の文字が点滅している。超長距離通信なので、最初の接続には通常よりも時間がかかるのだ。

 バレルは、ぼんやりとその紋章を見つめていた。旧ガミラス帝国時代と基本的には同じデザインだが、カラーリングを明るい色に変更したのだ。彼は、その紋章のデザインを決定した時の、希望に満ちた自身の記憶を呼び起こそうとしていた。

 すると、スクリーンに会議の予定の場所が映し出された。しかし、そこに映っていたのは、会談相手の秘書だった。

「大統領。申し訳ありません。大使は、前の会議が少し長引いていて、少しだけ遅れるそうです」

 バレルは、微笑していた。

「なるほど。忙しいのはいいことだ。君も、随分忙しいのではないかね? 最近は、大使の面倒だけでは無く、デスラー元総統の手伝いもしているそうじゃないか」

 大使の秘書ケールは、にっこりと笑っている。この若者は、常に笑顔を絶やさない。バレルは、そんな彼のことがいたくお気に入りだった。

「いえいえ。今はまだ、大したことはしていません」

 バレルは、その言葉が気になった。

「ふむ。今はまだ……、というのは、これから忙しくなるかも知れない、ということかね?」

 ケールの笑顔は、苦笑いに変わった。

「大統領には、敵いませんね……。はい。聞いたところによれば、ガルマン帝国への潜入任務でもたらされた情報では、不穏な動きがあるそうです。大規模な戦闘を準備している兆候が見られるそうです」

 バレルは、それに興味を持った様子だった。

「相手は、やはりボラー連邦かね?」

 ケールは頷いた。

「はい。恐らくそうだと思います」

 ガルマン帝国は、約千年前にガミラスとイスカンダルからの移民団が作った国家だと言う。ガミラス人の末裔のガルマン人の指導者は、イスカンダルからの移民者の末裔である、イスガルマン人を奴隷として扱っているらしい。この事実は、バレルも、いちガミラス人として、憂慮すべき事態だと考えていた。しかし、だからといって、遠い天の川銀河の出来事に口を出すほど、自国の台所事情が良くは無い。

 そんな時、スクリーンの向こう側に、やっと目当ての人物が現れた。

「遅くなって申し訳ない」

 スクリーンに映っていたケールは、会釈して画面から消えた。代わりに映ったのは、この会議の目当ての相手である、ランハルト・デスラーだった。相変わらず、誰が相手でも、慇懃無礼な物言いは直す気は無いようだ。

「いや、問題ない。では、始めようか」

 ランハルトは、こころなしか、緊張しているような素振りが見える。

「ランハルト。私からの話というのは他でも無い。私が、大統領に就任してから、間もなく五年が経過する。つまり、君が地球駐在大使に就任してからも、五年が経つということだ。まわりくどい話はしない。そろそろ、ガミラスに戻ってくれないか」

 ランハルトは、目を丸くしている。どうやら、そんな話を持ちかけられるとは、想定していなかったようだ。

「しかし……。我がガミラスと地球との間では、国交正常化交渉が完了し、平和条約を結んだところだ。これから、一大事業として、大マゼラン銀河からの希望者による、移民団を受け入れようと準備をしている。今、私がいなくなる訳にはいかない」

 バレルは、そんなランハルトを誇らしげに思っていた。ほんの五年前までは、正義感に燃える若者に過ぎなかった彼が、自分の使命に邁進しようと懸命になっている。そう。責任を全うしようと真剣に考えている姿を見て、バレルは地球へ派遣したのは、間違いじゃなかったと、安堵していた。

「ランハルト。君の言っていることは正しい。もちろん、今すぐに帰れと言うつもりはない。しかし、我々のような仕事は、常に切れ目などなく、そのようなことを言っていると、いつまでも終わりがないというものだ。ある程度道筋をつけたらガミラスに帰還したまえ。後任人事を決めたら連絡する。そうしたら、新しい大使への引き継ぎを行えばいい」

 ランハルトは、何か反論しようと口を開きかけた。しかし、バレルはそれに被せるように、一番話をしたかったことを伝えた。

「こちらへ戻ったら、政治家になるんだ。私の政党から、選挙に立候補して欲しい」

 ランハルトは、いつかは言われるであろうと思っていたことを、遂にバレルの口から言明されたことに焦っていた。

「し、しかし……」

「いい加減にしたまえ!」

 バレルは、眉をひそめて、急に大声を出した。それには、ランハルトも、恐縮して口を閉じた。それを見たバレルは、再び口元を緩めた。

「改めてはっきり言おう。君をそこに派遣したのは、政治の勉強をさせる為だ。そろそろ、その力を、ガミラスの為に使うべきだ。違うかね? 我がガミラスが、現在どのような状況か知らないとは言わせない」

 バレルは、最後の殺し文句を言った。

「今こそ、私には、君が必要なんだ。私と一緒に、マゼラン銀河の平和の為に働いて欲しい」

 ランハルトは、相変わらず相手の心を揺さぶるような弁の立つ彼には、到底太刀打ち出来ないと思っていた。彼が言うように、ガミラスの状況は、ヒス政権時代からの酷い混乱は収まったとは言え、まだまだ大変な状況なのは、当然知っていた。自身も、地球での大使の仕事を通じて、自国の為に何か出来ないかと考えるように心境の変化があったのも確かだ。

「……全く。あなたと言う人は……」

「私が、何かね?」

 ランハルトは、まだ迷いを感じながら言った。

「……分かった。では、後任人事の連絡を待っている」

 バレルは、にっこりと微笑んだ。

「ありがとう。そう言ってくれると思っていたよ」

 通信を切ろうとしたバレルは、思い出したように、最後に言った。

「そうそう。今回の移民団、イスカンダルからも客人たちが行くので、そちらの受け入れもよろしく頼むよ」

 ランハルトは、妙に含みのある言い方に気が付いた。

「客人たち……?」

「楽しみにしていてくれ」

 バレルは、笑顔でその詳細を伝えた。

 

 通信を切った後、バレルは、次のスケジュールを確認して、急ぎ足で執務室を出ていった。執務室の外には、彼の秘書が慌てて付いてきた。

「大統領、お急ぎ下さい。間もなく、式典が始まります」

 バレルと彼の秘書は、急ぎ足で大統領府の廊下を進んで行った。

「原稿はあるかい?」

「こちらです」

 バレルは、彼から携帯端末を受け取ると、歩きながらそこに映る原稿の内容に目を通した。

 

 バレラスの宇宙港では、大々的な式典が執り行われていた。ガミラス国家の演奏が聞こえる中、少し遅れ気味に登場したバレルを、その場に集まった多くの民衆が歓声を上げて迎えていた。

 壇上で原稿をプロンプターに映して、彼は式典の挨拶を行った。集まった大勢のマスコミは、彼の姿をマゼラン銀河中に中継すべく、一斉に撮影をおこなっていた。

「我がガミラスと地球との間で平和条約を締結したことを記念し、地球への移民団を募りました。ガミラスからだけでなく、他の星からも数多くの応募があったことを、私は大変嬉しく思っています。特に、地球で新たなビジネスを起こしたいと思っている方々も多くいることに、私は感銘を受けています。私自身が、以前貿易商を営んでいましたから、その決意たるや非常に頼もしく思っています。地球との友好関係に、是非皆さんにご協力頂けるよう、強く願っています」

 民衆から大きな拍手をもらった彼は、最後に号令を発した。

「出発! 良い旅を!」

 宇宙港に停泊していた、五隻の政府の大型輸送艦が、次々にエンジンを始動して、一隻づつ地上を離れて行った。総勢、三千名ほどの民間人が、それぞれの荷を積んで乗船している。全ての船が空高く舞い上がると、民衆の歓声を背に、次第に空の小さな点となっていった。

 後は、ガミラスの軌道上に待機しているガミラス艦隊が、彼らをエスコートして、地球までの約三ヶ月の旅を護衛してくれる。

 そして今回は、現地でガミラスで穫れる野菜を栽培する農業を営もうとする民間人の為に、土壌を切り崩した巨大な大陸も、一緒に運ぶ手筈だ。これは、以前、木星に運び込んだ浮遊大陸と同じものだ。ただし、今回は敵性植物となるものは当然持っていくことはない。

 

 式典を終えたバレルは、秘書と共に、急ぎ足で次のスケジュールへと向かっていた。大統領の仕事は、兎にも角にも多すぎるのだ。

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。

参照1 バレル大統領とランハルトについて
白色彗星帝国編25 それぞれの未来
https://syosetu.org/novel/210483/25.html
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