現実の分まで仮想世界を走り回りたいと思います。 作:五月時雨
PS特化は、いま読み直して作品の雰囲気を思い出し中。未だに治らない駄文に読みながら吐血してる。1話の半分くらいまでは書けてるから、年内には上げたい。
「はぁ……」
はっきり言おう。
馬鹿馬鹿しい。
『ハクヨウを独り占めして羨ましい』とか言うのなら、ハクヨウが一人でいる所にナンパでも何でもすれば良い。どうせゲームの中で、街中なら攻撃しても、されてもダメージは無い。掲示板で盗撮した写真でハァハァしてる変態共の話なんて聞くに値しない。
ついでに言えば、あれでハクヨウはガードが堅い。というか勘が良い、か。ハクヨウから話しかけるのは、大概気の良い奴らで性格は穏やか。………カスミも、最初は良かったんだがな。どうして
女子会もどきでの話を小耳に挟んだ事があるが、他人が自分のアバターに触れる範囲に制限を設ける【セクシャルガード】もしっかりしているらしいし、そう問題も起こらな―――あれ。なんで俺、普通にハクヨウに触れられるんだ?
んんっ!いや、今は良いか。
だから、話したいなら好きに声を掛ければいいし、友達にでもなれば良い。なのに。
「ハクヨウに声も掛けられないのに『羨ましい』とは、虫が良すぎねぇか?腰抜け共」
「「「「「ぐはっ!?」」」」」
あ、最前列の五人が倒れた。どうやらクリティカルヒットしたらしい。自業自得だな。
「ハクヨウの事を噂したりファンになるなら良いけどよ。お前らがやってる事、悪質ストーカーのそれじゃねぇか」
『うぐぅぅぅっ!?!?』
あ、めっちゃ倒れた。
でもこれも自業自得だよな?ハクヨウを掲示板で話題にして可愛がるだけならまだ良いが、『羨ましい』ってんでハクヨウの周囲の人間を襲うとか、現実なら司法の下で裁けるぞ。
「ぶっちゃけお前らアレだろ?ハクヨウのこと盗撮する変態集団だろ?」
「「「「「ギクゥッ!?」」」」」
「ハクヨウに教えれば、即刻『通報→運対』なんだが?」
「ごめんなさいそれだけはっ!」
「………あっ、俺今日ちょっと調子悪いんだった!」
「あ!あー、俺もなんだか具合悪いなー!」
「き、今日のところはこの辺で勘弁してやるかー、なぁ!?」
「そ、そうだな!俺だってもっと上位狙いたいし!?」
………おっと。明らかに心当たりのある様な奴らが慌てて走り去ってったな。つまりあいつ等が主に盗撮している犯人共、と。顔覚えた。今度見つけたらしばき回してやる。
「う、うう狼狽えるにゃあ!」
うん、まずお前が落ち着け?男の野太い声で『にゃあ』は無いわ。どっちかっつーとハクヨウに言ってほしい。
卒倒した奴らや逃げた奴ら以外にも、俺の言葉が胸を抉っていたようで、一部蹲っている。やだ、俺なんかの能力にでも目覚めた?
「ここ、これは俺らの戦意を削ぐ、わ
お前が一番狼狽えてるし、一番戦意喪失が近いだろ。膝ついて蹲っているし、めちゃくちゃ震えてんぞ。むしろ大丈夫?俺の言葉って物理的なダメージも与えたの?
「こ、こんな言葉程度で負ける俺たちではにゃい!立て!立つんだ!」
「いや、まずお前が立てよ。大丈夫か?」
「うるしゃいっ!敵の温情などいりゃん!」
ガクガクぷるぷる…とまるで産まれたての子鹿じゃねえか。え?そんなダメージあったの?
………ふむ。
「おーい、ハクヨウ!」
『うげぇぇっ!?』
うわ。効果覿面すぎる。ここに本人がいたらダメージはどれくらいだろ?とか思っただけなのに、望外のダメージが見込めた。イベントに【精神的ダメージ】の項目も作ってくんねぇかな。
「落ち着け。うそ――」
‘だから’と続けて、奴らに僅かばかりの温情を掛けようとした時、俺の背後で、風が吹いた。
「―――呼ん、だっ?」
………うそん
◆◇◆◇◆◇
突然現れたハクヨウの存在に目を丸くしたクロムだったが、辛うじて復活し、声をかけた。
「えっ、と……ハクヨウ?」
「んっ」
「何でいんの?」
「呼ばれた、から?」
こてんっ、と首を傾げるハクヨウ。
(くっそ。可愛いなおい……じゃねえっ。何?何なの俺。一週間ぶりに会ったら、なんかハクヨウが可愛いんだけど!)
なーんて。なーんてっ!
思っていても大人なクロムさん。頑張って表情筋を維持して(出来てるかは不明)続ける。
「久しぶり、だな?」
「クロム、顔、へん」
「ぐっ……」
(出来てなかった。死にたい)
そもそもゲーム内では感情がそのままアバターに反映されてしまうので、表情なんて取り繕うことの方が難しい。出来ないと断言すらする。
「けど。……うん。久しぶ、りっ」
「………おぅ」
小さく、けれど嬉しそうに笑うハクヨウを見て、『あ、もう何でも良いや』と開き直ったクロムさん。未だクロムの口撃やら驚愕から立ち直れていない集団に目を向ける。
「それ、で。どういう、状況?」
「あー……お前のファン?だ。悪質な」
『ひぎぃ――っ!?』
「ふぁん……」
事細かに説明している余裕もないので、それだけ伝えると、なんかまたダメージ受けてた。
知ったこっちゃない。
実のところハクヨウも、本当に今しがたここに来たので状況を把握していなかった。
(湖を中心に完全に破壊した)草原を走り抜けた先が荒野だったので、そのまま
『まさかっ!』と思って走ってくれば、本当にクロムが居たというわけだ。
ハクヨウからすれば『どうして私が居るって気付いたの?』状態。まさかハッタリかましただけとは思わなかった。
「自分らはハクヨウと仲良くなれないのに、男だと俺だけハクヨウと親しいのが憎い……らしい」
「え、ぇ……」
大抵のことは肯定するだけの気概があるハクヨウをして、その考えにはドン引きだった。そもそも、ハクヨウが誰かと親しくなることはハクヨウの自由なわけで、それで逆恨みするような人たちなんて願い下げである。
それに。
「はぁ…はぁ……ハクヨウたん、本物のハクヨウたん!」
「お姉ちゃんと!お姉ちゃんと呼んで!」
「お前だけずるいぞ!俺もお兄ちゃんと呼ばれたい!」
「い、一緒にスクショ撮ってください!」
「ハクヨウちゃんのポイントになりたい!」
「「「お前、天才かっ!?」」」
………繰り返すが、大抵の事は肯定する気概を持つのがハクヨウだ。ゲームは楽しむものだし、楽しみ方は人それぞれだと理解もしている。
けれど。これは流石に……
「あー……はっきり言っていいぞ?その方が、こいつらには効く」
「………気持ち悪い」
『―――ガハッ!?』
キッパリと、言い切った。『キモい』ですら瀕死の重体になりそうなモノなのに、更に直接的で暴力的な言葉と、共に向けられた恐怖の眼差しは、正に致命傷。ダメージは無くとも、そこに居たハクヨウファンは全員が全員、昏倒した。
「容赦ねえな」
「クロムが、言っていい、言った」
ダメージの半分は、ハクヨウが所在無さげにクロムの袖を掴んでいる事も原因かもしれない。
「『気持ち悪い』までは想定してなかったわ。けど、ハクヨウみたいな可愛い子に言われりゃ、例えファンでなくてもこうなるか」
「っ!………」
「…ん?どうした?」
ぶっ倒れたプレイヤー達を警戒しつつ軽口を叩いていたら、なんかハクヨウが押し黙ったので、訝しげに尋ねるクロム。
そんなクロムを、ハクヨウはじーっと。じーーっと。それはもう、じーーーーーっと見ていた。
「な、なんだ?」
「……クロム、は」
「おう?」
なんだか恥ずかしそうに、けれど喜色を滲ませた期待の眼差しで、ハクヨウが口を開いた。
「私のこと、『可愛い』って、思ってる、の?」
「え?………あっ――」
確かに、無意識にそう言ってしまったと気付き、失言だったと慌てるクロム。
ピンポイントに『可愛い』という部分を抜き出して尋ねるハクヨウ。そうやってもなんの意味が無いとは知りつつも、火が出るほどに熱くなった顔を隠したくて、無意識に手で顔を覆う。
「あ、えっと…だな」
「『可愛い』って、
ずい、と顔を寄せ、一歩クロムに近づくハクヨウ。何となくその言い分のニュアンスが、『クロムが
だから
「そ、その……客観的に!客観的に見て、ハクヨウは可愛いと思うぞ!」
咄嗟に。すぐにでも話題を終わらせたくて、ハクヨウが何もしなくても、多くのファンがいる事実を突きつけて、『客観的事実として、お前は可愛い』のだと言い訳をする。
「主観的に、はっ?」
(通じねぇ、だと……っ!?)
『意地でもクロムの思いを聞く』と目が語る。普段のハクヨウからは、信じられないほどの
ずずいっ、と更に近づくハクヨウの顔を、クロムは直視できなかった。
(可愛いに決まってんだろこんちくしょーっ!)
と、そう叫ぶ事ができたら、どんなに良いかと頭を悩ませる。身長差で『触れ合うほど』というような印象は受けないが、身体はほとんど密着し、“逃さない”という不動の意志を感じる。
「……言い訳とか、させてくんね?」
「やっ」
「……えっと、見逃したり――」
「だめっ」
じーーーーーっと!じーーーーーーーっと!
“ふんすっ”と気合い十分に、答えるまで逃さない構えのハクヨウ。顔をハクヨウから背けていても、視線の圧力がクロムを離さない。
今までに無い強引さと圧力に、数秒の後、クロムが折れた。
「その、だな……まぁ、なんだ。好ましいとは、思う……ます」
圧力が凄すぎて、思わず語尾に『ます』を付けちゃうくらい、今のハクヨウは強引だった。
(めちゃくちゃ恥ずい……)
顔から火が出るとは正にこの事、とでも言うかの様に、クロムはハクヨウを直視できない。
の、だが。いつまで経ってもハクヨウから返事が来ない。だからクロムはそーっと。それはもう、母親に叱られた幼子が母のご機嫌を伺い見るように、そーーーっとハクヨウに視線を動かし。
「っ!」
「むぅ………」
リスがいた。
ぷっくりと頬を膨らませて、『私、不満です!』という感情を隠さない。横に逸らした流し目も、心なしかジト目になっている。
(なんかマズかったか!?)
年頃の女の子の扱いがまるで分かってないクロムさんである。
程なくして、まん丸ほっぺを引っ込ませたハクヨウは、小さくため息をついた。
「はぁ……」
「ハクヨウ?」
そしてクロムを真っ直ぐに見つめ、まるで『仕方ないなぁ』と言わんばかりに
それは、いつもハクヨウが浮かべる笑みとは違い、何処か大人びた、艶のある笑顔だった。
「
「え……。は、そりゃどういう――」
“意味だよ?”と、続けようとしたクロムだったが、イベントエリア全域に響くアナウンスによって掻き消された。
「どらぁ――っ!第一回イベントは、残り一時間になったよ!今の一位はハクヨウさん、二位はペインさん、三位はサリーさんどら!残り一時間で上位三人を倒すと、得点の三割がそのプレイヤーに譲渡されるよ!三人の位置はマップに表示されているどら!それじゃあ最後まで、みんな頑張るどらぁ!」
それは、遂にイベントが最終局面に移行する合図。マップでは、今いる場所を赤いマーカーが示している。間違いなく、ハクヨウが現在一位を独走していた。
「流石、サリー。けど……」
二位に座するペインを引きずり下ろさなければ、約束は果たせないと思い、こうしちゃいられないとハクヨウは次の行き先を決めた。
マップを開き、自分を除く二つのマーカーを見る。一つは、その場からずっと動かす『待ち』の姿勢。一つは、常に忙しなく動き回っているマーカー。
「こっち、かな」
三人で上位独占を狙うならば、“殺られない”ことが大前提である。そのためハクヨウは、まずサリーと合流し、次にメイプルを見つけ、三人がかりでペインを確実に倒す方針にした。
「はぁ……一位とは。流石だな、ハクヨウ」
「んっ。ここにいる、と、人が集まってくる、から。私は行く、ね?」
「協力するぞ?」
「んーん。今回、は、メイプルと、サリーの三人で、約束がある、から」
三人で、ワンツースリーフィニッシュする約束は、今回のイベントで約束した三人の目標。今回だけはクロムの手を借りないで、三人でやるとハクヨウは考えていた。
「そうか。分かった」
「じゃ、ね」
「おう。一週間ぶりに会えて良かったぜ」
「私、もっ」
『えへへー』と、今度はいつもの笑みを浮かべるハクヨウ。
クロムの好きな、野に咲く花のような、可憐で優しい笑み。
「次ログインした時は、またパーティ組もうぜ」
「んっ。約束っ」
「おう、約束だ」
ちゃっかり指切りして、約束を取り付けたハクヨウは、そのまま小さく手を振って走り出した。
自分の【AGI】なら、十分に動き回るマーカー、サリーにも追いつけると判断して。
「……さて。いい加減、コイツらを処理するか」
ハクヨウの『気持ち悪い』がショックすぎて気絶したプレイヤー集団に向き直り、クロムは深いため息を溢した。
そしてハクヨウのポイントになりたいとか言う変態と、それに同調した変態は、クロムが特に入念に斬り刻みましたとさ。
観客『俺たちは、何を見せられてるんだ…』
駄目な方のファン『クロムぶっ○すっ!』
ハクヨウちゃん優位。いつも頭撫でられて愛でられてるハクヨウちゃんですが、偶にはマウント取ってみた!てぇてぇ。
しれっとドレッド超えしてるサリーさん。
サリーならある程度早くゲーム始めてれば、ドレッドより確実に強いと思う。原作第4回イベントとか、ドレッドのが確実にレベル上の筈なのに拮抗してるし。
クロムを襲った集団、ハクヨウの口撃で気絶。
状態異常としてじゃなくて、マジで精神ダメージを受けた模様。あれだね。前話の観戦席で狂喜乱舞→気絶した人たちみたいな感じだね。
アコシュ様から戴いたハクヨウちゃん!
もうね、可愛いの。
可愛いが過ぎて語彙力ないなった(致命
これは暴徒化する奴も出ますわ。私もこの子を妹に欲しい。あと現実パートで心が凄い痛い。