蘭はモカへのお返しに考え倦んで、本人に尋ねたら……?
星が綺麗ですね。
バレンタインに衝動で妄想したものを文字に起こしてみました。
「ねえ、モカ……?」
私の名前は、美竹蘭。どこにでもいるようなごく普通の女子高生、と、自分では思っている。目立ちたくはないし、
ひたすらに、「いつも通り」の毎日を過ごしていたい。
いつまでも、過ごしていたい。
華道の家元の娘で、最近はそっち方面で色々やっていることはあるけれども、それはこの話には関係のないことなので、ここでは割愛する。
家族とは、華道とバンド活動の兼ね合いについて、よく口論になったものだ。今となっては過去の話で、現在は家族ともそれなりに上手くやれている。
日頃は幼馴染とバンド活動をやっており、それなりに青春を謳歌している。
今日は、その幼馴染の1人であり、うちのバンドのギタリストである「青葉モカ」が私の家に来訪している。
私は隣で棒状のチョコレートを、「さくさくさくさく」と小気味良い音を立てながら食べている白髪の少女に尋ねた。
「なーにー?蘭~?」
「えっと……あのさ、その……チョコレートのお返し、何が良い?」
私は
誰かからチョコを貰える事などないと、最初から分かっているから。
しかし、しかしだ。
「うーん……別に何もいらないよ~?お返しとかそんなのが欲しくて蘭にあげた訳じゃないしー」
優しさが酷く心に
モカは私の為に手作りチョコを
もしかしたら、これが発端でモカに嫌われてしまうのではないか?駄目だ。断じてそんな事はあっちゃいけない。モカに嫌われてしまったら、二度と立ち直れず、直ちに如何なる方法を用いてでも自殺を図る自信がある。
私が頭を抱えて唸っていると、不意に横から声がした。
「そうだねー……じゃあ私へのお返しは蘭がいいかなー」
は?と思い、声の方へ首を向けると、刹那、唇に温かい感触がした。
「んっ?!……はぁっ、ぁっ」
それはチョコよりもずっと苦くて、それなのに、蕩けるような甘い味で。
私は途中から抵抗することを諦め、何時の間にか、モカのなすがままに身を委ねていた。
永劫とも思えるような時間の間、何も考えることなく、私達は一つに繋がっていた。
*
「えっへへー……キスだけで大袈裟だな~。蘭はそういうところが可愛いよね~」
「はぁっ、はぁっ……いや初めてなのにこれは……」
覚束無い思考の中、時計を見ると、まだ十分も経っていなかった。嘘でしょ死ぬかと思ったのに……。
「来年はもっと先まで行ってみる~……?」
「いや本当無理だから!?来年は私もちゃんと用意しとくから!」
「ちぇー、つまんないのー」
全く、これだからモカは……。もっと先ってことは、それって……。いや、もう考えるのはやめにしよう。これ以上は戻ってはこれないし、何となく、駄目な気がする。
「それじゃ、そろそろ帰りなよ。モカの家まで送っていこうか?」
「わーい、蘭のえすこーとだ~。それではお言葉に甘えちゃおーかなー」
そんな感じで、私達は家を出た。
踵が四つアスファルトの上。
私は、さっきの出来事を思い返していた。もしも、私達がこれからも一緒にいて、あの先に行く事はあるのだろうか。今の関係以上のものになることはあるのだろうか。
忘れられないあの味。
忘れたくないあの味。
これからの事は分からないけど、来年までは一緒にいられるだろうか。
踵が四つ、
照らされた足跡の平行線を
自分の体温とは違う、冷えた手の熱さを感じながら。
仰いだ夜空。