比企谷八幡は居なくなった。
そして、半年後死んだと思っていた比企谷八幡は生きていた。ただ、それだけの話

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暇だから書きました。ただそれだけです。
設定とか矛盾あったりしますし、あと付けとかざらですね


彼がいなくなってから

 比企谷八幡……彼が居なくなって、死んだとされてから半年が経つ。

 

 あの時から、私の心の中にはぽっかり穴が空いたままだった。何をしても満たされない。何を食べても飢えたまま、何を飲んでも乾いたまま…

 こんな私をみんなは励ましてくれる、けど、私はまだ甘え続けてる。私は家から一歩も外へは出れない状況が続いていた。

 私と接し、恋い焦がれた存在が死ぬと言うのはかなり堪える。実を言うとこれ以上、死ぬと言う現実から目を背けたいだけだった。

 

 辛いなら無理しなくて良いよ、って言ってくれるのは嬉しい…だけど、私は曲がりなりにも雪ノ下雪乃、そろそろ限界が来てる頃だろう…だけど外へ出なくちゃって思うたび心が締め付けられた。

 

私はきっとまだあの茜色の教室から一歩も外へ出られていないのだろう。

 

 

★★★★★★★★、

 

 

 ヒッキーはいつもこれを飲んでここに座ってた…当然だけどいつも彼が居たその場所に彼は居ない。

 

 

 私は片手に彼の大好物のMAXコーヒーをもって中庭の角に向かった。正直このコーヒーは好きじゃない、甘いし、甘いし甘い…けどこの甘さが良いって彼は言っていた。人生は苦いからって………

 

 

 

「ふふ、たしかに苦いね…ヒッキー……」

 

 

 

 居もしない彼に声を掛けた様にベンチに腰を掛け、コーヒーをあけた。

 

 

 

★★★★★★★★★★★

 

 

本編開始。

 

 

ところ変わって場所は街の真ん中。

 

 

 

「……………………ーーーーーーーーーーーーーこれは…どう言う状況だ?」

 

 

 比企谷八幡は普通に街中にたっていた。

 目を開けたら変な場所に立ってた件についてw。

そう呟くと腐った目をさらに腐らせながら、やっぱりと少しずつ周りを見渡すと肌寒い事に気がついた。なんなんだ?この寒さは……さっきまで夏だった筈…

 

………あれ?ここどこだ?……たしか俺はマッカン買いに行こうと部室の扉を開けただけなんだが………あれ?ここは…

 

 

「学校……じゃない?」

 

 

 周りは住宅街が広がり一方通行の道だけが続いていく。たしか……ここは家から学校に向かう道の逆サイドの道だった筈だ。

 

「なんでこんな場所に俺は居るんだ?寝ぼけて……とかはない筈なんだが…季節も変わってるし…最近流行の異世界転生とかでもない様だし…」

 

 ふと、昔どこかで聞いた、一つの都市伝説を思い出した、内容はたしか…毎月4日4時44分44.4444444444444444…秒丁度に学校の何処かにある扉を開くと時の列車とかなんとかの扉と繋がってタイムスリップするとか言う……

 『仮○ライダーじゃね?』とか『そんなデマよくもまぁ簡単に吐けたもんだな』とか当時は思っていたけど………え?あの教室の扉そうだったの?

 

え?たしかに出る前にケータイみた時、4時44分だったのは覚えてるよ…え?だとしてもそんなミラクルある?

 

 

 ふと、俺はケータイを部室に忘れた事を思い出した。ケータイどころでは無く鞄も忘れたんだけど……

 

 

「……まぁ、どの道取りにいかんとダメか…」

 

 

★★★★★★★★

 

 

 

「えぇ、なんで!?俺の鞄もケータイも無いんですか!?」

 

 

学校の職員室でそう叫ぶ。周りの先生方は今、授業の準備中であまり俺に気づいていない。流石ステルスヒッキー!しかしながら平塚先生は苛つきながら俺を見ていた。

 

「ある訳無かろう!?それよりお前今の今まで何処に行っていた!?行方不明になってからお前もう死亡届まで出されてるんだぞ!?」

 

バンと机を叩くと少し周りの先生方がビビる。

 

「いや、何処って言われても……時間の隙間?」

 

「そんな厨二臭い設定でどうにかなるかぁ!たわけ!」

 

 ビシッとバシッと片手にあった教科書で頭を叩かれる。思ったより痛かった…頭を抱える…さっきので幾つの脳細胞が死んだのだろうか…もし次のテストで数学が一桁だったとしても仕方ないよね!

 とりあえず開き直った。

 

 教科書を机に置くと平塚先生は少しずつ口を開いた。

 

「はぁ……だが、まぁ、比企谷…無事でよかった……本当に…」

 

そう呟くと窓の外を指す。

 

「今、奉仕部は休部中だ。部長があんな状況ではできることもできないからな、だが、お前が帰って来たとなると話は別だ。そろそろ休部を解く時が来た様だ。

 

おい、比企谷。由比ヶ浜を呼んでこい……此処にだ。」

 

 恐喝に近い様な目線で俺を睨み付けるものだから背筋から冷や汗が流れ出した。が気にせず真っ直ぐに立つ

 

「はぁ、わかりました。」

 

 そう言って俺が職員室を出た瞬間、阿鼻叫喚が聞こえて来たけど、…うん、関係ないだろう。興味ないね☆

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 いつもよりゆったりとした時間のなか、由比ヶ浜結衣は涙を堪えてベンチに横たわった。

 

 彼が居ないのはわかってる。

 

 彼を身近に感じることができる場所が近くにはここしか無かったのだ。ゆきのんも最近学校に来ていない。なんだかグループも段々暗い雰囲気がただよって最近は、みんなで集まる事なんて一月で片手で数えられるくらいになってしまった。

 

「ヒッキー……どうすれば良いんだろう…私」

 

そう呟くと、蛍光色の効いたコーヒー缶を掴み口をつける。

 

 うぇ…甘い…口の中に練乳が広がる。

けど、足りないな。まだ、口の中に苦味がのこっている。

 苦い苦い苦い……本当に苦いなぁ、人生って言うのは、上手くいかないのが殆どで、もうどうすれば正解なのかも分かんないや…

 

 

「……………………………ヒッ…キー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

「ーーーーーおい、由比ヶ浜。」

 

 

 

 聞こえたそれは久しく聞いてないものだった。

 少し開いた瞳から見える濁った目、ちょこんと立つアホ毛、蛍光色のコーヒー缶。

 

「平塚先生が呼んでるぞ、」

 

 気怠そうな気配。

 

……あれ?

 

「………ヒッ………キー……?」

 

 

「……おう、変わりないか?ビッチ」

 

ニヤリと笑いながらそう言う彼は静かに私の頭に手を置いた。

 

「……あ、あれ?幻かな?そんなに精神病んでる?私?はっ!病院行かなきゃ!!」

 

「行く前に平塚先生のところに行くぞ。」

 

さっきまで優しく載せていた手が私の頭を掴む

 

「……え?本当に……ヒッ…キーなの?」

 

そう言うと彼は分かりきったような声でわたしに言った。

 

「そう呼ぶのはほぼお前だけだったろ?」

 

 

彼はそう笑うと少し寂しそうに言った。 

そんな彼を見て私は堪えていたものが落ちた気がした。

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁん!!!」

 

 

 

 

気がつけば彼に抱きついていた。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

「…うむ、このメンバーを見るのは久々だな。まぁ、一人かけてるがな。」

 

 平塚先生は感慨深そうに呟いた。彼女にとってはもう二度と見れないと思っていた光景だ、まさか、もう一度見れる事になろうとは神ですら思わなかっただろう。

 

「はぁ…でも、その雪ノ下はどうしたんですか?」

 

 

聞きづらいが聞いておかなければならないと俺は平塚先生に問う。すると平塚先生も由比ヶ浜も悲しそうな目を床に向けた。

 

「………それが言わば奉仕部復活後初の仕事だ。………

 

 

雪ノ下と会ってくれ」

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

自分の教室への階段をゆっくり上がっていく。

 

 

 

 

「雪ノ下と会え……か…」

 

 

 

 

平塚先生に言われたのはただそれだけ、あくまで会うだけで良いと言われた。どうしたんだ?訳がわからない。彼女の意思も尊重してやれとも言われたが…

 

「どう言う事だ?」

 

疑問ばかりが浮かび、ともに嫌な予感も浮かび出した。

 

「はぁ…どするか…」

 

「ーーーは、八幡?」

 

綺麗に重なった。目線を合わせると目の前にはマイスィートエンジェル戸塚がたっていた。

 

「八幡……?でも、彼は半年前に…そうか…すみません、ひ、人違いだったみた

です。」

 

「いや、あってるぞ。俺だ、比企谷八幡だ」

 

 

そう俺は返した。

少し立つと戸塚は俺を睨みつける。

 

 

「……何をふざけてるんですか?流石に怒りますよ?」

 

 

怒りを露わにして俺を睨みつける戸塚。こんな目されたのは多分俺が初めてなんだろうな。

 

 

「いや、本当だ。俺が比企谷八幡だよ、」

 

 

そう言うと半信半疑だった目は少しずつ溶けていった。

 

「ほ、本当に?」

 

「本当だ。」

 

とりあえずそう返すと、戸塚は流石に少し混乱してきたらしい。俺は戸塚の肩を持つ

 

「とりあえず教室行こうぜ、正直俺も良くわかってないけど平塚先生からちゃんと説明あるから」

 

そう言うと戸塚は混乱した頭をほっぽいてとりあえず俺の言葉を正定した。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

「ーーーうす」

 

 

ガラガラと教室に入るとさっきまで賑やかだった教室がいきなりシーンと静まり返った。

そして花が添えてある席を見つけ座りこむ。今更花が添えられた席とか流行らねーよってか半年置きっぱだったの?って言うツッコミは無しで

 

 

「あいつは比企谷?」「死んだはずじゃ?」「じゃあなんで今此処にいるんだよ?」「なんだ?幽霊か?」「いや、なんて非科学的な!?」「だけどよぉ…」

 

 

小さな声で口々に考察を立てるクラスメンバー達、その考察を聞くのがちょっと面白かったりする。

 

「比企谷…お前…なんで、今更」

 

片方をみるとイケメンが俺を見つめてたっていた。葉山だ。

 

「お、お前は死んだんじゃなかったのか?」

 

「よくわからん。」

 

 そう答える

 

 

 

「ふざけるな!!!!」

 

 

 

 

 気づくと葉山は俺の胸元を掴んでいた。あまり持ち慣れてないのか少し体を斜めにするだけではずれそうだが俺はあえてそのままにする。別に正当防衛とかを狙っている訳じゃない、ただの情報収集だ。

 つまり胸元を掴まれた理由もよく分かってないので話ぐらいは聞きたいだけである。

 

「お前が居なくなったせいで雪乃ちゃんが………」

 

雪ノ下に何があった?何があってお前はそんなに切羽詰まっているんだ、

 

それが聞きたい、それが聞きたいのに

 

「やめなよ!隼人くん!ゆきのんはヒッキーのせいじゃないよ、むしろ、ヒッキーが居ない事でゆきのんにストレスを感じさせちゃった、私たちが悪いよ。」

 

 え? 君、空気読むことが得意じゃなかったの?

 

思わず心の中で言ってしまった。たしかに嬉しい事だけど今は出てきて欲しくなかった感は否めない。

 

「……たしかに…そうだな…すまない、焦りすぎたようだ。比企谷…許してくれ…」

 

 

えぇ、今更聞くに聞けない感じになっちゃったじゃん。

とりあえず許さないといけない空気になってさしまったな。

 

「あ、あぁ、大丈夫だ、殴られた訳じゃないから」

 

そう返すと不服そうに笑って葉山は帰っていった。

使えないイケメンだな。正直そう思ってしまった俺は悪くない。

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

「ゆきのん………」

 

 

放課後、俺は由比ヶ浜と共に雪ノ下宅に来ていた。たしか、文化祭の時に行った事が最後だったかと思う。

 

「ゆきのん……」

 

しかし、さっきから由比ヶ浜のゆきのんコールがお熱い事お熱い事、胸焼けがしちまいそうだ。話が進まなので俺は玄関に向けて指を刺す。

 

「とりあえず、チャイムならせ、」

 

「あ、う、うん!」

 

 

気づいた由比ヶ浜はピンポーンと甲高い音を鳴らす、由比ヶ浜、あの後も来ていたみたいだ。

 

 

「行き慣れてるんだな」

 

「ん?違うよ、いつもここまでは来るんだけど、面会拒否されちゃうんだよね」

 

「ん?そうなのか?」

 

「うん、なんか、何かを恐れてるって言うか。」

 

あはは、よくわかんないや、と彼女は言うが、まさか、あいつ。

 

 

『……はい、雪ノ下です。』

 

 

しばらくするといつもの雪ノ下の声が響く。

 

「ゆきのん!?私、結衣!大丈夫?」

 

少し間が空いく。

 

 

『…ええ、大丈夫"だから"』

 

 

だからなんだ?だから帰れとでも言うつもりかこいつは……

由比ヶ浜を弾かせ、インターホンに向ける。

 

 

「ちょっ、ヒッキ…」

 

 

「良いから開けろ。」

 

 

『ど、どうして、いるの?』

 

帰ってきたのは雪ノ下の困惑した声。

 

「話がある。」

 

 

そう言い切ると隣の自動ドアが空いた音がした。

 

     

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

  

 

 

15階でエレベーターから降りて周りを見渡す由比ヶ浜。あまり変わらない、当たり前だが。

雪ノ下の部屋を見つけると一目散に向かいピンポーンとチャイムを押した。

 

「体、、、大丈夫かな?ゆきのん」

 

「…………」

 

 

 

 不安が募る、大丈夫だとは思っているし知っていても、こいつは心配し続けるのだろうな。流石、俺が優しい女の子と称した子だけある。

すると、ドアが空いた音がする。

 

「………どうぞ、あがって」

 

 雪ノ下はそう言うと、俺を見つめた。

 

「本当に比企谷くんなのね…」

 

「嘘をつく必要がないだろ。」

 

「そう…」

 

 

 そう言うと奥に入っていく。変わらないなあいつ。まぁ、俺としてはこっちにくるまで一緒だったんだけど…

 

 

「さ、行こ。ヒッキー」

 

「ああ…」

 

 由比ヶ浜はそう言って中に入って行った。それに着いて行く俺。

雪ノ下はリビングに俺たちを連れていくとソファーに向かって「そこに腰を掛けて」といい促した。それに賛同して俺は近くのソファーに腰を掛けた。

 

「……で?比企谷君……貴方はどうして生きているのかしら?」

 

彼女は向かいのソファーに座るとそう尋ねてきた。

 

「正直分からん…というか死んだ覚えは一度たりとも無い」

 

「じゃあ質問を変えるわ。今までどこに行ってたの?」

 

「だから、気付いたら町の真ん中に立っていた。マッカン買いに行こうと部室のドアを開けたらいつの間にかな……」

 

そう言うと雪ノ下は少し容量の得ないような不服そうな顔をして俺を見続けた。ちょっとその顔に苛立ちを覚えたのでとりあえず俺はカマかけてみる。

 

「なぁ、雪ノ下……知ってるか?毎月4日の4時44分44秒の扉の話……」

 

 

そう言うと彼女は少し驚いたように俺を見た。

 

「以外ね、あなたがそんな非科学的な話をするなんて…」

 

雪ノ下が言う。

 

「実際、俺が部室から出る時、4時44分丁度だったんだよ…だから、そんな話を思い出してな…」

 

「そう言えばヒッキー、ずっと思ってたけど…夏服だよね。今、みんな冬服だって言うのに…まるであの時からそのまま来ちゃったみたいに…」

 

そう言うと由比ヶ浜は考え込む。

 

「意外とその話、本当なのかもね。ヒッキーだってこの半年の間の記憶がないんでしょ?」

 

そう言った由比ヶ浜に俺は頷く。

 

「でも、由比ヶ浜さん…そんな非現実的な事…あり得るの?」

 

「分かんないけど…世の中は分からないことだらけだからね、化学じゃ証明できないことだってたくさんあるって言うし…」

 

そう言うと雪ノ下は「確かにそうね……」と呟いた。良いのか?それで?そう思う、まぁ、どうせ資料も何もない証拠もないわけだし、実際にやってみようったって4時44分44秒に丁度開けるは無理だ…それに今日が4日だから次が1カ月後になる、そこでミスったらまた来月…もし成功したにしてみても、帰ってくるのが半年後、となると…かなりリスクが多すぎる。俺は証拠とかそう言うのを諦める方が賢明かとした。

 

「でも、まさか、あなたにまた会えるとはね…しかもそのゾンビ目は健在…いや、一度死んだ分本物のゾンビにでもなってしまったのではないかというくらい悪化してるわね」

 

「おい待て、罵倒か賞賛かどっちかにしろ。頭が混乱するわ」

 

「へぇ、まさか、頭の腐り始めたのかしら?ゾンビヶ谷君?」

 

「語呂が悪すぎる。無理やり感が否めんぞ」

 

そう言うと雪ノ下はふふと笑い始める。由比ヶ浜もつられて笑い始める。

 

「ふふふ」

 

「あははは」

 

俺もつられて笑ってしまった。

 

 

次の日、隣の家から苦情が来たという。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

ーーおまけ

 

比企谷小町編

 

 

お兄ちゃんが居なくなったのは半年前の事だ。

 

ある日、いきなりお兄ちゃんは居なくなった。死んだって知らせが来たのは次の日、市内の山の中から顔がつぶれた死体が出てきたとのことだった。背丈共にほぼ同一で、体重も一緒だったという。犯人はすぐ見つかった快楽犯だったことが分かった。調べたら、沢山の死体がその山から出てきたと言う話だ。今でも事情徴収を扱ったニュースの事を覚えてる。

 

『気持ちよかったからやった。』『特に若いのは柔らかいから切りやすい』

 

とか…殺したい。コイツのせいでお兄ちゃんが…

そう思うと、負の感情だけが私の中を蠢いた。

 

死刑なのは確実…だけど、せめてこいつだけは私が殺したい、

 

そんな心を必死に隠しながら日常を過ごす。

 

 最初の時は本当にきつかった。思いもしない人たちが私に励ましの声を掛けてくる。知らないくせに、とか、思ったけど。知らないのは当然だ、私だってこんな状況にあった友達が居たらそうするだろう。そう思うと少しは楽になった。

 

たまに玄関から声がすると返事をしてしまう。″おかえりなさい、お兄ちゃん″って…そして帰ってきたお父さんとお母さんは悲しい目をする。その光景を観て私も寂しくなる。

 

その時の夜はもっと酷い。涙で枕がずぶ濡れになるから、

 

嗚呼、こんなに私脆かったっけ、なんて思いながら、眠る。

 

しばらくしたら慣れるだろうなんて思ったけど、全然そんなことなかった。一緒にいた日数が違うから、ずっと私は泣いたままだった。

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

 

「……何やってるんだろ…私……」

 

 

ソファーに横になってそう呟く。学校から帰ってきてからずっとこの調子だ。

なんでもクラスの男子がお兄ちゃんを見たという。

ふざけるなって言いたい。けど、みんながその子を抑えてくれてそんな心を出す必要はなかった。1回言っておいた方が良かったかななんて思ったけどあまりそういう事を出すめんどくさい問題が起きる。なんか考え方までお兄ちゃんに似てきた気がするけど…まぁいいや…

 

「お兄ちゃんか………」

 

天井を見上げ、時計をみた時間は7時を過ぎていた。……ああ、もうちょっとで夕食だ…早く準備しないとお兄ちゃんが……

頭に浮かんだそれを否定する。兄ちゃんがなんだっていうんだ……

 

「はぁ、レトルトでいいかな…どうせ一人だし…」

 

そう思うと私はご飯だけ炊いて財布を持って外へ出る。

 

 

 

 

 

……こんな時間にコンビニなんて初めてだ。いつもはお兄ちゃんが行ってるからあまりなんとも思わなかったけど……いつも通っている道のはずなのに別の場所の様に錯覚してしまう。

 

「はぁ……」

 

白い息を吐く。

 

「寒いな…」

 

心身ともに…

そんなこと思っていると明かりが道をてらす、コンビニの灯は私を和ませた。

 

「あれ、小町ちゃん?」

 

コンビニに入ると雑誌コーナーから声が聞こえる。ふと見渡すとそこにはマフラーをした人がファッション雑誌を読んでいた。

 

「………結衣さん?久しぶりです…」

 

私が挨拶をすると彼女は私に向けて歩き始める。正直、今一番会いたくない人だ。彼女の光はあまりにも眩し過ぎる。

 

「久しぶりだねぇ、小町ちゃん。元気そうだね、安心したよ。」

 

「…え、あ、はい…結衣さんこそ元気でしたか?雪乃さんがこもっちゃってから、みんな暗かったみたいですし。」

 

「あ、ゆきのん?さっき会いに行ってきたばっかりなんだ!明日から学校に来るってさ!」

 

嬉しそうに笑う結衣さん。やっぱりその笑顔が今の私には毒みたいだ、自分が悲しくなってくるから。

 

「じゃ、じゃあ、結衣さん私、買い物有るので…」

 

そう言うと、あわてたように結衣さんは黒い手帳のようなものを取り出すと。私に差し伸べた

 

「あ!これ、さっきヒッキーが落としたみたいなの、返しといてくれる?」

 

そう言うと一つの手帳を渡される。

 

……さっき?ヒッキーが落とした?……なにを言っているのだろうか?

 

お兄ちゃんは半年前に…

 

「あ、こんな時間だ。じゃあ、先に帰るね」

 

「え……あ、はい」

 

結衣さんは時計を確認すると、外へ出て行ってしまった。私はとりあえず渡されたものを確認する。

 

「……生徒手帳?」

 

たしかにお兄ちゃんの物だ。名前に比企谷八幡と書かれ、写真の欄にはいつもの濁った眼を浮かべる兄の写真があった。久しく見ていない顔だ。その顔は笑ってとでも言われたのだろうか引きつっていた。

 

「……お兄ちゃん……」

 

零れた言葉、静かに涙が落ちていた。

 

 

お兄ちゃんに会いたい。幽霊でもいい、ただ、もう一度だけお兄ちゃんに会いたい。

 

 

でも、もうありえない事だ。ありえない。

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆

 

買い物を済ませ、家路につく。

近くの自販機で買ったマッカンを飲みながらコンビニ袋に目を移した。

 

しまったと思ったのはレジに商品を通した時だった、

 

カレーを間違えて2つ買ってしまったのである。今更戻せないしそのまま買ってしまった。

 

 

「はぁ、やっちゃったなぁ…まぁ明日食べればいいや」

 

と思ったのもつかの間、明かりが見えたのだ。

 

 

「家の電気が……ついてる?」

 

 

そんなはずはない消したのをしっかり覚えている。

例え、カレーを二つ買ってしまったとしても家の事はしっかりやっていたはずだ、

 

「……まさか、、、ドロボ―?」

 

そう思ってからは早かった。庭にある箒を持って玄関を目指す。

 

やはりと言っていいのか鍵も開いていた。すこしずつ少しずつ、玄関を開け中を覗くと。リビングにいる事が分かった、リビングのドアが開いている。

 

「やれる、やれるから……」

 

そう自分に言い聞かせるとドアを開け中に入った。

 

中に入ると誰かがソファーに寝ころがっているのが分かる。誰だ?分からない。けど、どこかで見た覚えがある

 

「やぁぁぁ!!」

 

「ぶふっ」

 

顔に向かって思いっきり箒を振り落とす。箒はまっすぐに顔に向かって飛んでいき寝ていた泥棒を吹き飛ばした。

 

「観念しろ!!」

 

「ま、まて…!?な、何そんなに俺の事嫌いなの!?泣くよ、大人げなく大泣きするよ!?」

 

そう言う泥棒、……聞いたことがある声……見たことがあるアホ毛、

 

 

……あれ?

 

 

「おまっ、いきなりそれは卑怯だろ!小町!!」

 

 

………あれ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………お兄ちゃん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう呟くと彼は大きくうなずいた。

 

あれ?お兄ちゃんは…半年前に…あれ?……死んだんじゃ?

 

頭の中がゲシュタルト崩壊の様に次々と吹っ飛んでいく。

 

 

「ほ、、、本当に………お兄ちゃん?」

 

 

「他の誰に見えるんだ、この馬鹿……」

 

 

あの日と同じようなあきれ顔で笑うお兄ちゃんの顔、あの日と同じように私の頭をなでるお兄ちゃんの手、あの日と同じように…

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁあぁあぁぁぁぁあん!!!!!」

 

 

 

 

次の瞬間、お兄ちゃんにダイブしてた。



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