ソードアート・オンライン 全プレイヤーの裏切り者   作:眠猫の玉手箱

2 / 66
この度、SAOの二次創作を始めさせていただきました眠猫の玉手箱といいます。今後ともよろしくお願いします。

三人称視点で書いていますが違和感があるのでそのうち変えるかもしれません。


第0章 SAOサービス開始前
SAOデバック中です。其の一


 目の前のチェスのポーンをモチーフにしたLV256のロボット、『metal pawn』鉄のポーンに向かって片手剣初期武器である『スモールソード』を横凪ぎに振るう。

カーンと硬質な音を立てて、スモールソードが硬い体表に弾かれる。敵のHPバーを見ると1ドッドほどしか削れていない。その様子を見て男は立ち止まり正面から片手剣最上級ソードスキルである10連撃のノヴァ・アセンションを発動させる。先ずは左の一撃。次に身を屈めて右上からの袈裟斬り。そして、真正面からの一撃を入れたところで、

 

パリーン

 

と硬質な音をたててスモールソードが真っ二つに折れる。真っ二つになったということはつまりスモールソードの耐久値がゼロになったということ。刃の先端から柄まで、徐々にポリゴンの海へと還えっていく。そして、

 

『ありゃありゃ見事にバグったね』

 

 本来の仕様ならば武器が壊れた時点で強制的に技後硬直に移行はずなのだが、現実は剣を握っている動作をしたままノヴァ・アセンションの動きを全て行った上で技後硬直を化せられる。

 

『コマンド05:プレーヤー『シラサワ』の状態をノーマルに変更』

 

 目の前の女の子が歌うように呟いた()()()()によってシラサワはようやく動けるようになり、その場に座り込んだ。

 

ここは新作の全感覚投入型、要するにフルダイブ形式のゲーム『ソードアートオンライン』のデバッグ室No.5d

 

 そこでゲーム制作会社のアーガスの社員である白澤 直木(しらさわ なおき)、プレイヤーネームは『シラサワ』は日夜、先輩の木田、プレイヤーネームは『サンタ』と共にデバッグ作業にいそしんでいた。

 

 デバッグとは簡単に説明するとプログラムの意図しない仕様(要するにバグのこと)を見つけ出し修正を施すことである。のだかその作業はとりあえずめんどくさいの一言に尽きる。

 

 このゲームは先程述べたようにフルダイブ型のゲームである。それ故に取れる選択肢の幅がものすごく多岐に渡り、それに比例してデバッグの数がとてつもなく多い。

一応現状は二人一組の25組体制で行えているのだが、それでも、さばききれないほどデバッグ事柄は多い。

 

 

「あぁデバッグもカデコがやってくれればいいんだけどなぁー」

「無茶言わないで。あの子の役割はバランスの調整とクエストの作成、さすがにデバッグまではまだ無理」

 

シラサワ(白澤)の情けない叫びにサンタ(木田)が突き放したように答える。ちなみにこの会話既に何十回と繰り返している。

 

カデコ、正式名称カーディナルシステムとはこのSAOの基礎となるメインプログラムである。役割は先程サンタ(木田)が説明してくれたとおりである。なお開発陣はほぼ全員正式名称が長すぎるため略してカデコと読んでいる。

 

嬉しそうにデバッグのチェック項目をチェックしているサンタ(木田)を見てシラサワ(白澤)はやっぱりこの先輩生来の変態だなと思いながら眺めていた。

 

「この場合は変態じゃなくって社畜って言ってほしかったな。」

 

 それはそれで問題である。第一、アーガスはブラック企業ではない。給料は安いが、二週間に一度は休みが貰えるし、風邪を引いてどうやっても会社に出れないときは有給を取れば休めるし、仕事が長引いた場合無料で会社に居残りしていいことになっているし、

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と、思うシラサワ(白澤)サンタ(木田)はジト目を向ける。

 

「君もなかなかに染まってきてるね、あぁあの純粋だった白澤君はもういないのか。」

「内心読まないでください、というか元々純粋じゃありませんし。で、次のデバッグ項目は?」

 

全く悲しいねぇと冗談ぽく呟きながらタブレットを操作して、デバッグ項目の中から目的のやつを見つけたのかシラサワ(白澤)にぞんざいに放るサンタ(木田)。それを反射的に慌てて受け止めるシラサワ(白澤)。破壊不能オブジェクト認定されているので例え崖の上から落とそうが、象に踏まれようがサンタ(木田)の全力パンチだろうが傷ひとつつきはしないが、それでも落としたくはないものである。

 

「第四層の船造りをやってほしいってさ」

 

 SAOのクエストには大まかに分けて二種類ある。一つは必須クエ、もう一つは自動生成クエストだ。

 

 必須クエとはその層の攻略にほぼ必須(一応やらなくてもいいが、その場合その層の攻略は難しい。) クエストのことである。これは全てシナリオライターの手で作られている。

 次に一般クエ。これは、特に攻略にほぼ関係のないクエストである。これはカーディナルの自動生成機能によって作られるのががほとんどである。

 

「四層って言うとフィールドの大半を占めるでっかい湖がある層でしたっけ」

「違う。それは第六十一層。第四層は水路の方」

 

 水路のほうかとシラサワ(白澤)は思い出す。フィールドボスのデバッグに参加したからなんとなく記憶に残っていた。

 

 フィールドボスは硬くて動きがのろい、ゾウガメ。デバッグの時にHPが残り2割になると狂乱モードになり、ものすごく苦戦するどころか、その層の適正レベルの30人パーティがほぼ壊滅。茅場先輩(プレーヤーネームもまんまカヤバである)と、宮田さん(プレーヤーネームはノブ)の奮戦によりなんとか倒したが、そのあと下方修正されたらしい。

 

 白澤(シラサワ)の恩人である茅場先輩曰く「フロアボスならともかく、フィールドボスでは強力過ぎる」とのこと。

 

 茅場先輩はこういうところのバランス調整の担当よくやってる。が、ちょいちょいバランスがおかしい。以前挑んだ五十層を思い出す。おかしいだろなんだ強さ!なんだあの仏像モドキ!フルレイド(48人)で挑んだのに、茅場先輩以外、みんな最低5回は死んだとかおかしいだろ!なおこちらは未だに調整される気配はない。

 

「なにボケッとしてんの白澤君。置いてくよ」

「あっすみません」

 

 と、愚痴ってたらサンタ(木田)の呼び掛ける声に気づかず、シラサワ(白澤)は慌てて準備を整える

 

『コマンド4:シラサワ、サンタ四層のロービアに転移』

 

 その直後シラサワ(白澤)サンタ(木田)は鮮やかな蒼い光に包まれ、

 

 イタリアの水上都市を思わせるような町なみ、そして奇妙な水のようなものが街中に張り巡らされている、第四層の主街地の『ロービア』に転移した。

 

「まだ水の再現はむずかしいみたいですね」

 

 シラサワ(白澤)は転移するなり水路に駆け寄って試しに両手で水もどきを掬ったが明らかに現実の水の触感とは違うものだった。例えるなら、水とスライムを4:1で混ぜた感じであろうか?飲んでみるが味はなにもしない。

 

「割りと担当の宮田さん達も苦戦してるようね。」

 

 サンタ(木田)が興味なさげに呟いたのはきっと自分が担当するデバッグ項目ではないからであろう。

 

『コマンド104:シラサワとサンタ、ふさわしい武器とレベルを』

 

 瞬間二人のレベルが256から11に下がり、回復アイテム等がストレージに入り、防具が管理者用の赤いフードからくろがねの輝きを帯びたものに代わり、装備が片手剣武器、『ターナル・ソード』なるものに変わる。

 

 サンタも武器が両手斧であること以外、シラサワとほぼ変わらない。

 なぜ武器が違うのかと言うと、それはカーディナルによって普段シラサワたちが使っている武器種を分析、記録しているからだ。

 ちなみにシラサワは右手に盾を持ち、左手に片手剣を持つというなんの面白味もないスタイルであり、木田ことサンタは両手斧と細剣を相手によって使い分けるという独特のスタイルである。

 管理者の一人としての知識とクイックチェンジを駆使した戦い方はとてもじゃないが彼女以外に真似できる人はいない。

 

「さてじゃあ挑もうか。」

 

 

 

「SAOプレイヤーにも魔法実装しない?」

「するわけ無いでしょ。このSAOは近接戦闘のみっていうコンセプトで作ってるんだから。」

 

 彼ら管理者達はそんな冗談をいいあいながら、突き刺すようにこちらに延びてきた長く鋭利な爪を片手剣ソードスキルであるソードリープでシラサワははじいて隙を作り、次の瞬間瞬間爪の持ち主にサンタの斧の重い一撃がささる。

 

 彼らシラサワ(白澤)サンタ(木田)、この二人の管理者の前にそびえ立つのは全長8メートルを越す口から火炎を放つ熊に似たモンスター。強敵ではあるが倒すのはそこまで難しいわけではない、むしろ倒さないように調整する必要すらある。

 

 今二人が受けているクエストは、引退した元船づくりの老人から受けれる造船クエスト。

 素材をあつめて特定の場所に持ってく収集系統のクエなのだが、最高級の素材を集めるためには、今、目の前にいる熊の主を倒して脂を手に入れたり、スキル『伐採』をある程度上げて立派な樹をぶっ倒す必要があるのだが、木材のところだけは抜け道がある。なんと熊の主を誘導して樹に体当りさせると一定確率で最高級の素材が手に入る可能性があるのだ。のだが……

 

「シラサワ君火炎放射くるよ!」

 

「またかよ」

 

 このヌシまるでシラサワ達が樹を倒させようとしてるのを察しているのかさっきから火炎放射しか撃ってこない。慌ててシラサワは近くの水モドキたまりに飛び込み、火炎が頭上を通り過ぎていったのを確認してから、(飛び込むのが遅かったせいで少し髪の毛が焦げた)即座に飛び出しすばやくスタンしているヌシの右横にある立派な樹を背にして片手剣ソードスキル『ホゾリンタル』を放つ。

 

 現実世界ならば水を吸って重くなった防具ですばやい動きなど無理だが、この世界ではその影響はない。

 

 ヌシのゲージが残り六割から五割、いや四割五分まで削れる。クリティカル入っちまったか。とシラサワは内心舌打ちをする。

 

 だがこれのおかげでヘイトを稼いだため、スタン状態から回復したヌシがシラサワに向かって体当りしてくる。正直全長8mを越すモンスターが突進してくるのは怖くはあるが、ありふれすぎてもう慣れた。何十回も似たようなこと、時にはそのまま吹き飛ばされたり、細切れにされたりなどされれば嫌でも慣れがくる。

 

 そして、技後硬直からシラサワが回復する前に、吹き飛ばされ一気に、HPがグリーンゾーンからイエローゾーンに変化する。だが、シラサワもなれたもの。この反動を利用して倒された樹からアイテムを回収する。ドロップアイテムを確認すると2個ドロップしたので、サンタにその事を伝えると

 

 

「ありがとう」

 

 そしてサンタは物騒な笑みを浮かべ、持っている斧がソードスキルの光に包まれ、

 

「あとは心置きなくぶっ飛ばせる!」

 

 その言葉と共に、ヌシのゲージが一気に残り一割近くまで削れる。サンタが片手斧のソードスキルを使ったのだ。ヌシがヘイトをサンタに向けて、シラサワに無防備な背中を向ける。

 

「おわりだ」

 

 そしてシラサワもちょうど片手剣ソードスキルのクーリングタイムが過ぎたので、無防備すぎる大きな背中に片手剣ソードスキル『バーチカル・アーク』を放ち、ヌシの残りHPを一ドットも残さず削り取り、ヌシはその身をボリゴンの粒に変えた。

 

「よし、しゅーりょう。お疲れ、ポーション飲む?」

 

「こんな低層じゃポーションもレベル1くらいでしょう。だったら要らないです」

 

 サンタがポーションを進めてくるがシラサワは苦い顔して断る。何故ならばポーションのレベルが低いやつ特にレベル1のなんかは悲しいくらいに不味い。

 

「あら残念。じゃあ代わりに私が」

 

 サンタが美味しそうにイッキ飲みする。ごくごくという音が聞こえてきそうなくらい良い飲みっぷりである

 

「この独特の風味が癖になるのよねー。」『コマンド6:サンタに回復ポーションレベル1を譲渡』

 

 そういいながらサンタは管理者権限を悪用して二本目に突入。その様子を見て味が変わったのか?と思ったシラサワが何気なく飲んでみるが相変わらずクソ不味いままだった。"木田先輩味覚機能バグってないか?"と、小声で呟く

 

 そうやって騒いでいると視界がだんだんとオレンジに染まっていき、木立の陰が管理者達の足元まで伸びる。ストレージを開いて時刻を確認するともう16:34。

 

「そろそろ()()にしませんか先輩」

「もう昼飯ってよりちょっと速い夕飯って感じたけどね。時間的に。全くこの世界だと現実でどれくらいお腹が減ってるか判別できないからね」

 

 そして、サンタとシラサワはメニューからログアウトボタンを探して、

 

 メニューのどこにもあの目立つログアウトボタンが存在していなかった。

 

 

 あれ?あの目立つ位置にあるログアウトボタンが見当たらない。と首をかしげるシラサワ。

 

「ねぇ白澤君。君のメニューにログアウトボタンある?」

 

どうやらサンタも同じようにメニューにログアウトボタンがないようだ。ということは

 

 

「昨日一緒にカップ麺食べたときに、茅場が今日メニュー弄るって言ってたからそのせいかしら。」

 

 まず間違えなく99%木田(サンタ)の言うとおりだろうと白澤(シラサワ)は推測した。まさか意図してログアウトボタンを消すなんてあるわけないし

 

そして木田(サンタ)は全くと、多少気分を害したように言いながら提案した。

 

「とりあえず、船作りのじーちゃんにこれ届けてクエスト達成しちゃう?」

 

 

 

 

「では、船ができたら呼ぶから待っておれ」

 

 ロモロと言う名前のNPCが部屋の奥の扉に入って姿を消したのを確認してからもう一度白澤はメニューを開く。が、ログアウトボタンが復活する気配はない。

 

 その事を木田に伝えると、

 

 

「なにやってんだ。あの茅馬鹿。これだからリア彼女持ちは」

 

「神代先輩は関係ないでしょう。」

 

 木田と茅場(+茅場先輩の彼女の神代)は同じ大学の同級生なため、彼にずけずけともの申せる数少ない人物である。ちなみにこの三人()()仲がいいが、大学時代は三角関係であり、この三人が集まると凄く場がギクシャクしていた。最終的にはすったもんだあった挙句木田が身を引いたらしい。詳しい話を言うと

 

 

 

 

 

 

 木田からこれ以上ないってくらいの殺気を感じたので、白澤はここまでにしておいた。誰も幸せにならないし、それ以前に白澤も進んで思いだしたくない話だ。

 

 そして時刻は16:59から表示が変化し17:00に変わる。それでフラグ立ったのか、それともただの偶然か。

 

 時刻が変わるとの時を同じくしてして

 

 

 リンゴーン リンゴーン

 

 

 鐘のような耳障りな警報音が鳴り響く。

 

「この音は全プレイヤー強制転移警報音?!」

 

 驚いて放たれた木田の言葉を証明するかのように二人は明るすぎる、蒼い光に包まれそして、

 

 転移したそこは『第一層主街地はじまりの街』であった。




 第0章は、本作の主人公である白澤のアーガス社時代の話となっております。
 デスゲーム開始後から読み進めたい方は、(作者としてはおすすめはしませんが)デスゲーム宣言に飛んでください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。