「ねぇ、夢蔵」
私が呼びかけると、目蓋を閉じかけた目で私を見る。
「痛い?」
開けた目の黒目部分は虹彩すら濁って生気に満ちておらず、それは命が失われる直前のようだ。
「痛いかしら…?」
いつも着ている上下とも白い衣服は、まるで死人のために誂えられているもののようで。
痛くなる。
「私は、痛い」
どこも負傷箇所はない。互いに。
けれど、こんなにも痛い。
「―――」
虫の息の夢蔵が重く息を吐き出す。魂を吐き出しているのではないか、そう思えるものにより痛くなる。
「夢蔵」
膝に乗せた夢蔵の頭。それを撫でていた手を、夢蔵の首に。
「ねぇ、生きて」
そして、あらん限りの力で絞める。両手を使い、体重も乗せて。
そうすると、彼は必死に呼吸しようと喘ぐ。息を吸い込もうとする強さは、頚動脈などの振動が手に伝わるためよく分かる。
「生きて」
目から涙を流し、顔を真っ赤にさせて。吸い込む息の量が少しでも多くなるようにと、口を大きく開く。酸欠の状態なのだろう、手に当たる首の血管が必死な様子で膨張しているのが分かる。脳はより多く電気信号を、心臓はより多くの鼓動をと夢蔵の体全体が、彼を生かそうと全力になる。
「生きて…」
唾液を飲み込む余裕すらないのか、大きく開けた口から流れていく。
さっきまでは力なく投げ出していた四肢が活発に動き出す。それが私に当たる。けれど、今、私が感じている痛みに比べたら気にするほどでもない。
一回だけでも息を吸えたらいいと、必死に生き足掻く夢蔵。
その姿でこの痛みが和らぐことはない。苦しい様に、痛みは治まらない。むしろ私のほうが苦しいし痛い。
痛みをどうにかしたい。
その思考に染まっているのは、ただ夢蔵に生きて欲しいからだ。
生きて欲しいのだ。
「――…っ!」
夢蔵の目が大きく見開く。
最期を告げられた。――そう理解するのは難しくない。
「生きなさいよぉおぉぉお!!」
手を離し、夢蔵の頭を両手で掴む。瞳孔が完全に開きかけ、命が終わるのを見せつけてくる。
それは許しがたい。許してなるものか。
この
「夢蔵、夢蔵、夢蔵夢蔵!!」
恥じらいを捨て、愛しい人の名を泣き叫ぶ。
貴方がくれたのよ、この
貴方と
ねぇ、分かってよ…っ!!
最期の呼吸なのか、息を咳き込みつつめいいっぱい吸う夢蔵。涙が彼に降りかかる。
終わらないで――。逝かないで――。死なないで――。
「生きてくださいぃぃぃ…!!」
吐き出される息を止める術が何一つ思い浮かばない。
いや、いや、と泣き叫び錯乱する。
最期になるだろう、夢蔵の生き様。
目に焼き付けるべきはずのものは、涙が止まらない自分の目ではぼやけてはっきり見ることが出来ない。
肺を最大限に膨らました夢蔵は、溜まったものを吐き出すため収縮する。
長く細く吐き出される息。
止まることなく、静かに。
そして。
「かっ…ぐや」
咳をしながら、私の名を呼ぶ。
――あぁ、生きてくれたっ…!!
博麗夢蔵と蓬莱山輝夜は愛を交わした仲だ。恋のこの字も知らず、間違えて「変」と書き間違えてしまうような幼い恋愛ごっこもすれば、布団の中でお互いの情愛をぶつけ合うこともする。行動だけでなく、言動でも互い互いが愛を告げあった。
夢蔵の口はそれほど上手くない、そして行動も牛歩のように遅いし鈍い。致命傷にはならないものの、傷が残る具合のものがあった。それもすぐ癒えるもの、のはずだった。夢蔵にデリカシーがなさすぎるということはなかったのだが、輝夜という愛おしい人ができるまでは女の扱いに不慣れ。彼の妹や、彼らの世話をした藍や、里の女性陣などなど色々手馴れるものだろうが、そういう女達での慣れは愛を交わす仲での触れ合い方が異なることに気づくのは手遅れになってからであったのだ。
「やめて」
付き合う前。意識する前に、間違った接し方をしていた。いつもは、少し膨れた顔をして軽くそう言ったのは輝夜だ。そして、いつもとは違う少し苛立った声でそう言ったのも輝夜だ。妹を含む子供たちのより、少し上くらいの対応をこのときはしていたのだが、誤りであったことに輝夜のそれでようやく気づかされていた。どう対応すれば良いのか一瞬判別がつかず、その一瞬が仇となりその日の輝夜は不機嫌なままだった。
「やめて…」
あの対応を間違えた日から数ヶ月後。あれから対応を変えたことで、いつもの和やかな雰囲気に変わった。だが、それもすぐにまた輝夜は不機嫌になる。対応を変えたことで彼女の機嫌が直ったのだが、それは直ったように見えただけだったのだ。このときの対応は、年頃の女性にするものだった。
年頃の女性は難しい。すぐ怪しんだり訝しんでは、重箱の隅をつつきたがる。そのくせ、興味はあるというのに自分はいいと大人の女性ぶる。ならば、大人扱いすれば都合の良いところで子供に戻るから対処が難しい。年頃の女性が主に夢蔵のファンクラブメンバーなため、対処に失敗したことはあまりなかった。失敗しても、周りのファンクラブの女性や昔から知っている大人女子達がフォローして名誉を回復させた。だから、年頃の女性に対する対応を間違うことはあまりなかった。
けれども、間違えたようだ。年頃の女性に対する対応なため、前より距離を離した対応がお気に召さなかったらしい。だからといって、前に戻したら非常に怒ることは目に見えた。そうなることが目に見えたからこそ、どう対応をすればよいか混乱し、また輝夜の気を損ねた。
そう対応していたからかもしれないが、この頃に夢蔵は輝夜を一人の女性と意識しだした。それまでは、輝夜の世間知らずで天真爛漫、そして好奇心旺盛な様にそういう意識が湧かなかったからもある。夢蔵とて年頃だ。どういう体型が好みなどなど、里の男たちと猥談をこっそりする程度は女に興味がある。今は帰る家でなくなったが、家のほうに秘蔵の春画はそこそこあった。それに輝夜に似たような女がいなかったかといえばいないはずもなかった。似すぎていると罪悪感で萎えてしまうため特徴を絞り、行為しだしたのはこの頃だ。何も輝夜限定ではない。いいなと思う女性はそこそこいたのだ。
でも、輝夜を恋愛対象としては見ていなかった。
それが一番の悔恨になることはこのときは知らない。
「やめなさい」
だから、また対応を変えた。前回や前々回とも違う対応。親しいけれど深すぎない女性の対応。前回と同じように感じるかもしれないが、だいぶ違う。前回は前々回でしていたスキンシップを極力減らしていたのだ。年頃の女性にべたべた触るものではない、そういう意識をモットーに触れるとしても指紋がつかないように布巾や手袋越しで触るように接していた。そういうものをもう少しフレンドリーにしたもの。指紋がついたとしても、その指紋をふき取る。そのようにする対応だ。具体的には、貴女は気になるけどどうにかしようとする気はない、という紳士のような対応だ。女性にとって男性は皆紳士でいて欲しいもの。けれど、紳士すぎても自分に魅力がないと思われてしまい難儀する。そういう対応なのだ。やはり、なのだろうか。気に入らないと不愉快気に言い放つ輝夜がいた。またまた対応を間違ってしまい、夢蔵はまいった。これ以上の対応は無理だ。なぜなら、経験したことのない領域なのだ。他の女性の対応といえば、すでに相手がいる女性に対するものしかないというのに。
冗談でも、ここからは勘違いさせてしまうような対応はしてはいけない。夢蔵は二人きりでいる輝夜の部屋で緊張を解くため、あまり残りがない湯飲みに手を伸ばしながらそう思考する。
近くで物足りなさそうにしている輝夜を見て浮かんでくる朧気な「好き」という言葉に確信が持てないのだ。夢蔵自身のもののはずの「恋情」と呼ぶべきものは、いささか汚れていた。性欲からか他の深層意識的なものからなのか、それとも両方からか、自身の欲望を輝夜に似た春画で発散させたことが負い目なのだ。性欲からも愛は生まれるだろうが、そういうものはよろしくないという意識はある。人間の三大欲求なのだから恥ずべきでないと教えられるが、何処を見ても性欲は恥ずかしいという認識。男なのだからしょうがないという思考は「逃げ」であるという意識もある。
輝夜は、男がそういうものであるというのを「かぐや姫」として育てられたときも、月にいた時も知っているし学んでいる。気持ち悪いとも思うし、しょうがないとも思っている。そういう話もこの対応中にオブラートに包んで輝夜から話してくれた。暗に、自分をネタにしていることが分かっているぞ、と圧を送っているのかと感じたがそうではないことは良く知っている。
湯飲みを掴もうとした手を捕られ、夢蔵の思考が濁る。勢いで湯飲みが倒れ中身がこぼれてしまう。自室でそんなことをしたというのに、輝夜はそれを無視し夢蔵を自分から離さないようにした。
「夢蔵」
この日、初めて夢蔵の名を呼んだ。それに思わず思考の迷路から出てきてしまった。
「私のこと」
いたずらっこのような笑みが妖艶に。目と目が合うと、輝夜を食い入るように見ている夢蔵自身が見えてしまった。
「好きなんでしょ…?」
その輝夜の声は、思わず腰に甘い痺れが入るほど快感を促すようなものだった。
「どうなの?」
輝夜が女を使ってくる。そういうのを使わない関係を維持してきたのに。
「夢蔵…?」
畳の上に倒された。痛みはない。よく分かっていなかったが、本当は自分から倒れていた。そして倒れた夢蔵の上に輝夜は跨ってしまう。
甘い蜜のような声は、耳に入った傍から鼓膜を溶かし、器官と神経を侵して、脳を支配するように感じられた。思考の機能が失われていく。鍛えた理性が崩れていくのが手に取るようにわかる。
「……ぃ、だ」
性欲が暴走しそうになる。そのせいで、呂律がまともじゃない。けれど、言わないといけないことがある。それをせずに事に及ぼうなど、切腹ものだ。
「輝夜」
体中が熱い。発汗もするし膨張もする。唾を飲んでも喉はカラカラなのに、目はギラギラし理性が限界なのを物語るだろう。羊の皮をかぶった狼が、化けの皮を剥がした。この様子を女性は恐怖心を抱くなというのは無理な話だろう。喰われるという立場は恐怖でしかない。
けれども、輝夜は違った。彼女自身も、羊の皮をかぶった狼だったからだ。こっそり男を興奮させる香や薬など盛ったりしている。即座に逃げるべきはず事態を自らセッティングし、事に及ぶ所存だ。化粧をしていなくても白い肌は赤くなり、好奇心でキラキラとしている目は情欲で潤み、いつもより大人っぽく見える口紅をつけた唇は苺のように甘いよと夢蔵を誘う。掴んだ手を自身の鎖骨に這わせ、彼女の尻から太ももを撫でる手をじれったそうにして両太ももの中央へ行くよう揺れる。
「すきだ」
夢蔵が襲い掛かるよりも前に、輝夜が覆いかぶさった。
この日、夢蔵と輝夜は心身ともに結ばれた。傷が治らないものだと知らずに、傷ついたままで。それもちゃんと治ると信じて。
何度も交わった。漏れる言葉が、上等な言葉での愛交渉ではないが、通じ合った。
確かに繋がったのだ。
夢蔵と輝夜の男女としての始まりは爛れたものだ。傍から見れば眉を顰めるものだろう。彼らからしても、本来はそう気づくべきものだ。だけれど、今もこうして気づかないよう互いに騙しあっている。浅い傷が深い傷となり治癒不可能となってもそうしている。
互いに傷付けあうのが、彼らの愛だ。
輝夜の夢蔵を殺めかける行為は、夢蔵の所業より優しい方だ。
なぜなら、殺めるという行為は終わらせるということ。そして、完全に殺さないということは、許すこと。
彼女の“殺めかける”行為は、夢蔵への愛情表現だ。
殺めれば、全て終わってしまう。命というものは、一生命体に一つしかないものだ。夢蔵は如何に強いといえど、所詮は人である。毒を盛ればあっさり死ぬだろう。けれど、そんな何かに頼ったものでは意味は無い。“輝夜自身で殺める”ということが、唯一つの条件だ。この条件の意味は、夢蔵が寿命であれ病気であれ、どんな理由であろうと輝夜以外の理由で死んで欲しくないという、もの。ある種の独占欲といえばいいだろうか。蓬莱の薬を飲めば死ぬことはないだろう。けれど、彼女はそういう“夢蔵の価値がなくなる”ことはしたくないのだ。彼女自身は蓬莱の薬を飲み不老不死になったことは後悔していない。何度も後悔してきたこともあろうが、今はない。だって、生きている夢蔵がいるから。不老不死になってしまったのなら、夢蔵は生きてもいないし死んでもいない存在になってしまう。それは、価値がない。輝夜がいて欲しいのは、いずれ死ぬであろう夢蔵なのだ。そして、彼の生き様を誰よりも知っていたいし、見ていたいし、感じていたい。
なのに、殺める行為に出るのはどうしてか。ポイントは“殺めたい”という欲求ではないことだ。殺人欲求が溜まっているなら、それを愛情表現と誤認しとうに夢蔵を殺している。しかし、なにがあろうと殺しというのはプラスなイメージは湧かない。たとえ、夢蔵が自分が殺されるのを受け入れても、それは愛を与え合っていない。ただの輝夜の自慰行為でしかないのだ。
ならば、どういうことか。最高の生き様は、死に触れてようやく見えるものだ。どんなに綺麗であっても汚くあっても、その瞬間が素晴らしいものだ。終わりが見えても進めるか、立ち止まるか等々、生きたものそれぞれが多種多様に見れる。そして、夢蔵の
“
そういう愛情表現だ。愛しているから、殺す。
けれども、完全には殺さない。いつも途中で止めてしまう。これは同時に思うからだ。
“
愛だ。愛しているから、生きて。こういう愛なのだ。
なんとも奥ゆかしい乙女心ではないか。終わりを見たいけど、続いていて、と願っているのだ。先ほどのより強い感情が入っているのはこちらだ。前者はどちらかといえば興味心が強いもの、これは欲求から来るもの。どちらも欲求から来るものであるが、後者は傷つきつつも壊れないよう大事にしてきたものだ。
夢蔵は対応を間違え続けてきた。月にいた頃も、かぐや姫として暮らしていた頃も、輝夜は相応の対応をされてきたのに、彼だけは違った。それを「をかしきこと」として楽しんでいたが、結局は苛立ってしまったのだ。特別扱いをしろというわけではなかったのだ。ただ、真っ直ぐ輝夜自身を見ている様が間違っていることに気づかないのが甚だ遺憾だった。かぐや姫時代、御簾越しにみた男どもの上辺だけを見てくるのが非常につまらないと感じていた。彼らは口は上手くても、輝夜に見合う実力はなかった。彼らほどの口の上手さを夢蔵には求めていない。上辺だけを見ているのも諦めているべきか、そう考えていたときに夢蔵の放った一言が傷をつけた。
《輝夜は女の子なんだな》
何を当たり前なことをと思ったが、コレまでの対応をしていたなら夢蔵のこの言葉は当たり前だろう。節度は守っていたつもりだが、様子は童女のようになっていたのだ。それは、いくつも年を重ねた輝夜には恥ずべきことだったろう。ただでさえ月にいた頃も姫として大事に育てられてきた。それをあまつさえ女の“子”はない。そもそも、この時は異性として見ていなかったのにも気づいた。ひどい傷をつけたのだ。
それでも、その傷は夢蔵が輝夜にとって異性として気になるきっかけだった。なんども対応を間違えられては傷ついてきた。それでも夢蔵と逢うのをやめなかったのは、ただ、そんな夢蔵の対応の変化を見て、この人の生き様を見ていたくなったからだ。傷ついて手当てもされず、自然に任せた結果治らなくなったものはいつしか恋になった。なぜそんな、異常なことになったのか。夢蔵のほうがボロボロに傷ついていたのを見て、哀れに思ったのが変じてそうなったのだろう。壊れていてもおかしくないのに、大丈夫と嘘をついて立っている姿があまりにも可哀想だったのだ。強い期待の中、弱音を吐くことすらできず虚勢を張り続ける様に、こちらも傷ついていく。対応を間違えているのだ、今も。
殺されかけては輝夜を憎みもせず、笑いかける様にまた傷を作る。その傷は疼痛で、寝ても起きてもずっと疼いて痛い。
許すのは、夢蔵じゃない。輝夜だ。何を許しているのか、分かるだろう。
俺は、息も絶え絶えに泣き顔の輝夜に笑いかける。輝夜の殺人未遂行為はもう数えるのを止めたほど、茶飯事に行われている。それでも、愛しているのだ。
馬鹿だなんだと言われるだろうが、何とでも言うがいい。
【博麗夢蔵は蓬莱山輝夜を愛している】
それは確かなことのはずなのだから、何を気にすることがある。自身の恋の始まりは汚れたものだろうが、互いの恋情をぶつけ合い愛となっているのだ。ならば、二言は要らない。
「あい、している」
彼女のこの嬉しそうな顔を見れるのなら、何度だって付き合う所存だ。生きることを止める気はない、死ぬと諦める気はない。彼女が望むなら何度も死にかけ、何度でも生還し愛を告げよう。
彼女のあの一言が傷でなくなるその日まで。
《私だけと生きていて》
最初はよく分からず、ただ頷いた。それの所為で今も彼女は深く傷ついている。それを無くそうと色々告げるたび彼女はより傷ついた。
今も意味は分かっていない。何度も何かを告げるたびに彼女が傷つくならば、止める気のほうが湧く。自然治癒を望むしかないのか、そうほぼほぼ諦めている。けれども、本気で諦める気はない。正しく意味を理解し、正しく愛を語り合いたいから。
白魚のような指が俺の顔に乾いて張り付いた涙や涎を優しく擦り落とす。痛くはなく、むしろくすぐったい。
「なぁ」
語りかけると、まだ彼女は泣いているから涙が顔に当たる。
「死にたくない」
いくつも当たる。
「輝夜と生きていたい」
嬉しそうに笑っているから嬉し泣き。そうであって欲しいのに、そうではないのだろう。だって、こんなにも彼女の涙はしょっぱいのだ。
でも、きっとこの最適解は告げてはいけない。もう意味は理解できているのだ、本当は。けれど、これはダメだ。彼女が望んでいたとしても、これはダメだ。
『死にたい』
そんな言葉を彼女が喜ぶはずがない。言ったとしても傷つく。そして、また言わなかった今も傷ついているのだろう。だが、その方がマシだ。
きっと言ったら、彼女は遂げるだろう。自分は添い遂げられないことを悔やみながら。そうして、壊れていつまでも俺に囚われ続けるのだろう。俺のおふくろのように。
であるならば、彼女を傷つけるままでいよう。壊れることがないように、軽く爪を立てるような微妙な強弱で。
あの言葉は俺に死を願うように言って欲しいだけ。それだけ。それだけで、彼女が救われるならばという期待はあった。そんなものは欺瞞だとすぐさま判断するのだが。
「輝夜」
「………」
傷ついて泣いたままの君がどうか、心から笑えますように。黙って降りてくる君の顔にそう願いを込めて。
自然と下りてくる目蓋に抵抗はしない。
触れ合うものはいつになっても虜になってしまう。愛を感じては、愛を感じて欲しいと思う。
まるで夢心地だ。このまま眠ればいい夢が見れそうじゃないか。夢を見るのは楽しくて仕方がないな
起きることを止めようかな
どれぐらいのヒロイン数がいい
-
一人
-
二人ぐらい
-
ハーレム