小さな民間警備会社から始まった子供たちの下克上があった。
火星の都市部から車で幾分も離れた荒野にあるその民間警備会社の実態は旧式のモビルワーカーを保有した傭兵組織だった。
社員は大人ばかりに見えて、ヒューマンデブリを含んだ未成年従業員も多く、彼らには阿頼耶識システムの施術を受けることを強制して入社させているため、全員が阿頼耶識持ち、宇宙ネズミと呼ばれる子供たちだ。
そんな子供たちはある日決起した。
クーデリア・藍那・バーンスタインの警護を請け負ったがために、彼女の死を望むギャラルホルンからの攻撃を受け、CGSの大人たちは社長を含めて逃亡してしまう。
大人たちが逃げる時間を稼ぐために生贄のように残された子供たちは、会社の施設の一部の動力源となっていた厄祭戦時代のモビルスーツ、ガンダム・バルバトスを起動させ、ギャラルホルンを退ける。
そこからが彼らの下克上の始まりだった。
戦うことでしか自分たちの価値を示せない傭兵が逃げ出したとなれば、そんな情けない大人たちに従う道理はないと、少年たちのリーダー格であったオルガ・イツカはCGSを乗っ取り、鉄華団と名を改めた。
鉄華団。決して散らない鉄の華。
彼らの躍進はクーデリアを地球に送り届ける依頼を遂行する中で加速していった。
その結果、鉄華団は火星どころか地球圏にまで名声を轟かせ、連日就職希望者やスポンサーになりたいという申し出で人が詰めかけるありさまである。
「はぁー……ぁ」
CGSの頃からは想像もできない忙しさに鉄華団の代表として応対し、疲弊したオルガ・イツカはようやく訪れた休息に大きく息を吐いた。
会社内の施設は、木星の複合企業であるテイワズからもたらされたハーフメタルの採掘事業や戦闘班の2人が狩ってきた賞金首たちの報酬金などでほとんどが増築、新設された。
だが、バルバトスを動力源として繋いでいた場所だけはオルガと、バルバトスのパイロットである三日月が残しておきたいと希望しそのままにされている。
「こんなところで休憩ですか? オルガ団長」
「おぉ、メリビットさんか」
コツコツと鉄の床を鳴らし、オルガの傍らに立ったのはスーツに身を包んだ女性だった。
名をメリビット・カッサパ。
元々はテイワズから鉄華団に派遣された事務員だが、今では正式に入社し、整備長であるナディ・雪之丞・カッサパと結婚している。
「あんたこそ珍しいじゃねぇか。てか、今は育休中だろ?」
「はい。おかげさまで」
「言い出したのはオレじゃねぇよ」
ぺこりと頭を下げるメリビットにオルガは苦笑すると、手摺りに身体を預ける。
「少し暇を持て余したので何か出来ることは無いかと来てみたんです。けど、サヴァランさんとラディーチェさんが出勤なさっていたので」
「ンなこと言って、子供の面倒はいいんですか?」
「はい。今は夫のところに」
幸せそうな笑顔をメリビットは浮かべる。
「初めはデクスターさんと2人でやりくりしてたのが懐かしいです。頼れる同僚がたくさんいて……でも、経理の方には新しい方入れないんですね」
「あんたとデクスター、あの2人がいりゃなんとかなるからな」
加えて、鉄華団にはあと3人事務面では頼りになるのがいる上に、彼らに負けじと副団長も食らいついている。
若い人間を引き入れてもいいとオルガは思っているが、会社が大きくなっている以上は慎重にいかないとと言う参謀のビスケットに任せている。
「そうですね。2人とも頼りになりますし」
サヴァランはビスケットの兄であり、元々はドルトコロニーの一流企業に勤める男だった。
しかし、鉄華団がクーデリアを地球に送り届ける任務の最中に紆余曲折あり、ドルトコロニーから出ることになった彼は生まれ育った火星に戻り、鉄華団で働いている。
ラディーチェはメリビットと同じくテイワズからの出向であり、鉄華団が地球に支部を置く際にサヴァランと共に経理を担当してもらっていた。
地球支部の役目が今のところないため、今は本部で経理の見直しや今後に備えた勉強に勤しんでいる。
「2人とも鉄華団に来た頃はあまりいい顔をしてませんでしたが、いい上司に会えたみたいでよかったですね」
「……だな」
メリビットの言葉にオルガは少し間を置いてから頷く。
サヴァランは元々鉄華団で働く気はなかったが、地球での仕事が片付き火星に戻って祖母の桜や双子の妹のクッキー、クラッカに会ったことで心変わりしたのだろうとオルガは思っていた。
だが実際は彼がドルトコロニーから離れる原因になった星原に約束を果たしてもらうためだと知ったのは地球支部設立にあたっての人事を考えていた時だった。
『彼に言われたんだ。俺の望みを全部叶えてやるって。だからそれが本当か確かめさせてもらおうとおもってね』
テイワズからお目付け役兼経理でラディーチェが来ることは既に決まっていたが、人手は多いに越したことはない。
火星にはメリビットとデクスターがいるし、サヴァランはビスケットの兄だ。
それらの理由もあり、オルガはサヴァランの申し出を承認した。
結果的にサヴァランがいたことで地球支部の事務仕事は円滑に回っていたらしく、またサヴァランの精神状態も回復したのか痩せこけかけていた頬も弟ほどでは無いがかつての膨らみを戻していた。
「星原さんは不思議な人ですね。私と初めて会った時のこと知ってます?」
「ああ。確か歳を聞かれたんだったか」
メリビットがやってきたのは歳星でオルガと名瀬が義兄弟の契りを交わした後で、件の星原はバティンの改修のため歳星に残ったため顔を合わせたのはブルワーズとのいざこざの最中であった。
「仲良くしたいのかと思ったけれど、違ったみたいで……」
「まあなんだ……あいつはたまによく分からねぇことを言うからな」
当時のことを思い出し恥ずかしそうに語るメリビットにオルガは苦笑しながらフォローする。
「昔からそうだ。アイツはよく分からねぇ。ミカも大概だが、あれも相当だ」
タロットなんてスピリチュアルなもんは使うのに言うことは当たっているし。
細い割にモビルワーカーやモビルスーツの腕前はよく。
ぶっきらぼうな物言いをするかと思えば、鉄華団を家族と言ったり、地球からオルガたちに損害が出ないように適宜指示を出したりと、行動も言動も一つ一つがバラバラで捉えどころがない男だ。
「確かに。賞金首狩りを終えたと思ったら結婚、ですものね」
クスリと笑うメリビットに、オルガはそのせいで起きた小さなゴタゴタを思い出して苦い顔をする。
メイドのフミタンはよかった。
彼女がノブリスの間者と知る者は少なく、またノブリスとの直接的な繋がりは断たれていた。
問題は他の二人であった。
名瀬と離婚し、バツイチとなったエーコは何故かマクマードの養子ということになっており、「エーコと星原が結婚となりゃ、星原は俺の息子ってことになるなぁ! こりゃあどっかのバカが居なくなった穴がすぐに埋まりそうだ」とえらく上機嫌な声で言われ。
ジュリエッタも彼女がひげのおじ様と仰ぐ男ではなく、アリアンロッドの総司令ラスタルの養子となっており、「これで俺の跡取りの心配はなくなったな。結婚祝いに肉でも馳走してやろう」と地球圏最強艦隊を率いる男にしては親戚のおじさんのような気概を見せてきていた。
おかげで鉄華団は木星圈と地球圏を牛耳る男2人を親戚に持つという異常事態となっており、2人からも「で、披露宴はどうする?」と問い詰められているのだ。
「本人達に聞いてくれや……」
「まぁ、今は三日月くんと畑仕事に夢中みたいですし」
心の底から出たオルガの愚痴にメリビットは相槌を打つ。
「つうか、あんたはいいんですか? おやっさんと結婚式とか」
「いいんですよ。というかあの人にタキシードとか和服は似合いませんし」
いい笑顔でサラッと旦那へのダメ出しをしているメリビットにオルガは「そうっすか」と軽く返す。
「けど結婚写真やお祝いはしっかりとしてもらいましたし」
そう言って薬指についたキラリと光る指輪を見せてメリビットは微笑む。
「付き合ったこと言ってなかったのに星原さんにはおみとおしだったみたいで」
「あー……おやっさんが言ってたな」
監視カメラがついたのかとか、盗聴されてないかとか。
2人が付き合い始めたのは星原が地球に行ってからなのに、何故か地球の星原に真っ先にバレて「年下の恋人が出来て調子に乗るならそのまま仕事も調子よくやってくれ」と冗談半分に言われたと聞いた時は皆吹き出したものだった。
「あれでこっちのメンバーにはほぼバレたんだったか」
「ええ。私は隠す気無かったのでよかったんですけど」
正直、雪之丞から油や汗の匂いがしなくなった時点で何かが起こっていたのは感じていたがまさか女絡みとは誰も思わなかったのだ。
しかもそれがメリビットとなれば、美女と野獣と揶揄されるのも無理はないが、それはそれとして見守っていたのだが星原に暴露されてしまい、その反動で祝福ムードへ変わったのだ。
「家族だ家族だって言ってたら本当に家族ができちまうとはな」
感慨深そうに鉄華団のエンブレムを見つめながらつぶやくオルガに、メリビットは小さく笑う。
「あなたが願ったようにみんなが幸せになれたらいいですね」
「ああ……そうだな」
願いは必ず叶うわけではない。
願いが叶わないこともある。
でも、こうして叶ったのなら進み続けた意味はあったのだとオルガは思う。
「では私はそろそろ。団長も休むならお部屋で休んでくださいね」
「ああ」
立ち去るメリビットにオルガは軽く手を振って見送ると、先程までのメリビットとの会話で頭に思い浮かんだ言葉を口にする。
「止まらない限り、道は続く……」
CGSをぶっ壊して鉄華団を作ったあの日から、オルガは前に進み続けることを誓った。
どんなに遠回りでも、止まらなけりゃいつかそこに意味があると信じて。
そして進み続けた先で、みんなで馬鹿みたいに笑いあって、あんなことがあった、楽しかったと言って今を、これからもずっと楽しむ。
止まるわけにはいかない。
これからも歩き続けなければならない。
『ねぇ、オルガ。次は何をすればいい?』
三日月・オーガスとの運命を決定づけた路地裏で、彼が放った言葉を思い出しながらオルガは一歩踏み出す。
『星の正位置。面白そうだ付き合ってやるよ』
CGSを潰す前に星原・モーリノに声をかけると彼は二つ返事で鉄華団に参加してくれた。
彼の示すタロットカードは鉄華団の道標となり、オルガの決断や判断を後押ししてくれた。
オルガが止まらずに今のこの時間があるのは三日月だけではなく、星原や皆のおかげなのだと気づいて自然と笑みが溢れる。
「お前らが止まらない限り、オレは……」
彼らを引っ張って、鉄華団の進む道を切り開いてきたオルガはほかのみんなよりも先に行かなければならない。
だがそれはオルガの勝手な思い込みで、どこへでもついてきてくれる相棒と、背中を押してくれる兄貴分がいる。
だから、オルガ・イツカは止まれない。
いや、止まることはない。
「その先にオレはいるぞ。だからよ……」
続きを言おうとしたところで、こちらへと近づいてくる話し声にオルガは上げていた目線を下ろす。
すると、メリビットが呼んだのであろう仲間たちがやってくる姿を見てニヤリと笑う。
ぞろぞろとやってくる彼らとは別に、自身のいる陸橋の鉄板を鳴らしながら誰かが歩いてくる。
「オルガ」
何年も前から自身の隣に立ち、鉄華団の敵をたたきつぶしてきた相棒が朗らかな笑みを浮かべて声をかけてくる。
「色男になってんね」
「はっ、ここしばらく殴られてねぇよ」
いつだか一軍の大人に殴られた後にかけられた言葉を口にする三日月にオルガは鼻で笑うと、三日月の後ろで手摺にもたれ掛かる細身の男を見た。
「で? だからどうしたんだ?」
嫌味たらしく言葉の続きを促してくる名瀬とは異なる兄貴分に、いつから聞いていたのかという疑問はあるけれど、それでも訊かれたなら答えねばならないと、オルガは少年のような笑みを浮かべ、2人に拳を突き出しながら言った。
「止まるんじゃねぇぞ」
ユジ「ったく、こんなところで黄昏やがって」
シノ「オルガー!んなとこ突っ立ってないで飯行くぞ!」
ヤマギ「シノ、まだ用意できてないって」
ライド「外で食えばいいじゃん!」
タカキ「こんな大所帯じゃクリュセまでいかないと無理だって」
ダンテ「じゃあ飯の前に久しぶりに模擬戦といくか?」
チャド「ダンテじゃまた鼻血出して終わりだろ」
クーデリア「せっかくのおやすみですし、みんなでピクニックでもどうです?」
アトラ「あー!それいいかも!三日月ー!」
エーコ「よーし!今から食堂いって用意しよ!」
ラフタ「りょーかい!モビルスーツの腕だけじゃないってとこ見せてあげなきゃね!いくよアジー!」
アジー「はいはい」
ビスケット「ピクニックかぁ。じゃあクッキーたちにも声掛けないと」
メリビット「でも場所はどうするんです?」
雪之丞「ここからだと桜農場か、それか」
昭弘「ここだな。全てはここから始まったからな」
なるべく初期メンのみに話させてみたり
抜けがあったら申し訳がない。
メリビットやテイワズ出向組は途中参戦だけど1期にはいたしね。
書きながらこんなオリ主ヨイショみたいなほんへ(RTA)完結後の話って需要あるのかなと思ってましたが、まあ僕が書きたいと思ったからいいかってね!
なんか途中まで書いてたのを完成させたので最初の意向とはちょっと?かなり違ってるんですが終わりよければすべてよし!
皆様も止まるんじゃねぇぞ!
if ハシュマルVSホモくん
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いる
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どちらでも
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いらない