ある日の放課後、ゲーム同好会の活動と称しつつ、いつものようにゲームの話で盛り上がっていたところに突然、海藻類が爆弾を投下した。
「あのあの、実はやってみたいゲームがありまして、ち◯ちん侍って言うんですけど」
「「は?」」
一瞬にして場が凍りつく。さすが一流のぼっちだ!まあ僕も同類だけど………。
上原くんが顔を引きつらせながら、僕に手招きをしてくる。顔を近づけると、小さな声で僕へとコソコソ喋りだした。
「なあ、今星ノ守◯んちんっていわなかったか?」
「うん。僕もちんち◯って言ったように聞こえたけど、僕らのことだから聞き間違えだよ」
「……そうか。そうだよな」
上原くんがほっとした顔を見せた矢先、少し照れた様子の海藻が2度目の爆弾を投下した。
「わ、わたし、みなさんとその、ちん◯んびろーんしたいんです!」
「「は?」」
再び場が凍りついた。さすがの僕でもここまで場を凍らせたことはない。敬意と慰めの敬礼をさせてもらおう。
ピシッと僕が敬礼をすると、もう耐えきれないといった様子で亜玖璃さんが質問をする。
「あのさほしのん。その、ちん……、なんとか侍ってやつはなんなの?」
「よくぞ聞いてくれました!これはですね、しりとりのようになんの用意もしなくても遊べる素晴らしいゲームなのです」
「「はあ」」
「昔YouTubeではじめ◯ゃちょーがやってるのを見たことがあって、面白そうだなと思いまして」
「それでやりたいと思ったわけ?」
「ですです。ぼっちだった私には無理でしたけど、今は皆さんがいるので。……ダメでしょうか?」
そんな寂しそうな目で見たら、根の優しいみんなが断れるわけがなく……。
「仕方がないですね。千秋さんにそんな顔をされては」
「ああ、やるっきゃねーだろ」
「ははは、そだねー」
「ですね!」
「うう、皆さんありがとうございます」
こうして僕らはちんち◯侍となった。
ゲームをするにあたって、まず初めにルールをおさらいした。◯んちん侍は基本的に言葉を言い換えるゲームらしい。プレイヤーがA、B、Cとそれぞれいたとすると、最初にAがBかCを指さし、言葉を言う。ここでBがさされた場合、Aに言葉を返し今度はBがAかCを指さす。
さすほう→さされるほうで
ちんち◯侍→ち◯ちん侍
ちん◯ん→なし
お◯んちん→びろーん
侍→シャキーン!
と返す言葉は決まっている。ただし、ちんち◯侍→ちん◯ん侍の場合は指をさされた人だけではなく全員で言葉を返す。
ミスをした人が消えていき、最後に残った人が勝ちとなる。
「うーん、よくわからねえな」
「まあ、やってみようか」
「そうね」
天道さんがやる気満々に答えた。
正直、ちんちん侍に燃える彼女の姿なんて僕は見たくなかった……。
1回戦
「では、私からいきますね」
一応ゲーム同好会でゲーム対決を始めるので、みんなの緊張がそれなりに高まっていった。
「それでは、ちんち◯」
千秋が真顔で天道さんを指さす。すると今度は天道さんが真顔で亜玖璃さんを指さし、
「ちん◯ん」
「ち◯ちん」
「◯んちん」
うん。これなんなんだろう。
女子たちが揃いも揃って下ネタを言い合っている光景に僕と上原くんはドン引きである。しかし、ここで天道さん(ちんち◯侍ガチ勢)が仕掛ける。
「おち◯ちん」
急にさされた上原くんは、たじろいでしまう。
「ええと、ビローン」
「遅い。失格ですね」
「ガチかよ!」
「上原さんはちんち◯系は得意だと思ったんですけどね」
「なんだよちん◯ん系って!?」
「「ジトーー」」
「なんで俺、浮気の疑いをかけられるような目で見られてんの?」
上原くんはガックリと肩を落とし、落ち込んでしまった。
上原佑脱落、残り4人。
2回戦
「では、またまた私から」
「ええ、どうぞ。今すぐに」
天道さんは鼻息を荒くして待ち構える。
もはや、ゲームという戦いから彼女を止める手段はないようだ……。
「ではでは、行きます」
今度は、千秋は恥ずかしそうに僕に指をさした。
「ちんち◯」
僕は亜玖璃さんを指さす。
「◯んちん侍」
「「ちん◯ん侍」」
みんなの声がシンクロする。なんか、気持ちいいな。
亜玖璃さんは僕をさし、恥ずかしそうに言った。
「ち◯ちん」
僕は天道さんをさして言う。
「ちん◯ん」
天道さんは、恥ずかしそうに
「◯んちん」
と返す。僕に。
「いやいやいや。なんでみんな僕狙いなんですか!?」
「はい、雨野くん失格ね」
「ちょっと待ってください。今のはついツッコンでしまったというか」
「失格ね」
「「ガチ勢怖……」」
雨野景太脱落、残り3人。
3回戦
「残り3人ですね。行きますよ、ち◯ちん」
「ちんち◯」
それから女子(ちん◯ん侍)たちの戦いは長期戦となった。
5分後。
「雨野はス◯ブラでどのキャラ使ってるんだ?」
「僕は全員使うけど、一番はフォッ◯スかな。前前作から使ってて愛着もあるし」
「おちん◯ん!」
「ビローン!」
僕たちのゲーム談話に入ってくる、女子たちの熱い声(下ネタ)。まさにカオスだ。早く終わらないかな。
「なんかめっちゃ白熱してるな……」
「そうだね……」
しかし、意外にもあっけないミスで脱落者が出てしまう。
「ち◯ちん侍」
「「◯んちん侍」」
「えとえと、ち、ちんちっ……あっ!」
「はい、ほしのんアウトー」
「残念でしたね」
心底悔しくてそうにため息を吐く千秋。こんな不毛なゲームから抜け出せて、僕と上原くんはむしろ喜んでもいいと思っているんだけど。
上原くんは千秋のミスに疑問があったらしく質問をした。
「なあ星ノ守、なんであんな簡単なとこでミスったんだ?」
「確かにそうだね。ちんちん侍はみんなで言うから他の返しより簡単だと思うんだけど」
すると千秋はチッチッチと指を振り、ドヤ顔で口を開く。なんかムカつくな。
「景太ともあろう人が、そんなことも分からないんですか?」
「どういうこと?」
「私たちぼっちにとって、みんなに合わせることがどれだけ難しいか分かるでしょう!」
「確かに、……確かに分かるけど、なんか虚しい!」
「そういうことです。ぐすん」
そう言うと千秋は涙を拭った。
星ノ守千秋脱落、残り2人。
4回戦
「さあいよいよ最後決戦だね」
「ええ。負けられません」
「こっちこそ」
2人はバチバチと火花を散らしていた。
そんなやる気満々の2人を横目に見ながら、上原くんが遠慮気味に言った。
「今更だけどよ、2人とも彼氏の前でよくそんなに下ネタを叫べるよな」
「「え?」」
「だってお前らちんちんってガチで叫んでんだぜ。冷静に考えたらやばくねえか?」
上原くんの口撃に耐えられなくなった天道さんが反論する。
「そ、そういうゲームですし。それに、ゲーム部の部長である私がゲームで手を抜くなんてあり得ませんからね。ええ。だからこれは仕方がないのです」
流石は天道さんである。僕は素晴らしい方とお付き合いをさせていただいていることに感動をし、そして決意した。
何とか天道さんの助太刀をしなくては。
「流石ですね天道さん。こんなに低レベルで下ネタばかりで気まずくなるだけの糞ゲーにすら本気で挑むなんて。しかも恥をしのんで彼氏や友人たちの前でちんちん、ちんち◯と。ゲーマーの鏡ですよ天道さん!」
「……雨野くんまで、うう」
「……あまのっち、今のはフォローじゃなくてトドメだよ。亜玖璃に対してもね、うう」
「す、すいません!そんなつもりはなかったのですが」
なぜか天道さんと亜玖璃さんが子供ができたと分かってから別れようと言われた彼女のような顔をしていた。
「……さっさと終わらせよっか」
「……はい」
「……じゃあ、ち、ちんちん」
「ちんち……私の負けですね」
「……やったー」
かつてこんなにも嬉しくなさそうにガッツポーズをする人がいただろうか。
亜玖璃優勝。
「い、いやまさか亜玖璃が勝つとは思わなかったな」
「アグ姉がち◯ちん王ですね!」
1級ぼっちのワカメは未だに雰囲気を察せていないらしく大袈裟に亜玖璃さんを祝った。
「……はは。どうもちんちん王でーす」
「お、おめでとうございます。亜玖璃さん!」
「あまりっち?馬鹿にしてる?」
「馬鹿になんかしてませんよ。ていうかなんですかそのミスターぼっちみたいな名前は!」
「え、なんか言った?あまりまくりっち」
「まくっちゃったよ!なんなんですかちん◯ん王!」
「な!?今それ言うかな?」
「なんですか?」
僕と亜玖璃さんがいつものテンションを取り戻そうとしたとき、海藻が3度目の爆弾を投下した。
「あのあの、次はおっぱい忍者ってゲームやりませんか!」
「「やらない(やりません)!!」
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