この素晴らしい世界にApo組を!(一部のみ)   作:食卓の英雄

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みんなー!メリークリスマス!


魔笛と疑問と友達と

――それは、曲がった嘴を持ち、確かな知性を感じさせる黄金の瞳の大鷹。しかし通常の鷲と違うのは大きさだけではない。人間如き簡単に引裂けそうな鋭い鉤爪、そして下半身には獣の肢体。

 

 大きく広げた翼は今も宙を捉えている。

 

 突然現れた第二の難関。余りに唐突すぎるソレの登場に高速で考えを巡らせる。

 

 

―グリフォン等の高位の魔獣はアクセル付近にいないのでは無かったか?

 

―ただでさえ強力な魔獣に今の状態で逃げられるのか?

 

―何故、()()()()()なのか?

 

 臨戦態勢に入った二人を尻目にジークはその騎乗者に声をかける。

 

「来て直ぐで悪いがまだ後ろに大量にいる!頼めるか、ライダー!」

「あ、マスター!ほら、降りてヒポグリフ」

 

 喋ったのはその騎乗者、アストルフォ。ヒポグリフを降ろすと自らも地に足をつけジークと会話を始める。

 ゆんゆん達は何が起こっているのか分からず、固まる。

 直後、一匹の一撃ウサギが追いつき飛びかかる。それは防ぐが他の群れも追いかけてくるのが見えた。

 

「くっ、すまないが任せた!」

「よし来た!ほらほら、三人共ヒポグリフに乗りなよ。僕のヒポグリフってばすごいんだぞー!」

「い、いえ。と、友達だなんて…」

「そこなの!?もっとほら、こう、色々あるでしょ!」

 

 突然現れた謎の人物の言葉に困惑するも、意味は理解出来た為グリフォン、否、ヒポグリフへと近寄る。

 

 ヒポグリフは身を屈めて乗りやすい様に待機しており、ジークはもちろんだがリーンとゆんゆんも恐る恐る騎乗する。

 ヒポグリフは一度嘶くと翼を広げ上空へと踊りだした。 

 

「ぎゃあっ!もう、飛ぶなら言ってよ!」 

「あれ?あの人が乗ってないのに飛んじゃったけど……」

 

 下を見ると一撃ウサギ達が地を覆い尽くすまでに増え、まだまだ森からなだれ込む。

 追っているのは勿論地にいるアストルフォ。つかず離れずの位置で上手く逃げている。

 

「ちょ、ちょっと、あの人やばいんじゃない?」

「そうですね。森を出たしここからインフェルノを…」

「いや、大丈夫だ。ライダーはやってくれるさ」

 

 アストルフォは突然立ち止まり、一撃ウサギ達に指を指す。

 そして取り出したのは黒に金の装飾が施された美しい角笛。

 

「ねえ、アレ前に見た魔剣よりもすごい魔力秘めてるんだけど…」

「っていうかあの笛下手したら爆裂魔法並の………」

 

 その角笛は光り輝くとアストルフォを覆う程の巨大なホルンに変化した。

 

「二人とも、大丈夫だとは思うが一応耳を塞いでくれ!」

 

 指示を受け耳を塞いだ直後に、アストルフォがホルンに口をつけ、

 

 

―――瞬間、白い絨毯が弾け飛んだ。

 

 

 

 

「うーん、これで全部っぽいなー」

 

 

 広がった群れを眺めてアストルフォは一人ごちる。彼――彼女ではない――の言うとおり、無限に続くかと思われた一撃ウサギの雪崩はもう止まっていた。

 

 見渡す限りウサギ、ウサギ、ウサギ。その全てがこちらに敵意を向けている。が、その程度では世界に認められた英雄は殺せない。

 

 

「一列に並んでー、押さない押さない。割り込み厳禁だよ。よし、いっくよー!恐慌呼び起こせし魔笛(ラ・ブラックルナ)!散れっ!」

 

 

 それはアストルフォの宝具が一つ、善の魔女ロジェスティラの領土に居候した後、旅立つ時に与えられた角笛。

 

 この角笛は周囲に爆音の衝撃を叩きつけ、対象のHPがダメージ以下だった場合、塵になって四散する。一撃ウサギ程度がこの恐るべき魔笛に抗える筈も無く、どの個体も例外なく塵と化した。

 

「ウソ……全滅…!?」

「あれだけの数がいたのに…」 

「む…?」

 

 ウィザード二人はその威力に驚愕し、そしてジークは違和感を覚える。

 

(消費魔力が…無い?どういう事だ。確かにここは現代よりも大気中の魔力は多いから、パスさえ繋がっていれば離れていても普段通りのパフォーマンスは出来る。だがそれだけだ。消費魔力が減る筈もない。…これは、そう、あの頃の俺達のように、まるで他に供給元がいるかのような…いや、外部リソースか…?他に可能性は……)

 

 眉間にシワを寄せ考えるジークとは裏腹に、アストルフォは二人へと魔笛とヒポグリフの説明、否、自慢をしている。

 

(いや、今考えても仕方ない。俺は魔術についての造詣は持って生まれたが、どれも専門的な部分までは及ばない。こういうのは本職の方が分かるだろう)

 

 そこで考えを切り上げ、未だに自慢しているアストルフォを一旦宥め、街へとくり出す。

 夕方に出発したため、アクセルの街まであと少しという頃にはすっかり暗くなっていた。

 

「それにしてもあんなに一撃ウサギがいるなんてね〜。これも例の悪魔のせいなのかな?チラッと見えた一撃熊も、全滅してたけど20匹は軽く超えてたしね」

「…は、はい……すみません…」

 

 一行の足取りは軽いが、ゆんゆんの纏う空気は重い。

 

「ゆんゆんさん?そんなに落ち込んでどうしたの」

「…いえ、今回はたまたまアストルフォさんのお陰で助かりましたけど、もしも皆さんが怪我をしていたらと思うと…。うう、私がこんなクエストに誘ったからですよね…」

 

 どうやら自分が人との関わりを求めて誘った依頼であんな目に合わせてしまった事に負い目を感じているらしい。

 

「いやいや、確かにちょっと怖かったけどケガなんてしてないし空を飛ぶなんて貴重な体験もできたしね!?それに…ほ、ほら、今回のは明らかにすごい異常だったし値上げも期待出来るから…。えーっと、とにかく気にしてないから大丈夫!」

「それを言うのなら俺が話しかけたことと無理やり引っ張ってしまった事が原因だ。事の責任は俺にある。すまなかった」

「そんな!ジークさんじゃなくてこんな私が誘ったのが……」

 

 フォローの言葉をかけるも中々ゆんゆんは納得しない。どうしたものかと頭を悩ませると前を進んでいたアストルフォがいつの間にか輪に入ってきていた。

 

「ねえねえ、ボクはよく分かんないんだけどさ。アレって結構すごいらしいんでしょ?えーっと、ゆんゆんって言ったっけ?変な名前だね」

「確かにそうなんですが!これは紅魔族のセンスの問題であって……!」

「ゆんゆん、君は自分が誘ったことでみんなが危ない目にあった事に責任を感じているんだよね?逆に考えるんだよ。ここにいたのが君たちで良かったのさ、とね」

「私達でよかった…?」

 

 アストルフォの言葉の意味が分からないのか、首を傾げる。

 

「そ。君、街じゃトップクラスの魔術師でしょ。君くらいのレベルでもかなり危なかったんだから他の人だったら全滅もあり得ただろう。あの森にはクエストで来てたんだよね?なら『自分達が受けたから、無駄な犠牲を出さなかった』そういう見方もあるよね。何よりマスターがいたからボクも向かえたわけだし、それに……」

「それに?」

 

「友達がやったことなんだから、その位笑って許してくれるさ」

「…え?…友、達…?誰が?」

 

 

 これはだめだ。

 

 

 その反応に、一同は思わずやれやれと頭に手を当てる。

 

 

「はあ…そりゃ君たち三人に決まってるじゃないか」

「え?え、え?ええええぇぇぇっ!?」

「あの、その、友達じゃなくて…」

「あれ、違うのか。ボクにはてっきりそう見えたんだけど」

 

 ニヤリ、そうとしか形容できない顔をしたリーンは大袈裟に手を腰に当てると大きな声で言った。

 

「酷いわ。私はもう友達だと思ってたのに、ゆんゆんさんはそうじゃなかったのねー」

 

 かなり棒読みだがその手の話に限っては恐ろしいほど鈍いのがこのゆんゆんである。分かりやすく狼狽え、ブツブツと何かを呟き始めた。リーンが次はお前だとばかりに目配せする。

 

「あ、ああ。俺もてっきりそう思ったのだが…すまなかった。俺の勝手な勘違いだった様だな」

「えっ、……あっ、はい……すいませんでした…」

 

 落ち込んでしまった。何故だ?

 

「もーっ!なんでそんな追いつめるふうに言うかな!?ほら、大丈夫よゆんゆんさん。ジークくんは言い方が悪いだけで怒ってないから」

 

 ここまでお膳立てされておきながら上手く行かなかったのはゆんゆんの捉え方か、それとも生涯闘病生活だったが故の弊害か。

 

 何が悪いのか分からずフォローしようにも出来ない状態が続く。

 

「まったく、マスターは妙なところで不器用だね」

「俺は確かに自分が不器用だとは自覚しているが…」

「あー、違う違う。そういうことじゃなくてね…。仕方ない、ボクが、きっかけを作ってあげよう」

 

 自信満々に言い切るその姿はまるで最終決戦時のようで、何故だが失敗するようには見えない。やるといったら間違っていてもやりきる。そういう人物だと、誰よりも己が身を持って知っている。

 

「ああ、頼む。俺は友人をつくる才がないらしい」

「いや、それは普通に言えばいいんだけど…。まあいいさ!このボクを誰だと思ってるんだい!シャルルマーニュ十二勇士が一人、アストルフォだぜ!勿論他の十二勇士ともみんな友達さ!」 

 

 アストルフォはそう言い残すと未だに落ち込むゆんゆんの目の前に立つと手を差し伸べ、目を合わせる。

 

「やあゆんゆん、詳しい話は聞かせてもらったよ。君がどうしても納得いかないってんならボク達は何も言わないさ。でも君は納得いかないんだろう?」

 

 ゆんゆんは顔をあげコクンと頷く

 

「だから、迷惑かけた分だけ、こっちの頼みを聞いてほしいんだ」

 

「なっ!?」

 

「は、はい!私に出来る事なら何でもします!」

「言ったね?二言はないよ」

 

 リーンが文句を言おうとするも、アストルフォを信頼しているジークは悪いようにはならないと言い、何とか引き止める。

 そしてアストルフォの頼みとは…これだ。

 

「それじゃ、ボクと友達になってよ。これで助けたのはチャラってことで」

「え?そんなの全然…」

「ほら、君たちも言いなよ」

 

 なるほど。

 その意図を理解すると、リーンも分かったようで、自然と顔を見合わせる様な形になる。

 

「じゃあ私もゆんゆんが友達になってくれたら許すかなー」

「俺もだ。いや、許す許さないとかではないのだが…。こちらから頼んででも友人になりたいんだ」

「ゆんゆん、私(俺)と友達になってくれる(か)?」

 

「ふぇ……、あ、あばばばばば」

 

 ゆんゆんは鳩がエクスプロージョン食らった様な顔をし、小刻みに振動する。

 

「あれ?ちょ、ゆんゆん!?」

 

 暫く振動すると目の焦点があい正気に戻る。

 

「はっ!?い、意識が…」

「……えーっと、で、返事はどう?友達になってくれる?」

 

 再度問いかける。思い出したのかゆんゆんは顔を赤くしまた震えそうになるが…。ぐっと手を握りしめ、返答する。

 

「ふ、不束か者ですが、よ、よ…よろしくお願いしまあぁすっ!!」

 

 それは臨時パーティーを組んだ時と同じセリフであった。

 

 

 こうして彼らは友達になった。今では何気ない会話を楽しんでいる。他者からしてみれば何の益にもならない言葉。しかし当人にしか分からない楽しみがある。

 笑い話、夢、噂、気分……話題は無数にあるのだ。

 

―――これが、普通の友人関係というやつか。

 

 夜空を眺めてジークは思う。思い返せば彼にこういった普通の友人はいなかった。近いので言うならジャンヌ、アストルフォ、カウレス辺りだろうか。

 しかし彼らはそれぞれの意思をもって戦争に参加せし者達。一時の日常を共に分かち合うことこそあれゆんゆんやリーンの様な一般的な感性ではない。何処かがズレているのだろう。1%にも満たない差であれ、そこが最も決定的な部分なのだ。

 

―――俺の本体は未だに彼女を待ち続けているのだろう。

 

 こうしているとなんだかホームシックになったように思える。

 

(俺は、この世界でも人間として歩んでいるよ)

 

 誰に言うでもないその思いは、ジークの胸にそっと仕舞われた。

 

―――そういえば、まさかアストルフォがあのような手段を用いるとはな

 

 らしくない、いわば騙しや引っ掛け。それもきちんと場や使い方を弁えていた。普段の彼ならもっと単純なのだが…。

 そう思った所でその疑問はあっさり解決する。

 

――ああ

 

 暗い宙の海に煌く星星、その景色はいつもとは何かが違うのだ。

 

―――今日は新月だったな。

 

 

 

「うわぁっ!グ、グリフォン!?」

「あーっ、違う違う、ヒポグリフだってば」

 

……取り敢えず、誤解を解こう。

 





『狂えるオルランドゥ』では失われたローランの「理性」を月に取りに行く話がある。瓶一杯のローランの理性とともに、彼の理性も小瓶に半分ほど入って登場しており、ローランを正気に戻してしばらくは周りが驚くほどに聡明になったと語られている。……が、その後元に戻ってしまった。

この逸話から、アストルフォは普段は理性が蒸発しているが、理性を奪った月が隠れている新月のみ、彼の理性は取り戻されるのである。

ゆんゆんに友達が出来たよ!やったねたえちゃん!(おいやめろ)
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