この素晴らしい世界にApo組を!(一部のみ) 作:食卓の英雄
突如激昂したデュラハンに、冒険者達は困惑したように視線を彷徨わせる。
「爆裂魔法?」
「爆裂魔法といったら…」
自然と、視線は一斉にめぐみんへと向き、フイと視線を反らし隣の魔法使いを見る。すると、冒険者の視線もそちらに向き……
「ええっ!?あ、あたしっ!?何であたしが見られてんのっ!?ば、爆裂魔法なんて使えないよ!?ま、まだまだ駆け出しだしっ、い、家には弟と妹がいるのにっ!うわあぁぁんっ!」
濡れ衣を着せられ慌てる魔法使い。当然、こんなもので騙されるはずも無く、めぐみんはため息をつき一歩前に踏み出した。
一応、心配なので着いていく。
「お前が……! お前が、毎日毎日俺の城に爆裂魔法ぶち込んで来た犯人か! 俺が魔王軍幹部だと知っていて喧嘩を売っているなら、堂々と城に攻めてくるがいい! その気が無いのなら、街で震えているがいい! 何故こんな陰湿な嫌がらせをする! この街には低レベルの冒険者しか居ない事は我々も知っている! 雑魚ばかりと見逃してやっていれば、調子に乗って毎日毎日ポンポン爆裂魔法を撃ち込みにきおって……っ!! 頭おかしいんじゃないのか、貴様っ!しまいには剣まで投げ込んできおって…!わざわざ来たのならそのまま入ればよかろうっ!爆裂魔法で城にしか被害が無いと見るや、慌てている隙に剣で中の部下を殺すとは…!貴様には人の心は無いのかっ!?」
余程の鬱憤が溜まっているらしく、ここまでの長台詞を一気にまくしたてる。というか、爆裂魔法はともかくとして、後半の方は知らないんだが……。
めぐみんは、若干怯んだ様子を見せたが、特に意味もなくマントをバサッとして名乗りを挙げる。
「我が名はめぐみん。アークウィザードにして、爆裂魔法を操る者……」
「……バカにしてんのか?」
「ちっ、違わい!」
冷静な声で突っ込まれるも、気を取り直しためぐみん。
「我は紅魔族の者にして、そしてこの街随一の魔法使い。我が爆裂魔法を放ち続けていたのは、こうして魔王軍幹部である貴方をおびき出す為の作戦……! まんまとこの街に、一人でノコノコ出て来たのが運の尽き!」
杖を突きつけ、宣言するめぐみん。その後ろで合流したジーク達と仲間でヒソヒソと囁いた。
「なるほど、確かに拠点を攻撃し続けるのは有効的だ……」
「んな訳無いだろ。あれは毎日爆裂魔法撃たなきゃ死ぬとか駄々こねてたから、仕方なくあの城の近くまで毎日連れてってやってたのに。いつの間に作戦になったんだ」
「うむ、しかもこの街随一の魔法使いとか言い張ってるな」
「しーっ!そこは黙っておいてあげなさい!今日はまだ爆裂魔法使ってないし、後ろに冒険者の大群が控えてくれてるから強気なのよ。今良い所なんだから見守るのよ!」
それが聞こえていたのか、杖を突きつけた姿勢のまま顔を仄かに赤く染め、ぷるぷると震えだす。
「第一、本当に作戦ならこの後がどうしようもねえな。アイツ、この街の冒険者が総出でかかっても一蹴されるぞ。向こうは手ぇ出す気は無かったようだが、これは無駄に犠牲者を増やすだけじゃねえのか?」
それもそうだ。俺もこの街に勝てる冒険者がいるとは思えない。めぐみんやアクア等の特化しているならともかく、初心者の街と呼ばれるアクセルを巻き込むメリットなど殆ど無い。
その間にも会話は続き、爆裂魔法を撃たないと死ぬとかいう話になった。……あほくさ
デュラハンは片手に首を乗せながら、やれやれと肩をすくませた。
「どうあっても、爆裂魔法を止める気は無いと? 俺は魔に身を落とした者ではあるが、元は騎士だ。弱者に手を出す趣味は無い。だが、これ以上城の近辺であの迷惑行為をするのなら、こちらにも考えがあるぞ?」
剣呑な気配を漂わせてきたデュラハンには流石のめぐみんも後退り、そのまま振り返ってアクアに目をやる。
「迷惑なのは我々の方です!あなたがあの城に居座ってる所為で、我々はロクに仕事もできないんですよ!余裕ぶっていられるのも今の内です!こちらには、対アンデッドのスペシャリストがいるのだから!さあ先生、お願いします!」
あいつ……アクアに丸投げしやがった。
「ふふん、しょうがないわね! 魔王軍の幹部だか何だか知らないけど、この街にこの私が居たのは運が悪かったわね。アンデッドの癖に力が弱まるこんな昼間にノコノコ出てきちゃって、浄化して下さいって言ってる様なもんだわ! あんたの所為で、受けたクエストの報酬がずっと棚上げされてんのよ! さあ、覚悟はいいかし「ちょっと黙っとけ」らっっ!?」
このままアクアに任せるとロクな事にならないと踏んだ俺は鞘で頭を叩いて、めぐみんの前に立つ。
「ちょっと!何すんのよヒキニート!この私の麗しき体を叩きつけるなんて!信じられないんですけどー!」
「む、お前は?」
アクアが何か言っているが無視だ無視。前に出たことで注意が俺に向く。
「あー、俺はこいつのとこのパーティーリーダーなんだが、俺たちのせいでそっちに迷惑がかかったってんなら謝る」
「ほう…?中々話の分かるやつもいるではないか」
デュラハンは興味深そうに俺を眺める。
(うわー、やっぱ怖ー…。でも、今は敵意も無いからこの程度で済んでるのか……)
「俺たちは本当に魔王軍幹部がいるなんて知らなかったんだよ、廃城ならもう一つあるから、そっちにいるもんだと思ってたんだ。剣も、俺達はホントに知らない。第一俺達は遠巻きに撃ってただけでそんなに近くまでは行ったことないからな。……まあ、そんな感じで俺達には敵意がないのは伝わったと思う。いくら冒険者が集まったっつってもアンタには勝てる気がしない」
嘘だ。さっきもぶっちゃけめぐみんやアクアは決まればワンチャンある。予想だと、最低でもモードレッドはあのデュラハンと同格だろう。
そんな心情は預かり知らぬデュラハンは「ふむ…」と顎をつまむ。
「分かった。お前は嘘をついていないようだ……お前の謝罪に免じて今回は見逃してやる。だが次は無いぞ!撃ち込むならそのもう一つの廃城とやらにするがいい!」
撃っていいのか…、普通は撃つなとかだけど……意外としっかりしてるんじゃないのか、コイツ。見逃してくれたし。アンデッドには話しが分かるやつなんていないって言ったの誰だよ。アクアだ。やっぱアイツ適当こいてやがったな…。
「ではさらばだ。剣を投げてくるやつも探さねばならなくなったからな…」
そう言い、首無し馬に乗って踵を返し…
「そっちは俺が投げたやつだな」
「はい?」
剽軽な声で慌てて振り返る。
「…その白銀の刀身に赤いラインの両手剣……部下の報告と一致しているな…」
デュラハンは何事かブツブツと呟き何かを考え込んでいる。
「よし、決めた。俺はもう戦うという気分ではない、故にこの場を去ってやろう。……だが、このままでは俺も幹部としての面子がたたん。だからそこの女!貴様も一端を担っていたらしいな。ふん、あのまま何も言わずにおけば無事だったものを…」
何やら不穏な空気を醸し出す。ヤツの指先に魔力が集まる。
「おい、モードレッド!なんかヤバそうだぞ!」
「呪い系統か…こっちの魔術は耐魔力で防げたが、呪いも防げるのかねぇ!」
モードレッドはどこ吹く風といった様子で、よけようともしない。
「汝に死の宣告を!お前は一週間後に死ぬであろう!」