この素晴らしい世界にApo組を!(一部のみ) 作:食卓の英雄
遅れすぎて……すまない。
(追記)ちょっと文章を修正しました
俺は佐藤和真。日本生まれの至って普通の高校生だった俺は、轢かれそうな女の子を助けて死亡した。
女神の元へと召されてしまった俺だが、女神が言うには別の世界が魔王の危機に曝されているからその世界に転生してくれとの事。
正義感の強い俺は勿論承諾。
俺は勇敢にも他の者が持つチートを一切持たずそれに感銘を受け、自ら付いてくると言った女神を広い心で許し、異世界へと旅立った。
そこで俺はあらゆるスキルを使用できる冒険者、女神であるアクアはプリースト系の上級職であるアークプリーストとなり、魔王討伐の道を歩むこととなった。
最初、暫くは街の為に慈善事業をしていたのだが、わがままなアクアは堪えきれず、冒険者としての本業を開始する。ジャイアントトードを討伐しに来たのだが、アクアは無様にも捕食され、この俺が華麗に討伐してやったのだ。
そんなアクアは仲間が必要だと述べ、俺も快諾、それに応じたのは紅魔族とかいう種族のめぐみんという珍妙な名をしたアークウィザード、更には最強の攻撃魔法である爆裂魔法を使える程優秀だという。
取り敢えず、今回は仲間としての実力の確認の為に先日のカエルにリベンジ、もとい、的になってもらったのだ。
実際に見た爆裂魔法は、人類最強の攻撃魔法というのは嘘でも誇張でも無いことをこれでもかと思い知らせた。
これ程の威力であれば大悪魔等にも通じるらしい正に一撃必殺。
人間が喰らえば決して死は免れないであろう。それも駆け出しの街にいるような者であれば尚更――
はい現実逃避終了ー
っじゃねえよ!!何、何?マジか、マジなのか??もしかして本気でやっちまったのか!?
それを撃った本人、めぐみんに目を向ける。
何故か力無く地に伏せているが、あわあわと青い顔で今にも泣きそうだ。
まあそうだよな、人間なんてちょっとした火薬の爆発とかでも下手したら死んじゃうしな。分かるよ。
取り敢えず…
「アクアァァーー!!アクアアクアアクアァぁぁーー!!」
早速カエルに呑まれたアクアに頼る。
昨日とは段違いの速さでカエルを倒し、中のアクアを取り出す。
うわっヌルヌルで気持ち悪っ。ってそんな事言ってる場合じゃない!
「おい、アクアっアクアっ、さっきめぐみんが撃った爆裂魔法が人を巻き込んじまった!!」
「うっ、ぐす……生臭いよう………何?」
泣きながら出てくる駄女神に少し苛ついたがそんな事してる場合じゃない。
「だから、さっきの爆裂魔法に人が巻き込まれたんだよ!!どうにかなんないのか!?お前仮にも女神だろ!?」
その言葉には流石に反応し、ムッとした様子で立ち上がる。
しかし先程のはしっかり聞いていた様で、少し気まずそうな顔になる。
「その…ね、ただ死んだのなら私の『リザレクション』で生き返らせれるんだけど……流石に爆裂魔法を食らったのはいくら私でも無理だと思うの」
その言葉を聞いて目の前が真っ暗になった。そして未だに伏せている元凶
「おい、どうすんだめぐみん!ってか何でまだ倒れてるんだよ」
すると震えた声で
「ふ……。我が奥義である爆裂魔法は、その絶大な威力ゆえ、消費魔力もまた絶大。……要約すると、限界を超える魔力を使ったので身動き一つ取れません。………あの、万が一にも外れていたとかいう可能性は…?」
僅かな希望を目に問いかけるめぐみんだが…
「いや、それは……あってほしいけど、多分ない。俺もはっきり見てたから分かるんだが、狙ったカエルのすぐ側にいて、流石にあれで外れていた。とかはありえないだろ。…それに冒険者カード見てみろ。多分だがジャイアントトードが二匹追加されてると思うんだが……」
それに応じて、ごそごそと懐を弄りだし、冒険者カードを手に取り、沈んだ声音で告げる
「はい……。確かにジャイアントトードが二匹追加されてますね………」
やっぱりか…という気持ちと共に絶望感が湧いてくる。
(異世界転生して早々人殺し……俺がじゃないけど俺のパーティーがやっちまった……。このまま俺達は殺人犯として一生を独房で暮らす……いや、文明の未発達な異世界何だ。死刑になったっておかしくない。………すいません。お母さん、お父さん。貴方の息子は早死にするだけじゃ飽き足らず、転生先でも殺人という大罪を犯してしまいました……。……ん?)
ふと、めぐみんの持っているカードに疑問を覚える。確かに討伐した欄にジャイアントトードが二匹……
よく考え込んでいる時に、アクアが馬鹿な事を言い始めた。
「ねえ、カズマさん。あの、このことは黙ってればいいんじゃないかしら。ほら、冒険者ですもの、外出中に死んだってモンスターの仕業って言うと思うの」
「ふざけんな駄女神!お前仮にも女神だろ!隠蔽してどうすんだよ!…なあアクア。コッチって殺人事件とかほぼ無いんだろ?それは何でだ?」
きょとん、と何を言っているのか分からないという顔をして、当然の様に応える。
「そりゃあ、こんな魔王とかモンスターがいるのにそんな追いだされる様な真似しないわよ。普通の人よりも強い冒険者がいたり、傷をすぐに治せるプリーストもいるしね。恨みがあったとしてもコッチじゃ多少は殴ったりしてもいいし……」
「じゃあ、それは何で犯人が分かるんだ?現代みたいな道具とかも無いんだろ?冒険者とかなら気づかれる前に殺せそうなもんだが?」
その疑問に胸を張り、
「当たり前じゃない!かなり間接的な手段でもないと毒だろうがトラップだろうがその人の冒険者カードに記録されるもの!」
!それだ!!
「そうだよ!やっぱりな!」
裏付けも取れた。これで取り敢えずのところ大丈夫だ。アレの近くにいたんだからケガは負ってるだろうがそこはこの駄女神とお金で何とかして貰おう。
「カズマ、きっと私が殺したのは人形の悪魔かドッペルゲンガーなんです。そうに違いありません…」
青い顔でトチ狂ったことを言い出すめぐみん
「おい、何無かったことにしようとしてんだ。というか、お前は殺してなんかいない。そうだろ?だってそのカードにはジャイアントトードしか載ってないんだからさ」
そう、めぐみんのカードには人の名前、あるいは名前になりそうなものなんぞ入っていなかった。これが示すところは、めぐみんは人を殺してなんかいないということだ。
「そ、そういえばそうでした!余りにショックで忘れていました。何たる不覚……」
少しは調子が戻ったようだが、こんな事が起こると俺の心臓に悪いので、忠告しておく。
「ああ、ところでこんな事があったんだから次からは他の魔法を使ってくれよな」
その一言に、急に黙り出す。
「………使えません」
「………は?何が使えないんだ?」
「………私は、爆裂魔法しか使えないです。他には、一切の魔法が使えません」
「………マジか」
「……マジです」
「「………」」
「そうか、多分茨の道だろうけど頑張れよ。よし、ギルドについたら報酬を山分けにしよう。うん、まあ、また機会があればどこかで会う事もあるだろ」
ぶっちゃけ威力はすごいけど巻き込まれて人死にとか一発だけとか普通に考えれば仲間にしようとは思わない筈。
あ、この野郎、強く握って来やがった!
「ふ…。我が望みは爆裂魔法を放つ事。報酬などおまけに過ぎず、なんなら山分けでなく、食事とお風呂とその他雑費を出して貰えるなら、我は無報酬でいいと考えている。そう、アークウィザードである我が力が、今なら食費とちょっとだけ!これはもう、長期契約を「わーわーわーっ!!聞こえなーい聞こえなーい!」む、往生際が悪いですね」
「いやいやいやいや!そんな強力な力は俺達みたいな弱小パーティーには向いてない。宝の持ち腐れだ。俺達の様な駆け出しは普通の魔法使いで十分だ。ほら、俺なんか最弱職の冒険者なんたから。ほら、アクアも何か言ってやれ」
さっきからやけに静かなアクアに告げる。流石のアクアもこんなネタみたいなのはお断りだろ………う…。
振り返った先には、アクアの姿は無く、大きな影。ジャイアントトードが佇んでいた。その口からは青い物が垂れ下がっていて……
「おま、お前、いつの間に食われてんだー!?」
幸いにもカエルは一体、それもアクアを捕食しているから動きはしない。これくらいなら俺でも……
ポコッボコッポコッ!
俺達の周りの地面が円を描くように盛りだし、中からあらわれたのは、カエル、カエル、カエル……。
…ちょっと無理だなコレ……よし、丁度ここに囮がいるし、逃げるか。
「じゃ」
するとめぐみんはかなりの力で服の端を掴み抗ってくる。
「じゃ、じゃあありませんよ?ここに倒れたか弱い少女がいるでしょう?ほら、見せ場ですよカズマ!」
「ふざけんな!こちとら駆け出しの上に最弱職だぞ!こんな数相手に出来るか!離せーっ!!」
くそっ、意外と力が強い!魔法職のクセに!
そうやって身内もめをしている間にも、ジャイアントトードの包囲網は狭まっていき、とうとう全てのカエル達の射程圏内に入ってしまっのか、大口を開けて舌を射出する。
その速度は普段の鈍重な姿が嘘のような速さで、ここまで接近されると彼らにはどうすることも出来なかった。
これは終わった、と命の危機を感じたカズマ
。
しかし悲観することなかれ、ここには英雄がいるのだ。
文字通り、その閃光の様な生き様を世界に認めさせた大英雄が――
「無事か」
「え?」
あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
カエルの群れに囲まれてもう駄目かと思ったが何故か目の前に一人の男がいて周りを囲んでいたカエルの姿はなく、見晴らしがよくなっている……!この人が剣を振りかぶった姿勢をしている所を見るとカエルはこの人が倒したんだろう。
催眠術だとか超スピードだとか
そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
もっと恐ろしいものの片鱗を 味わったぜ…
そんな下らない事を考えていると男の人は振り返る。
「まさか、声が出せなくなる程の怪我を?いや、目立った外傷は無いが…」
うわ、めっっちゃイケメン!何だこれ?地球の芸能人とかでもいないぞこんな顔。それに何だかよく分からないけど、何ていうんだろうか、こう、オーラ的な物を感じられる
……じゃなくて、お礼お礼……
「……あ、えっと…助けてくれて、ありがとうございまひたっ!」
馬鹿!俺の馬鹿!こんな肝心な所で噛むんじゃない!
「あ、その、えっと…」
っていうかよく考えればこんな年上の男の人とか話したことねえよ、やべぇ、このままじゃ俺情けない奴の上礼儀知らずにもなっちまう
「いや、恥じる事は無い。見たところ今まで戦ったことも無いのだろう。命の危機が訪れれば皆そのようになるだろう」
と男の人が言ってくれる。
や、優しい……ちょっと理由は違うけどすごくありがてえ
「あの、助けてくれてありがとうございます」
「いや、気にしないで欲しい。俺は当たり前の事を、そう、人として当たり前の行動をしたまでだ」
やべぇ、かっけぇ。そうだよ、こういうのを求めてたんだよ!
腕の立つベテラン冒険者との関わり、一緒のクエスト…ピンチに颯爽と駆ける姿…!俺の異世界への憧れはまだ死んじゃいなかったんだ…!!
「おーい、ジークフリートー!そっちは大丈夫か〜い?」
駆けてきたのはピンクの髪の美少女と、亜麻色の髪の美少年…恐らくパーティーだとは思うが…顔面偏差値が高すぎるだろ。
「ってあー!そこの!」
急に大声を出したのに驚いたのか目を見開く両人。
「あ、すいません。じゃなくてそこのアンタ!大丈夫なのか!?さっき爆裂魔法に巻き込まれたように見えたんだが……」
そう、この内亜麻色の髪の方は俺が見たカエルの近くにいた人だ。
見たところ怪我は無いようだが服は土で汚れている。
やっぱり当たらなかったか避けたか…どちらにしろ弁償はしなければ……にしても
「服は弁償する。けどあの状況から一体どうやって避けたんだ?」
すこし参考程度に聞いてみると全員が頭に疑問符を浮かべる。
?どうしたんだ?別に俺普通の事聞いてるだろ?
「うーんとね、アレ当たったよ」
「え゛…」
どういうことだ?あの爆発の中で人間が生きてられる筈も無いし…いや、万が一生きてたとしても無傷は無いだろ。
俺がそう考えていると、めぐみんがよろよろと立ち上がり、ビシッと指を指した
「そんな筈がありません!我が爆裂魔法は最大最強の一撃、機動要塞デストロイヤーや冬将軍ならまだしも貴方達が耐えられる様なものではありません!」
…急に元気でたなこのチビッコ。やっぱりアレか自分の魔法が侮辱されたのだと思ったのだろう。
「けどその前にお礼な」
「はい、その節に関してはありがとうございました。…ですがそれとこれとは話が別です!」
するとピンク髪が懐から何かを自慢げに取り出し掲げる。
それは一つの本、
「じゃっじゃーん!これのお陰何だ、名前は…えっと……確か、
「ライダー。それは俺の記憶が確かなら
一文字もあってないじゃん。
「そうそうそれそれ!この本はあらゆる魔術を打ち破る魔法の本なのさ!」
「なにそのチート」
いや、これ大分チートだろ。だって人類最強の攻撃手段があっさり防がれるってことだろ?
魔王軍の手にでも渡ったら侵略し放題じゃねーか。
「は?…はあぁぁぁっっ!?認めません!認めませんよそんな物!」
抗議をするめぐみんだが再度倒れて、手足をバタつかせているだけなので怖くも何ともない。
……?何か忘れてる様な?
「カズマさーーん!カーズーマーさーん!!ちょっとー!何かヤバイんですけどぉー!」
そうだった…コイツがいたんだった……。すっかり忘れてたな。
声の聞こえる方向に歩みを進め、勝手な行動をしない様に声掛けを行う。
「まってろアクア。ここに俺達の恩人がいるんだよ。ちょっと待っとぉわっ!」
ツルンと何かに足を取られて転げ回る。
ベチャ、と不快な音と、鉄の様な臭いが鼻に侵入してくる。
「まったく、何でこんなと……うわっ…」
そこは赤い草原が広がっていた。赤い草が生えている訳ではない。そこには無数のカエルの上半身と、その中心にへたりこむアクアが見えた。
そのカエルの数に俺は覚えがある。俺達を囲んでいたのと同じ数、多分、というかほぼ確実にあの時のカエルだろう。
何だこれ……。
いくらカエルで柔らかかったとはいえあの巨体、更には円形で包囲してたのに、全部まとめてたったの一振りでここまで飛ばしたってのかよ!?
マジで何だそりゃ!?他の冒険者の戦いをチラッと見たことがあるけどあっちはいわばマンモス狩りしてるみたいだったのにコッチは無双ゲーみたいとか、マジでチートかよ……
防御がチートなら攻撃もチート…ヤバすぎるだろこのパーティー!この駄女神より現地人の方が凄いって何なんだ。
結局めぐみんのガス欠、アクアが汚れたためこの人達と一緒に帰る事になった。
あの白髪の剣士がジークフリートさん。セイバーとかいう、前例の無い職業らしい。サブカルチャーに詳しい俺だが、地球だとこの名前は結構メジャーだと思う。
んで、この名前の奴は大体イケメンで強い。天が二物も三物も与えたような奴だ。本来の俺ならこういうのは嫌悪するんだが、助けてもらった礼と俺に異世界への憧憬を蘇らせてくれたから無下にはしない。というか出来ない。強いし、優しいし、何かあったらアクセルの女性陣に何されるか分からん。
んで、ピンクの美少女がアストルフォ。こっちも同じく前例も無いライダーという職業で、珍しいボクっ娘。色々な道具を使うらしい。そして騎士だとも。全然そういう様には見えないがきっと規則とかが緩かったんだろう。
そしてウーウー唸ってるのがフラン。頭に角みたいな装備があったり、ウエディングドレスにでかいメイスというこの中でも異様な風体。髪に目が隠れてるけどうっすら見えた顔は可愛かった。唸ってる理由は喋るのが疲れるらしいからとの事。
最後に、亜麻色の髪にめぐみんと同じ赤い目の、爆裂魔法に巻き込んでしまったのがジーク。
目が赤くアークウィザードだが紅魔族とやらでは無いっぽい。
名前の由来が、このジークフリートさんに命を助けてもらったからで、その前は名前が無かったらしい。
あれか?ひょっとして孤児とか虐待とかか?
まあそんな訳でちょっと聞きづらいのが本音。
「はい、確かに。ジャイアントトードを三日以内に五体討伐。確認いたしました。ご苦労様でした」
あっという間にアクセルに到着した俺達は冒険者ギルドに報告を終え、今は報酬を待っている。何だかんだで初めてのクエストだったんだ。男として心が踊らない訳が無い。
「では引取りましたジャイアントトード二体とクエストの達成報酬、合わせて11万エリスとなっています」
そういい、お姉さんはエリスの入った袋を手渡してくる。
11…11万エリス……。確かに二日働いた報酬と考えれば高い。高いんだがなぁ……。
命がけで必死に戦ってたった11万は少し納得がいかない。こちとら少し前まで一般人だったんだぞ!?
さらにクエストの報酬を抜いた純粋なカエルの買取価格は一匹5千エリス。土木作業のアルバイトと同じ額。さらにここからパーティーと分割するのだ。手元に残る金は僅か、今はまだ人数が少ないからいいが一人でも増えたりしたらちょっと厳しすぎる。
これならまだ命の危険の少ない土木作業の方がまだマシだ。
「俺達もよろしいだろうか」
「はい、あなた達も同じクエストでしたね」
…そうだったのか、あんだけ強いんだからもっといい依頼かと思ってたんだが。
まあ、ちょっと気になる。ほら、俺って初心者な訳だし?新しくやるゲームでも上位の人のスコアとかも見るし?
「はい、………………はい?」
ん?受付のお姉さんが何度も目を擦ってる。そんなにヤバイのか?
「あの、これは間違っていませんよね?」
「ああ、確かに倒した数と一致している。それに回収されている筈だ。…何か不備でもあったのか?」
「いえ、ただニ十八匹もの数をこんな短期間で討伐するとは……そこまでの数がいるのは珍しいんですけどねぇ…」
ニ十八!?ちょっと多くないか!?あの図体でニ十八匹もいるってちょっと、いや、大分恐いぞ。
「ではクエストの達成報酬とジャイアントトードの引取りから、運搬代を引いて……締めて二十四万エリスとなります」
一人あたり六万エリスか……命がけだったら安いかも知れないけど、一切苦戦すらしてなかったから、きっと丁度いいアルバイト位なんだろうな…。
「ちょっと待ってくれ」
「はい?」
「まだ仲間の分が査定されていない。そちらも見てくれないだろうか」
「ああ、そうでしたね。ではお仲間の方々もカードを」
ふむふむと真剣に眺めること数秒、お姉さんの顔が引きつった。
「……フランさんニ十六体、アストルフォさん三十一体………ジークフリートさん、四十五体ぃ!?」
叫びながら立ち上がった彼女に視線が向くが、そんなことは気にならない。
ジークのも合わせると合計で…百三十体!?
はあ!?多すぎんだろいくら何でも!
ほら、ちょっとお姉さんが諦めた顔になってる!
報酬も合わせるならあれだろ…えーと、七十五万エリス…ちょっとした小金持ちじゃねえか!?いいなぁ…俺たちなんて死にかけのボロボロで十一万。しかも大半は生活費に消える。
……ていうかあの平原にそんなにカエルいたのか。
「えーと、少しお待ちになって下さい。少しこちらも用意がいるので」
流石にカエル狩りでこんな大金が必要になるとはギルドも予想外の展開らしい。
そそくさと後ろへ下がっていくお姉さん。
するとそのタイミングでドアが勢いよく開かれる。
「たのもおーう!!」
「おいおい、俺達ゃ道場破りか何かか?」
「モードレッド、他の方の迷惑と為らぬ様に」
「ああ、不愉快だ。何故我がこんなことを……」
入ってきたのはこれまた特徴的なパーティー。
最初のが全身甲冑の少し小柄な騎士、そして完全に筋骨隆々のヤクザ顔にサングラス、ジャケットスーツもあって、というかヤクザ。
あれ?こいつ、いや、この人俺と同じ日本人じゃね?
注意をかけたのが、羽織に袴の日本刀を腰に差した白髪褐色肌のイケメン。こっちも多分、日本人……だと思う。
最後の一人はすっげえ美人。受付のお姉さんとは違った氷を思わせる様なクールな感じだ。そして長く尖ったエルフ耳。そう、未だにアクセルでは見かけていないエルフだ!きっとエルフなんだよ!!
そのパーティーはズカズカと受付へやってくると冒険者カードわ、差し出した。
「おら、早速やってきたぞ。グリフォンとマンティコア二頭だ。確認しな」
「こ、こんな短時間で!?嘘でしょ!?……いえ…本当、ですね。マンティコアはニ頭いたんですか。そんな情報は無かったのですが……」
「何だよ、疑ってんのか?そこにも二頭って書いてあんだろ。ほら、報酬を渡しな」
「ええと、百万エリスは、その……あの、す、少しお待ち下さい!」
今さっき出てきたのに一瞬で引っ込んでしまった。これには、他の冒険者も驚愕の目線でそのパーティーを凝視する。
っていうかアレだろ?グリフォンとマンティコアって、一番報酬の高かった奴。
何でこんなのを出来る奴が初心者の街にいるんだよ
何だかんだで報酬をむしり取ったそのパーティーは何故か俺達の方に目を向けて……
「おーい、ジーク!そっちはどんな感じだったんだ?」
「ああ、少しトラブル…?…トラブルがあったが概ねうまく行った。クエスト、というのも少し理解出来た」
「俺達もそんな感じだ」
何事も無かったかのように談笑する徒然……ってオイ、
お前ら全員知り合いかよ!
オチが思いつかなかった(怠慢)
スーパー駄作臭がするぞ…