目の前に映っていたのは見慣れた風景、夜の日本の住宅街。そこに、少年は立っていた。
「ここは……」
その光景に少年は首を傾げた。何故自分はここにいるのかと。本来なら彼は今、自室にて眠りに落ちたはずであった。
周囲を見回した彼は、初めて今目の前に映る風景の異常さに気付いた。
聞こえないのだ、車の走る走行音、人の声、鳥や虫の鳴き声が。
異常なこの場に危機感を感じ、身構えながらも少年は前へと進む。
その時だった、向こう側から誰かが走ってきた。
それは少女であった。
彼にとって恩人であり、失ってしまった仲間。
だが、彼の知る彼女はあそこまできれいな
その時だった少女が後ろを振り返ったとき、少年と少女の間を1本の剣が通り過ぎた。
次の瞬間、ザシュッ!?と言う初めて聞く、いや最近聞いたかもしれない、
『イッ、うぁ………ァァァアアアアアアアア!?!?』
少女の叫び声が響き渡る、閉じた瞼から涙のように血が流れ、頬を伝う。喉の奥から何かが迫り上がってくるような感覚に、少女は思わず手で口を押さえる。
少女は痛みからか、目の前が見えないからか足をもつれさせ倒れまるで確認するようにその手で頬の身を拭う。
『ハッハッハ!この俺に逆らうからこうなるのだ!上級悪魔であるこの俺にな!!』
そんな彼女の後ろから、ニタニタと笑いながら近付いてくる男達。彼女を守ろうと彼らの前に少年は立つ。だが、男達は少年を通り抜けた。
まるで、幽霊、少年はそのような状態だったのだ。
男は笑いながら、今もなお動き逃げ出そうとした少女の右足首を切りつけた。更に鮮血が舞い、少女声のない悲鳴が響き渡る。
『うっ……ぐ、にげ、なきゃ』
少女はそれでもなお逃げようと、動かない足の代わりに腕で地面を這う。
『がっ!?あ、あぁ……』
『いい加減諦めろ、なぁ?』
そんな彼女の脇腹を手に持った剣が貫く。あの男達はなんだ?悪魔ってなんだ?何故あの子があんな目に会わなくちゃ行けない?
声すらも出さなくなった彼女は痛みに顔を歪めながらも前へと手を伸ばす。
そんな絶望的な状況でもなお、諦めず目の前へと手を伸ばす彼女は、まるで、今自分達が置かれている状況と似ている。
『いい加減、惨めなんだよぉ!!!』
そんな彼女の伸ばした手が先程の男に踏みつける。何度も、何度も何度も何度も。痛みに喘ぐ少女の腕は赤く腫れ上がり変色もし始める。恐らく骨は粉々のレベルで砕かれているだろうか?
『っ~~~~~~~~~~!?』
もう、彼女は動けない。動くことが出来ない程にボロボロだった。そんな彼女の髪を掴んで持ち上げる。
そんな様子をただ見せられている少年は口を押さえ、滝のように汗を流していた。一体、これは何だ?もし夢なら早く覚めてくれ。
その後だった、場面が変わったように自分はいつの間にか部屋の室内と思われる場所に立っていた。先ほどの少女がベットに入れられていた。
体のあちこちに包帯が巻かれ、その両目も包帯に覆われている。目の前にいる彼女は呼吸をしているのか疑うほどに静かに眠っている。
助かったのだろうか?
そう思っていると、突如として彼女のベットの枕元に並ぶように四人の少女が現れベットに眠る少女の中へ、吸い込まれるように消えていく。
その四人は見覚えがあった、それぞれ彼女に憑依した人物も思われる少女達。
そうして少女は目覚めた、ゆっくりと包帯を取り開いた瞼から現れたのは赤く、紅く、朱く変化した、自分の知る彼女の琥珀色の瞳。
もし、自分の失った彼女の瞳はこうして変化したもの?
そう考えるなか、また突如として場面が変わった。
それは例えるなら最初に見た特異点、冬木の様に燃え盛る建物。逃げるものや武器を構える様々な人々。
まるで、ドラマで見た戦争のような光景に少年は戸惑いが隠せなかった。
その時だった、自分の近くに何かが降ってきた、いや
『ガハ!?』
それは右手に赤い鎧?をつけた少年と同じくらいの年の男が血を吐いて事切れていた。見れば周囲には様々な人が倒れている。
真っ白な髪に猫耳の生えた幼い見た目の少女。
赤い髪で、スタイルの良い女性。
黒髪をポニーテールにした女性。
金髪の高校生くらいの少年。
幼い見た目の金髪の少女。
手には折れた剣の柄らしき何かを持って倒れている少女。
不思議に感じながらも空を見上げたとき、少年は目を見開いた。
その両肩から、光の翼を広げ青い鎧を身に付け、手に持った彼女の体より遥かに大きな大砲を持ち、大砲からビームを乱射し続け、近付く者は彼女の体と同じくらいの大きな剣で切り払う。
戦いを嫌い、他者を遠ざけ怯える自分の知る少女と同一人物だと思えなかった。
そんな少女の瞳は、暗く憎しみに染まっていた。
「それは恐らく、君の召喚したサーヴァント。あのイリヤと言う名前のサーヴァントの記憶かもしれない」
目の前に座るモナ・リザがそのまま現れたかのような女性……に体を作り替えた英霊、レオナルド・ダヴィンチはそう言った。
「イリヤちゃんの、記憶?」
カルデアでの、最初の戦い。
巻き込まれた一般人、藤丸立香達が未来を取り戻す物語の序章とも言える特異点F。
その特異点は、1体のサーヴァントを犠牲にした事で、修復された。
「あぁ、前例がない訳じゃない。実際に藤丸くん以外でも、サーヴァントのマスターとなった経験のある魔術師が同じように英霊の記憶を見ることがあったらしい」
そう語る髪をポニーテールに纏めた医療担当のロマニ・アーキマンの言葉に、感嘆の声を貰うのは、人類最後のマスター藤丸立香。
本来ならば死ぬ運命にあったカルデア所長。
オルガマリー・アニムスフィアはサーヴァントの宝具により生存し、その場にいたもの達も守られた。魔術師から見れば、たった1人。それも使い魔一匹で済んだのだから良いと考えるだろう。
だが、その場にいた一般人である藤丸立香にはそう思えなかった。
彼は普通の人だ、人の死に馴れず始めて目の前で失った命とも言える彼女の死に戸惑い、自信の選択が彼女を殺したのではと言う罪悪感に苛まれた。
そんな中で告げられた、サーヴァントの再召喚と言うシステム。アルターエゴはカルデアを通し召喚されることが決定した。
それは彼女がアルターエゴと言うクラスである他に、様々なクラスへとその身を、力を変える姿が特異点で有利に働くであろうと思われたからである。
故に、イリヤを再召喚する事が決定されたと知った藤丸立香やオルガマリー、マシュは大いに喜んだ。召喚されたイリヤは、あのときと同じように挨拶を交わしレオナルド・ダ・ヴィンチにより英霊を強化する霊基再臨を行われた。
本来ならば、藤丸はイリヤを戦闘に出て欲しくないと考えていた。彼女は確かに強いし、汎用性も高い。でも、戦いにあんなに怯える彼女を無理に戦闘させたくなかった。
そして、あの夢で見た彼女の姿を本当に持つのか。もし持っているなら、絶対に彼女に戦闘をさせたら駄目だ。
だけど、人理修復の前でそんな選択を出来るはずもなく。彼女に力を借りなければならない。
霊基再臨したイリヤは、何故か前より少しボロボロになり、黒い煤のついた制服を来ており瞳には光がなかった。また制服は変わらないが、彼女は首には最初はなかったはずの三角形の飾りが着いたペンダントのような物を首から下げていた。
「戦いたく、ないのに………」
霊基再臨し、最初に消えそうなほどか細い声で呟かれた彼女の言葉に藤丸は酷く心が傷んだ。
「ごめん、本当は戦いたくないのに。人理が壊されて、未来を取り戻すために戦わないといけないんだ。だからイリヤ、お願いだ、俺たちにカルデアに協力して欲しい」
そう言いながら頭を下げた藤丸に、サーヴァントは怯えながらも確かな答えを口にした。
「分かり、ました」
「え?」
想像より早かった返事に思わず彼は頭を上げた。
「戦いは、嫌いです。痛いし、苦しい………でも、そうしなきゃ、いけないんですよね」
「ごめん、そして、ありがとう」
そうサーヴァントへとお礼を言いながら、藤丸は心で願った。この後に召喚できる英霊はまだ少ない。英霊を召喚してサーヴァントが増えれば、きっとイリヤは戦わないで済む。
どうか、彼女が戦わなくて済むよう強いサーヴァントが来てくれますように。彼女に宛てがわられた部屋へと送り届け藤丸は新たな覚悟を胸に英霊召喚室へと向かう。
扉が自動でスライドし、英霊を召喚する為に集めるよう指定された部屋に入る。
「先輩、お待ちしていました!」
部屋にはマシュとダヴィンチちゃんが既に集まっていた。
「じゃ、彼も来たことだし早速始めようか!」
「はい!」
部屋の中央に置かれたマシュの盾へと進む。今回、特異点で改修できた聖晶石は合計九つ。
ダヴィンチちゃんの説明な召喚できる英霊は3体。聖晶石を受け取り、マシュの盾の前へと移動する。
どうか、彼女がもう戦わなくても良い程強いサーヴァントが来てくれ。その思いで聖晶石をマシュの盾の上に浮かぶ三つの光の輪。通称守護英霊召喚システム・フェイトへと投げ入れる。
ダヴィンチちゃん曰く、特異点で縁を結んだ英霊、もしくは自身に何らかの縁があればその呼び掛けに応じて来てくれるらしい。
光輪が高速で光りながら回転し、光が立ち上る。
やがて現れたのは、特異点Fで俺達を助けてくれたキャスター、クー・フーリン。でもあの時とのような杖とフードを被った姿ではなく、槍を持った姿だ。
「サーヴァントランサー、召喚に応じ参上した、今度はちゃんとランサーで召喚してくれたな。よろしく頼むぜ?」
また光輪が弾け、現れたのは赤い人影。見覚えはある、特異点Fで戦った剣を使っていたアーチャー。
「サーヴァントアーチャー、召喚に応じ参上した。」
そして最後は、最後に戦った黒い聖剣を持つ騎士王。
「サーヴァントセイバー、召喚に応じ参上した。貴様が私のマスターか」
現れた三人のサーヴァント、どれも特異点Fこと冬木で戦ったサーヴァント達である。そんな彼、彼女達へと俺は頭を下げた。
「どうか、人理を取り戻すため力を貸して下さい!」
そう頭を下げた俺に、英霊のみんなは首を縦に振ってくれた。
クー・フーリンとアーチャー、エミヤが仲が少し良かったのには驚いたな。本人達は否定してたけど、少なくとも同じ時代の人には見えないから。
そんなエミヤはカルデアの食堂でカルデアの職員や俺たちに料理を作ってくれた。カルデア職員のみんなからエミヤの料理は好評で、俺もここで日本食が食べられて凄く感動した。
セイバーオルタはずっとハンバーガーを食べ続けてる。エミヤの料理を気に入ったのだろうか?
ふと、食べながら部屋に閉じ籠っている彼女の事を思い出した。
「ねぇエミヤ、もう一人分。作って貰っても良いかな?」
「構わないが、足りなかったか?」
「いや、実はエミヤ達より先に召喚した英霊が一人だけいるんだ。その子はちょっと特殊で、部屋に閉じ籠ってるから持っていってあげようかと思って」
折角ならイリヤにもこの料理を持っていってあげたい。
「ほう、なら私も同行しよう。その英霊に挨拶をした方が───」
「やめとけ。マスター、その料理は俺がアルターエゴの所まで持ってく」
そう言ってイリヤに会おうとする彼を、クー・フーリンが静止した。アルターエゴ、なんでランサーは彼女の名前ではなく、クラス名で?
「クー・フーリン?」
「どういう意味だランサー」
「お前がアイツにあったら、アイツは怯えて話せねぇだろう。それに、万が一にマスター達の言う霊基再臨した事で
「……そうか、了解した」
そう言ってエミヤは厨房へと向かっていく。それを見送り俺はクー・フーリンへと向き直った。
「ねぇ、なんでイリヤちゃんの事をクラス名で呼んだの?」
「まぁ、そこは複雑な事情ってもんがあるんだ坊主。それで納得してくれや、そういやマスター、アイツが霊基再臨したとき、何か変わったところは無かったか?どんなに些細なことでも良いから教えてくれ」
「えっと、制服姿であんまり変わんなかったけど。確か、三角形の装飾がついたネックレスをしてたかな?」
そう言うとクー・フーリンは顔を歪め顔を片手で覆う。
「やっぱりか………弓兵には悪いが、アルターエゴと絶対に会わせんじゃねぇぞ」
「う、うん………」
その後、出来上がった料理をクー・フーリンはイリヤちゃんのいる部屋へと持っていった。
それにしても、アーチャーとランサーとも面識があるイリヤちゃんってどんな時代の英霊なんだろ?
クー・フーリンsid
アイツが宛が割られた部屋の扉がスライドして開く。真っ暗な部屋、パッと見は誰かいるとは思えないが、アイツが居ることは分かった。
彼が気付けたのは経験だ。部屋の電気を付けて口を開く。
「イリヤ、飯持ってきたぞ」
『音声認証開始、サーヴァント。クー・フーリンだと断定、GRM空間擬態解除します』
その声と共に、部屋の隅の空間が歪んだ。そして顔から下へ順に彼女が現れていく。やっぱりソイツを持ってやがったか。
「………」
「飯、食うだろ?」
その問いに、コクりと頷きテーブルに置いたご飯に手をつけるイリヤ。
あの頃、天真爛漫でこちらへ笑顔を向けて名前を呼ぶ筈のイリヤは今。心が傷つき、更にはこうしてサーヴァントとなって戦うことになってしまった。
恐らくだが、コイツには神性が感じられた。恐らくだが悪魔を滅ぼしたとき、それを助けられたと感じた奴らがコイツの事を崇めたてたのだろう。
元々コイツを崇めている集団が確認されていたし、それを作ったのはソイツらの技術も含まれている。
オレらサーヴァントが守れなかった時の、あり得ない可能性。
万が一、いや億が一の可能性。
それに対して製作された、悪魔を殲滅する兵器。それが今、コイツの手元に戻ってきてしまった。
頼むから、起動してくれるなよ。
そんな事を考えているうちに、イリヤは食事を食べ終えていた。
「イリヤ、落ち着いて聞け。赤い弓兵が召喚された」
そう話すと、イリヤは体を震わせ怯えた表情を浮かべる。
「お前の名は出来るだけ出さないようにしてるが、バレるのは時間の問題だろうな。大丈夫だ、もしもの時はオレやマスターが守ってやる」
そう言ってイリヤの頭を撫でる、少しだが震えが収まってきたか。
「んじゃ、また来るわ」
そう言ってオレは空になった食器を持ちコイツの部屋を出た。
エミヤside
ランサーが空になった食器を持って帰ってきた。彼曰く、彼女は美味しそうに食べていたらしい。
それにしても、アイツがこのまで気にかける英霊だとしたら、誰だ?
そんな事を考えつつ、カルデアの廊下を歩く。マスターから私たちより先に召喚されていたサーヴァント、彼女に関しての情報は。クラスは『アルターエゴ』、反英霊で様々なクラスへとその身を変えて戦う多重人格者。本来の人格である彼女は対人恐怖症でトラウマ持ちらしく、特定の人物以外には怯え続ける。
なぜ、そんな人物が英霊に?
今のところ確認されている特定の人物は、クー・フーリンのみらしいが。
後ろからコツコツと足音が聞こえ振り返る。恐らくカルデア職員だろう。
「ヒッ!?」
視線の先にいたのは、俺の知る彼女と瓜二つの少女の姿があった。
綺麗な銀髪に琥珀色の瞳、ネコが苦手で私の……俺の姉だった人。思わず目を見開き、そして涙を浮かべて怯える彼女に疑問を浮かべた。
何故か、彼女は怯えて1歩また1歩と俺から距離を取る。
「君が私より先に召喚された───」
そう言って出来るだけ優しい声色で話しかけながら近付こうとした、その時だった。
ドンッ!と言う音と共に、俺はカルデアの廊下へと叩き付けられていた。叩き付けられた音と体に走る痛みで初めて自身が吹き飛ばされたのだと知った。だが、一体誰に?
そう思いながら痛む体を無視して立ち上がる。
『パイロットの精神に大幅な変化を確認』
機械のような音声が鳴り響く。
『心拍数規定オーバー、恐怖を確認しました。続いて敵勢力と思われる反応を検知』
その聞こえてきた先には青い装甲が覆い、両肩には翼と思われる装甲が装備された、少女の姿があった。彼女の両肩に装備された翼の根元の白い何かから緑色の粒子が生み出されている。
瞳をつぶり右拳を振り抜いていた彼女はゆっくりと通常の立ち姿へと戻った。
『汎用装甲戦闘服型兵装。殲滅機構00-SKY、起動します』
聞き取れた言葉は汎用装甲、戦闘服型兵装、殲滅と言う音声。恐らくは目の前の彼女を覆った何かの名前、スカイ。
彼女に似合うであろう白ではなく青く染め上げられたその装甲を纏った彼女は、ガクリと俯き気を失っているようだった。
「グッ、一体何が……」
その時だった、彼女は右手を肩に伸ばす。
右肩に装備されているらしき何かがガコンと言う音と共に少女の手へと大きな剣の柄らしき何か、少女はそれを掴みそのまま振り下ろすように振るうと、振り下ろされる中で鉄が割れ1本の大剣へと変形した。それと同時に剣の刃の先からエネルギー状に刃が展開されていく。
明らかに彼女の力では握れないでありうその剣を持つ彼女に、何故か私は過去に使ったあの投影を思い出した。この身より遥かに大きく、彼女を守れと最後に残した偉大な英霊の剣を振るった、あの時を。
気がついた頃には、彼女の刃先が目の前に迫っていた。
「チィッ!?」
なんとか投影した剣で彼女の振るった大剣を流し、距離を取りつつ投影した黒と白の双剣。干将莫邪を投擲する。
彼女を傷付けるのは心から痛むが、とにかく今は彼女を止めないと。そう考えていると彼女の装甲の両肩の装甲がまるで翼のように広がり、展開された装甲から光で出来た翼が勢い良く展開された事で発生した風圧により干将莫邪はそれぞれ吹き飛ばされ、彼女に当たることはなかった。
脳内では何かが彼女に対しての警報をならし続けている。
「待ってくれ!私には君との戦闘の意思はない!」
証明の意味も込め、両手に剣を投影せずに
『そう言いながらもパイロットを攻撃してきたケースは80.57%……判断、対象を敵と再設定。戦闘を続行します』
「クッ」
そう言って彼女が剣を構え直した時だったのだ。
「令呪を持って命ずる!止まってくれ、イリヤ!」
その声と同時に、相手の彼女の動きは硬直した。聞こえてきた声の方を見れば慌てた様子のマスター、そして他のサーヴァント。
「エミヤ、大丈夫!?」
「あぁ、問題ない……」
「よかった。イリヤちゃんは何故こんな事を」
そうマスターに返事を返した時、私は見た。令呪に縛られたはずなのにも関わらず、彼女はその剣を振り上げていた。
まさか、彼女はアルトリアと同じように対魔力のランクが!?
「マスッ!?」
慌ててマスターを突き飛ばして彼女の剣から逃そうとした。その時だった、隣から黒い聖剣を叩きつけ、彼女の攻撃を反らした黒いアルトリアの姿があった。
「こいつ、本当にマスターの言っていたサーヴァントなのか?どう見ても戦意があるじゃないか」
「何で!?ちゃんと令呪を使ったはずなのに……」
そう言って令呪の刻まれた己の手の甲を見つめるマスター。
「マスター、この場は俺に任せてくれないかい?」
そう言うのは、槍を肩にかけて真剣な様子で此方を見つめるランサー、クー・フーリン。
「何か策があるの?」
「まぁ、策って言うのよりは交渉に近いがな。」
そう言いいながら、今もなお鍔迫り合いをするアルトリアと彼女、イリヤの前に歩みよったクー・フーリンは口を開いた。
「おい、活動を停止しろ
ランサーが口にした言葉、空?その言葉で繋がる言葉や関連して想像できるものを思い浮かべ、気付いた。空、英語でスカイ。
『声認証、クー・フーリンと断定。否定、マスターに危害を加える可能性のあるものは排除します。』
「こいつらは、イリヤを傷付けるような事はしねぇよ。取り敢えず、今は一旦俺に任せて止まれ、令呪だって
『………了解しました。装甲、解除します』
その声と共にイリヤの纏っていた鎧がゆっくりと粒子となり消えていき、やがて彼女の首元へと集まり、三角形のペンダントを作り出した。
そしてそれと同時に地に足をつけた瞬間に倒れそうになったイリヤをクー・フーリンが支えるように抱き上げる。
「ふぅ、どうにか終わったぜマスター」
「良かった……」
「終わっなら私は自室へと戻らせて貰う、アーチャー明日のバーガーは今日の倍を用意しておけ」
その声を聞いて息を吐くマスター、そしてアルトリアは持っていた聖剣を粒子へと変えてそのまま踵を返して歩いていく。
「マスター、何故ここに?」
「急にイリヤのクラスが変化したのをロマニ達が気付いて、監視カメラの映像を見て急いできたんだ。」
やはり、彼女の名はイリヤか。
「すまない、迷惑をかけた。」
「そんな事ないよ。それに今回のイリヤちゃんクラスはバーサーカーだったから」
バーサーカー、か。
脳裏に浮かぶ英霊の面影を首を横に振って消す。
「それにしても、アイツが部屋の外に出たタイミングで会っちまうなんて、相変わらず運がねぇなお前」
そう言って眠っているのか気絶しているのか、瞳を閉じて黙った様子のイリヤを当たり前のように抱いているランサー。
「ランサー、それより彼女について説明をして貰おうか。」
「あー、悪いが無理だ。突拍子もなくて、あり得ないような話だからな。悪いな」
そう言って彼女を抱えてランサーは通路へ消えていった。
残ったのは、俺とマスターの二人。
「あの、さ。エミヤはイリヤちゃんと知り合い?だったりする?」
「…………」
「ほら、さっきもイリヤを傷付けないように戦ってたように見えたし。」
「まぁ、な……」
『シロウ!』
彼女が、姉である彼女が俺の名前を呼ぶ幻聴が聞こえ思わず片手で額を押さえる。
「エミヤ、実は俺……イリヤの過去を夢に見たんだ」
「ッ……そうか」
「イリヤは────」
その後、マスターの口から説明された彼女の過去は俺の知るものから酷くかけ離れていて、聞いていて、まるで我を忘れる程の怒りを感じるものだった。
お久しぶりです
最近はウマ娘の人気が凄いですね
ご愛読ありがとうございます
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