静寂に包まれた教室に戸山香澄は一人机の下で震えていた。ポピパのみんなともはぐれちゃって、うまく動けないし、ゾンビは出てくるし、とっても怖い。みんなと合流することはできるのか!?そして無事に脱出することはできるのか!?

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香澄ちゃんっていじめたくなりますよね。ということで香澄ちゃんがビックリさせられるお話です。


Zombie Party

 みんな、どこ行っちゃったの……? 

 

 学校の机の下に私はいる。みんなを探しているのにまるで隠れているみたいだ。でも手が震えてしまって動ける状態ではない。さっきまで5人で話しながらこの学校を探索していたのに……。突然あんなのが来ちゃって、パニックになっちゃって、はぐれちゃって……。

 

「みんな~、どこ~?」

 

 声を出してみるものの反応がない。おかしいな……。逃げてきてからなんの音も聞こえない。静寂に包まれていると時間が止まってしまっているようだ。ただ一つ聞こえるのは自分の心臓の音。心臓がどきどきする音で時間が刻まれる。こんなドキドキ嫌だよぉ……。でも、静寂に包まれている間は何も起こらない。気持ちを落ち着けることができる。やることを整理することができる。

 

 しかし、静寂は突然に終わる。廊下の方にヒタ……ヒタ……と歩く音がした。この足音は……。

 

「ひぃっ!」

 

 きっとアイツだ……。緊張し右手に力が入る。さっきこの教室で拾った銃を用意する。撃ち方は……さっきりみりんに教えてもらったけれど当てられるだろうか。

 

「やっぱり無理ぃ」

 

 机の下に潜ってしまう。移動するのがやっとなのに銃なんてとても当てられない。それにできれば会いたくない……。

 

「早く行っちゃってよぉ……」

 

 しかし、足音が途中で止まってしまった。そして、ガラリと教室の扉が開く音がした。

 

「う、うそでしょ……。なんで……。あ」

 

 この教室に入るときに扉を開けるのに手間取り、誤って持っていた物をいくつか落としてしまったのだ。それを見てここに入ってきたに違いない。なら、多分バレるのも時間の問題だ。

 

「……ア゛ア゛ア゛ア゛」

 

 ついにアイツの唸り声が聞こえてしまうくらい近づいてきた。こうなったら仕方がない。急いで机から出る。幸いアイツはこちら側を向いていなかった。銃を構えて撃つ。銃声が鳴り響く。しかし、弾はあらぬ方向へいってしまう。狙うのがとても難しい。こちらに気がついたアイツは真っ直ぐに向かってくる。

 

「来ないでよぉ!」

 

 何度も弾を撃つ。一発当たったようだ。しかし、なんともない様子でこちらに向かってくる。

 

「なんでなんで、当たったのに……」

 

 やっぱりゾンビって撃たれても痛くないんだろうか。必死に距離をとろうとするが追い詰められてしまった。とにかく銃を撃って抵抗する。しかし、何故か撃てなくなってしまう。

 

「どうしてぇ……」

 

 ついに噛みつかれしまいそうな距離まで詰め寄られてしまう。ああ、もうダメだ。そう思った瞬間。アイツは銃声と共に倒れた。銃声が聞こえた方を向くと人がいた。あれは……有咲だ! 

 

「有咲! ありがとう! もうダメかと思ったよぉ」

 

 あれ? 有咲から返事がない。ずっと立っているだけだ。不思議に思っていると画面に文字が出てきた。個人チャットというやつだ。

 

『香澄、携帯の電源切れただろ』

 

 あ、ほんとだ。充電が切れちゃってる。だからみんなの声聞こえなかったんだ。

 

 

 ***

 

 

「でね、そのゲームがめっちゃ面白いんだって」

 

「へ~、ゾンビのゲームなのにオンラインゲーなのか。でもそれってほとんどゾンビ勝ちじゃね?」

 

「勝利条件があって、それを達成して脱出した人が勝ちなの。ゾンビは邪魔する役」

 

 放課後、有咲の倉で練習をするために集まっていた。あとは沙綾が来れば全員集合だ。りみりんと有咲はなにやらホラーゲームの話をしているようだ。……怖いのは私は苦手だ。

 

「なるほど。みんなで協力して脱出するのか」

 

「そう! それで、噛まれちゃったらゾンビになっちゃうんだけど、さっきまで協力してた人がゾンビになっちゃったりして、本物のゾンビ映画みたいですっごく面白そうなの」

 

「確かにそれは面白そうだな。ホラー苦手だけど……やってみたいかも」

 

「なら一緒にやってみよ!」

 

「うん、やってみよう! ……香澄もやってみねー?」

 

 有咲が私が怖いの苦手なのを知りながら私に振ってくる。

 

「ゾ、ゾンビ……! 怖いの……ダメ……!」

 

「大丈夫だよ香澄ちゃん、銃で撃っても血が出ない様にできる設定もあるから」

 

「そ、そうなの? でも私はゲームだったらみんなで楽しくお魚釣ったり、虫取りしたりするゲームがいいなぁ」

 

「なになに? なんの話?」

 

 沙綾がやって来た。

 

「あ、沙綾。ゾンビのゲームの話してたの」

 

「へぇ、ゾンビの。なんだか流行ってるみたいだよね。香澄はそういうの苦手だと思ってたんだけど」

 

「え!? わたしは……」

 

 もちろん苦手なんだけど……。

 

「香澄ちゃん一緒にやってくれるの!?」

 

 りみりんがとっても喜んでいる。で、でも……。

 

「香澄もやるなら私もやろうかな」

 

 紗綾ものってくる。気のせいか沙綾が少しニヤリとした気がする。

 

「なら私もやってみたい」

 

 おたえまでやりたいと言い出してしまう。

 

「おたえ!? でもきっと怖いよ? それにもしかしたらグチャグチャだよ!?」

 

「グチャグチャはちょっと嫌いだけど……メタルのCDジャケットとかで慣れちゃった」

 

 そういえばおたえから勧められたCDのジャケットがとっても怖かったことがある。かっこいい曲だったけれど目を瞑りながらCDをプレイヤーに入れて再生するのは大変だった。

 

「それならよかった~。みんなで一緒にやろうね! 楽しみだな~」

 

 りみりんが楽しみにしてくれている。りみりんが喜んでくれるならやってみようかな。……でもやっぱり本当にグチャグチャなのかな。

 

 

 ***

 

 

「ごめんごめん、充電切れちゃったの気が付かなかった」

 

「あのあと突然香澄ちゃんの反応がなくなっちゃったから少し心配しちゃった」

 

「香澄、すっごく速く逃げててすごかった。脱走したときのオッちゃんくらい」

 

「一人で大丈夫だったか?」

 

「すっごく怖かったよ~」

 

「そういえば香澄も銃拾ったんだよな」

 

「うん。でも撃てなくなっちゃって」

 

「リロードができてないんじゃねーの?」

 

「リロード? あ、そうかも」

 

 そういえばリロードをしないと撃てないみたいな説明があった気がする。

 

「有咲ちゃんと香澄ちゃん。これで銃を持った人が増えて心強いね」

 

 私はハンドガン。有咲はアサルトライフルという銃を持っている。大きい分当てやすくて強い弾が撃てるらしい。

 

「そういえば沙綾は?」

 

「あの後見つからないの」

 

「香澄と同じで応答がねーんだよ」

 

「気絶しちゃったかな」

 

「沙綾ちゃんなら大丈夫だと思うけど。香澄ちゃんじゃないし」

 

 りみりんがひどい。

 

「あれって、沙綾のキャラじゃなかったか?」

 

 有咲が銃を向けた先に人影が見える。確かにあれは沙綾のキャラだ。……でも様子がおかしいような。

 

「おーい。紗綾!」

 

 有咲が沙綾のキャラに駆け寄っていく。

 

「待って! 有咲ちゃん!」

 

 りみりんが有咲を止める。しかし、既に有咲は人影に近付いてしまった。

 

「う、うわ!」

 

 人影は有咲を襲う。有咲は必死に抵抗しようとするが持っている銃が大きいのが仇となりうまく抵抗できない。

 

「香澄ちゃん! 有咲ちゃんを!」

 

 銃を構えて何発か撃つ。

 

「うわ、体力減った。私を撃つな!」

 

「だって難しいんだもん」

 

「逃げた方がいいんじゃない?」

 

「……そうだね。香澄ちゃん、逃げよう」

 

「有咲ごめーん」

 

 あわてて有咲を置いて逃げ出す。

 

「待て! ほんとに何かないのか!? なんか押せば助かるとか、あ、噛まれた」

 

 こうして有咲はゾンビになってしまった。

 

 

 ***

 

 

「ゴメン、有咲。だまし討ちみたいなことしちゃって」

 

 久しぶりに紗綾の声が聞こえた。少し安心する。

 

「いや、ゲームだしそういうもんだし。めちゃくちゃびっくりしたけど」

 

「ほんとにびっくりしたよ~」

 

「あのとき噛まれちゃったんだけどそれ言っちゃたらつまらなくなるかなって」

 

「確かに。あ、それじゃ私と沙綾は通話抜けて、生存者組とゾンビ側で分けてみるか」

 

 そんな……寂しいじゃん! 

 

「それいいかも」

 

 抗議の声を出す間もないまま案は可決されてしまう。

 

「それじゃまたゲームが終わってからな」

 

「頑張って生き残ってね」

 

 沙綾と有咲が通話から抜けてしまう。二人の声が聞こえなくなってしまうとやっぱり寂しくなってしまう。仲間が減ってしまうのは思っていたより心細い。

 

「これからどうしようか」

 

「脱出するためには車を直したりヘリコプターを呼んだりしないといけないんだよね。まず何が出来そうか考えてみよう」

 

「私、車修理したことない……」

 

「ゲームだから大丈夫だよ」

 

「あ、そうか」

 

「一番簡単で怖くないのがいい……」

 

「簡単なのはヘリコプターみたいだけど……」

 

「どうやって呼べばいいの?」

 

「信号弾を打ち上げれば救助ヘリが来てくれるみたい」

 

「信号弾ならさっき拾ったよ」

 

「本当!?」

 

「どこで使うんだろうと思ってたけどそういうことだったんだね」

 

「あとは校庭で打ち上げて屋上のカギを見つければいいんだけど」

 

「……屋上のカギ? もしかして……」

 

「何か知ってるの?」

 

「さっき間違えて落としちゃった物の中にあった……かも」

 

 さっき逃げ出して迷った先に鍵があってとりあえず拾った記憶がある。でも持ってないということはきっとあのとき落としちゃったのだろう。

 

「本当!? なら見つけに行こう!」

 

 

 ***

 

 

 さっきの教室まで特にゾンビと遭遇することなく戻ってこれた。

 

 しかし、どうやら鍵を探していたのは私たちだけではなかったようで3人グループがちょうど鍵を拾っていたところだった。

 

「どうしよう」

 

「一緒に協力して脱出できるかな?」

 

「とりあえず聞いてみるね」

 

 りみりんが近くにいる人のみ参加できるチャットで呼び掛ける。

 

『どうもこんにちは。屋上の鍵お持ちではありませんか?』

 

『こん! さっき拾ったところだよ!』

 

『信号弾は私達が持っているので協力して脱出しませんか?』

 

『いいよ! 一緒にがんばろ!』

 

『……ところでお仲間はそちらにいる3人ですか? ( ・◇・)?』

 

『そうです』

 

『……困っちゃいました(;・∀・)』

 

『どうされたんですか?』

 

『ヘリに乗れるのは4人までです』

 

『え!? そうなの?』

 

『つまり……(>_<")』

 

『信号弾をこちらに渡してくれませんか?』

 

「え!?」

 

「ちょっと詰めれば入れないかな?」

 

「きっとそういうシステムだから無理だと思う……」

 

『……お断りします』

 

『残念です』

 

『あこちゃん、あれ出しちゃってq(^-^q)』

 

『バーン!』

 

「ロケットランチャー!?」

 

 一人がロケットランチャーを取り出し、構える。

 

「おっきいね」

 

「あれって、あのミサイルみたいなのを発射するやつだよね?」

 

「レアなぶんとっても強いアイテムだよ」

 

『こちらも余計にロケットランチャーの弾を消費したくありません』

 

『大人しく我らに渡すがいい!』

 

『せっかく協力を提案して下さったのにごめんなさい(*_*;』

 

「残念だけど渡すしかないかも」

 

「また見つけなきゃね……」

 

「待って、後ろの方に何かいない?」

 

 確かに何か大きな人影のようなものが見える。

 

『そちらは4人でしたか?』

 

『私達3人だけですが』

 

『でしたら後ろのって……』

 

「ヴァァァァ!」

 

 謎の人影が叫び声をあげる。

 

「ひぃ……! な、なんなの!?」

 

「特殊感染者だよ! 低確率で特殊感染者になるの。普通のゾンビより動きも早いし攻撃力、耐久も高いボスキャラだよ」

 

 ボ、ボスゾンビ!? よく見ると今まで見たゾンビと違う。片腕が大きく床まで届いてしまっている。何か刃物のようなものを引きずる音が聞こえてくると思ったら腕の先には大きな爪がある。コ、コワイ。

 

「強そうだね」

 

『特殊感染者Σ(゜Д゜)』

 

『我が闇の炎を受けてみよ!』

 

 あわててロケットランチャーを構え直し発射する。

 

 直撃ではない。しかし、爆風が当たり吹き飛ぶ。

 

 が、また立ち上がってしまう。そしてすぐ近くで銃を構えていた人に襲いかかる。すぐに銃を発射するが、軽快な動きでかわされてしまう。

 

「ゾンビってあんなに素早いの!?」

 

「あれはボスキャラだから特別だけど……思ったより素早い……」

 

 キャラクターの悲鳴と共にプレイヤーがやられてしまったメッセージが表示される。顔文字の人だ。ゾンビの攻撃は暗くてよく見えなかったが、きっと大きな爪で攻撃されたのだろう。

 

『ごめん、あこちゃん(;_;)/~~~』

 

『rinrinをよくも! この〜!』

 

 再び発射するために装填しようとするが、あっという間にゾンビの攻撃範囲に詰められてしまう。そしてゾンビが腕を大きく振りかぶり、爪で切り裂かれてしまう。

 

『そんな~! 装填遅すぎだよ~!』

 

 あこ姫という名前のプレイヤーがやられてしまったメッセージが表示される。

 

「強いね」

 

「なんとか教室には逃げたけどこのままだと全滅しちゃう」

 

「どうすれば……」

 

『みなさん、私が近接武器で攻撃を仕掛けます。援護をお願いします』

 

 さっきの人たちで生き残っている人からチャットが送られてくる。

 

『私もナイフがあります。手伝わせてください』

 

『私も手榴弾っていうのがあるので使ってみます』

 

『私も援護します!』

 

 りみりん、おたえに続いてチャットを送り、協力する旨を伝える。

 

『ではtaeさんは手榴弾をなげてください。そこから私とrimiさんで近接攻撃を仕掛けます。kasumiさんは銃で援護を』

 

 sayoさんからのチャットが送られてきてすぐにゾンビが教室に入ってくる。

 

 おたえが指示された通りに手榴弾を投げ込む。そして爆発音と共にゾンビの悲鳴のような叫び声が聞こえてきた。

 

「凄い! おたえちゃん!」

 

「おたえスゴイ!」

 

「ビギナーズラックだよ」

 

 sayoさんから「good」のスタンプが送られ、りみりんとsayoさんが爆発で吹き飛び倒れているゾンビに近づき切りかかる。私もすぐに銃を構え、味方に当たらないようによく狙いながら撃ち込む。しかし、ゾンビは倒れたまま大きな爪で近づいている二人の足に攻撃した。攻撃を受けた二人は倒れてしまう。そして倒れたりみりんを爪で刺してしまった。

 

「そんな!」

 

「あ、ごめんね、おたえちゃん、香澄ちゃん。二人で絶対生き残ってね……」

 

 続いてsayoさんに嚙みついて攻撃をする。

 

「お願い! 当たって!」

 

 なんとか攻撃をやめさせることができないか必死に銃を撃ちこむ。すると、銃がついにゾンビの頭に直撃し、ゾンビが攻撃をやめ動かなくなった。

 

「や、やったの!?」

 

「すごい香澄!」

 

「あー、良かったぁ」

 

『やりましたね。ナイスです。ですが、先ほどの戦闘音でゾンビがたくさん来てしまうかもしれません。これを持って早く逃げて下さい』

 

 sayoさんから屋上のカギを渡される。

 

『sayoさんも早く逃げましょう』

 

『いえ、私はもうダメ見たいです』

 

『え?』

 

『先ほどの噛みつき攻撃には毒があったようです。遠距離攻撃で倒すべきでした。私のリサーチ不足です』

 

 毒? それって……。でも、私は解毒アイテムを持っていない……。

 

『わたし、青い薬草っていうのなら持ってますよ。使ってください』

 

『ありがとうtaeさん。ですがそれだけでは回復は追いつきません』

 

『でも、そんなの……』

 

『早くしないと私も感染者になってしまいます。kasumiさん、taeさん、はやく逃げて、絶対生き残ってくださいね』

 

『sayoさん、ごめんなさい! ありがとうございました!』

 

 

 ***

 

 

 おたえと一緒になんとか校庭まで出る。校庭のグラウンドには誰もいない。開けた場所にはゾンビも探しに来ないのだろう。

 

「あともうちょいで脱出だよね! ゲーム終わりだよね!」

 

「多分そうだよね。ここまでいろいろあったね」

 

「私がはぐれちゃったり、紗綾がゾンビだったり、ほんとにいろいろ。もうおなかいっぱいだよ~」

 

「でもあと乗り越えなきゃいけない山場がもう一個あるよ」

 

「え? もう信号弾を撃ってヘリコプターに乗っちゃえば終わり……あ」

 

 そうだ、このゲームはゾンビもプレイヤーが動かしている。信号弾が打ち上れば脱出させないようにゾンビの多くは校庭と屋上に向かってしまう。

 

「ど、どうしよう」

 

「それでね、私がひとりで打ち上げようかなって」

 

「え?」

 

「私一人で打ち上げちゃえば囮になるし、屋上に向かうゾンビも一人なら大丈夫かって少なくなるんじゃないかな」

 

「でもそんなの嫌だよ! おたえとも離れて一人になっちゃったら!」

 

 心細いし怖すぎるし。みんないなくなっちゃうのなんて……! 

 

「私も一緒に逃げたいけど、さっきりみりんとsayoさんに助けられてとにかく誰かは生き残って終わりたいなって。それでこうするのが一番可能性があるんじゃないかって思って」

 

「それもそうだけど、でも、わたし」

 

「それに一緒に逃げようとすると私足引っ張っちゃう。香澄のほうが操作うまいもん」

 

「遅くなってもいいから一緒に逃げようよぉ……」

 

「でもあともう少しで制限時間になっちゃうよ」

 

 ゲーム開始からある程度時間が経つとゲームオーバーになってしまう。生存者が空気感染してしまってゾンビになってしまうらしい。ゾンビ映画に詳しいわけじゃないけどそんな結末って……どうなんだろう。

 

「ほんとだ。あと5分もない……」

 

「それじゃ香澄はどこかに隠れて。すぐに撃っちゃうよ」

 

 も、もう!? 心の準備が……。準備……あ、そうだ! 

 

「待って、これ」

 

 銃を渡す。

 

「いいの? これじゃ香澄屋上まで武器なしだよ?」

 

「うん。でもいいの。多分一人だと落ち着いて狙えないだろうし。これで生き残って、屋上まで来て! 待ってるから!」

 

「うん。分かった。じゃあまたあとでね」

 

「え、またあとで、あ、通話切らないで! 寂しいじゃん!」

 

 おたえとの通話が切れてしまった。かけなおしても出てくれない。いよいよ心細くなってしまう。

 

 

 ***

 

 

 おたえと別れてしばらくしてから信号弾が打ちあがった。屋上に急がなければならない。

 

 校舎からゾンビがグラウンドに向かっていくのが見える。そして数発の銃声が聞こえた。

 

 そろそろ行こう。グラウンドに向かうゾンビとうっかり鉢合わせということはないだろう。おたえが囮になっている内に……。いくつかメッセージが表示されるが見ないようにする。とにかく屋上に行くことに集中する。

 

 ……! ゾンビ……! 屋上に向かう途中でゾンビに遭ってしまう。幸いなことにこっちにはまだ気がついていない様で動いていない。どうしよう……。と、とにかく時間もない。行動するしかない。ゾンビは音に反応する。さっき校庭で手持ち無沙汰だった為に拾った石ころの出番だ。アイテム欄の石ころを選択し構える。うまくいくだろうか。うまくやるしかない! 

 

 投げた石が壁に当たり音が鳴る。しかし、ゾンビに動きが無い。なんでだろう? まさかバレているのだろうか。でも、そしたら真っ直ぐこっちにくるだろうし……。でも迷ってる暇はない。こうなったら強行突破するしかない。屋上に向かってダッシュする。薄目を開けて画面を見る。ゾンビのすぐ近くを通過する。……ゾンビは襲ってこなかった。回線の調子が悪いとかだろうか……。うまく操作が出来なくなっちゃうことがあるってりみりんが言ってたし。と、とにかく屋上までこのまま走ってしまおう。確かこの廊下を抜ければすぐだったはず。

 

 ついに屋上の扉が見えた。屋上の鍵をアイテム欄に用意し、扉を開ける。ヘリコプターが既に着陸している。あれに乗ればやっとクリアー! 長かった……。最後のほうは息をするのも忘れちゃってた。ようやく緊張が解ける。りみりんに誘われて、みんな乗り気だったし、りみりんも喜んでくれてたからやることにしたけれど本当に怖かった。電話も通じずにはぐれてしまった時はすっごく怖かった。沙綾が襲ってきた時はびっくりしたし、他のグループと争うことになりそうだった時や協力した時はハラハラしたし、おたえと別れた時は頑張ってクリアーしなきゃってなった。……本当に長かった。でも、ちょっと楽しかった。りみりんがホラー映画が好きなのもちょっと分かるようになったかもしれない。あんまり怖くないやつなら一緒に見てもいいかも。あとでみんなにクリアー出来たことを自慢しちゃおう。あっちゃんが聞いたら驚いてくれるかな。あ、動画が流れた。エンディングムービーかな。

 

 

 ***

 

 

「いやー、滅茶苦茶怖かった」

 

「私は最初にゾンビになっちゃったから、次やるならもっと生き残らないと」

 

「私ももうちょっとだったんだけどなー」

 

「みんなありがとね。ゾンビ映画の登場人物になったみたいでめっちゃ楽しかった!」

 

「こっちこそ誘ってくれてありがとな。ネットの評判通り面白かった」

 

「なかなかゾンビになってプレイするゲームってないよね。有咲が驚いてくれてよかった」

 

「あれは反則だろ! 香澄もはぐれて見つけ出した後だったんだから油断もするって!」

 

「あはは、ごめんごめん」

 

「でも、誰もクリアー出来なくて残念」

 

「おたえちゃんと香澄ちゃんは結構最後まで生き残れてたよね」

 

「確か香澄が最後の生き残りだったんだよな」

 

「うん。私が囮になって香澄が屋上に行く作戦だったんだけど失敗しちゃったのかな」

 

「……あ」

 

「どうした? りみ?」

 

「あんまり見過ぎるとネタバレになっちゃってよくないかなと思ったんだけど、みんな初心者だと楽しめないかなと思って攻略サイトを少しだけ見たの。そこに制限時間ギリギリだとヘリコプターで脱出出来ないって」

 

「そうだったんだ。だから信号弾を撃ったときに校舎に行くゾンビが全然いなかったんだ」

 

「ヘリコプターの運転する人が感染してゾンビになっちゃうんだって。それでそれに乗っちゃうと特殊エンディングムービーが流れてゲームオーバーになっちゃうみたい」

 

「あ、そういえばレビューで特殊エンディングが滅茶苦茶怖くて良かったってのを見た覚えがあった気がする」

 

「見てみたかったなぁ」

 

「……それって、香澄大丈夫かな?」

 

「……大丈夫じゃ……ねーかもな」

 

「あ、香澄来たよ」

 

「香澄ちゃん、大丈夫?」

 

「……有咲、今日泊まってもいい?」

 

「な、そんな突然無理に……いや、ばあちゃんに聞いてみる」

 

「私も泊まるー」

 

「あ、じゃあ私も」

 

「私もいい?」

 

「よし、みんなで泊まるか」

 

「お泊り会! やった!」

 

「みんなで映画でも見ない? 気晴らしにもなると思うし」

 

「あ、それなら借りてる映画があるんだけど」

 

「りみ、まさかホラーじゃねえよな」

 

「ちがうよ。前に見てすっごくよかったからまた見たいなと思って。香澄ちゃんも気に入ってくれると思うんだけど」

 

「どんな話なんだ?」

 

「主人公が死者の世界に迷い込んじゃうお話」

 

「え、……死者……ゾ、ゾンビ……?」

 

「あ、違うの香澄ちゃん! ゾンビとか怖いのは出てこなくて、子供向けのアニメだし、劇中歌もいい歌で気に入ってくれると思うの」

 

「……怖くないの? なら、見る」

 

「なら、さっさと帰って準備して来いよ」

 

「だね」

 

「あ、私パン持ってくるね」

 

「本当!?」

 

「やった! パン食べたい!」

 

「暗くならないうちに蔵に集合な」

 

「「はーい」」

 

 

 ***

 

 

「友希那さん遅いなぁ」

 

「遅いですね」

 

「トイレにでも行っちゃったかな~。……あ、友希那!」

 

「待たせたわね」

 

「いえ……。どうかされましたか?」

 

「実は……その……つい寝てしまって……」

 

「……無理を言って付き合わせてしまってすみません」

 

「つまらなかったですか?」

 

「いいえ。ゲームをやることもあまりないし、ホラー映画だって見たことがなかったから新鮮で刺激的だったわ。今日は誘ってくれてありがとう」

 

「それなら……よかったです」

 

「友希那、昨日かなり遅くまで起きてたもんね」

 

「それに、とても座り心地が良かったから」

 

「湊さんは結局ゲームを楽しめたんですか?」

 

「私も一人は倒したのよ」

 

「え!? でも友希那さん最初に噛まれてましたよね? いつの間に」

 

「あの後に何とか噛みつけたの」

 

「あ、ゾンビになってから……。でもすごいです! ゾンビになった後は視界がすごく悪くなるのに」

 

「足音が聞こえたからそれを頼りに何とか出来たわ」

 

「さっすが友希那~。あ、そういえば燐子とあこ達倒したのアタシだよ」

 

「では、あの時の特殊感染者は今井さんだったのですか?」

 

「そう!」

 

「リサ姉いいな~。滅多になれないんだよ」

 

「そうだったんだ~。あれじゃないと倒せなかっただろうしラッキー」

 

「そういえばあの時一緒だった人達ってきっとポピパのみんなだよね!」

 

「宇田川さん、ネットゲームで個人を特定するのはルール違反です」

 

「あ、そうだよね。ごめんなさい」

 

「ですが、今度誘ってみるの良いかもしれませんね」




 お久しぶりです。お酒に酔った勢いでスペース☆ダンディのゾンビ回見ながら1年ぶりに書きました。最近外出自粛とかで嫌になっちゃいますよね。私は出勤ですけど。でもまあ、お仕事あるだけマシなんですよね。
 ところで、最近フランケンジョーズという映画を見ました。サメとフランケンシュタインの融合したパニック映画。映画好きの友人に勧められたのもありますし、お外出るわけにもいきませんし、暇を持て余した休日に見てみたんですよ。いやー、すごい。すごかったんですよこの映画。人によっては単にクソ映画で終わらせてしまうかもしれませんがお約束は守ってますし、全体的にチープな感じが笑わせてくれますし、パニック映画のパロディと考えれば結構面白いんですよ。暇を持て余している方にお勧めです。勧めてくれた友人に感想を伝えたらなんでそんなつまらん映画みたんだよとドン引きされましたけど……。
 中身に少し触れますと、出オチです。ごめんなさい。ガッチガチのホラーを求めていた方がもしいましたら本当にごめんなさい。劇中のゲームではプレイヤーはサバイバルというよりはロールプレイを全力で楽しんでいます。そんな優しい世界です。でも香澄ちゃんにとっては過酷な世界。もっと怖がってる描写だとか心情だとかを綺麗に書けるようになりたいと思いました。あと、セリフのみで誰が話しているかだとかキャラクターそのものがうまく書けているか不安。やっぱりいろいろ文を書かないとダメですね。今回のように日常的な話もまた書きたいですし、百合百合した話だとかオリキャラが出る話だとかも書いてみたい所存であります。その際はまたお付き合いいただければ幸いです。
 最後まで稚拙な文章だったかもしれませんが、お付き合いいただきありがとうございます。評価、感想、アドバイスなどいただければとても嬉しいのでよろしくお願いします。

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