魔剣使いは極度の苦労人   作:詠海だよ

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この運営、嫌い

地獄から脱出した俺は、メイプルさん達と合流し、ボスからドロップしたらしいモンスターの卵から生まれた亀と狐――『シロップ』と『(おぼろ)』と遊んだりレベル上げをしているメイプルさんとサリーさんをぼんやりと見ていた。

 

「あはは、くすぐったいよー!」

 

「んー…もふもふー……」

美少女二人が動物と戯れる光景。

普通だったら目を輝かせて喜ぶだろうが、恐らく今の俺は真逆。

『今自分の目は死んでいるだろう』とか超くだらないことを考え始めるほど疲れている。

自分で言うのも何だが、何せあの状況から逃げ出してきたのだ。

疲れるのは無理もないことである。

 

「うーん……よし!朧たちのレベルも3まで上がったし、もうそろそろ探索に戻ろっか!」

「そうしよ――っ!」

テンション高ぇな2人とも…俺は死にそうだよ…

「マジですか…で、どこに行く?」

「とりあえずは森を抜けよっか。いつまでも休憩してるわけにはいかないからね!」

「うん!分かった!」

「りょーかい」

 

こうして、俺たちは探索を再開し始めた。

 

そして15分後。

 

「お、もう抜けた!」

「おー……砂漠だ」

「砂漠は砂に足取られるから嫌いなんだよなぁ…」

俺たちの目の前に広がっているのは広大な砂漠だった。

ところどころにサボテンが見えるくらいで一面砂である。

プレイヤーの姿は今の所見えない。

 

「行ってみようか」

「そうだね」

「二人とも、シロップと朧は引っ込めといた方がいいよ」

「…?なんで?」

「シロップは砂丘をまともに登れないだろうし、朧は砂まみれになるだろうからね」

「なるほど、確かに!」

砂漠へと足を踏み入れる。

 

「喉が渇いたりしないのは助かるね」

「確かに、それだったら探索出来ないもんね」

「あー……暑〜」

脱水症状はこのゲームに存在しない。

砂漠だからといって気温でダメージを受けたりはしない。まぁ暑い事に変わりはないのだが。

砂に足を取られるため、探索は快適とは言えないが俺たちはゆっくりながらも砂丘を乗り越えて着実に先へ進んでいく。

 

そして、十数回砂丘を乗り越えてようやく遠くにオアシスを見つけた。

「あっ!あそこで休憩できそうだよ!」

「蜃気楼じゃないといいけど…」

「水に入ったらそのまま落下なんてもはやドッキリなんだけど」

「あはは、確かに」

 

サリーさんがぐっと伸びをする。

サリーさん達も俺もこの日は既に長時間の戦闘をしているのだ。

疲れるのも無理は無いことである。(二回目)

メイプルさんはぐったりと地面に寝転がる。

 

「んー……ん?二人とも!誰か来るよ!」

メイプルさんが起き上がり大盾を構える。

誰か来たか。索敵スキル使っておけば良かった。

少し遅れ、俺とサリーさんも武器を構える。

 

「おっと…先客か。それも、メイプルにレインとは……私も運が悪い」

やってきたのは和服を着た女性。

上半身は桜色の着物。

それに紫の袴。

そして刀を一本装備しているのがぱっと見て分かる特徴だろう。

 

「あの人前回イベント七位の人だよ」

「えっ!?本当!?」

「結構調べてあるから、それくらいなら知ってるよ」

「いや普通知ってるでしょ!?上位くらい調べなよメイプルさん…」

「ああ、話しているところ悪いが……出来れば見逃していただきたい」

どうやらこの女性に戦闘の意思は無いらしい…本心ではないだろうが。

……こいつ明らかに俺を狙ってやがるな…第一回イベントでこいつとは戦った…気がする。だからか…

 

「………無理だと言ったらどうしますか?」

「その時は……仕方ない。誰か一人は道連れにしてみせようじゃないか」

こいつ明らかに俺を狙ってやがる!(二回目)

「それなら残った人がメダルを総取り出来る私達の方が有利だね」

サリーさんが呟く。

おお、確かに。

 

「…………あっ」

「やっちゃう?」

「やっちゃおうか?」

「やっちゃいます?」

揃って女性を見る。

 

一人でも生き残ってこの女性を倒せれば俺たちは最低限目的を達成出来る。だが女性はそうは行かない。一人で三人を相手にする、つまりは絶対的不利。

まぁつまりこの状況では相当のバカでもない限りーー

「【超加速】!」

逃げるよね。

だがそれを予想していないとでも思ったか。

「【超加そ…」

「サリーさん、俺が追う。後からメイプルさんと一緒に来て」

「……分かった」

 

あの女性は俺と戦いたがっていた。…自意識過剰かもしれないけど多分。

「誘いに乗ってやるよ、前回7位のカスミさん」

しっかり一対一やるのはなんか久しぶりな気がするな。そう考えると自然に顔に笑みが浮かぶ。

さて、追いますか!

「【疾風一陣】!」

元のAGIの高さとスキルによる加速で直ぐに追いついた。

カスミさんが驚いた表情を浮かべる。しかし、その表情は直ぐに好戦的な笑みに変わる。

「まさかお前とまた戦えるとはな。そのスキルは何だ?」

「企業秘密。教えてやらん」

「つれないものだ…なッ!

【一の太刀・陽炎】ッ!」

 

カスミさんの姿が揺らいで消える。

 

そして、次の瞬間には目の前に現れた。

繰り出されるのは横薙ぎの一撃。

それを下から右手の剣を斬り上げて弾く。

「それは前に見たぞ」

「なっ…!?」

「今出せる本気で来い。来るなら応えてやる」

「……お前相手に本気を出さないでは勝てないか」

ポツリとそう言ったカスミさんの雰囲気がーーーいや、見た目すらも変わっていく。

黒髪は雪のような白に変わり、その黒い瞳は緋色に染まっていく。

カスミさんの周りには着物と同じ桜色のエフェクトが輝く。

 

「………」

集中。

これは知らない。

見極めなくてはいけない。

剣を肩に担ぐように構え、スキル【氷華閃閃】を発動する。

連撃数は最大の10。

「【氷華閃閃】」

「【終ワリノ太刀・朧月】」

太刀筋の見えない連撃が襲い来る。

あまりの速度に刀身が揺らぎ、消えてしまっているかのようだった。

視覚でその太刀筋を捉えることは不可能だろう。

ならば。

 

「…ッ…!?」

ならば見ない(・・・)

見えないならいっそ目を閉じろ。

音と空気の振動を感じ取れ。

その一撃一撃が必殺の威力を持つ連撃を防ぐ。

1、2、3、4、5、6、7、8、9、10。

【氷華閃閃】スキルが終わる。

だがまだだ。

カスミさんの攻撃はまだ終わっていない。

 

大上段からの一撃が迫る。

右手はスキルの硬直で動かない。ならーー

「ぐ…うぁぁッ!!」

大上段からの一撃を左手のサーベルで何とか受ける。

その瞬間、必殺の一撃を受けたサーベルが激しい金属音を起こし砕け散る…!

そして衝撃を全て受けきれなかったらしく、後ろに倒れる。

「く……!」

だがまだ終わらない。

目を開く。剣筋ではない、姿勢を見ろ。

カスミさんの姿勢を見ると、恐らく中段からの突き…だが、連撃に繋げる姿勢ではない。つまり、これが最後。これを防げば勝ち。

ならばーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の勝ちだ、カスミさん。

 

「はぁぁぁああッ!!」

裂帛の気合いを放ちながら、カスミさんが攻撃を当てようと前に体重を乗せる。

そんなカスミさんを見ながら、背中が地面に叩き付けられる寸前、【体術】スキルを発動させ、俺は右足を鋭く振り上げる。

「おぉぉッ!!」

短く吼えながら、全身をコンパクトに回転させ、カスミさんが剣を握る右手の甲に蹴りを叩き込んだーー!

「ぐぅっ…」

大したダメージは無い。

しかし、スキルがファンブル(失敗)し、カスミさんの武器が手から離れる。

得物を弾き飛ばされ呆然としているカスミさんをよそに、俺は起き上がり砕けたサーベルの柄を拾う。

「壊れちまったかー…まぁともあれ、俺の勝ちだ」

カスミさんは俺を見るとにっこりと笑ってそのまま背中から倒れた。

 

「あぁ、私の負けだ。一思いにやってくれ」

髪と目の色も元に戻っている。

オーラも消えていた。

 

「危なかったよ。いいスキル持ってんな」

「そちらこそ。まさか見ないで私のスキルを捌くとはな」

あれは公式のスキルじゃないぞ。

言うなれば『システム外スキル』というやつだ。

もちろん現実でやれと言われても無理だ。これは余計な雑音がない仮想世界だからこそ出来る芸当だ。

まぁ言ってやる義理もないし、言わないけど。

 

「次は負けんぞ」

「次も負けねぇよ」

そして俺は倒れたカスミさんにトドメを刺そうと剣を刺すーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あああああああっ!?ちょっ、止まらないぃぃぃぃいいぃ!!」

ーーーことが出来なかった!

叫び声に反応し思わずその方向を見ると、そこには砂を巻き上げて砂丘の斜面をゴロンゴロンと転がってくる紫色の塊があった。

 

「えっちょっ!メイプルさん!?」

そう、その塊はメイプルさんのスキル【ベノムカプセル】だった。

サリーさんも中にいるようだが…制御出来ないのか!?

「ああぁぁぁぁぁぁあああああああああああ‼︎止まってええぇぇぇぇぇ‼︎」

あこれダメだわ。

 

俺は咄嗟に腰のポーチから毒無効ポーションを出し、瓶を砕く。

 

 

二人が俺たちの元に飛び込んでくる。

派手に砂を巻き上げて倒れ込む。

 

 

そしてその瞬間。

 

 

 

「ゑ?」

地面が抜け落ちた。

 

 

 

「はっ!?」

「くっ、逃げられない!」

「え?え?」

「またこんなんかよもおぉぉぉおおおおおおお‼︎」

最近横やり入ること多すぎだろ!

ふざけんなああぁぁぁぁぁぁあああああああああああ‼︎‼︎

 

 

 

 

 

空中でバランスをとって地面に降り立ったのは俺とカスミさん。

もう二人は地面にカプセルがぶつかった瞬間にカプセルが破裂したため放り出され毒塗れの状態で伸びている。

 

幸いそれほど高くはなかったようでダメージはゼロだ。

 

「ど、どういうこと?」

メイプルさんが起き上がりながら尋ねる。

「人数で反応するダンジョンじゃない?メイプルさんたちが落ちてきて急に反応したし」

どうしようか…ダンジョンなんだから出口はあるはず…ん?

腕に違和感がある。ので、腕を持ち上げてみる。するとーーー

 

 

俺たち四人の腕が黒い鎖で繋がれていた。

 

「「「「ゑ?」」」」

鎖の長さは一メートルと少し、普段通りの動きは絶対に出来ない。

 

 

 

「この…この…!このクソ運営がぁぁぁぁッ!

 

俺以外の三人が状況を把握するのにはもう少しの時間が必要だった。




主の事情で遅れてしまい申し訳ないです。
次の話は早く出します。
ほんとすみません。
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