申し訳ありません。
「っ…ここは?」
レインは眩しくなくなっていることに気付きゆっくりと目を開ける。するとそこはーーー
「…最悪だ」
なんと草原のど真ん中だった。
「マジでか…これじゃ敵に狙われ放題だな」
まず移動しようと考え、移動しようとした瞬間。
突然、緑色の剣の欠片のような物が飛んできた。
「ッ…!」
レインは視界に異物が入った途端、飛んできた方向と逆の方向にバク転し、距離を取り、剣を構える。
そこへ、一人の男が拍手をしながら近づいてきた。
「まさかあの距離から躱すなんてな。お前も人間辞めてるんじゃないか?レインさんよ」
「そりゃどうも。褒め言葉として受け取っておくよ。で?お前、なぜ俺を知ってる?あとお前誰?」
向かい合っていた男性は『?』という様子になった。当然だ。
掲示板で結構騒がれているから、知っている人も多い。
もちろんレインは自分が騒がれていることなど知らない。
「お前、掲示板見てないのか?」
「掲示板?なんで?」
「お前、掲示板で結構話題になってるぞ」
「え?マジでか…まぁそれは置いといて、お前は?」
「おっと、そうだったな。俺の名前はシンだ」
…このシンという男もトッププレイヤーだが、レインは知らない。
「なるほどね…じゃあ自己紹介もしたし、始めるか」
「あぁ、そうだな」
顔を引き締め、お互いを見据える。
そして先程から少し吹いていた風が完全に止まった、その瞬間。
「疾風一陣!」
「崩剣ッ!」
同時に動き出す。
(ほうけん……崩壊する剣ってことか!)
レインはスキルによって加速し、距離を詰めるが、レインとシンの距離はおよそ15m。
もちろん有利なのは───
シンだ。
シンの【崩剣】の強みは、攻撃範囲。
相手の武器の間合いに入らせず倒すことが出来る為、とても強力だ。
普通のプレイヤー相手になら、と付くが。
普通のプレイヤーなら、複数の方向から飛来する攻撃を捌ききれず、為すすべもなくやられるだろう。
しかし言わずもがな普通のプレイヤーでは無いレインは、【疾風一陣】スキルによって加速し、【崩剣】を時に剣で弾き、時に回避しながら、シンにどんどん近づいている。
そして。
「【氷華一閃】!!」
恐ろしい速さでシンの懐に入り込み、神速の一撃を放った───!
この状況。
シンから見れば、絶望的でしかない。
だが。
運の神はシンの味方をした。
シンが反射的に掲げた
まさに奇跡である。
だが、攻撃を防がれた方はたまったものじゃない。
レインは防がれたことに驚きながらも、反撃を受けない為に直ぐに離脱。
こんなことが出来るプレイヤーは中々いない。
普通なら、多少なりとも固まるだろう。
しかし、レインにとって状況は芳しくなかった。
(まずいな…【疾風一陣】のクールタイムは5分。この戦闘ではもう使えない…)
レインにとって加速スキルが無くなることはかなりマズイ。
距離をとって攻撃する戦闘スタイルのシンは、自分から近づく理由がないのだ。だから、レインは自分から近付かなくてはいけない。
しかし、加速スキルがないと、近づくのは困難を極める。
つまり、一発で決められなかったがために追い込まれてしまったのだ。
(くっそ…20m以上離れてるし、ブレスは当たらない。どうする!)
シンの攻撃を回避しながら必死に思考を巡らせる。
(この距離で攻撃を当てる方法…あっ)
レインはついに1つの方法を思いついた。
逆に言うと、この作戦が失敗した瞬間にレインは負ける。
だがレインは迷わない。
剣を逆手に持つ。
狙いは心臓部。
そして、次の瞬間なんとも綺麗なフォームで剣を───
「う………おぉぉぉッ!!!!」
投げた。
「はぁっ!?」
シンもまさか剣を投げるとは思っていなかったのか、避けきれず左肩に剣が刺さった。
「クソ、外したか!」
「まさか剣を投げるとはな…!だがお前はもうこれで武器無し!俺の勝ちだ!」
「…!そいつはどうかな?」
シンはその言葉に思わず自分に刺さった剣を見ると───
刺さった部分から、体の中心に向かって氷が広がっていた。
「な…!」
「俺の剣のスキルスロットに付与してあるスキルだよ。【状態異常攻撃・氷】。確率で即死だよ。多分確率は一割ぐらいかな。危なかったよ」
この男、こんなに飄々としているが内心は、
(っっぶねぇぇっ!!発動して良かった…!)
という感じである。
そして、シンはそれを聞いて、
「そうか…運が悪かったか。今回は俺の負けだな。また戦える日を…楽しみにしてるぜ!」
そう言い残して、光となって消滅した。
「さて、と…」
そこで一度言葉を切り、溜息をするように、こう言ったのだった。
「やっちまった…」
…そう。さっきの戦闘かなり大きい声を出してしまったのだ。
つまり。
「連戦だよこんちくしょぉぉぉぉっ!!」
凄い人数の人が手を組んで自分を潰そうと集まって来てるのを見てレインは血を吐くような叫びをあげたのだった…
そして、約2時間30分後。
「はぁ…はぁ…し、死ぬ…」
恐ろしい程に消耗し、立っていられないほどの疲れがレインを襲っていた。
「なんか…動きが…他の人と、比べ物にならない奴もいたし…」
…その人がランキング上位ののトッププレイヤー、カスミだと言うことは、後で知ることになる。
「終了!結果、一位から三位の順位変動はありませんでした。それではこれから表彰式に移ります!」
レインの目の前が白く染まったかと思うとそこは最初の広場だった。
「順位変動…?必死すぎて順位聞いてなかったな」
そう。極度の集中状態に入っていて聞いていなかったのだ。
ちなみに、レインは極度の集中状態になると無言になり、視野が広くなるが、耳は戦闘に関係の無いことをシャットダウンしてしまう。
「あっ、そういえばメイプルさんはどうなったかな?」
『それでは、上位三名にコメントを貰います!』
どんな人なんだろ。と、呑気に考え、露店で買った奇妙な風味のお茶を飲んでいると…
『では、三位のメイプルさん!一言お願いします!』
お茶吹いた。
レインは五位でした。