乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった2周目に転生してしまった…   作:蒼樹物書

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「「「「「「「「カタリナ攻略RTA、はぁじまぁるよー」」」」」」」」


【1】

 「医者を呼べ―!!」

 「カタリナ様、聞こえてますか!?」

 

 額を血の赤に染めた、『彼女』が仰向けに倒れている。

 紺色のドレスに身を包んだ幼い少女。それを囲むように執事やメイド、そして僕が見下ろしている。

 メイドは一際大きな声で『彼女』の名を呼び続け、かなり混乱しているようだ。同じように僕も混乱していた。

 

 ――これは、二度目だ。

 

 「どうして」

 

 愕然としながらも記憶を辿る。

 昨日は卒業式だったはずだ。親友のニコルに在校生代表として挨拶を交わして、それから友人兼恋敵達と楽しいひと時を過ごして――。

 

 そこまでだ。そこから先の記憶は欠落し、今の状況に直結している。

 自身の手が記憶より遥かに小さい。『彼女』と同じだ。僕も、幼くなっている。

 

 「――ッッッ!!?」

 

 がばり、と『彼女』は突然身体を起こす。それに驚く執事たちを尻目に、僕は『彼女』の背に腕を回す。

 

 このまますぐ、倒れるはずだから。

 果たして、予想通り『彼女』は再び意識を失って僕の腕に体重を預ける。その温もりに愛おしさが溢れてくる。

 必ず我がモノとしたい。誰にも渡したくない。

 時を超え、幼い日に戻った今もこの想いは変わらない。

 

 むしろ、より燃え上がった。

 

 今度こそ。否、まだ、最後の記憶の時『彼女』を失った訳ではない。あのままならば『彼女』を手に入れたのは、婚約者たる僕だったはずだ。

 これが夢や幻でないのだとすれば。

 幸運に感謝しよう。もう一度『彼女』と同じ時を歩める。もっと『彼女』との時間を重ねられる。

 

 「カタリナ……」

 

 愛おしいカタリナ。

 今度も、必ず。否、もっと、確実に。

 

 僕のモノにしてみせる。

 

 

 一人、城の自室で机に向かい続けていたがペンを置く。もう、こんな時間か。大きく取られた窓の外は、すっかり夜の帳を下ろしてしまっている。

 あれから数日間。確認し得る全てを確認していった。

 

 まず自身の事。

 僕の名はジオルド・スティアート。王国第三王子であり、魔法の属性は火。

 家族構成から自国の歴史などなど調べに調べても僕の知っている事と相違ない。

 弟のアラン、第四王子である彼にもそれとなくこの異変について確認してみたがどうも僕だけが二回目らしい。

 カタリナを心配する体を取って……本心だが、調べてみるがやはり人が変わっているように様子が違うようだ。

 

 王家の者として人の秘密を見透かすことも、自身の秘密を隠す事も得意だ。

 さらに前回まだ若かったとはいえ二回目の人生、自身のことを秘めつつ探るのは簡単だった。

 

 理由は不明だが、あの日に戻っていた。

 カタリナと出会い、灰色の人生が彩を得たあの日に戻っていたのだ。

 

 最初は額の傷の責任を取るという名目で、言い寄る面倒な女どもの風除けとして使い捨てるはずだった彼女。

 なのにあの日を境に突然人が変わったように控え目に、なのに型破りに。

 

 ――しらない。僕はこんな人間を、知らない。

 

 天才と幼い頃から大人達に称えられ、どんな難しいとされる課題もどうして難しいとされるのかも理解できなかった。

 こんなに簡単なことが分からない人間が、どうしようもなくグズでつまらないモノにしか映らない。灰色の世界。このまま僕もつまらない灰色に呑まれてしまうのだろう。

 

 そう、思っていた。

 

 最初は頭を打っておかしくなったのだと思ったが。

 地位だけの馬鹿女、その相場通り彼女は我儘で傲慢だったはずだ。なのに、突然自身の非を認め、真の淑女のように控え目になって。

 かと思えばいきなり畑を耕し始め土に汚れた頬をそのままに、太陽のように笑うのだ。

 僕の知っている世界を破壊し光を差してくれた彼女。

 僕の世界は、極彩に照らされた。

 

 「必ず、また」

 

 手に入れる。

 その為にも状況を確認した後整理、今後の方針を策定する。

 王家の、それも次期国王として可能性のある男子として当然の心得。自身の有利となる道筋を固め、すべき行動を取捨選択していく。

 

 まず前回の状況から。

 周囲の恋敵達に比べ有利であったはずだ。僕はカタリナの婚約者であり、あのまま数年もかからず結婚となっているだろう。

 そういう意味では二回目であるこの状況はあまり歓迎できる事ではないが、もう一度彼女との時間を重ねられることを幸運と思うことにする。

 あの事件を回避することもできるし、ね。

 

 では続いて今後の方針。

 基本は前回と同じでいい。彼女を傷モノにしたという口実の下に婚約。後は余計な虫がつかないようにして、学園卒業まで守り切れば僕の勝利だ。

 卒業後はすぐに結婚してしまえば名実共に僕のモノ。楽勝だ。天才の僕に間違いはない。

 

 なんだ、本当に楽勝じゃないか。

 神に感謝する。

 再び幼少の時を共に過ごし、大人になった彼女と結ばれる。日に日に魅力を増していくカタリナと、また共に在れる。

 なんと幸運なことだろう。なんと幸福なことだろう。

 

 「……愛していますよ、カタリナ」

 

 明日は、クラエス公爵邸を訪ねる約束を取っている。

 カタリナが傷を負ったあの日から数日が経ち、見舞いの名目で訪れるのだ。

 前回の記憶を持つ僕は気を失った彼女にずっと付き添っていたかったが、むしろ迷惑となるので控えて状況の確認をすることにしたが。

 

 一回目の僕はあの傷を理由として、彼女を都合よく使う為に婚約を申し出たが今度は違う。

 今度こそ、僕は本気の婚約を申し込む。

 

 彩をくれた君に。

 

 

 「カタリナお嬢様は気分が優れないようですので、お引き取り下さい」

 「……」

 

 門前払いだった。

 クラエス公爵邸の門前、小柄な姿。

 メイド服に身を包んだ金髪の少女は笑みを満面に、帰れと言い放ってきた。

 

 ウェーブのかかったショートヘア。身分が天と地ほど違う相手に一応柔らかな笑みを浮かべてはいるが、隙間から覗いた碧眼は妙に冷たい。否、宿敵を射すくめんとばかりに鋭い。

 隣にいた黒髪のメイドが慌てて頭を下げ、無理矢理に金髪の少女にも頭を下げさせる。

 

 「も、申し訳ございません! 新人が大変失礼なことを!!」

 

 カタリナ付きのメイドが涙目で釈明するにはこうだ。

 

 突然、公爵邸に訪れた平民の少女。身元も明らかではない少女は、三日三晩も一睡もせず門前に留まりここでの奉公を願い続けた。

 リハビリの為、庭を散歩していたカタリナがそれを憐れみ雇い入れたのだという。

 少女はとても努力家で、何よりカタリナに並々ならぬ愛情を以って奉仕したという。

 その働きを周囲も認め始め、これまでのカタリナ付きのメイドと共に見習いとして来賓の応対にも出向かせたというのに。

 

 「……」

 「……」

 「申し訳ございません! 申し訳ございませんッ!!」

 

 敵を見る目だった。

 一応王子だぞ僕。平民のメイドがしていい目じゃないよね?

 

 というか、どこか見覚えがある。幼いせいか最初は気づかなかったが。

 

 柔らかな少女然としている癖に泥臭く芯の強い在り方。カタリナと出会う前ならば、心を奪われていたかもしれない。

 僕は今回『まだ』会ったことのない彼女を良く知っている。

 状況と、彼女が幼くメイド服であるという異常からその可能性に思い至らなかったのだ。

 

 「……君、名前は?」

 

 努めて、王家の僕に失礼を働いた平民のメイドに向けて声をかける。

 頼む、怯えて竦んで無礼を詫びてくれ。カタリナと同性でありながら最大の恋敵であった彼女。

 そうではないと言ってくれ。

 神よ。

 

 「マリア・キャンベルと申します。ジオルド王子」

 

 神は死んだ。否、くたばれ。




というわけで始まりました始めちゃいました。
腹黒主人公な感じですが真主人公がそんなこと許しません。カタリナ様をおしたおしたい。

だいぶ間が空きましたがそこらは活動報告にて。とりあえずカタリナ様可愛い。

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