乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった2周目に転生してしまった…   作:蒼樹物書

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 カタリナ様にお仕えして、三か月が過ぎた。

 

 『前回』を思い出し、感情のままに駆け出してしまった私だが。

 母との繋がり、文通は続いている。

 

 突然熱に浮かれたように駆け出し、公爵家のメイドになった娘。

 勤め始めてからできるだけ早めに顔を見せたとはいえ、お母さんからすれば戸惑いしかないだろう。

 

 ……光の魔法に目覚め不義の子と扱われていた私。

 きっと母は、その罪悪感から私と距離を取っていた。『前回』の記憶がある『今』は、わかる。

 

 ただ夫を愛し腹を痛めて産んだ子に、あらぬ疑いをかけられて。

 友達が離れてゆき、孤立していく我が子。無力な自分に罪を感じていただけだったのだ。

 

 『大切な人が、出来ました』

 

 もう、私には大切な人がいる。その人と生きていくことで私の人生は彩を得られると、私の人生は価値があると面向かって伝えた。

 

 『産んでくれて、ありがとう』

 

 お母さんが謝る必要なんてない。貴女のおかげで、私は大切な人と出逢えた。

 

 その理由を母はよく分からないようだったが、私が幸せであることは理解してくれた。

 ただ娘の幸せを願ってくれる、お母さんだから。

 

 ……そうして、心懸かりだった母。『今』はこんなにも早く心の壁を溶かすことができた。

 『前回』は、私が魔法学園に入学した後。七年も後だった。

 カタリナ様が突然に実家を訪れいつの間にか母の心、それに突き刺さった棘を抜いてくれた『前回』よりも早く癒すことができた。

 

 ――心のままに駆けてしまったが、結果的に良かったのだと思うことにする。

 

 私の、幸せ。

 カタリナ様と『今』一緒にいられる。

 大切な人と『今』在れることが、何より幸せだった。

 

 

 「では第二回、カタリナ・クラエス破滅エンド回避の為の作戦会議を」

 「議長! 緊急の為、議題変更をお願いします!!」

 

 脳内で開催されるカタリナTV(LIVE)、提供カタリナ・クラエスによる会議。

 乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢である、私による私の為の脳内会議。

 

 「メアリ・ハントの件もそうですが、マリアの恋路が重要と考えます!!」

 「許可します」

 

 ……メアリ・ハント。この世界、FOTUNE LOVERで彼女はアランルートでのライバルキャラ。

 

 私、カタリナと同じライバルキャラであまり仲が良くない設定だったはずだが。

 なのにいきなり我が家へやってきた。

 

 原作バッドエンドでも婚約者のアランと結ばれ、ハッピーエンドなら身を引いて婚約者を祝福するという人格者。

 破滅フラグを回避したい私からすれば、同じライバルキャラとしてその扱いの差に不満を感じないでもなかったが。

 

 私の畑のことを聞きつけて訪れたメアリ。マリアやジオルドはおかしな態度を取っているが、植物に詳しい彼女は大きな力となってくれるだろう。

 あと、すごく可愛いから邪険になんてできない。

 

 とりあえずメアリと仲良くしたいのは既定路線として、何よりマリアのことだ。

 

 「まさか、ジオルドとマリアが惹かれ合っているなんて……!」

 「私にこそこそ隠れて会っていることから、マリアも本気よ! そうに違いないわ!!」

 

 弱気私と、強気私が声を上げる。

 はっ、と気づいたように真面目私が語り始める。

 

 「平民のマリアと王子のジオルド。その恋に立ちはだかる公爵令嬢。まるでFOTUNE LOVERのジオルドルートです」

 「魔法学園にすら入ってないのに始まってるわけないじゃーん!」

 「その通りですね。マリアがあのマリア・キャンベルなはずありませんからね」

 

 ハッピー私の言葉に、議長私が同意する。FOTUNE LOVER、私にとって破滅のストーリーは魔法学園入学から始まるはずだ。

 その前、つまり今……主人公が悪役令嬢の所でメイドやっているわけがない。そんな設定はない。

 

 「それでは二人の恋路を応援することにしましょう」議長私。

 「……で、でもジオルドからの婚約申し出がありますし……」弱気私。

 「確かに。公爵家の娘とはいえ、王族からの婚約を断るだなんて簡単じゃありませんね」真面目私。

 「何とかするのよ! マリアにはいつもお世話になっているんだから!!」強気私。

 「平民の女の子と王子様の恋だなんて、すっごい素敵!!」ハッピー私。

 

 紛糾する脳内会議を、議長私が無理矢理まとめる。

 

 「それでは、メアリと仲良くしつつマリアの恋を応援する……そういうことでよろしいですね?」

 

 異議なし、と全会一致する。脳内会議なのでその結論に異論はありようがない。

 ひとまず方針が決まり、どう行動しようと考えていると。

 

 

 

 「カタリナ様。旦那様と奥様がお呼びです」

 

 メイドのアンが、一人自室にいた私に声をかける。えっ、どの件? 庭園の川の魚を、釣りで全滅させたことかしら。それとも、ジオルドの助力もあって庭を四割くらい畑にしてしまったことかしら。

 心覚えがあり過ぎて不安しかない。アンに連れられクラエス夫妻……お父様とお母様の待つ部屋に入る。

 両親は深刻そうなお顔だ。どれ!? どの件なの!?

 

 「……カタリナ。婚約の申し出、まだ返事をしていないけれど」

 

 お父様がそう切り出す。

 王家、第三王子のジオルド・スティアートからの婚約申し出。ジオルドからその返事はゆっくりでいいと言われながらも、既に三か月近く経っている。

 例え貴族として最上位にある公爵とはいえ、それを先延ばしにし続けるというのは良くない。それくらい、身分制度のない現代日本から転生した私にも分かる。

 

 「ジオルド王子との婚約、君は嫌なのかい?」

 

 幼い私に、優しく問いかけるお父様。

 公爵家、クラエスの当主であるお父様。国内有数の力を持つ彼は、貴族の論理に従う義務がある。

 力ある王家との婚姻に娘を差し出す。そうして権力を増し、領内の民により多く富を分配する義務がある。

 

 それが正しい。間違ってはいないはずなのに、こうして私に問いかけてくれている。だから、私は。

 

 「嫌では、ないのです……ただ、お時間を頂きたいのです」

 

 心からの言葉で応えた。

 ジオルドとの婚約は破滅への道だ。原作通り婚約し、主人公と彼の恋路を邪魔すれば私には破滅が待っている。

 今、私のメイドとして心から仕えてくれているマリア。その恋路も応援したい。邪魔になる私は、婚約の申し出を断ってしまいたい。

 

 けれど。

 ジオルドの申し出を断れば、どうなる?

 

 マリアとジオルドの繋がりは、私を介してでしかありえない。平民と王子の繋がり。本来あり得ない繋がりは、私を介さなければ途切れてしまう。

 恋路を邪魔するはずの悪役令嬢が必要だなんて。

 それでも、マリアは大事な私のメイド。美味しいお菓子を作ってくれた。苦手な勉強も根気強く、親身になって教えてくれている。

 

 ――彼女に、幸せになってほしい。

 

 平民の彼女が、王子様と結ばれる方法。私には、そんなもの思いつきもしなかったが。

 ただ、繋がりを絶つことはできない。

 時間を稼ぐ。マリアが幸せになる為に。

 それくらいは、私にも出来るはずだから。

 

 「そうか。てっきり、ジオルド様を嫌っているのかと思ったよ」

 「ジオルド様は大変素晴らしい方です! 私なんかが、相応しいかどうか……」

 

 破滅フラグ回避の為ともう一つ、ジオルドと結婚となれば王家に入ることになる。

 今でさえお母様にマナーがなっていないと叱られ続けているのに、務まるはずがない。

 

 「……カタリナ、君はまだ幼い。自分の気持ちを、しっかり整理してから決めればいい」

 

 王子からの、婚約申し出を三か月も先延ばしにし続ける令嬢。そんな娘に、まだ好きにしろと言い放つ。

 社交界デビューもしていない私にでも、その重さは理解できる。

 あり得ない。王子様からの婚約をずっと保留にするなんて。

 貴族の親からすれば、王子様と結婚だなんて幸せに決まっているのに。

 

 「相応しいかどうかじゃない。好きになった人と、一緒になりたい。僕もその一心でミリディアナと結婚したんだ」

 「――っ!?」

 

 お父様の隣に座る、お母様……ミリディアナ・クラエスが突然肩に手を乗せられ赤面する。

 いつも私を叱ってばかりのお母様が、見せたことの無い乙女の顔になる。

 

 「だ、旦那様!?」

 「僕はね、カタリナ。親の意向なんて関係なく、彼女と恋をしたから一緒になったんだ」

 

 私のお母様……アデス公爵家二女、ミリディアナ・アデス。その険しく感じさせる目筋や社交的でない性格から、いき遅れ周囲から揶揄された母。

 お父様のルイジ・クラエス。彼は公爵家後継ぎであり容姿も優れ頭脳も身体能力も素晴らしい、令嬢達の憧れの的だった。

 

 そんな二人は出会い、互いに恋をした。

 だが。

 

 片方は、あんなに素敵な殿方が私を愛するはずがない。きっと恩義ある義父アデス公爵の為、余り物だった私を引き取って下さったのだと。

 片方は、彼女に一目惚れだった。恩義や義理なんて関係ない。ただ、彼女を欲しただけだった。だが権力を以って、僕と無理矢理に結婚させられたと彼女は思っているのだと。

 

 そんなすれ違いが、娘を成しながらも二人の心を遠ざけていた。

 

 「険しい道かもしれない。でも、好きになったのなら。諦めたらきっと後悔するから」

 

 お父様は、ちょっと酔っている。晩酌のワインを多めにやっていたのかもしれない。抱き寄せられそんな彼を見つめるお母様も、色々酔っているようだ。

 

 「複雑な乙女心なんだよね。ゆっくり決めればいい……けれど、好きになったら真っすぐ進みなさい。僕が、ミリディアナにそうしたように」

 「だ、旦那様……いえ、ルイジ……!!」

 「ミリディアナ!!」

 

 娘の前で、突然イチャ付き出す両親。爆発していただけませんでしょうか。

 

 ……悩んでいた私がアホみたいだった。

 色々すれ違っていたらしい両親は、こうして熱愛夫婦になってしまった。お父様とお母様が仲睦まじいことは、喜ばしいことなのだけれど。

 そんな二人に私……その願いは全身全霊で応援されることになる。

 

 まだ、時間を。何なら、断ってしまってもいいと。

 王家の婚約申し出を断るだなんて、いくら公爵家と言え簡単に許されるはずがない。

 

 しかし、恋愛脳に染まり切った夫婦は娘を応援した。

 呆れながらも、マリアの恋路を応援したい私はそれを受け入れたのだ。

 

 ――平民の、メイドの少女と王子様の恋。

 最近この世界のロマンス小説にハマり出した私にとって、それはそれは燃える展開だ。お父様とお母様に当てられたのかもしれない。

 

 マリアの幸せの為に。

 

 私はジオルドと彼女の繋がりと保ちながら、二人の恋路を応援しよう。

 婚約の返事はしない。

 私が時間を稼いで、何とかマリアとジオルドが結ばれる道を探すのよ!

 そのヒントを得る為にも、ロマンス小説をもっと読もう。特に平民と貴族が結ばれる奴。

 

 貴族社会では残念ながらその手の物語は下賤とされており、クラエス家の膨大な蔵書でも数少ない。

 ……もっと、もっと読みたいのに。

 ロマンス小説仲間でもいればお勧めを教えてくれたり、貸してくれたりするのかしら。

 

 

 「おかえりなさいませ、お兄様」

 「……新手の嫌がらせですか、アラン?」

 

 けらけらと、可笑しそうに応える僕の弟……アラン・スティアート。

 すっかり遅くなった王宮への帰宅を出迎えた彼。

 

 「あっはっは、俺はお前の味方だぞジオルド」

 

 当初、マリアがそうであったように彼も『二回目』ではないかと疑った。最初アランはそんなはずがない、これは夢だ。そう断じて『二回目』であることを否定したらしいが。

 王宮で生活を共にする内、明らかになった。

 やはり、アランもそうなのだと。

 

 あまりにも、彼は朗らかだったのだ。

 

 ――『前回』、僕とアランの関係は冷え切っていた。

 血を分かつ兄弟。だが、王家の子。王の座が実力で以って選ばれるこの国の王家では、骨肉の争いが避けられない。

 僕は、つまらない灰色に染まった世界での王座になんて興味がなかった。

 だから兄達に王座を譲るつもりで、のらりくらりと躱していたつもりだが。弟であるアランにはこの権力争いの中でそつなく何でもこなす、優秀な兄に見えたらしい。

 

 女の子一人、モノにすることができないのにね。

 

 そんなつもりはなく、僕はアランに劣等感を植え付けてしまった。

 親族ですら蹴落とす対象である王家にあって争いに興味がない僕は、それに申し訳なさを覚えてはいたのだが。

 僕が何を言っても、彼を救うことはできない。下手な言葉をかけても見下されていると思われ、僕の言葉は彼の傷に塩を塗り込むだけになる。

 

 けれど、カタリナは。

 『前回』あんなにも簡単に彼の心を溶かしてくれた。

 

 カタリナと出逢い。アランは、アランでいいのだと。

 僕より剣や魔法に秀でていなくてもいい。勉強の成績だけが全てじゃない。

 アランは僕にはなれないし、僕もアランにはなれない。完全上位になることはできないし、なる必要もない。

 

 そんな風に、カタリナはアランの心を救ってくれた。実際、彼には音楽の才があった。僕では決して届かない才能。

 カタリナと出逢ってからそれは、更に花開いていった。

 

 切欠となった悪戯については、未だに根に持っているが。生き物にとって毒牙を持つ蛇は根源的な恐怖の象徴だいくら理性で抑えようとしても突然足元に現れれば怯え飛び上がるのも当然だ僕が特別苦手なわけではない。

 ……まぁ、いい。

 とにかく、アランはそれから素直に笑うようになった。自身を縛るモノ、その殻を突き破りありのままのアランとして。

 

 「信じていますよ、君だけは」

 

 にい、と僕の言葉に返すアラン。『今回』、彼は僕の協力者だ。

 『前回』との差異を問い詰め続け、その内アランは僕と同じ『二回目』であることを認めた。

 

 ――やっぱり、こういう所はジオルドに敵わねぇなぁ。

 

 負けを認めているのに、妙に楽しそうに言い放った。

 やはりアランも『二回目』。僕と同じ状況から、幼い頃に戻っていたようだ。僕とマリアだけでなく、アランも。

 

 「メアリも黒……カタリナはやっぱり白扱いでいいんだよな」

 「そう判断して間違いないと思います」

 

 アランが手元のメモに書き加えていく。

 黒、つまり『二回目』。メアリはとぼけていたが言動からみて黒だ。

 八歳の今……カタリナと出逢う前の彼女は弱気で、庭に興味を持ったといきなり公爵家に押し掛けるような性格ではないはず。

 共犯、否、協力者であるマリアがマリア・キャンベルであると気づきもした。彼女は、黒だ。

 

 ……黒か、白か。

 前と違う行動をしている僕とマリアによる影響もあるだろうが、誰が『二回目』であるかそうでないかの選別は必要だった。

 何しろ今後の方針に影響する。カタリナが誑かし、恋敵になり得る人間は僕を除き五名。その白黒を見極めなければ。

 マリア、メアリは黒。

 残るは三名。一人は、未知数だが。

 

 これまで確認している黒はマリアとメアリ、そしてアランだ。唯一の白はカタリナ。

 彼女は何一つ変わらない。『前回』と行動を変えた僕らに影響されず彼女は彼女のままだ。

 

 「どうもメアリが妙な動きをしているようだが、そっちは俺が何とかしておく」

 

 婚約者だしな、とさらりと言ってのける。

 

 「頼みます。シリウスの方は?」

 「調査中……あの事件が起こったのは間違いないし、婦人の方の証拠固めをしているんだがな」

 

 シリウス・ディーク。

 あの事件を起こした生徒会長。

 カタリナの話によれば、彼もまた被害者だったらしいが……防げるのならば必ず防ぐ。その為にも僕らは動いていた。

 残念ながら僕らが『前回』を思い出した時、ディーク婦人による闇魔法の儀式は成された後だった。

 闇魔法、人の命を捧げることにより得られるそれ。婦人の願いの為に、既に実行されてしまっていた。

 ならばやはり、あの事件がまた起こる可能性がある。

 

 ――不可思議な『二回目』。けれども、カタリナをあんな目に遭わせない。その一点では『二回目』の僕らは結束できる。

 

 「本人は行方不明。調べはしながら、守りを固めるしかないな」

 

 平民相手とはいえ、闇魔法絡みの殺人だ。ディーク婦人は重い罪に問われることになる。

 しかし、シリウス本人が行方不明ということが気にかかる。直接の守りは、マリアならば信頼できる。後は僕らが打てる手を打っていくしかない。

 

 「その、後……彼の方は」

 「問題なさそうだよ、やっぱり」

 

 言いにくそうにする、僕の言葉を察して答えてくれるアラン。

 ……彼、キースのことだ。僕の悪巧みにより、『前回』と違いまだクラエス家に入っていない彼。

 

 キース・クラエス。

 彼はあまりにも危険だ。クラエス家養子として、カタリナの義弟の立場にあり毎日屋根を共する彼。

 

 『前回』カタリナは無事だったが、彼が本気になれば……『二回目』であり黒ならば、初日にカタリナを奪う可能性がある。それが何より恐ろしかった。

 カタリナ自身はただの可愛い弟くらいにしか思っていなかったようだが、僕が彼の立場ならさっさと既成事実を作る。

 だから、遠ざけてしまった。

 

 「そんなに気にするなら、さっさと婚約すればいいだろう」

 「したいの、ですけれどね」

 

 アランにはキースの様子も確認してもらっている。クラエス家の分家、その末端に産まれて。

 暴走してしまった魔法で、兄弟を傷つけたキース。

 

 辛い幼少時代を送っていたらしいから。

 もし白ならば、未来の義弟として必ず助けるつもりだったから。

 

 ……調べによると、切欠となった魔法の暴走は起こっていないようだ。しかも分家当主と娼婦の間に産まれた彼は、何故か悪い扱いを受けていないらしい。

 

 恐らく、彼は黒……『二回目』だ。

 だからこそ、その沈黙が恐ろしい。早く彼と会って確認したいのだが。

 

 「クラエス家当主……ルイジ様から、婚約についてまだ時間を頂きたいと」

 「マジかよ……」

 

 頭が痛い。

 未来の義父にこんなことを言いたくないが、だいぶ親馬鹿だあの人。

 貴族社会において王子である僕の申し出を断ることが、どれほどの痛手になるかわかっているはずなのに。

 

 「ま、何とかできるだろ、お前なら」

 

 ――そうだね。

 アランもまた、カタリナに惹かれていたはずだ。その恋心に気付くまで随分とかかっていたが、『今』はもうそれを自覚している。

 なのに、身を引いてくれた。

 

 俺は、ジオルドには勝てないよ。

 

 『前』はあんなにも悲痛に、自身の存在意義を否定されたと叫んでいた言葉。

 なのに『今』は、笑いながら言ってくれる。勝つ負ける、そんな論理から解放された『今』だから言える言葉。

 

 「カタリナを俺の義姉に。家族にしてくれるんだろう?」

 「当然です」

 

 言ってから、アレが義姉かぁ……と残念そうにするアラン。でも本当は、楽しみにしてくれている。

 だから、必ず。カタリナを僕の物にしてみせる。僕の力になってくれる弟の為にも。

 僕は、負けない。

 

 「それにしても、俺達主催のお茶会……『前』はもう少し先だったはずだが、もうやっていいのか?」

 「ええ。彼らに動向がないのが、気掛かりですので」

 

 ……彼ら。あの兄妹にも、動きがないことも恐ろしい。

 だから、『前』では九歳の頃。半年以上先に催した、僕とアラン主催のお茶会を前倒しにする。

 メアリのように何かしらの準備をしているのか。それともカタリナと同じく白であるのか。

 

 それを、見極める。

 

 このお茶会で『前』彼らはカタリナと出逢った。

 彼らの危険度は、キースと同等と僕は評価している。常識的な兄は、親友の婚約者であるカタリナを奪うなど考えもしていなかったが。

 

 婚約が成立していない今。

 黒であるならば、最強の敵になる。




お前BGMそういうとこだぞお前。走れや! あらすじ詐欺になるじゃねーか!
サブイベントのフラグをさくさく済ませながら、兄妹登場フラグが立ちました。インフレが止まらない。

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