乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった2周目に転生してしまった…   作:蒼樹物書

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【9】

 魔法学園。

 十五歳を迎えた魔力を持つ者達は国中からここに集められ、二年間の教育を受ける。

 ここで、ついにゲームが始まってしまう。FORTUNE LOVERの始まり。

 物語の敵役、悪役令嬢の私はここで破滅を迎える運命にある。

 

 前世を思い出して七年。

 色々と状況がおかしく……それに、何かを忘れている気がするが。

 とにかく、始まってしまった。

 破滅フラグを回避する為に、出来る全てをした。

 

 ジオルドによる破滅を免れる為に剣の稽古をして、彼が苦手とする蛇の玩具のディテールアップに励んだ。

 国外追放されても生き抜くために、農業の知識もたくさん学んだ。

 

 ――×××による破滅を免れる為に、可愛い義弟を甘やかし……あれ?

 

 私が前世を思い出して、記憶を整理する為に書いたマル秘ノート。

 そこに記された×××のこと。

 悪役令嬢であるカタリナ・クラエスには、義弟がいたはず。愛情不足の反動で、チャラ男に育つ――。

 ゲームの知識以上に、×××を知っているはずがない。『今』私は、彼をFORTUNE LOVERの世界でしか知っているはずがないのに。

 

 

 

 「こここれ、君のだろう? 返してほしければ、ぼ、僕と遊んでよ」

 

 魔法学園、その入学式を終えて。

 珍しいお菓子があるからと、ジオルドの部屋に誘われて向かう途中。

 落としてしまったハンカチを拾ってくれた彼。妙にどもっているけれども。

 私は×××……彼を、直感でそう呼んでいた。

 

 「――キース。誰これ構わず軟派するような義弟にはなってはいけないと、教えたはずよ」

 

 ゲームでは軟派に、けれども孤独に在ったキース。

 それを癒す主人公と惹かれ合い、ライバルキャラである私は破滅を迎えることになる……その予防という建前の下、単純に弟が欲しかったから溺愛していた。

 何故、彼……『前』のキースのことを知っているのかは分からない。

 けれども義姉を軟派する義弟に、とてつもない違和感があったから。

 

 「そんな……義姉、さん?」

 

 キースは信じられないという顔で、私を見つめている。

 ありえないはずの事態。『今』キースと私は他人同士のはず。

 『前』より女性好みするお洒落をして、少し強気で軟派になってしまっているキースだけれども。

 

 キースは私の義弟だ。

 

 名乗ってもいない彼だけれども、これは確信だった。

 ……あれ、何故キースと『今』出会ったの? そもそも、マリアが何で昔馴染みのメイドで……?

 

 『今』……『前』が、在ったの?

 

 会ったはずのない、ずっと一緒にいたキース。

 まだ出逢っているはずのないマリア。

 その衝撃により足元が崩れ去る。

 

 頭を打ったことで始まった第二の人生。カタリナ・クラエスとして始まったはずの人生。

 

 『前』とは違う『今』。

 『今』は、二回目だ。

 

 混乱する。理解できない。脳内会議でも、整理し切れそうにもない。『前』? 『今』?

 処理しきれない情報に、頭がオーバーフローしてしまう。

 

 「カタリナ様……!」

 

 熱暴走を起こし、意識を失う私をマリアが抱き留めてくれる。

 その柔らかな感触に包まれて。

 私はとりあえず、慣れた心地よい腕の中で休むことにした。

 

 

 カタリナ様のメイドとして、魔法保持者の生徒として共に入学式を終えて。

 

 ジオルド様のお部屋に招待されていた、カタリナ様の前に現れたキース様。

 『前』と見違えるように、お洒落で色気のある殿方になっていた。

 カタリナ様のお供として後ろに控えている私が、息をのむ程魅力的……一番はカタリナ様ですが。

 そんな彼が不埒にもカタリナ様を軟派した瞬間。

 

 カタリナ様は、彼を義弟と言った。

 

 キース様が思わず彼女を義姉と呼ぶ。

 『今』二人は遠い親戚、顔も見たことがないはずなのに。キース様は、義姉と応えたことから『二回目』で間違いない。

 カタリナ様は、いつも通りだったはずだ。お慕いし、今回はメイドとして幼い頃からずっと付き添っていたのだから間違いないはず。

 

 「ぁ……」

 「カタリナ様!」

 「義姉さん!」

 

 熱暴走を起こしてしまったかのように、カタリナ様の身体が倒れ伏しそうになる。

 それを抱き留め、呼びかけるが意識がない。光魔法での癒しを試みるが、病気や怪我ではないようだ。

 少し熱っぽいが眠っているだけ。急転した事態に、意識を遮断したようだ。

 

 「……キース様?」

 「ひっ。い、いや僕が悪いの!? 義姉さんを軟派しようとしただけだよ!?」

 

 充分不埒で万死に値する行為ですが、少なくともキース様がカタリナ様を害したわけではない。姉弟愛の少し強すぎる彼が、そんなことをするはずがない。

 では、何故……。

 

 「マリアさん」

 

 カタリナ様を抱き締めている私と、困惑しているキース様。そんな私達に声をかけたのは。

 

 「……会長」

 「そんなに睨まないで欲しいなぁ」

 

 『前』……カタリナ様を陥れようとした彼。

 シリウス・ディーク。

 魔法学園の生徒会長であり、成績も魔力も学年トップ。生徒会の仕事も完璧で、平民の私相手でも優しかった彼。

 

 その裏で、彼は復讐の為の牙を研ぎ続けていた。

 闇の魔法の儀式、その為に母を生贄に捧げられた彼。自身は他人の記憶を植え付けられ、その他人を演じ続けることを余儀なくされた。

 全ては、仇であるディーク侯爵夫人に復讐する為の仮面。

 

 『前』その仮面にヒビを刻んだカタリナ様は、彼に陥れられた。

 死ぬまで眠り続ける……そんな窮地に。

 だから『今』私達は、彼を警戒していた。二度と、あんなことを起こさせはしないと。

 

 一年先に彼と入学しているニコル様も、彼を警戒し探ってくれていたが。

 今日まで尻尾を出すことはなかった。

 

 「反応を見るに、君達も『二回目』だね」

 

 ざわり。

 会長の柔らかいはずの笑顔が、底知れず恐ろしいモノに見える。

 『二回目』。その符丁。

 でも、それならば彼は既に――。

 

 「とりあえず、生徒会室でカタリナ様を横にしてあげよう」

 「……はい」

 

 私とキース様はまだ警戒を解かずに、会長の先導についていく。

 

 「他に『二回目』を確認した人がいるのなら、呼んできてくれるかな。話したいことがあるんだ」

 

 罠の可能性はある。

 だが、彼の言う『二回目』の人々は信頼できる。カタリナ様の身をお守りするのならば、心強い仲間だ。

 人目のある学園の廊下で仕掛けてくるとも思えないので、呼ぶべき方々をキース様に伝える。

 ジオルド様、アラン様、ニコル様、ソフィア様、メアリ様。

 全員なの!? と面食らっていたキース様だが、とりあえずは状況を呑み込んで走ってくれた。

 

 カタリナ様を慕う方々。

 『今』全員が生徒会室に集った。

 

 

 

 「うん。やっぱり全員だったね」

 「最初に言っておきます。僕は貴方を、許していません」

 

 ずらりと居並ぶ私達に囲まれ、笑顔の会長に。

 ジオルド様が突きつけるように告げる。

 

 「虚偽や企み……またカタリナに手を出した、これから出すようなら」

 

 この場で焼きます。

 

 ――。

 室内の全員が、震え上がる。彼は、本気だ。

 王家の者はみだりに魔法を使ってはいけない。その理由の一つとして、その強力さがあげられる。

 もし、本当に焼くと言うのならば。

 彼の炎は骨すら残さず、会長を燃やし尽くすだろう。

 

 「と、とりあえず焼かれたくないので先に言いますが、僕はカタリナ様に何かしようなどと考えていません」

 

 振るえる両手、その掌を上げて敵対の意思がない事を示す会長。

 

 やはり。

 『前』彼はカタリナ様に救われた。

 闇の魔法、その犠牲者となって。

 復讐に囚われていた彼の心を、カタリナ様は解き放った。

 彼に憑りついた、靄のような闇が払われたのをこの目で見ている。そして『今』も闇の力は感じられない。

 役人の下へ自ら向かい、罪を告白した彼……カタリナ様に恩ある彼ならば。

 『二回目』の彼であるのならば、また手にかけようとするはずがない。

 

 「会長も『二回目』ということですね」

 「ええ。ですから、前のような事件は起こしません。僕はシリウス・ディークではなく」

 

 もう、ラファエル・ディークなのだから。

 助勢する私の言葉にそう応え。手の震えが収まる会長。

 

 しかしそれならば何故、今この時まで私達に接触してこなかったのか。

 結果的に憂慮だけで済んだ。だが何か歯車がかけ違えば、危険なことになった可能性もあった。

 

 「……話して、頂けますか?」

 

 ジオルド様に促され、会長が語り始める。

 

 『二回目』。

 私達、全員が見舞われた異変。なのにカタリナ様はいつも通り。

 そのはずが、突然にキース様を『思い出した』。

 

 その理由を。




火力があろうが当たらなければ意味ないって三倍の人も言ってました。キース……。
そして隠れキャラ登場。真相が語られます。

残り二話も連続投稿になります。

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