全てを失った僕が守るもの   作:かとやん

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初めましての方は初めまして。自分の上げている作品から飛んできた方はごめんなさい(上げたかったんです)




prologue…

ヒュー……ヒュー……

 

朽ちた世界で、擦れた息遣いが聞える。

これは……僕のか。

遠くなった視界では、まるで世界の終焉を告げるように、立ち並んだ高層ビルが崩壊を続けていた。

弔の個性によって死んだ大地は砂塵となって宙へと舞い、僕の作ったクレーターに水滴が垂れる。

 

「出久!…出久!!」

 

地面から伝わる振動に重たい首をまわしてみれば、紅いスカーフを首に巻いたエリちゃんが瓦礫を飛び越えながら僕の元へと跳んできた。

飛び掛かるように僕へと寄り添ったエリちゃんは、僕の有様に息を呑み、きれいな顔を悲痛に歪めて僕を睨む。

『約束したのに』といった想いの込められた瞳に、僕は薄らと苦笑を溢す。

 

「……エ、リちゃん……かっちゃ、んは?」

 

乾いた僕の呟きに、エリちゃんはスカーフを握りしめながら小さく首を振った。

 

あぁ…………

 

「そっか」

 

また、僕は守れなかったのか。

 

「勝己さんね……最期に笑ったんだよ……『俺はやり遂げたぞ』って」

 

「……そっかぁ……やっぱりかっちゃんは凄いや」

 

彼の最期を思うと、もう枯れたと思っていた涙がまた僕の頬を濡らした。

結局、皆に貰った物、返せなかったなぁ。

最高のヒーローになるって約束……守れそうもないや。

するすると流れ出ていく涙を擦れ始めた意識で認識していると、ふと誰かの手が僕の両目を覆った。

 

「出久はね。皆を守ったんだよ。皆を救ったんだよ。……だからっ、笑って?」

 

「出久、いつも言ってた。最高のヒーローは笑顔でみんなを助けるんだってっ……だからっ」

 

もう止まったはずの涙が僕の頬に落ちる。

僕は感覚のなくなった右手を引っ張って、彼女の手に触れた。

 

「泣かないで……大丈夫……僕が来た」

 

「っっ……な、かないよ? だって、出久がいるから」

 

途切れかけた意識の隙間、唇に温かいものが触れた気がした——————————。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鼻をくすぐる感覚に、僕の意識は深い闇から浮上する。

薄らと瞳を開けるとブルーライトの瞳輝かせた猫が僕の鼻先を舐めていた。

瞬きした僕を一瞥した猫は一鳴きすると灰色のジャングルの中へと消えていった。

 

「ん……ここは……ッッ!!!」

 

目の前の風景を認識した僕は、頭の芯が震える感覚と共に身体を跳ね起こすようにして捻り、個性を利用して目の前のビルを”駆け上る”。

一足飛びに屋上へたどり着いた僕は目の前に広がる光景に息をすることすら忘れて注視していた。

 

記憶に酷似……いや、見慣れたマンション群に鉄道。脳裏を燻る大通りは忘れようもなく、そして何よりも今はないはずの母校が、大戦によって焼失したはずの『国立雄英高等学校』が都市の中央にある丘の上に威風堂々と佇んでいた。

 

「ッ……ふぅぅ。落ち着け。まずは情報収集と現状の確認」

 

僕は深呼吸し、一度内側へ意識を集中させる。一番の要因として考えられるのはワンフォーオールだ。が、肝心のワンフォーオールに変化はなく、いつもと変りなかった。

次に他の個性を発動してみる。

指先から個性『黒鞭』を伸ばしてみたり『浮遊』の個性で身体を軽く浮かしてみるも、これもいつも通り、いやむしろ少しだけ扱いやすくなっているかもしれない。

その他の個性も問題なく発動することを確認した僕は、次に目の前の光景について考える。

 

無くなったはずの雄英が、そしてこの街がなぜ? 夢を見ている? いや、それにしては感覚がリアルすぎるし幻覚の類でもない。誰かの個性による攻撃? 何のために? ただ攻撃にしては遅すぎるし、仮に現実だったとして無くなったはずの街がある理由は?

 

「不確定要素が多すぎ————あっちか」

 

思考をいったん止め、僕は町の一方を見つめる。

聴覚に個性を集中させ音を探ると、微かな爆発音と大勢の足音、それに悲鳴!

即座に意識を切り替え跳躍。全身にワンフォーオールを発動させ屋上を滑るように走り抜ける。ワンフォーオールと浮遊の個性を使用しながら、僕は情報を整理する。

方角は東南東。ここから……2.7kくらいか。

断続的な爆発音は(ヴィラン)の攻撃? いや、それにしては軽すぎる。なら市民の抵抗か? ヴィジランテの可能性も……ッ!?!?!?!?!?

 

僕は本日二度目の衝撃にマンションから落ちそうになる。

慌てて制動をかけ、縁ギリギリに止まった僕は眼下の光景に思わず呟く。

 

「……かっちゃんっ?」

 

そこには、僕がヒーローになる切っ掛けとなった事件が起こっていた。

 

 

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