全てを失った僕が守るもの   作:かとやん

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コメントの方で、イズクが二人いて周りは驚かないの?
といった質問をいくつかもらったのでここで捕捉をば。

イズクの外見はデクより身長が少し高く、肌も若干焦げてます(ただここまでは誤差レベル)。
一番の差異は目の色と髪の色、表情の変化です。
目は死んでます。というよりも淀んでいて、薄汚れてます。
髪も同じで、緑ではなく、山藍摺色。ほとんど灰色に近い緑です。

表情も普通に変化しますが、常にどこか疲れたような、くたびれた雰囲気を纏っているので明るいデクとは結び付かない感じです(あと体つきとか輪郭も変化してるから)。
ユニフォームもデクらしい緑オールマイトではなく、スラム街にいそうな,
影に溶け込むような古ぼけたスカーフを巻いた相澤先生もどきです(スカーフは戦争時の癖で血よけ)。

*ユニフォームは仮なので「こんな風が良い」などありましたらどしどしお願いします!


戦闘訓練…の後半+α

10分前…

 

「Bか…」

 

僕は自身の引いたカードに視線を落としながらぼそりと呟く。

『僕』とお茶子さんは前と変わらずペアのようで、『僕』が『僕』していた。

 

「おう! イズクもBか? 俺もBだから、一緒に熱い勝負にしようぜ!!」

 

そんな姿を遠目に見ていると、独特な赤髪の青年が満面の笑みで近づいてきた。

どうやら僕のペアは切島君らしい。

快活な笑みを浮かべながら、対戦相手に思いを燃やしているのは実に彼らしく、僕は枯れた涙腺が緩むのを感じた。

 

「よし! それじゃあ最初のバトルは――――B vs J だ!!!」

 

初戦は僕らで、対戦相手は……ッ!?

 

なぜ彼らなのか。僕は内心自身の引きの悪さと自身という存在が及ぼす変化を目の当たりにしながら対戦相手である彼らを見た。

 

そこには

 

「主席が相手か、悪くねぇ」

 

「何が首席だ!! 俺がトップになるから関係ねえ!!」

 

冷たく自分を凍らせた『轟 焦凍』――轟君と目を吊り上げ両手を爆破させながら指を鳴らすかっちゃんの姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

うん、まぁ……最初に思い知らせるなら彼等でもいいか。

 

 

 

 

 

 

 

 

クジの結果、僕らはヴィランチームでかっちゃんたちがヒーローチームになった。

 

「おうイズク! んで俺らはどう動くよ!」

 

両手を硬化させ火花を散らす切島君。僕はそんな彼にある頼み事と提案をしてから、開始のブザーを待った。

 

数分後、けたたましいブザー音と共にヒュッと空気が震えた。

入り口から一気に広がる氷結――よりも早く、

 

「来たよ。切島君」

 

「いっくぜえええええ!!!」

 

切島君が窓から飛び降りた。

上半身を硬化させ、ガラスを突き破り直下のかっちゃんへ奇襲を仕掛ける。

 

ピシッ パリーンッッ!!!!!

 

「「ッッ!!!」」

 

砕け散るガラス。飛び散る破片。

上部からの破砕音に彼らは瞬時に反応しただろう。

でも、今の轟君は建物入り口内部にいるから音の正確な場所はつかめない。そしてワンマンプレーのかっちゃんも情報共有なんてしない。

 

だから

 

「ハ! 雑魚が吹っ飛べやあ!!!」

 

かっちゃんなら間違いなく切島君を潰すために飛ぶ。

 

「ッイズクの予想通りだ!! 来いや爆豪!!」

 

「うるせえモブがああ!!」

 

両腕を一層硬化させる切島君。ただ彼は自由落下でしかなく、対してかっちゃんは高速機動で縦横無尽に動き回れる…………いつもなら、ね。

 

僕は切島君が飛び出したと同時、一階入り口正面から(・・・・・・・・・)8%のOFAを使った縮地の応用で迫りくる氷結を吹き飛ばし『黒鞭』を伸ばした。

縮地によって吹き荒れる暴風と氷片で轟君は身動きが取れず、僕の伸ばした黒鞭は彼の横を素通りしかっちゃんの胴体を捉えた。

 

「よっと」

 

「!? んだこれぇッ!!?」

 

鞭越しに確かな手ごたえを感じた僕は、そのまま食いついた魚を引き上げる要領でかっちゃんを引っ張る。

建物正面のガードレールを通すようにして伸ばした黒鞭に、かっちゃんはまともな受け身も取れず地面へ叩きつけられる。

 

「ガッ!?」

 

「爆豪!!!」

 

そこへ追い打ちをかけるように切島君が降ってくる。予想だにしないダメージに背後は地面だ。

当然取れる選択肢は限られる。

 

そして、かっちゃんは僕の思惑通り、

 

「クッソガアアアア!!!!」

 

両手を掲げて迎撃に出た。

両の掌を赤く染め上げるかっちゃんを前に、しかし切島君は怯まない。

 

負けず嫌いで勝つことに執着する君なら、その場で最大火力をぶつけようとする。

 

 

だから

 

「切島君」

 

「おう!」

 

「なッ!?」

 

敢えて空撃ちさせる。

爆破の寸前、切島君は僕の伸ばした二本目の鞭へ捕まり軌道を逸らした。

 

ドッ ガアアアアアアアアアア!!!!!

 

「ッツ、クソがぁ!!」

 

今のかっちゃんなら、あれを一発撃つだけでも腕に相当な負担だろう。それに、今はまだ体が温まっていないからなおさらだ。

 

「ちっ、おい首席、随分余裕だな!」

 

どうやらようやく立ち直ったらしい轟君は、遅まきながらも僕の動きを止めようとビル全体に氷結を走らせ、時間稼ぎと言わんばかりに悪態を突く。いや、半分は本音かな?

 

「うん。轟君は後ろに気を付けた方がいいよ」

 

「は」

 

「いくぜええ!!! 轟ィィ!!!!!」

 

切島君の叫び声に、咄嗟に振り向く轟君。

そこには左腕に巻き付けた鞭に引っ張られるまま、右腕を振りかぶる切島君の姿が。

 

「な――ッぐぅぅぅ!!??」

 

咄嗟に腕をクロスさせ氷壁を作ろうとする轟君。しかし、半身を凍らせた状態でまともな動きなど取れるはずもなく、薄い氷の盾ごとなぎ倒す勢いで切島君のラリアットが炸裂した。

身体のきしむ音と氷の砕ける音が響き、轟君はそのまま数メートルほど吹き飛ばされ僕の目の前に転がった。

僕は彼にいそいそと確保テープを巻きながら、

 

「今度は本気の君とやり合いたいな」

 

と囁きかけた。

 

そして残るかっちゃんだが、汗腺が広がりきる前の大火力と先の不意打ちも相まって普段の高速機動が発揮できず、さらには僕の鞭による急襲も警戒しなければならなくなり、最後は轟君と同様、鞭に足をすくわれた状態からの切島君ストレートでノックダウンした。

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様。切島君」

 

「おう! いややっぱ首席はすげえな! 爆豪と戦ってるときもよ、俺がやべぇ!って思った時にはお前の援護が来てるんだもんよ!」

 

快活な笑みを浮かべながら勝利の余韻に浸る切島君を見ながら、僕は肩の力を抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、お疲れ様! 轟少年と爆豪少年は大丈夫だったかな?」

 

「はい」

 

「……ス」

 

戻った僕らを出迎えたオールマイトは轟君とかっちゃんが医務室から帰ってくるのを待ってから総評に入った。

 

「はい! 今回はヴィランチームが勝ったわけだが、今回のMVPは誰か、分かる人はいるかな?」

 

そんなふうに問うオールマイトに、素早く手を上げたのは前回と変わらず、八百万さんだった。

 

「はい。間違いなくイズクさんだと思いますわ。開幕からのヒーローチームへの奇襲という、防衛という観点にとらわれない作戦、切島さんを常に援護し戦況を有利に進め続けるその能力。どれをとっても流石としか言いようがありません。また、切島さんも十分にその役目を果たしていましたわ。最初の奇襲の時もそうでしたが爆豪さんの爆破を正面から耐え続けるそのタフネスさは素晴らしいものがありますし、だからこそイズクさんの作戦が生きたのだと思います」

 

八百万さんの解説は尚も止まらず、ヒーローチームのダメだった点や僕らヴィランチームに対する意見に至るまで、その話はオールマイトが震えて何も言えなくなるまで続いた。

 




粗が凄い目立つ……;;
因みに、ペアの番号は適当です。
そもペアが全然違うから許してください。

後、戦闘訓練でヴィラン側は外に出てはいけない、みたいなルールはなかった気がしましたが、もし間違いであればすいません。

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