広瀬康穂が四部で頑張る話 作:ジョジョラー
短めです。
「……ですからね」
仗助は、自慢の髪を整えながら、受話器に向かって喋っていた。昨日康一と康穂との3人で帰っている最中に遭遇した奇妙な出来事について、承太郎に報告しているのだ。
(昨日っていやあ……)
仗助は昨日自分に怯えていた小柄な同い年の少女のことを思い出した。あの人混みの中もみくちゃにされてふらついた彼女を支えた時、彼女は今までとは違い怯えることなく真っ直ぐに自分の目を見てありがとうと告げた。その時はスカして素っ気なく返してしまったが、なんだか今まで自分に懐かなかった子犬が懐いた時のようで嬉しかったのだ。
全く関係の無いことを考えていた仗助だったが、承太郎の自分を呼ぶ声に意識を呼び戻される。
「ああ、すみません。そのスタンドはその男に取り憑いてたっつーか、ただ体の中に入ってただけでオレに攻撃はしてこなかったスよ」
「そうか。近くにアンジェロはいたか?」
仗助には聞き覚えのない名前だったので聞き返すと、承太郎はアンジェロが昨日見せた写真の男のことだと告げた。仗助が特に見なかったと言うと、承太郎は仗助に忠告する。
「いいか……そのスタンドは、力《パワー》は弱いやつだが、遠隔操作ができる……何らかの方法で人間の体内に入ってくるタイプだ。これからお前の家に行く。おれが行くまでいっさいの物を食ったり飲んだりするなよ。水道の水はもちろん、シャワーにも便所にもいくな。いいな!」
仗助は鏡に向き合いイマイチ決まらない髪に四苦八苦していたが、承太郎がうちに来ると聞いて思わず声を上げた。
「えっ、これから来るんですか? 実はまだおふくろにあんたのこと話してないんですよ。……うちのおふくろ、気が強い女なんだけど、ジョセフ・ジョースターのことまだ愛してるみたいで……思い出すと泣くんですよ。承太郎さんの顔、1発で孫だってバレますぜ」
「……」
「仗助……この写真、どうしたの? さっき会った牛乳屋さんじゃない。知り合いなの?」
電話の最中だというのに……仗助が母親の声に振り返ると、母はテーブルのうえにおかれたアンジェロの写真を見ながら、カフェオレを飲んでいた。本人は気づいていないようだが、赤い口紅が塗られたくちびるのなかに、昨日のスタンドがモゾモゾと潜り込んでいく。
「おい、仗助! どうかしたか?」
「やばい……おそかった。今、コーヒーからおふくろの口の中にヤツが入っていくのが見えた……」
仗助は電話を切らずに受話器を置き、近くにあった空のビンを手に取って母親の方へ歩を進めた。電話口から自分を呼ぶ声がするが、今はそれどころでは無い。
「仗助、あんたもカフェオレ飲む?」
「ン……そうだな。砂糖も入れてくんない……」
「砂糖ね」
母親が後ろを向き自分の分のコーヒーの準備を始めたタイミングを見計らって自身のスタンド……クレイジーダイヤモンドのビンを持った方の腕で母親の腹に──風穴をあけた。自分の母親を傷つけるのはなかなか精神にこたえるものがあったが、これも母を守るため。母親の腹を突き抜けた拳でビンをにぎり砕き、引き抜くとき母の腹を治すと同時に粉々になったビンも修復した。母親は一瞬動きを止めたが、いきなり自分の腹に穴があくなどありえないと思ったのか再び仗助の方を見て何事もなかったかのように話しかける。
「砂糖だっけ?」
「ああ、砂糖入れてくれ。……もしもし、承太郎さん? スタンド捕まえたんですけどォ……どうしますか? こいつを」
ビンの中には、持ち主と同じく凶悪な顔をしたアンジェロのスタンドが閉じ込められていた。
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(やっばーいっ! 遅刻するぅ〜〜!)
康穂は朝の通学路を1人走っていた。
今日の朝も双子の兄である康一といつものように時間に余裕を持って家を出たはずだったが、忘れ物をしたことに気が付き1度家に戻ったのだ。気がつくタイミングが学校を目の前に
誰かの足が見えたと思った瞬間、康穂はカバンの中身をぶちまけ、地面に転ばされてしまっていた。
「いたた……、もうッ! 誰なの……あれ?」
文句を言いながら辺りを見回す。……誰もいなかった。
──おい、こりゃ……えらく残酷だな……。
──またか、最近こうやって不審死を遂げる人が多いんだよ……
「……死?」
さっきまでは必死で走っていて気が付かなかった、木の周りに集まっている人たちの会話が耳に入ってくる。不審死、残酷、などなにやら物騒な単語が聞こえてくるし、よく見ると警察官も来ているのが分かった。
(なんだろう…………ていうか、遅刻しそうなんだった〜っ!)
気にはなるが、いまは野次馬精神を働かせている場合では無いのだ。急いでカバンの中身をしまい立ち上がると、見知った人物が道路脇に停めた車の窓からこの騒ぎを眺めているのが目に留まった。
「あれは……承太郎さん……?」
向こうもこちらに気が付いたようで、車から降りてこちらに向かって歩いてきた。
「君か……。何かあったのか? なにやら騒いでいるようだが」
「私にもよく分からないんですけど、人が死んでいるようで……」
「……そうか」
承太郎は鋭い目付きで人溜まりをみつめ、そして次に康穂に視線を移し言った。
「ところで、君のその足はどうした?」
「あし?」
承太郎に言われて自分の足を見てみると、先ほど転んだ時に擦りむいたのか両膝が真っ赤で血が滲み、なかなか悲惨な状態になっている。もしかしたら、跡が残ってしまうかもしれない。
「な、なんだか自覚したら急にイタくなってきたような……」
「おれはこれからちと野暮用で仗助の家に行くところなんだが、乗っていくか? ……たしか仗助の家はこの道をいってきみの学校へ向かう途中にあったはずだ。自分から言っておいてなんだが、俺も急いでるんでな。早めに決めてくれると助かる」
「えと、じゃあ……お願いします」
承太郎と車内で2人きりという状況がとんでもなく気まずいということはわかりきっていたが、思ったより痛む膝と遅刻をしたくないという気持ちが打ち勝った。
車内に乗り、シートベルトを付けると承太郎がアクセルを踏み、車が緩やかに動き出す。何となく後ろを振り返ると、木の周りに集まっている人々の姿が見え、妙な胸騒ぎを感じた。
承太郎さんに昨日知り合ったばかりの女子高生を車に乗せるという不審者ムーブをさせてしまい申し訳ありませんでした。
・・・彼は親切心から言っています。話の都合上こうなってしまっただけなんです・・・。
番外編ですが、あと2、3話は続きそうです。アンジェロに飽きて書き始めたのですが、原作の中でも最後の方の出来事なのでかなり先の出来事になります。本編(原作沿い)をキチンと進めるのと番外編(オリジナル)を先に終わらせてしまうのどちらがいいと思いますか?ご協力お願いします。
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本編(原作沿い)
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番外編(オリジナル)