広瀬康穂が四部で頑張る話 作:ジョジョラー
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「聞いておこうか、どうしてお前が刑務所の中で突然スタンド能力に目覚めたのかを……もしかしたら、君がなぜスタンド使いになったのかも分かるかもしれない」
「!」
承太郎はアンジェロに厳しい視線を向けながら問い、次に少しばかり視線をやわらげて康穂の方を向いた。
自分がなぜスタンド使いになったのか……それをこの男が知っているんだとしたら、ぜひ知っておきたい。このスタンド能力とかいうものがなければこんなに寿命が縮むような体験をしなくて済んだのだ、せめて巻き込まれた正当な理由がないとやっていられない。
「さあ、アンジェロ。刑務所の中で何があった? ……さっさと話してもらおうか」
「ぐっ、ぐががががががァ〜〜、話してやるぜッちきしょう〜〜! あの
「学生服の男? ……何者だ、そいつは?」
刑務所の中で学生服の男……普通だったらありえない状況だ。しかも、このどうしようもない根っからの悪人であるアンジェロが
話を聞くのが怖くなってきて冷や汗をかいている康穂のことなど構うはずもなく、身動きができないアンジェロはもはややけくそになって話し始めた。
「ギヒ! あれは去年……つまり1998年、死刑執行の半月ほど前の夜だったぜ……」
☆
とある日の夜、アンジェロは独房の天井のスミばかりをボケーッと眺めていた。ゴキブリやなんやら、汚らしいものがカサカサと這う音以外は何も聞こえない、静かな夜だ。他の死刑囚のようにいつやってくるか分からない死に精神がおかしくなるようなことも無く、隣の房の男が隠し持っているエロ本のえぐいピンナップをどうやってブン取ろうか──などということを考えていた。
自分がどれくらいの時間そうやって過ごしていたのかは分からなかったが、突然、アンジェロは誰かがじっと自分を見ている気配を感じ取った。どこかからクソッタレの看守がこちらを見張っているのか──そう思ったが、今まででこんな真夜中に看守がアンジェロの様子を見に来ることはなかったし、見に来たとしてもこんなにまとわりつくような気配はしないだろう。
ベットに体を横たえていたアンジェロだったが、何か奇妙な感じがして立ち上がった。なんだか自分が値踏みされているような、そんな錯覚に陥ったのだ。
(なんだ……誰が見てやがんだちきしょうッ! 気味の悪い視線で見やがって……まるで養豚場でどれくらい肉がついたか見定められる出荷前の豚みてぇな気分になってきたじゃあねぇか)
辺りを見渡すが特に異変はない。気のせいと言い切るには引っかかるものがあったが、幽霊の類は信じないアンジェロはさっさと寝てしまおうと再びベッドに向き合った。
──男がいた。
ベッドの上に土足で腰掛けて、まるでこの場にいるのが当たり前とでもいうような落ち着き払った態度でくつろいでいる。アンジェロは思わず大声をあげそうになったが、すんでのところでこらえることが出来た。この男が何者なのかは知らないが、誰であろうと自分がビビったと思われるのは気に入らない。……それがたとえ幽霊だったとしてもだ。
「てめー、いつからいたんだ?! そしてどこから入ったッ」
アンジェロは内心冷や汗をかきながらも看守が来ない程度の声で男に詰め寄った。幽霊は信じていないが、そうでなければこんな芸当は出来ない。
……学生服を着た男だ。だが顔は暗くてよく確認できず、ガキとは言いきれない。若いようでもあるし、年寄りのようにも見える。
男はアンジェロの問いに答えることはせず、ふと何かを取り出した──
アンジェロがそこまで考えていると、なんと男が自分に向かってその弓と矢を引き始めたではないか!
さすがのアンジェロもこれにはたまったもんではなく、ビビらないようにと虚勢を張るのも忘れて叫び声を上げた。
「なっ、なりしやがるん──」
ドスンッ
そこまで言ったところで男が慣れた手つきで矢を放った。最後まで言い切らないうちに、静かな夜の独房にアンジェロの口の中を貫通した矢が壁に突き刺さる音が響き渡る。アンジェロの口内を貫通した矢は一瞬電撃のような眩い光を放ち、そしてそれが収まる頃にはアンジェロはひとつの疑問を抱いた。
(…………なぜ、おれは死んでいない? ……こ、こんなに血が出ているし、激痛が走っているというのに……脳みそをぶち破られているのに?)
男は手をさ迷わせ何が起きたか理解できないアンジェロに対して、初めて口を開いた。
「
男はアンジェロがなにかの才能を身につけたと言った。にわかには信じられない話だ……だが、それがなんになる? その話が本当だったとしても自分はもうすぐ死刑を執行される罪人あり、今だって牢屋に入れられて身動きが取れないというのに……
「スタンドは精神の才能だ。その才能が今……お前の精神から引き出されたのだよ。凶悪な犯罪者ほどこの才能が引き出される可能性が強いから君を選んだ」
そう言って男はアンジェロの口の中を貫通して壁に刺さった矢を容赦なく引き抜いた。かなり勢いが良かったので頭を持っていかれそうになったが、ここは根性で耐える。
「これで君は死刑にはされない……ここを脱獄もできる。脱獄したら好きなことをしろ──金儲け、遊び、人殺し、精神の赴くまま、君の好きなことをね」
「な、何故だ!? 何者だ? おめーはッ」
「……気にするな。わたしも君の仲間だよ。きみのような才能をもつ仲間が欲しいだけさ」
なぜ鍵が開いているのか分からないが、男は悠然と独房の扉を開け出ていく直前にこちらを向いて言った。
「そうそう……君の故郷は
今度こそ男はアンジェロの元をあとにし、静かな夜に金属の軋む音を立てながら独房の扉が閉ざされた。
☆
──「おれのスタンドのルーツはこれが全てさ。その男が何者で、おれを仲間にして何をしようとしているのかは知らねえ。ま……どうだっていいのさ。楽しけりゃあ仲間になるつもりでいたがね」
康穂は自分の心臓が早鐘を打っているのが分かった。アンジェロの話を聞く限り、この男がこの町で犯した殺人などの凶悪犯罪は全てその学生服の男が原因だ。そいつがアンジェロに能力を与え、この町で好きにしろなどと無責任なことを言ったせいで──
心が熱くなる。康穂は気は弱いし怖がりだが、やる時はやる性だし正義感は強い。その学生服の男がしたことは、決して許してはいけない事だ。
「こいつの話は……」
「そう! くだらねえホラ話だ、信用なんかするやつはいねえスよね?」
仗助は同意を求めるように承太郎と康穂を見たが、康穂はこのアンジェロの話が真実だと分かっていた。なぜなら、自分も矢に貫かれたからだ。
「私は本当だと思うな。あまりにも非現実的だから夢なのかと思っていたけど……私も部屋の窓から矢で射られました……起きたらなんともなかったから、てっきり夢だとばかり」
「おれも信用する」
「え〜〜〜〜〜〜っ?」
仗助はまだ信じられないようだが、承太郎はさらに続けた。
「こいつは
承太郎と仗助の会話を聞いている中、康穂はまただれかに肩を叩かれるのを感じた。……そして案の定、そちらを見ても誰もいない。
(まただ……何かが私に知らせようとしている……? 不気味な現象だけど、嫌な感じでは無い、むしろ安心感さえ感じるわ)
康穂はこの数日間で自分の背後に何かが潜んでいることに気がついた。そしてその感覚が段々と強く、ハッキリと感じるようになってきている。今肩を叩かれた時も、以前と違って細かく手の指の形を感じられるようになっていたのだ。
「……! あれはッ」
導かれるままに振り返った先で目に飛び込んできたピンク色に目掛けて、康穂はなりふり構わず駆け出した。
先ほど手袋に閉じ込めて無力化したはずのアンジェロのスタンドが手袋ごと這って移動し、近くを歩いていた小学生くらいの男の子に迫っていたのだ!
「おい、康穂!?」
「! どうした!」
後ろから仗助と承太郎の呼ぶ声がするが、振り返っている暇はない。あのゲスな犯罪者が、またしても罪の無い命を手に掛けようとするのを黙って見ていられる性格ではないのだ。
康穂は制服が雨でぬかるんだ地面で汚れることもかまわず、全身を使ってピンク色のゴム手袋を押さえつけた。
「ッ!」
アンジェロのスタンドが暴れ回るのを抑えるため、地面にむき出しの肘や膝が擦り付けられて細かい傷から血が滲む。いくらアンジェロのスタンドにパワーが無いからと言って、非力な康穂が抑え続けることはかなり厳しい。
異変を感じた2人が康穂のもとに駆けつけようとすると、アンジェロは仗助だけを呼び止め、怒鳴りつけた。
「ちくしょぉおおおー!! あのガキ人質にしてこっから抜け出そうとしたのにあのアマァアアアァッ! 仗助! おれをここから出せッ
アンジェロは取り乱しており、仗助に1番言ってはいけない言葉を口にしてしまった。適当な男に取り付いてコンビニ強盗をしていた所を邪魔された際の、あの仗助の火山が噴火するような激しい怒りを目にしていたというのに……
──切れてはいけない何かが切れる音がした。
「ドララララララァァア────ッ!!」
クレイジーダイヤモンドが光速の拳を叩き込む。
アンジェロは惨めな細い断末魔をあげながら、今度こそ喋れなくなるほどに岩と一体化させられてしまったのだった。そして、それと同時に康穂の体の下で暴れ回っていた手袋も大人しくなった。きっとあのままただの岩として散歩中の犬の小便をかけられたり、幸せそうな人達が待ち合わせをするのを目の前で見ながらほぼ永遠の時を過ごすのだろう。たとえアンジェロほどの最悪な人間だとしても、同情を禁じ得ない末路だ。
「凄まじいスピードだ……しかしやれやれ、ついていけないのはこのスタンドのスピードだけではなく……あいつの性格のようだぜ」
承太郎が呟く声を聴きながら、康穂は立ち上がった。
いつの間にか雨がやみ、雲の隙間から晴れ間が覗いている。
(勝ったんだ……正義が、仗助くんの正義の心が、アンジェロという邪悪な存在に打ち勝った……)
「おい、康穂! お前よくアンジェロのスタンドに気がついたな。視野が広いんだな〜、お手柄だぜッ」
案外近くから聞こえた仗助の声に、もう怯えることは無くなったが驚かされた。自分がぼんやりと空を見つめて黄昏ている間に、彼はこちらに近づいてきていたらしい。
「うん……ありがとう」
共にピンチを乗り越えると、一気に距離が縮まるものだ。
──気さくに笑いかけてくる仗助の眩しい笑顔に、康穂は自分の顔が熱くなるのを感じた。
・・・匂わせ始めました。
遠隔講義始まったので更新頻度落ちます!
よろしければ、感想や評価をよろしくお願いします
番外編ですが、あと2、3話は続きそうです。アンジェロに飽きて書き始めたのですが、原作の中でも最後の方の出来事なのでかなり先の出来事になります。本編(原作沿い)をキチンと進めるのと番外編(オリジナル)を先に終わらせてしまうのどちらがいいと思いますか?ご協力お願いします。
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本編(原作沿い)
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番外編(オリジナル)