ゴブリンスレイヤー異聞:鬼滅の剣士(デーモンスレイヤー)   作:生死郎

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ゴブリンスレイヤーRTAを読んでいてゴブリンスレイヤーの二次創作を書きたくなりましたので。そして好きな鬼滅の刃とコラボしようと思ってこのような話になりました。


イヤーワン
01


 その青年は酷い頭痛によって目覚めた。

「俺は……」

 そう呟いた途端、瞬時に立ち上がり、握っていた刀──日輪刀を構える。意識して行ったことではない、体に刻まれた反射的なものだ。

 そこで彼は自分が草原にいることに気づく。

「どうなってる……?」

 青年は困惑する。先程までいたはずの場所とはまったく異なる光景。

 夜空に瞬く紅と緑の双月である。ここは青年が知る日本とは異なる世界なのだろうか。それを見て呆然となった。自分が夢想だにしなかった事態に陥っているとわかったのだ。茫洋として眼前の光景を見る青年。暫く記憶を振り返る。

 古より人食い鬼から人を守ってきた鬼狩りの組織鬼殺隊。その最高位に立つ剣士達の柱。彼はその中でも戦闘技術、全集中の呼吸の流派のひとつ水の呼吸を極めた彼は水柱の名を戴いていた。

そして自分は鬼殺隊の水柱として隊員たちを率いて、鬼を退治するため敵の巣窟へ襲撃したのだ。そして作戦行動中に現れた上弦の壱・黒死牟。

「強すぎる!」

 彼──水柱の青年は隊員たちが逃げる時間を稼ぐために、上弦の壱と戦った。時間にすれば短いものだが、その攻防では何度も死の覚悟をした。それほどの恐ろしい魔剣士だった。

 そしてその戦闘の最中に強大極まる敵手の凶刃から逃れるため、遮二無二になって倒れ込んで、それでも避け切れない一撃を受けた、とそう思ったところまでは覚えている……。

「彼らは無事に上弦の鬼から逃げることができただろうか」

 自分の置かれた境遇も不安ではあるが、部下たちのことも青年は真っ先に案じていた。

 水柱の青年は自分の状態を確認する。不思議なことに怪我はなかった、乱戦によって負った怪我はなくなっている。服の下を見ても打撲はなくなっている。鍛錬の末に発現した痣はそのままだが怪我はすべてなくなっている。服装や装備にも変化はない。傷んで汚れていた隊服も元に戻っている。日輪刀も綺麗になっている気がする。多くの鬼を斬り、上弦の壱との戦いで損耗していてもおかしくはないのだが、まるできちんと手入れをされて、研がれた後のような……。特徴的な濃い青色の刀身を見ながらそのように考えた。

「とりあえず、歩くか」

 一通り調べ終えるとそう言って歩き出す。当てなどない。それでもここで立っているだけよりも良いだろう。

 まずはここがどこなのか、実は黒死牟以外にも鬼の伏兵がいて、その鬼の異能──血鬼術による幻なのではないか、とも考えた。

「──」

もしここが自分のいた世界とは異なる世界ならば……鬼のいない世界ならば……

「俺は、どうしたらいい……」

 

 ◇◆◇

 

 その日、ある辺境の村は、小鬼(ゴブリン)の群による襲撃によって滅んだ。幸運にも村を一時的に離れていた者など、村民にも僅かな生き残りはいたものの、村としては完全に滅んだと言っていいだろう。

 そして僅かな生き残りがいたのは、一人の只人(ヒューム)の奮闘による成果だった。

 この惨状はどうしたことであろう。水柱の青年は村の惨状に不快そうに眉をひそめる。村のいたるところに死体が転がっているのを確認した。

 辺りを見渡す水柱の青年が生き物の気配を感じて、日輪刀に手をかける。

 只人(ヒューム)としては異様なまでの鋭敏さだった。これには理由があった。彼は音や空気にも同調(シンクロ)して、その場の異物や違和感を察知するのだ。別に千里眼や八卦見のようなものではない。原因は神経成長因子(NGF)の異常な分泌であり、高まり過ぎた脳内の活性によって感覚神経が過剰反応しているのだ。特に緊張下では 、アドレナリンやドーパミンなどにより一層NGFの合成が促進されるため、その能力が高まることになる。

 それは家族を鬼に殺されて自分だけが生き延びたという苦い記憶とストレスによって脳へ与えらえたことで得られた、水柱の青年の異能であった。

「なんだ、あれは? 鬼か?」

 小鬼を初めてみた水柱の青年はその醜悪さに思わず唸る。確認できたのは三匹。粗悪な槍を持つ個体が一匹、粗悪な剣を持つのが二匹。見張りのつもりかもしれないが、やる気は感じられない。

 子供くらいの背丈をした緑の人型の生き物の表情はひたすらに邪悪かつ醜悪であった。ただ、少なくとも見張りを立てるだけの知恵はあること、統率する者がいるだろうこと、篝火のようなものもないので夜目が利くのだろうという情報は得られた。

 さて、どうするかと暫し考えたものの、小鬼たちの武器に血が付着していることに気づき。抹殺することに決心する。この惨状で血濡れた武器を持つ者、それが意味することを水柱の青年は察した。

(人を害する魔物、生かしておく理由は奈辺にもない!)

「ヒュゥゥゥゥ!」

 水の呼吸特有の呼気を吐き出し、水柱の青年は突進する。彼の感覚はより研ぎ澄まされて、彼は透き通る世界へ突入する。極限まで鍛え続け、“型”の動きを何度も何度も繰り返し修練する中で、形を覚えた後に無駄な動きを削ぎ落とし、『正しい呼吸』と『正しい動き』で身体の中の血管一つ一つまで認識していくことにより、通常ならば困難な動作も一瞬で行なうことができるようになるのだ。そして最小限の動作で最大限の力を引き出すことで、頭の中も不要な思考が削がれ、だんだん透明になっていき、水柱の青年は透き通る世界へ到達できるのだ。

 小鬼たちの動きは静止して見える。透き通る世界は先述の超感覚に融合される。そのときの水柱の青年は雨粒さえも静止して見えるほどなのだから、小鬼たちなど蝸牛よりも遅く見えて当然だ。

 水柱の青年は日輪刀を抜き放ち、小鬼たちへ斬りかかる。

「!?」

 声を上げる暇もなく、小鬼たちは頸を断たれた。彼が見通したように小鬼たちの身体は脆弱だった。今までに相手にしてきた鬼舞辻無惨の鬼たち──その中でも下等な鬼たちと比べても脆かった。

 日輪刀は抜き身のまま、水柱の青年が足音を立てず歩き索敵する。不思議なことに透き通る世界へ入門したとき、彼からは殺気や闘気の類いは発することがなくなるのだ。それは鬼への奇襲にも役立てることができた。

 ──その不意討ち戦法を黒死牟に行われてしまうのは、なんとも皮肉なことであった。

 水柱の青年は夜間であっても月光を頼りに血と泥で汚れた道から足跡を観察する。小鬼のものと人間のものが確認できる。

 残された足跡から、その人物の年齢や性別、身体的特徴、状態などの情報を読み取るトラッキングというものだ。ネイティブアメリカンが駆使する技術であり、異能でも何でもないので誰でも習得が可能な技能だ。水柱の青年の場合、彼の育手から学んだものだ。

 足跡をたどった先には広場があり、そこには七匹の小鬼がいた。

 水柱の青年が広場まで向かえばそこに小鬼たちが生き残りの村人たちを囲んでいた。

 彼の眼前には小鬼が一〇匹。どれも粗雑な小剣や槍、棍棒を持っている。

 ──肆ノ型(しのかた) 打ち潮(うちしお)

 淀みない動きで斬撃を繋げて間合いに入る小鬼全ての頸を斬り落とす。

 水柱の青年は小鬼たちの生命活動が止まることを瞬時のうちに見抜き、鬼舞辻無惨の鬼とは異なり、小鬼どもは首を断たなくても斬れば死亡すると判断した。

 ホブゴブリンが水柱の青年の襲撃に気づき、襲いかかる。棍棒を振りかざすが最高峰の鬼殺の剣士にとっては動きが遅すぎた。

 ───壱ノ型(いちのかた) 水面斬り(みなもぎり)

 水柱の青年はクロスさせた両腕から勢い良く水平に刀を振るう。棍棒を振り下ろすホブゴブリンは振り上げた腕ごと首を切断されて醜悪な肉塊と成り果てた。

 残る小鬼を斬ろうと残心を残しつつ移動するとき、水柱の青年は悪い予感を感じとる。それは鬼が血鬼術を使う予兆のような……

 それは小鬼呪術師が魔法をはなった瞬間だった。

 ──参ノ型(さんのかた) 流流舞い(りゅうりゅうまい)

 水流のごとく流れるような足運びにより、魔法を回避してそのまま攻撃に合わせることができるこの技で一足跳びに一〇メートルを縮めて小鬼呪術師を切り捨てる。

 水柱の青年が横へ跳んだのは小鬼呪術師が魔法《火矢(ファイアーボルト)》を放った瞬間だった。透き通る世界へ到達した水柱の青年には攻撃が辿るだろう軌跡を見えていた。

 《火矢(ファイアーボルト)》を容易く避け、一足飛びで一〇メートルの距離を縮めて、小鬼呪術師の首を刎ねた。

 残る小鬼たちは二〇余り、それも水柱の青年が瞬く間に斬り捨てたとき、新たな敵手の気配を水柱の青年は感じ取る。

「大型の鬼か?」

 青年の前に現れたのはゴブリンとも異なるモンスターだった。水柱の青年は知らないことだった。そのモンスターは小鬼英雄(ゴブリン・チャンピオン)。それは小鬼が戦闘経験を積んで成長した個体だ。三メートル近い巨体と怪力を持ち、その巨躯からは想像できない身のこなしの怪物である。

片手に人間の亡骸を持ち、もう片方の手には棍棒を持っていた。

「──」

 怪物の持つ亡骸が目に留まり、水柱の青年の中でふつふつと怒りが燃える。

小鬼英雄(ゴブリン・チャンピオン)の大樹のごとき太い腕が持つ棍棒が振るわれる。

「GOOOOOBBB!!」

「こいつらはお前の群れの鬼か? 首魁のお前も死んでもらおう」

 小鬼英雄(ゴブリン・チャンピオン)が濁声で叫びながら巨大な棍棒を振るう。勢いに乗った攻撃は、速く力強さがある。しかし、

 ──弐ノ型(にのかた) 水車(みずぐるま)

 攻撃を避けた青年は垂直方向に身体ごと一回転しながら斬りつけることで、棍棒を持つ腕を斬り飛ばす。優れた剣士であっても切断までに至るには、小鬼英雄(ゴブリン・チャンピオン)の外皮は硬すぎるのだ。それを断ち切ったのは、水柱の青年がいかに優れた剣士であるかの証左である。

「!!???」

「ヒュゥゥゥゥ!」

 間髪入れず、返す刀で小鬼英雄(ゴブリン・チャンピオン)の首を刎ねた。腕を失う驚きで一瞬惚けた敵の隙を、水柱の青年が見逃すことはしないのだ。

日輪刀を納刀した青年に、村人が恐る恐る声をかける。

「あの、あなたは……?」

 日本人とは異なる、水柱の青年の記憶する中ではヨーロッパ人に似た顔立ちの人々が彼に声をかけてきた。

 

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