[ネギ]
火星機械化軍事政権『ボルト』は、名前からわかる通り未だに軍事政権の
そんな忙しい日々の中、わずかに出来た
タカミチは、結婚した。相手はやはりと言うか、押し切られたと言うか、明日菜さん。旧姓神楽坂さんだ。結婚したのは彼女の戸籍年齢が16歳になった直後。流石に後ろ指を刺されかねないので、麻帆良学園は退職して教員は辞め、NGO『
ただ、最近奥さんの明日菜さんに子供ができたらしく、明日菜さんだけ仕事は休んでいる模様。NGOの給料は高いとは言えないため、タカミチはこれまでの貯蓄を切り崩しながら最前線で頑張っている。うーん、タカミチと奥さんを、火星に呼んで高給で雇用しようかなあ。いや非公式には、タカミチは僕らと繋がっていて、冷戦状態の構築に成功した火星勢力と裏でやりとりをしているんだけどね。
幾ばくかの金銭援助もしているが、それが
時間をなんとかひねり出して、こっそりタカミチの結婚式に参列した時に、宮崎のどかさんと会った。そしてその時、彼女は何かしら意を決した顔をしていた。そして……。僕は彼女から恋の告白をされたんだ。けれど僕は、僕には好きな人がいる。2人も。ただ2人とは流石に言えない。好きな人がいるとだけ言い、頭を下げて謝るしかできなかった。泣かれた。けれど、好きな人と上手く行く様に祈っている、と言ってくれた。言わせてしまった。ごめんなさい、と言うのは彼女に失礼だろうか。だから僕は言った。ありがとう、と。
ガンドルフィーニさんは、家族そろって火星に移住した。そして火星の魔法科高等学校学校長として若い魔法技能者……魔法使いの事を火星ではそう呼んでいるが、その育成にあたっている。無論の事ながら、彼の学校は火星政府と深く繋がっており、卒業生は進学しない者は一部例外を除き、全員火星政府のいずれかの省庁に入省しているのだ。多くは火星政府軍だが。
なお彼の娘さんが、彼の学校に入学したらしい。きちんと入試を優秀な成績で突破したのだと、先日いっしょに飲んだ際に嬉しそうに語ってくれた。しかしその後、気になる男の子と一緒の学校に通いたいがためであったと、しょんぼりした様子で語ってくれた。酒が強く無いのに、浴びるように飲んでさくっと潰れていたのが思い出される。
弐集院さんも家族で火星に移住し、彼もまた現在は魔法技術高等専門学校の学校長をしている。彼の学校は、魔法の設計や研究をする魔法技術者を育成するための物だ。その学校からは、毎年優秀な魔法技術者が次々に送り出されて来る。送り出された魔法技術者は、火星政府を支える屋台骨として魔法技術省や科学技術省、火星政府軍の軍工廠などに配属される事が多い。
ちなみに彼の胴回りは、更に迫力を増した。なんであれで、あそこまで機敏な動きができるのだろう。もしかしてあの丸い身体は、全部が全部、筋肉製の
瀬流彦さんは、若い奥さんをもらった。と言うか、ある意味僕の親戚になった。うん、超さんだ。そして夫婦して、火星政府を支える巨大
『超包子』は地球と火星の双方に根を張って、冷戦構造下における唯一に近い、双方の窓口ともなっている。僕やブレインたちも、『
葛葉さん、神多羅木さん、明石さんは地球の麻帆良に教師、教授として留まっている。連絡によれば、それなりに出世はしているとの事だ。あと葛葉さんは旧姓だ。あの後すぐ再婚したらしい。と言うか、バツイチだったのか。知らなかった。彼らを率いている近衛学園長は、火星と地球の間の冷戦構造構築が成って、めっきり老け込んだらしい。関西呪術協会との間の緊張緩和も成って、一安心したんだろう。次代の麻帆良の長として、明石教授を指名しているとの事。
関西呪術協会の近衛詠春さんは、そろそろ次代の者に長の座を譲り渡して隠居したいらしい。麻帆良との緊張緩和も成り、相互の交流も頻繁に行われているので、肩の荷も下りたと言う所だ。と言うか、麻帆良との緊張緩和が成ったのは、火星政府の出現によるところが大きいらしい。
まあそれはそうだろう。火星なんてところに、巨大な軍事独裁政権が突然出現したんだ。しかも火星勢力は月面、小惑星帯、木星圏、土星圏に隠れ潜んでいた勢力と連邦国家を宣言。更に本気になれば地球を滅ぼせるだけの戦力を持っているのは、自明の理。地球の内側で、さらには日本の内側で、内輪もめなんてやってられないのは、明らかだった。
スタンお爺さんは、昨年亡くなった。純粋に、老衰だった。ネカネ姉さんから連絡をもらい、色んな仕事とか放りだして父さんと一緒に宇宙船で駆けつけた。死に目にかろうじて間に合ったのは、本当に……。そうでなければ、ずっとずっと悔やんだだろう。
アーニャやネカネ姉さん、村人たちが大勢スタンお爺さんの家には来ていたが、僕と父さんが到着すると、3人だけにしてくれた。最期の言葉は今もはっきりと思い出せる。
「ナ……ギ。ネ……ギ、ぼー……ず。……しあわ……せ、に。」
そしてスタンお爺さんの命の灯が消えた。……僕の
僕も父さんも、泣いた。恥も外聞も無く。ただ、泣いた。
木乃香は刹那と共に、高等学校扱いの軍学校を経て火星政府軍に所属した。2人とも僕の直属部隊に置こうか、と訊ねたのだが、特別扱いはいらないと断られた。いや、そう言う問題じゃなく、彼女たちほどの能力の持ち主は政権中枢で働いて欲しかったのだが。
だが彼女たちはとんとん拍子で出世して、今では人間で構成された大部隊を率いる部隊長と副長となっている。『癒しの聖女』と『聖女の護り刀』などと言う二つ名が自然発生してしまい、2人とも恥ずかしがっていた。
ちなみに2人は火星に家を建てて、2人で住んでいる。自動警備システムで万全の警備が為されている上、刹那の武力と木乃香の魔法とで護られた、恐るべき城塞だ。うん、見た目普通のファンシーな家だけど、中身は城塞なんだ。うん。女2人が住んでるって聞いた
木乃香曰く、自分たちの愛の巣に土足で踏み込む奴には当然の報い、らしい。刹那は顔を真っ赤にしていたそうだが。愛の巣、ねえ……。
楓は中学卒業後、いちど実家のある甲賀に帰った。僕が編纂した、失伝していた甲賀の秘伝書と共に。そして彼女は特例で1ヶ月遅れで、自分の里から連れて来た少年少女と共に火星の軍学校に入学。彼女らは優秀な成績で軍学校を卒業し、火星政府の諜報機関へと着任したのである。
諜報機関の長は当時は上位の軍人ロボットであったが、さほど時間を経ずしてその地位は楓の物となった。ちなみに甲賀忍軍は、その里ごと火星へ移住。事実上の火星政府の丸抱えとなっている。
ところで楓は生身で宇宙を泳ぐ事に成功しているとかいないとか。本気か?いや正気だろうか?今度見せてもらおう。
真名は、事が終わった後に1人で世界を回る旅に出ようとしていた。そこを無理に引き留めた。彼女の本意が、戦災孤児などの保護にある事はこっそり確認してある。彼女個人で救済の手を伸ばすのではなく、国家事業の一部としてそれを行うので、それを率いて欲しいと口説き落としたんだ。
小説や漫画の主人公は、こう言う時には断るのが通例だ。自分は、そう言う国家事業などの網の目から漏れた者をこそ救いたいとかなんとか言って。しかし真名は引き受けてくれた。なんだかんだ言って、現実的には国家の後ろ盾とかあった方が、より多数を救えるのは当然なのだ。
そして彼女は、他の面々同様に軍学校学生になったが、二足のわらじで孤児救済事業をも率いて、大車輪で働いた。今は大佐階級でそのプロジェクトを率いている。火星圏は
古菲は、当然の様に火星の軍学校に進学。卒業後、普通に僕直属の特殊部隊に入隊した。今はその隊長を務めている。この部隊は、いわば便利屋である。火星圏はおろか、月面、小惑星帯、木星圏、土星圏、そして最近開発の手が伸びた天王星圏、海王星圏、残念ながら惑星から格落ちしてしまった冥王星圏にも専用高速宇宙船……勿論のことロボットに
本人曰く、強い男が居たら婿にするつもりだが、今は仕事が恋人だそうだ。火星にいる時にはしばしば僕と組手をやるが、彼女と闘って負けたのは、地球の麻帆良で行った、あの最初の1回だけである。理由は、僕も『気』や『魔法』や『咸卦法』を解禁したのと、僕の技量自体もどんどん伸びているからだ。
純粋な素の武術では、そこまで派手な差は無いと思う。それでも僕の方が強いは強いが。しかし『気』を解禁すれば、力量の差は爆発的に離れ、『咸卦法』まで使えば天と地の差が出来てしまう。が、彼女は手を封じての闘いは、自分も『咸卦法』が使える以上は嫌だと言う。高みを目指してこそ、高みを掴めるのだそうだ。
そう言えば、茶々丸さんの姉であるチャチャゼロさんは、魔力バッテリーを縫い込んだ衣装を貰って古菲さんの仕事に付いていってるね。平和な……平和な?平和って言うのかコレ?まあ、本人曰く平和な火星じゃ楽しくないんだそうだ。物騒だよなあ。
小太郎君は、先ごろ愛衣と結婚した。あ、いや。他人の奥さんを呼び捨てはまずいね。愛衣さんと呼ぼう。幸せいっぱいの愛衣さんと、少々やつれた、しかしそれでもやはり幸せそうな小太郎君だった。見た目で甘々の新婚夫婦なんだが、実の所は古菲同様に僕直属の特殊部隊の隊長と副隊長だ。古菲とは別の部隊で、彼らも専用の高速宇宙船で宇宙を飛び回っている。
ちなみに愛衣さんは部隊でアイドルだった。小太郎君にベタ惚れで、ベタベタのカップルだったのは最初から分かっていたのだが、それでも結婚の際には血の涙を流した男女が多かったと聞く……。マテ、男『女』?お、女は小太郎君のファンだよね?そうだよね?
愛衣さんのパートナーである、高音・D・グッドマンさんだが、数年前に愛衣さんが軍学校在学中に、ある程度の関係修復は為された様だ。『超包子』を伝手に彼女の手紙が愛衣さんに届いたらしい。愛衣さんの話によれば、「自分は正義は捨てられないが、しかし行き過ぎた正義にならぬ様、常に心掛けることを約束する。」とあり、「どうか再び受け取って欲しい。これが宇宙で活躍する愛衣の力になってくれることを祈る。」と
葉加瀬さんは超さん同様に、大検取って飛び級に飛び級を重ね、博士号を山の様に取得した。ただし博士号は、超さんが社会科学系、人文科学系にも手を伸ばしているのに対し、葉加瀬さんは数学を含む自然科学系、そしてその応用たる工学系の物に限られているが。
そして彼女は、
五月さんは火星に設立された調理師専門学校を卒業後、当初
彼女の味は、火星市民を
父さんは、「俺は頭悪いから……。お前の仕事手伝ってやりたいのは山々なんだが……。」とか言ってたので、優秀な準ブレイン級の量子
父さんの友人であるジャック・ラカンさん。彼は今、冥王星圏でその宇宙開発の最前線で働いている。彼にも準ブレイン級の参謀副官就けてやろうかと思ったのだが、それを固辞して宇宙服着こんでガンガン働いてる。「なんでぇ、宇宙怪獣とか居ねえじゃんかよ。」とか言っていたのが印象的だった。
なおラカンさんとは、太陽系外への宇宙探査が始まる時にはその最先鋒を任せる事を約束している。今自由にさせている代わり、その時には宇宙探査船の艦長を大佐待遇でやってもらう約束をしているのだ。きっと某米国SF特撮番組のカ○ク艦長のごとく、艦長のクセして自分で探検隊の先鋒に立つに違いない。
ちなみに以前、僕がラカン・インパクトとか気合い防御とか真似して見せたらビックリしていた。金払えとか言ったので、払ってあげたら、更に目を丸くしていた。うん、僕は金持ちだからね。
そう言えば、元ヘラス帝国皇女のテオドラ女史、ラカンさんを追っかけて冥王星行ったけど、会えたのかな?「上手く」いったんだろうか?
ちょっと酷い目に遭わせちゃった、クルト・ゲーデル元メガロメセンブリア元老院議員。まあ彼のおかげで僕の復讐も上手くいった事だし、何か欲しいものは無いかと問うたら、火星政府で働かせて欲しいと来たもんだ。ちょうどいいから、火星政府やその他政府、そして
彼は『
民主主義体制への改革を始めるのは、まだ早いと言うのもクルトさん率いる研究グループの提言だ。もう少し時が必要で、今すぐ体制の変更を始めてしまえば暴走し、行きつくところは衆愚政治か、あるいは大きな革命になって血が流れる恐れがあるそうだ。本当にありがたいね。でも、やはり
金星の魔族、ザジ・レイニーデイ姉妹。彼女らには、大変世話になっている。地球の某国のアホどもがとち狂って核ミサイルを月面や火星に向けて発射しようとした事件があった。本来は僕らが交渉と、それで駄目なら破壊工作員を送り込んで発射を阻止する予定だったんだが。魔族たちが、核ミサイル基地に入り込み、上手い事故障や人的ミスを装って発射を阻止してくれたんだ。
それで稼いだ時間で、某国と某国の大統領にメッセージを送った。「そちらの
冷戦構造とは言っても、こっち側が圧倒的に有利なんだよね。何はともあれ、相手は折れた。相手の国の議員に、これも魔族たちが化けたのが混じっていたのが、決め手だったね。お礼に諜報機関が探り出した、地球某国の金星探査機情報を教えてやった。金星を探られたくないので、金星の軌道近くで故障を装って損壊させるらしい。
魔族たちとは、なるたけ上手くやって行きたいね。でも、使者として没落貴族のヘルマン伯爵を送って来る可能性は、潰しておいて欲しい。僕のトラウマ
フェイトなんだが、未だに救急隊に所属している。彼は自身に火星最新の医学をインストールし、医師免許を獲得した。そしてエアカー仕立てのドクターカーで、従者の面々と火星首都近郊を駆けまわっている。ちなみにドクターカーは、ちゃんとロボットに
従者の面々は、きちんと医療を勉強しなおして、看護士としての技術を獲得している。ちなみにわずかな休暇の折には、フェイトは稀に僕のところにも顔を出すんだが、従者の面々が来ると僕が不機嫌になるのを知っているから、その時は連れて来ないんだよね。最初の印象が悪すぎた。ちゃんと今は働いている様だが、それでも僕は彼女らを信じきれない。
まあでも、ほんとに稀にしか来ないんだけどねフェイトは。通信や電話では時々話してるし、医療体制への要望はそれこそ大量に上がって来るけれど。でもフェイトは今、従者の人達の他に、ある助けた患者の女性とも一緒に住んでいて、その
フェイトがスカウトして来た、『
彼曰く、「
いや実際に頼りになるんだよ、彼。先日発生した人質立てこもり事件。雑務を放り出して現場に駆け付けた父さんが
ちなみにフェイトみたく、自分の呼び名はいらないのかい?と聞いて見た。そしたら「番号で呼ばれるのが嫌な者もいる。それは理解する。けれどこの番号は、僕が
なお「
つまりは彼女も、「
茶々丸さんは、僕の秘書長兼
いやほんと。彼女らと火星ブレイン12基がいなけりゃ、この広大な火星全土をどう統治しろってのさ。他にも月面と小惑星帯と木星圏と土星圏。あとは天王星圏に海王星圏に冥王星圏の
そんなわけで、茶々丸さんには感謝する事しきりだね。
そして……。千雨とマクダウェルさんだ。千雨は僕の助手として、僕でなくても処理、承認可能なレベルの仕事を肩代わりしてくれている。マクダウェルさんは、彼女は彼女で相談役と言う肩書をもって、同じく僕でなくても処理、承認が可能な仕事を片付けてくれている。この2人にも、本当に頭が下がる。
「ネギさん、そろそろ休憩時間終わるぜ。」
「さて、さっさと仕事を片付けてしまおう。今日は弐集院の娘の誕生日パーティーに呼ばれていただろう。」
「そうだったね。なんとか頑張って、時間までに仕事終わらせないと。」
千雨が、出会った頃と同じ姿……いや、ちょっとばかり若い?幼い?姿で笑う。彼女は数年前に少々若返った姿で、年齢を固定したんだよね。『
年齢を抑えた理由は、マクダウェルさんと五分の条件がいいから、との事だ。うん、意味が分からないほど、僕は鈍く無いつもりだ。まあそれで僕も覚悟決めて、20歳のときに年齢固定したんだが。千雨よりは楽に、不死者になった。
マクダウェルさんも楽し気に笑う。
「でも、思い立ったが吉日とも言うからなあ。うーん……。法律は無理にでも改正するからさ。2人とも。」
「「なんだ?」」
「近いうちに2人とも、僕と結婚してくれないかい?」
~Fin.~
なんとかかんとか、完結です。いや、この後も何本か追加エピソード書くとは思いますが。
他にも連載抱えてるのに、一番最初に完結までもってこれたのが、最後に書き始めたコレとは(笑)。色々応援のほど、ありがとうございました。