しかし、お風呂の前には一触即発の黒潮とサウスダコタが。
そして始まる黒潮とサウスダコタの戦い。
その時、指揮官の下した決断とは――
ノリを重視して若干キャラ崩壊(特にサウスダコタ)を起こしちゃってます。
ただ、個人的には自信作の一つなので、気に入ってもらえると幸いです。
※pixivに投稿した作品の加筆・修正版となっています。
一触即発。
今の状況はまさにそれだった。
「……」
「……」
風呂に入りに来た指揮官の目の前で繰り広げられているのは、男湯の入り口で黒潮とサウスダコタが睨み合っているという光景。2人が入り口前を陣取っているおかげで風呂に入ることができない。それ以前に、今の2人の間を通り抜けるだけの度胸を指揮官は持っていない。
「……」
「……」
「……あの、2人とも?」
指揮官が声をかけると、2人は同時にこちらを見た。すると、黒潮とサウスダコタは嬉しそうに笑い、先ほどまで張り詰めていた空気が一瞬で緩んだ。
「あぁ、指揮官か」
「こんばんは、主」
「うん、こんばんは。んで……2人とも、ここで何やってるんだ?」
「何って、見ての通りだ」
「うん、見て分からんから聞いてるんだが」
「もう少しお待ちください、主。すぐに済みますので」
「あぁ、もちろん僕の勝利でね」
「御冗談を」
再び睨み合う黒潮とサウスダコタ。
「えっと?」
何が起きてるのか全く分からず、指揮官は困惑するばかりであった。
「……黒潮、説明を頼む」
「はっ」
こういう時でも命令には忠実な黒潮。
視線こそサウスダコタから外さないが、淡々とした口調で指揮官に説明を始めた。
「私は主の影となり、付き従い、そしてお守りするという義務があります」
「そこまで重くなくていいが……まぁ、黒潮がそうしたいなら俺も助かるな」
「僕だって同じだ。指揮官の盾となって指揮官を必ず守る。そう誓ったんだ」
「あぁ、サウスダコタにはよく助けられてるよ」
「最近は戦いも激しくなっているそうですね」
「この近辺はまだ大丈夫だが、他の海域は激戦区になってるって話だ」
「いくらこの辺りは比較的安全とはいえ、いつ危険に陥るか分からない」
「確かに、気を付けておくに越したことはないが……」
「だから、主とどっちが一緒に入浴するかで話し合っていました」
「うん、ちょっと待とうか」
指揮官は軽く頭を振る。そして、今の言葉が聞き間違いであることを願って聞き返す。
「……もう一回言ってくれないか?」
「主とどっちが一緒に入浴するかで話し合っていました」
「聞き間違いじゃなかったか……」
思わず頭を抱えたくなる回答だった。
「そうだ、この際指揮官に決めてもらおう。僕と黒潮、どっちと一緒がいいか」
「いいですね。まぁ、主の答えは決まっていると思いますが」
「いや、そのだな」
黒潮とサウスダコタは指揮官の方を向く。
「さぁ、指揮官。どちらと一緒に入るんだ?」
「主、ご決断を」
「……一人で入るが?」
「「……え?」」
「いや、そんな世界の終わりを見たかのような顔をされても」
指揮官の回答に、黒潮とサウスダコタは呆然とした。
「な、何故だ、指揮官!」
「何故って……ここ、なんて書いてる?」
指揮官は入り口の看板を指さした。
「……すまない、指揮官。僕はまだ重桜の言葉に慣れていないようなんだ」
「俺の目を見てからもう一度言ってみようか。ほら、目を逸らさずに」
「申し訳ありません、主。私もまだ読めなくて」
「お前は読めないとダメだろ。……ここは男湯。男専用だ」
「甘いぞ、指揮官」
サウスダコタがズイッと指揮官に詰め寄る。
「ここでは男性は指揮官一人。入浴時間は指揮官はほとんど一人、つまりは指揮官が最も無防備になってしまうタイミングだ。敵が狙ってくるとすれば、このタイミングが最も適格なんだ」
「いや、そうだけども」
「だから男湯だろうが関係ないのです。主の身を守るため、誰かがついていかなくてはいけないのです」
「いやいや、一通りの護身術はベル達から習ってるから」
「武装した集団に襲われたらどうするんだ?」
「そんなのが攻めてきたら風呂場に着く前にバレるだろ」
「……」
「……」
「とにかく、僕は指揮官と一緒に風呂に入りたいんだ!」
「ついに開き直ったよ、コイツ」
「いいじゃないか!指揮官は睦月やエルドリッジ達とは一緒に入ってるじゃないか!」
「あの子達はまだ子供だからな。娘みたいなもんだ」
「つまり私なら大丈夫ということでしょうか」
「黒潮はギリギリアウトだろ」
「僕も睦月みたいな恰好をすれば……」
「やめろ。俺がヤバイ趣味の持ち主と勘違いされるからやめろ」
「あれ?どうしたの、3人とも」
その時、青葉が3人の姿を見付けて駆け寄ってきた。
「青葉か。お前も言ってやってくれ」
「何を?」
指揮官は青葉に今までの流れを説明した。
「……ふむふむ。つまりサウスダコタさんと黒潮ちゃんはどっちが指揮官と入るかで揉めていたと」
「そうだよ。だから――」
「なら指揮官。私と一緒に――」
「……」
「……」
「な、何でもないよ?うん、何でもない」
黒潮とサウスダコタに睨まれ、青葉はたじろいだ。
「アホなこと言ってないで、何か言ってやってくれ」
「うん。それなら、話しは簡単じゃん」
青葉が良い笑顔でとんでもないことを言い放った。
「全員で一緒に入ればいいじゃん」
「……は?」
「そうか、その手があったか!」
「別に争う必要などありませんでしたね。盲点でした」
「いや、だからな?」
「というワケで指揮官」
「主」
指揮官は黒潮とサウスダコタに両側からガシッと掴まれる。
「いや、だから!ここ男湯なんだってば!それに、一人用だし!」
「大丈夫でしょ。5人ぐらいは入れるスペースあるんだから」
「……青葉、なんで知ってるんだ?」
「……あ」
「……」
「……じゃ、じゃあ3人ともごゆっくり!」
青葉は素早くその場から離脱した。
「あ、逃げるな!黒潮、すぐに青葉を捕まえてくれ!」
普段は指揮官の命令にはすぐに従う黒潮なのだが――
「申し訳ありません、主。今はこちらが最優先事項です。罰なら幾らでも受けますので」
「いや、罰とかじゃなくてだな!だから引っ張るな!一人で入るから!」
その後、指揮官はなんとか逃げ出すことに成功した。
しかし、それからも指揮官と入浴するチャンスを虎視眈々と狙う黒潮とサウスダコタに、しばらく頭を悩ませることになるのだった。
誤字・文章の誤りがあればご指摘をお願いします。
感想もいただけると、画面の前で祝杯を挙げていると思います。
よろしくお願いします。