ワンナイト聖杯戦争 第三夜 対決、三人のセイバー! 作:どっこちゃん
まるで、巨大なハンマーが鋼を打つかのような衝撃が轟いた。
何かの言葉を紡ぐよりも先に、召喚されたその瞬間に、そのサーヴァントはいかにも巨大な剣を遠慮もなく召喚者に向けて振るって見せたのだ。
身の丈以上の大剣は、まるで虚空に見えない壁でもあるかのように、召喚者である少年の首のすぐ脇で静止した。
少年が何かをしたわけではない。彼にはそんな魔術を行使する能力は無い。
少年は魔術が使えない。
「――ほぉーう。まばたきもしねぇとは、なかなかに肝が座ってるじゃねーか。ガキの癖に」
巨漢であった。
手にする大剣もまた群を抜く凶器と見えたが、この男の五体、それ自体もまた類を見ないほどの凶器だと理解することが出来た。
「ボクは魔術師じゃない」
「あん?」
「でも、魔術師ってやつらに。勝ちたい」
「……」
簡潔に区切られた少年の言葉に、サーヴァントは静かに剣を治めた。
巨漢はなんとも不思議そうに、少年を見下ろしている。
すると、少年は語り始めた。
彼が命を賭してこの儀式に参加する、その理由を。
「ボクに魔術の才能がなかったから、ボクの両親は自殺したんだ」
少年の先代、つまり魔術師であった両親が彼の生誕にあたって下した結論は「無価値。そして無意味」だった。
代を重ねる魔術死の家における鬼門。――「血統の衰退」である。
より優等な血筋を残すこと求める魔術師にとって、これ以上ない絶望と言える事態だ。
そして、徐々に弱まっていた魔術師としての才能が、とうとう彼には宿らなかったのである。
「だから先代、つまり僕の父はね、命を絶ったんだそうだよ。母や他の家族、親族もまとめてさ。集団自殺として処理されたんだってさ」
他人事のように、少年は語る。
「あーっ、悪い。聞いとらんかった」
しかし、ぼんやりと空気でも噛むような顔の巨漢は、まるで興味がないとでも言いたげである。
「……そう。じゃ、本題に入ろうか」
「あん!? なんだなんだ? おいおい勘違いするんじゃねーぞ? そんな顔すんなよおい!! 要するにだ。聞くまでもねーってんだよ。おまえは勝ちたいんだろ? つまり、『自分に自分を証明したい』んだ。そうだろ?」
ただでさえ白い顔をさっと蒼ざめさせた少年に、セイバーのサーヴァントは野次でも飛ばすような笑顔を見せる。
「……自分に、自分を?」
「そうとも。良いぜ、やってやる。おまえの事情は話半分だが、お前の目的にはなかなかにそそる」
巨漢は早々と問答を取りまとめてしまった。何とも大雑把な理解だったが、確かに要約してしまえば、そういうことだ。
「……そうだよ。無価値だとか無意味だとか、なんの納得もできない。ぼく自身は何もしていない。なのに、切り捨てられた。僕は魔術師って連中に挑戦したいんだ。挑戦して」
「それを超える、だな。――なんだなんだ。幸先がいいじゃねーか」
「……ホントにそう思うの?」
本来は、マスターが非魔術師と言う時点で、サーヴァントにとっては大問題なはずだ。
そのまま、契約を反故にされかねないほどの欠落。
しかし、この巨漢は、それをまったく取り合わない。気にも留めていないという風だ。
「そらぁそうだ。
けどな! と巨漢は、セイバーのサーヴァントは豪快に続ける。
「おまえの望みはいい。解りやすいしな。なによりもオレはそれが得意だ。いいコンビじゃねーか」
「得意?」
「応とも。オレは大得意だ。自分よりも、デカくて多くて強い奴を、ちょちょいと転がしてやるのがなぁ」
「……」
「どうした! もっと喜べよ。おまえはこの上ない「チャンス」を得たんだぞ? 己を己に証明するチャンスをな! 戦と同じだ」
少年はくすりと微笑んだ。
「なら、後はどうしたらいいのかな、セイバー」
少年の言葉に、巨漢は獣が牙を剥くようにして笑顔を返す。
「そうさな。まずは楽に構えろよマスター。こういうのはな、クソを我慢したような面でやるもんじゃない。楽しむのが吉だ。無邪気なガキのようにな。なにせ、弱兵で、大軍を転がす時ほど面白い戦は無いからなぁ」