ワンナイト聖杯戦争 第三夜 対決、三人のセイバー! 作:どっこちゃん
翌々日。バルバラは最寄りの空港に降り立った。儀式を終えた以上、もはやこの国に留まる理由はなかった。
その手を引く少年もそうだったが、その五体は満身創痍と言っていい有り様だ。
それでもなお、サングラス越しの不敵な表情と立ち振る舞いにはいささかの衰えも見えない。
「そっちじゃないよ」
「もぶッ!?」
依然として視力は失われたままだ。残った使い魔は彼女の装束をかろうじて形成するのが限界であり、彼女の視力を肩代わりする余力がないのだ。
「
聞き分けのない大型犬に振り回されているかのように感じながら、少年はため息交じりに言った。まもなくフライトの時間である。
「なに?」
「僕の名前だよ。赤の他人が付けたものだけどさ。御剣聖架、それが僕の名前だ。ちゃんと名乗ってなかったからね」
彼の両親は彼に名前さえ与えなかった。この名をつけたのは養い親だ。
「我が名はバルバラ! 衝撃の」
「それはもう聞いたよ。あと、そっちに行くとぶつかる」
むぅ……。とサングラスを掛けたバルバラは不本意そうに誘導される。
こうして手を取って誘導しないと、彼女は眼が見えないのも構わずズカズカと行動するため、あちこちにぶつかり生傷が増えるのである。
魔術師の世話などしたくもなかったが、さすがに見ていて忍びなかった。
ここまで手を引いてきたのは、そんな理由からだ。
「……本気で目を潰すなんてね」
「当然よ。本気でやらなければ何も通じないわ。人にも、そして道にもね」
「……」
「まぁ、アナタもこれで満足したでしょう? 魔術師なんてものと関わるのは金輪際おやめなさいな」
「いやだよ」
「はぇ?」
去り際の挨拶とばかりの言葉に否を唱えられ、バルバラは間の抜けた声を上げる。
「世の魔術師だって、最初はただの人間だったんだろ? なら、僕から始められない訳はないはずだ。ここから何代かかってもかまわない。僕は魔術師になって見せる!」
「はぁ……アナタね? それでは本末転倒……と言っても無駄なのかしらね?」
魔術も魔術師と言う在り方も、それは手段に過ぎない。手段に拘泥する時点でそもそも資格などないのだが……
しかし、バルバラにはこれを強弁にて切って落とす気になれなかった。
その不屈さは、魔術師に必用な素養であるかのように、彼女には思えたのだ。
まったくの勘だが、この子供は、このまま進ませるのがいいのかもしれない。
「まぁいいわ。好きになさいな。勝ち目のない賭けだけど、そうするのは、なんというかとてもアナタらしいわね」
「そろそろ時間だ。余計な手間を掛けるからギリギリじゃないか」
少年は礼を言わなかった。
「では、何かあったら連絡をよこしなさいな。殺し合ったよしみで話しぐらいは聞いてあげるわ。全部無駄なんでしょうけど」
「いらないよ魔術師。僕は、僕のやり方でやるんだ」
「そう」
するとバルバラは僅かに微笑み、それきり少年の声に振り返ることもせず、姿を消した。なんとも彼女らしい、堂々たる足取りで。
――そのせいで時々あちこちにぶつかっていたが、まぁ大きなお世話だろう。
「やるんだ」
そして少年は誰に向けるでもなく呟き、踵を返した。
「――やってやるんだッ」
完
総括
というわけで第三夜終わりとなります。
とりあえず、三騎のサバが全部セイバーというのを活かせてはいなかった印象。
別にセイバーじゃなくてもよかった気がする……。むしろわかりにくかったらすんません。
第四夜のアイデアもあるのだけど……その前にやることがあるよねという感じ。
とにかく毎日コンスタントに書き続けるにはどうするかを考えたいです。
以下 サーヴァントとマスターについて一言コメント。
・セイバー、ウィリアム・ウォレス。
ハイランダーの大戦士。いろいろと迷走した気がする。
しかも宝具の名前とか考えてねぇ! うーむ何という体たらく……でも長くなるからステとかは割愛します。サーセン。
……サバのステ欲しい人います? そん時は言ってくだせえ。
出発点は『バニラなサーヴァントを考えられないか』と言うアイデア。
バニラというのはカードゲームなんかの用語で、要するに基本能力だけで後は何の特殊能力もない「トッピング無し」のユニットを指す言葉である。
そういうサーヴァントをデザインできないかということでやってみたのですが、まー引き出しが無いもんで扱いづらかった印象!
斬撃の固定とかはかなり適当に付けた。結構好きだけどやはり地味。伯も地味だから全体的に地味になっちゃったなぁって感じ。
パラスだけ競技が違う印象。二人ともバケモノ相手によく頑張ったと思う。
・ウォレスのマスター。
本名は御剣聖架(みつるぎ せいか)
これは彼を保護した施設(一般の)でつけられた名前である。
オンラインサロンで熱烈な支持を受ける芸術家。アクセサリークリエイター、造形師。
11歳にして工芸クリエイターとして活躍している。(つまりこの年ですでに経済的に自立しおり、生家の屋敷も買い戻した)
ハンドルネームはミズチガイ@バッドウォーター。水違い⇒ミヅチ飼い(みずちがい)
非魔術師が単独でどこまでマスターとしてやっていけるかという観点からデザインされたマスター。
……紆余曲折はあったけど(汗
「認知の力」や「概念の戦闘」という観点からただの一般人でありながらサーヴァントを追い詰めていく。
――というのは結構面白かった気がする。個人的にだけど(汗
本稿にある通り、衰退を避けられぬとして血統を断った魔術師に残された遺児。
その生まれの鬱屈から魔術師を超えることを目指す。少年と書きながら実は11歳の子供、というのはミスリードを狙ったつもりだったのだけれどあんまり意味なかったかな?
まぁいいんだ。どんどんやればいい。ボーイソプラノの声とか書けたから満足。ボーイソプラノって響きがなんか好き。
多分すごく顔は可愛いんだと思う。普通に天才だし魔術になんて関わらなければいいんだろうけど、そうはいかないのが人間というもの。
・セイバー、パラス・アテナ
実質的な主役……なのだけれど、途中この子が何をしたいのかが解らず迷走しました。やっぱキャラを立てようとするよりストーリー優先の方が迷わない気がするなぁ?
デザイン的なイメージはなんとなく「獣神ライガー」のような気がする。つまり赤と白の最終形態がサンダーライガー。
もっと髪がオレンジイエローのロングでおでこキャラだとか強調すべきだったかもしれない。
後の祭りですけどぉ。
ちなみに体格はバルバラよりも華奢で小柄。しかしパワーファイター。その戦闘力は一軍に匹敵する。
サーヴァントとしての出発点はスペードのクィーン。これをサバにできないかといろいろ調べたり考えたりしてこんな感じに。
宝具のルールはこじつけも甚だしいけど、逆利用されて攻略されるとかの展開はよかったと思います。
――アイギス以外には絶対に防がれない。ただし、アイギスとは単一の宝具であるとは限らない――
多分、まっとうな魔術師ならアイギスの複製くらい用意できると思うので普通の聖杯戦争でも攻略されやすい宝具かもしれない。
・マスター、バルバラ・ネス・ストローク
ネス湖付近に居を構える魔術師の一族。
なんとなくネス湖の魔術師と言うだけのイメージだったのだけれど、ロンドンとかに近いなら有力な魔術師なのかと思ったらネス湖がロンドンから結構遠いような気がしたので、勝手にネス湖の魔術師=田舎者と言う感じにしてしまった。ここではそうなんだと思っておいてくだせぇ。
全身ニプレス! とか三枚あれば! とかのアホの子的言動とか個人的には楽しかったです。
こんなんでもすごい美人なイメージ。髪色とかの解りやすいイメージをもっと書いときゃよかったなぁと今になって思います。
詠唱は英語圏の「侮蔑の言葉」を元にしてます。要するに母国語の汚らしい言葉をあえて魔術の発動キーにしてるって感じ。
だからなんだって感じだけど個人的には面白いと思って書いてた。
・セイバー、ケーニヒスマルク伯
地味。武器も地味だし能力も地味! 戦法も堅実だけど地味!
でも結構好きかもしれない。
出発点は武器。コリシュマルドは画像で見るとかなりヘンテコな形状をしています。
これを見て宝具としていけると思った――んだけどちょっとシンプルすぎた……。
マスターからは「伯」とだけ呼ばれる。
マスターのリーグルともども、裏表のないキャラだったので書いてて筆が乗ったのだけど、それ以上でもそれ以下でもないので奥行きが足らない感じ。
宝具効果は「防御貫通」。要するにガードの上からでもダメージを与える「ケズリ」効果のようなもの。
地味だけどわかりやすくて結構好きな能力。でもウォレスともども地味すぎたかもしれない。
もっとトリッキーなサバも用意すべきだったのだろうか?
・マスター、アルジェント・リーグル
いかつい顔の鎖使い。奴隷商人。外道。結構好き。すごくわかりやすい悪役だけど、なんかうまくかけた気がする。
アルジェントはフランス語で「銀」。リーグルは北欧神話の奴隷を作ったと言われる神様の名前。物騒だ。
生まれはフランスで詠唱はドイツ語、魔術は北欧由来。まぁ、日本生まれで詠唱がドイツ語のヒトとかもいるし、昨今出身とか文化とかにこだわる必要はないのではないだろうか?
行動原理も解りやすく、良くも悪くも裏表がない。書いてて楽だった。
バルバラに比べると魔術師としての力量で劣るイメージ。根源も目指さずに奴隷商人とかやってるのでサンシタもサンシタなのだろう。