ワンナイト聖杯戦争 第三夜  対決、三人のセイバー!   作:どっこちゃん

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4 「可笑しな剣を持つ男(コリシュマルド)」

 剣線は、セイバーではなく肌を晒すバルバラへ向けられたのだ。

 

「無防備なマスターを狙うとは……」

 

 マスターへ向けられた突きを盾で受け止めたセイバーは、対峙するもう一人のセイバーを睨み据える。

 

聖杯戦争(この戦い)の常道であろう? 第一、戦場で()()を晒す方が悪いわ」

 

 銀箔のセイバーも、これに牙を剥くような笑みでもって応える。

 

 当然、マスターであるリーグルも同時に動いていた。

 

「気にくわん女だ。()()()の田舎魔術師め」

 

 先ほど寸断された金銀の鎖が再び繋ぎ合わされ、再び虚空を埋め尽くす。

 

「だが、キサマのような不遜な(やから)輩を一から躾け直すのも、また奴隷調教の醍醐味である! 飼ってやるぞ。奴隷であるという自覚を得るまでな!」

 

 リーグルもまた魔力をみなぎらせ、バルバラを見据える。

 

 敵でも魔術師としてでもなく、捉えるべき奴隷として。

 

「下劣なことね。でもよろしくてよ! ――この世には、決して触れ得ぬ華もあると教えて差し上げましょう!」

 

 肌をさらしたままのバルバラも、蝶の群れをオーケストラの楽団の如く展開させ、これを迎え打つ。

 

「いいえ! マスター、さがってください」

 

 しかしそこで、セイバーが断固として告げた。

 

 対手を軽々と弾き飛ばしながらバルバラに視線を送ってくる。

 

「あらん? (わた)しでは役不足かしら?」

 

「そうではありません。ただ、私自身が戦闘に集中したいのです」

 

「……」

 

 バルバラもまた自らのサーヴァントをじっと見つめた。

 

 瞬間、火花のように視線が交錯する。

 

「やっぱりメイドに……」

 

「マスター!」

 

「もう、怒らないで!! 仕方がないわ。あなたが望むなら、従いましょう。そうよね。それも畢竟(ひっきょう)。この戦場は英霊の立つべき舞台なのだから。――総員、王の指揮のもとに密通せよ(Fornicate Uunder Command of the King)

 

 展開していた蝶の使い魔が、再びバルバラの白い肌を覆い始める。

 

 しかし、先ほどとは様相が異なっていた。肢体を覆う蝶の一匹一匹がまるで夜の断片であるかのように黒ずみ、バルバラの身体を周囲の光景に溶けこませていくのだ。

 

 保護色だろうか? バルバラの身体は見る見るうちに夜気へと溶けこんで消えていく。

 

「私は怒ってなどいませんよマスター。ですが感謝します。ここからは、わが剣に任せていただきたい」

 

「そうはいかんぞ、田舎(いなか)魔術師め!」

 

 先ほど切断され、地に散らばってたはずの鎖が踊り上がり、夜に溶けこもうとしていたバルバラの身体を再び拘束する。

 

「切れたのならば繋ぎ直すまで! 我が支配の鎖は不滅よ!」

 

 しかし、鎖で拘束されたはずのバルバラの肉体は、抜け殻のように鎖だけを残して消え去ってしまった。

 

「――ぬ!」

 

 まるで空蝉の術であった。彼女ほどの魔術師が、ただの保護色に終始するはずもなかったのだ。

 

「一杯喰わされたなマスター。構わぬ、下がっておれ。ここからは――英霊にのみ許された領域ということだ」

 

 再び間合いを測りながら銀箔のセイバーが洒脱に告げる。

 

 対する白亜のセイバーに言葉は無い。ただじっと、抜身となった相手方の剣、その刀身を見据えている。

 

 それもそのはず、銀箔のセイバーが持つ剣は殊更に奇怪な形状をしていた。

 

 

 

 

 男の――銀箔のセイバーが抜き放ったのは奇妙な刀身を持つ剣であった。

 

 基本的には片手で使用する細身の剣である。

 

 しかし、それは柄から刀身の中腹までであって、その先の刀身はまるで針のように細まっていたのだ。

 

 まるで、通常のサーベルと、一種の刺突専用剣との進化途上、ミッシングリンクであるかのような代物だった。

 

 時空を超えた英霊の座に招かれた者達は、本来は知りえない後世の英霊の逸話を知りえるとされる。

 

 白亜のセイバーもこの男の偉名に思い至ってはいたが、それについて何らの感想を持つ事は無かった。

 

 そんな余裕はなかったからだ。

 

 その剣が、一種の装甲刺突剣(メイル・ピアッスィング・ソード)を、より軽く、より先鋭化する目的で考案されたものであることを、そして、この男が凄まじいまでの刺突剣技の使い手であることを同時に悟ったからだ。

 

 事実、次の瞬間に見舞われた刺突は雨は、まさしく閃光のごときものであった。

 

 

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