「いや失敬失敬、卿は手違いで黄泉へと招かれてしまったようだ。詫びとなるかは判らないが……何、こちらの善意だ。卿へ新たな生を贈ろう。受け取りたまえ」
はくはく、と口を開閉させることしかできなかった。いや、正確に言えば生命活動と口の開閉だけ、か。
自分は信号を無視し横断歩道へ全速力で突入したトラックに轢かれた。その筈だ。それがどうして、こんな一面白の空間に、紳士じみているが信用してはならない様な男と二人きりなのだろうか。
「………………かみ、さま?」
「はて、妙なことを尋ねるのだな、卿は」
人知及ばぬことを為すモノ、それを人は神と呼び崇めてきたのではなかったのかね?
男は目を細め、愉しそうにくつくつと笑う。
若気の至りというか黒歴史というか……神様転生、と題される個人サイトなどで執筆されていた小説は読んではいた経験がある。
それでは人間に謝る神様、謎の空間、異世界への転生とそれに伴う特典――といったセットがテンプレとして書かれていた。
神を殴るニンゲンがいた。
神に同情するニンゲンがいた。
神を信じないニンゲンがいた。
神を侮るニンゲンがいた。
――そのどれも、こんなモノではなかった。こんな、言いようのない恐怖が背中にへばりつくようなモノではなかった!
だって、男は、男は、架空の戦国時代を模したあのゲームの、火薬を操り、数多の宝を愛し、無数の宝を奪っていった、あの、あの男そのものとしか思えない見た目と声で。
「なあに、卿の記憶の中から適当に引き上げたニンゲンの姿と言動を真似ているだけだ。そこを気にしても何も話は進まない」
声が、出ない。思考だけが脳の中を巡り、外へ出そうとした途端からからに乾燥して吐息と共に消えていく。
「ふむ、この姿となったのは失敗だったかな……? 安心したまえ、取って食ったりはしないさ。まあ、先に言っておくが過ちと言えど卿が聞いてすぐに理解できるモノではない。命の流れや死の運命だとかニンゲンが考えるようなモノではなく、もっと根源的で尚且つ発展的な仕組みだよ」
……ああそうだ、新たな生を得てもすぐこちらに戻ってきては意味がない。さてどうするか。そう男は呟き、考えだす。
「嗚呼、いいものを思いついた」
男が、私の首を掴む。そのまま中空へと持ち上げられた。かは、と空気が漏れる。息ができない、離してくれ、と反射的に腕が動き、男の手から逃れようともがいてしまう。
「卿からは歪を貰い」
首が絞まる。視界が滲み出す。
「――増幅を贈ろう」
ぱちん。
男が指を鳴らした音が、耳の裏へとずっと響いていた。
「いやはや、都合が良すぎるとは思わないかね? 肯定も否定も結果に影響しない。結末が決まっていて動かされるまま、線路の上から降りることすら叶わない」
――ニンゲンは生きる限り欲からは逃れられない。ならば、その欲の赴くまま生きるのは何もおかしくないのだ。
それがたとえ、元いた世界でなくとも。
それがたとえ、本来のモノよりも増やされていたとしても。
それがたとえ、傍観者が望むまま動かす人形劇だったとしても。
楽しいは全てにおいて優先される。それがたとえどんなに残酷であろうとも。
「――キミも、そう思うだろう?」
男は
それはきっと、